どポップではない曲たちを表現するということ
──「daydream」以降にリリースされたAimerさんのシングルって、1曲ごとの振れ幅がものすごく大きいですよね。特に「ONE / 花の唄 / 六等星の夜 Magic Blue ver.」と「I beg you / 花びらたちのマーチ / Sailing」はそれが顕著で。
はいはい。
──それに対して今回のシングルは、新曲は3曲ともアレンジ的にはオーガニックな音作りをしているという意味で統一的なフォーマットを用いていると言えます。そのうえで、Aimerさんが歌声で変化を付けているシングルでもあるのかなと。
おおー、うれしい。あの、その言葉、そのまま記事に載せてください(笑)。
──わかりました(笑)。でも実際、多彩ですよね。声の響き方もそれぞれ違いますし。
いや、実は自分の中に不安もあったんですね。今おっしゃった「ONE」も「I beg you」もトリプルA面で、それぞれまったく曲調が違って、それぞれがとっても濃い。そういうシングルって、ある意味わかりやすくてポップじゃないですか。それは光の中にいたフェーズだからできたことでもあるんですけど、今、また新しい夜の中で、おっしゃる通りある種の統一感があって、どポップではない曲たちを表現することって私にとってはすごく勇気のいることなんですよね。
──そうだ、洋楽的という共通項もありましたね。
そうなんですよ。自分では、今回のシングルには歌謡曲的なポップさはないと思っているんです。言い換えれば、人によってはちょっとわかりづらい曲たちなのかもしれない。それでも、今の自分の声ならそういう曲たちもAimerの歌として表現できるという自信があったから歌うことができた。だから新しい夜の始まりに、また何か新しいものを感じてもらえたらうれしいですね。
上海の熱気と臨場感をパッケージした2曲
──4、5曲目には「Black Bird」と「I beg you」のライブバージョンが収録されています。
先ほど、今回のシングルの裏テーマは“旅”だと言いましたけど、そうやって旅のシングルを作っていたら、6月にアジアツアーで海外に行けたんですよ。そこでのお客さんたちの熱量が予想以上にすさまじかったので、それをみんなと共有したかったし、実際の旅の中で生まれた音楽を入れるのも素敵だなと思って。ただ、収録されているのは中国・上海のライブなんですけど、必ずしも「これが今の私のベストです!」と言えるものではないんです。だけれど、やっぱり上海のみんなが観てくれていたあの場でしか歌えなかった歌が入っているので、これを聴いてライブに来たくなってほしいです。
──「I beg you」の曲終わりにお客さんの1人がある言葉を叫ぶ声がばっちり拾われていますが、あれ、最高ですね。
よかった、「最高」と言ってくださって(笑)。あれはホントに偶然というか、やらせとかではなくて。
──わかりますよ、やらせじゃないのは(笑)。
海外のライブならではの出来事だと思うし、上海のライブは特にすごくて。そういう熱気や臨場感もあの一声から伝わるだろうし、偶然の産物だとしてもそれをちゃんと作品に残せたら面白いなあって。
──それは、お客さんが声を上げられるようなライブになっているということでもありますよね。つまり、もはやおとなしく着席して傾聴しているだけのライブではない。
そうですね。“太陽と雨”の国内ツアーでも、みんなと一緒に楽しむシーンは楽しんで、しっかり聴いてもらいたい場面はじっくりと聴いてもらうメリハリをつけられるようになったし。それこそ、これはアクシデントだけれど、さっきも少しお話ししたようにツアーの初日に声が出なくなって。それをステージの上で味わって、どんどん手足が冷たくなって「この世の終わりだ」と思うくらい追い詰められていたんです。そんな私を、その場にいたみんなが本当に温かく受け止めてくれて、一緒に「蝶々結び」を合唱してくれたんですよ。
──いい話ですね。
そのとき初めて、私と、私を支えてくれるみんなが、こんなにも優しい関係で結ばれていたということが身に染みてわかったんですよね。それを経て「みんながいてくれたら、どんなことが起こってもきっと大丈夫」と思えるぐらい、自分の中でみんなの存在がさらに大きくなっているんです。だからこそ、また新しい夜の中でもそうやってみんなと心を通わせられるんじゃないかって。
次のツアーを人生で一番素晴らしいものに
──そして、10月から全国ツアー「Aimer Hall Tour 19/20」が始まりますね。
今の話とも重なるんですけど、自分を信じることって本当に難しいけれど、自分を信じてくれるみんなのことは信じられるんですよ。そう思うと歌もすごく変わってきて、特にアジアツアーは今までになかったぐらい、歌うのが楽しかったんですよね。またもう一歩先に進めたというか、声を失うことの怖さというものも楽しめるようになってきて。
──マジですか。
これまでは怖くてしょうがなくて「どうしよう、どうしよう」という気持ちが先に立っていたけれど、今はそれを理解してコントロールできるようになったんです。それから今回のツアーの日程は、去年、声が出なくなった10月31日の千葉県・市川市文化会館公演と、まったく同じ日のまったく同じ場所から始まるんですよ。
──おおー。因縁めいたものがありますね。
きっと否が応でも去年のことを思い出すだろうし、自分としてもいろいろ思うところがあるんですけど、それを乗り越えて、このツアーを今までの人生で一番素晴らしいものにします。
──頼もしいですね。当然その次のツアーがあれば、もっと素晴らしいものに?
はい。そのぐらい、歌というものに今の自分のすべてを詰め込んでいきたいですね。
ツアー情報
- Aimer LIVE TOUR 19/20 "rouge de bleu"
-
- 2019年10月31日(木)千葉県 市川市文化会館
- 2019年11月3日(日)広島県 上野学園ホール
- 2019年11月4日(月・祝)香川県 サンポート高松
- 2019年11月9日(土)兵庫県 神戸国際会館
- 2019年11月10日(日)兵庫県 神戸国際会館
- 2019年11月16日(土)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
- 2019年11月23日(土・祝)新潟県 新潟県民会館
- 2019年12月1日(日)静岡県 静岡市民文化会館
- 2019年12月6日(金)福岡県 福岡サンパレス
- 2019年12月7日(土)福岡県 福岡サンパレス
- 2019年12月14日(土)宮城県 仙台サンプラザホール
- 2019年12月15日(日)宮城県 仙台サンプラザホール
- 2019年12月22日(日)長野県 まつもと市民芸術館
- 2020年1月4日(土)京都府 ロームシアター京都
- 2020年1月5日(日)岡山県 岡山市民会館
- 2020年1月11日(土)埼玉県 大宮ソニックシティ
- 2020年1月12日(日)埼玉県 大宮ソニックシティ
- 2020年2月2日(日)岩手県 盛岡市民文化ホール
- 2020年2月8日(土)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
- 2020年2月9日(日)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
- 2020年2月14日(金)大阪府 フェスティバルホール
- 2020年2月15日(土)大阪府 フェスティバルホール
- 2020年2月22日(土)東京都 東京国際フォーラム ホールA
- 2020年2月23日(日)東京都 東京国際フォーラム ホールA