原点を大事にしながら挑戦し続けたい
──「April Showers」のレコーディングはいかがでしたか?
こういう音数が少ないバラードというのはすごく慎重になるんですけど、ただこういう曲はもっと声量を下げてひたすら静かに歌っても成立するんですよ。それでもよかったんですけど、今はそういうふうには勝負したくなくて。だから、特にサビはあえて声を張るようにして、今だから歌える歌い方をしましたね。やっぱり声にダイナミクスが欲しかったし、それでいて声色や響きもちゃんとキープしたまま張れるようになったし。そこを聴いてほしくて。
──落ちサビなどは声が剥き出しになっていますし。
そう、丸裸にされた感はあるんですけど、だからこそ、今の自分の声というものがダイレクトに感じられると思うし。私としては、原点を大事にしながらいろんな挑戦を続けたいという気持ちがあって。つまり今まで歌ってきたバラードも大切に歌っていきつつ、そのバラードの中でもシンガーとして表現の幅を広げていきたいんです。
──僕は「April Showers」を聴いて、Aimerさんのバラード表現がどんどん研ぎ澄まされているようにも感じました。
おお、うれしいです。ただ、もしかしたら初期の、夜の歌を歌っていた頃のAimerが好きという方は、もっと静かな歌声を期待されたかもしれません。でも極端に言えば、か細い歌って簡単に歌えるんですよ。とにかく声量を落として、それこそバンドをバックに歌ったら成り立たないくらい囁くように歌えば、いくらでも優しい、あるいはマイルドな表現にできるんです。そういう声色が好きだと言ってくださる方もいると思うんですけど、今やりたい私のボーカルのアプローチはそっちではないんです。
──なるほど。
要はポップスとして成立して、ダイナミクスがあって、なおかつ音楽的な根拠のある歌で勝負したい。そうやって自分の歌が外向きに開いているタイミングだからこそ「太陽」のアルバムを作れたし、この曲のボーカルアプローチに至りました。そういう意味では「雨」と「太陽」は、今までの自分と今の自分との対比でもあるけど……。
──歌そのものは今の歌としてアップデートされていますよね。例えば「I beg you」のような極めて革新的な曲も収録されていますし。
そう受け取ってもらえたなら本当にうれしいです。私の中では、「雨」と「太陽」はいろんな対比になっていて、それは弱い自分と強い自分の対比でもあるし、私の世界と私とみんなの世界の対比でもあるし、あるいは原点と挑戦の象徴でもあるし。でも、今回そういうシンボリックなアルバムを作ったけど、これから開いていくか、逆に閉じていくかっていうのは自分自身ではわからないので(笑)。この先どういうふうに進んでいくのか、見守っていてほしいです。
みんながいなかったら作れなかった
──前回のインタビューで、シングルにしろアルバムにしろ、できあがった音源をご自身で繰り返し聴かれるとおっしゃっていましたが、やはり今回のアルバムも?
はい。また聴きすぎてよくわからなくなったんですけど(笑)。完成する直前、つまりマスタリングする前の時点ですでに聴きすぎてましたし、特にシングル曲はシングルとしてリリースされたときもさんざん聴いてるので。でも、初めて収録曲順に並べて聴いたときのことはよく覚えてて、そのときは自分でも興奮しました。特に「Sun Dance」のほうは、やっぱり初めて挑戦した踊れるポップスを主軸にしたアルバムだったので、それがちゃんとコンセプチュアルな形になったのはすごくうれしかったですね。
──「Penny Rain」は?
「Penny Rain」は、逆にほとんど心配していませんでした。シングル曲も多い分、ベスト盤以後の軌跡が見えるし、みんなこういうAimerがきっと好きなんじゃないかなって。だから、「雨」のほうが好きな人も「太陽」を聴いてほしいし、逆に「太陽」から入ってくれた人は……「太陽」から入る人っているのかな?
──いるでしょう(笑)。だって「太陽」の原点たる「ONE」は、ライブでもめちゃくちゃ盛り上がりますし、「コイワズライ」も人気曲「カタオモイ」の続編的な位置付けですし。
そうか。じゃあ、待ってます。このアルバムの反響次第で、この先の自分も変わってくるかもしれないですね。もし「Sun Dance」が全然人気なかったら「もういいです、私、雨の世界に戻ります」って。
──ええー。
もちろんそれはないですけど(笑)。でも、大前提として私は私の歌いたい歌を歌い続けているんですけど、聴いてくれている人の声もしっかり受け止めるタイプなんです。だからこそ「太陽」を作っていたときも葛藤があったし、「みんなが期待する“ザ・Aimer”じゃないかもしれないけど、いいかな?」みたいな不安もあったし。でも、それを乗り越えて、繰り返しになりますけど「Sun Dance」は全曲agehaspringsで作って、音楽的にも今のポップスとして面白いものができたという手応えを感じています。
──「Sun Dance」が全曲agehaspringsプロデュースなら、「Penny Rain」は提供楽曲が大半を占めているんですよね。梶浦由記さんがオーバーチュアの「pluie」も入れて3曲、Coccoさん、TKさん、澤野弘之さんがそれぞれ1曲ずつですから。
はい。それぞれ毛色が違っていて、激しい雨もあれば優しい雨もあるし、雨粒にもいろんな大きさがあるというか。それでいて通して聴いたときに、ちゃんともとの場所に戻ってこられるような仕上がりにできました。本当に、関わってくださった皆さんに感謝していますし、何より、ファンのみんながいなかったらこういうアルバムを作ろうとは思わなかったぐらいみんなを意識して作ったアルバムなので、届いてほしいなあ
──「Sun Dance」と「Penny Rain」のリリース後、6月からはアジアツアーが始まりますね(参照:Aimerが6月にアジアツアー開催、ラストは東京公演)。ただ、国内ではアルバムに先行して「soleil et pluie」、すなわち「太陽と雨」のツアーをすでにやっているんですよね。
そうなんですよ。普通だったら逆で、アルバムを掲げてツアーをするものなのに。だから、ツアーファイナルの東京公演をどういうものにするかは、今考え中です(笑)。
──「soleil et pluie」ツアーもすごく面白かったですよ。
よかった。実はあのツアーを作っているときもかなり思い悩んでたんです。でも、蓋を開けてみたらみんなすごく喜んでくれたし、そこでちゃんと「原点を大事にしながら先に進みたい」ということも伝えられたので、これからもその“原点と挑戦”を忘れずに歌い続けていきます。
- Aimer「Sun Dance & Penny Rain」
- 2019年4月10日発売 / SME Records
-
完全生産限定盤
[CD2枚組+Blu-ray2枚組]
9720円 / SECL-2409~13 -
初回限定盤A
[CD2枚組+Blu-ray]
5184円 / SECL-2414~6 -
初回限定盤B
[CD2枚組+DVD]
4752円 / SECL-2417~9 -
配信
- 「Sun Dance」収録曲
-
- soleil
- ONE
- We Two
- 3min
- コイワズライ
- 花びらたちのマーチ
- 思い出は奇麗で
- Monochrome Syndrome
- SUN DANCE
- One -epilogue-
- 「Penny Rain」収録曲
-
- pluie
- I beg you
- Black Bird
- Sailing
- 眩いばかり
- Stand By You
- Ref:rain
- i-mage <in/AR>
- 花の唄
- April Showers
- 完全生産限定盤 Blu-ray 収録内容
-
DISC 1
- I beg you
- Black Bird(Movie ver.)
- zero
- ONE
- 眩いばかり
- 思い出は奇麗で(Father's day edit)
- Ref:rain
- 花びらたちのマーチ
- 歌鳥風月
- 花の唄
DISC 2
- soleil(soleil et pluie)
- ONE(soleil et pluie)
- Monochrome Syndrome(soleil et pluie)
- Believe Be:leave(soleil et pluie)
- 3min(soleil et pluie)
- あなたに出会わなければ~夏雪冬花~(soleil et pluie)
- 今日から思い出 Evergreen ver.(soleil et pluie)
- カタオモイ(soleil et pluie)
- 思い出は奇麗で(soleil et pluie)
- Ref:rain(soleil et pluie)
- 眩いばかり(soleil et pluie)
- 花の唄(soleil et pluie)
- Black Bird(soleil et pluie)
- After Rain -Scarlet ver.-(soleil et pluie)
- Hz(soleil et pluie)
- 蝶々結び(soleil et pluie)
- 初回限定盤A Blu-ray / 初回限定盤B DVD 収録内容
-
- I beg you
- Black Bird(Movie ver.)
- zero
- ONE
- 眩いばかり
- 思い出は奇麗で(Father's day edit)
- Ref:rain
- 花びらたちのマーチ
- 歌鳥風月
- 花の唄
- Aimer「Sun Dance」
- 2019年4月10日発売 / SME Records
-
通常盤 [CD]
2160円 / SECL-2420
- 収録曲
-
- soleil
- ONE
- We Two
- 3min
- コイワズライ
- 花びらたちのマーチ
- 思い出は奇麗で
- Monochrome Syndrome
- SUN DANCE
- One -epilogue-
- Aimer「Penny Rain」
- 2019年4月10日発売 / SME Records
-
通常盤 [CD]
2160円 / SECL-2421
- 収録曲
-
- pluie
- I beg you
- Black Bird
- Sailing
- 眩いばかり
- Stand By You
- Ref:rain
- i-mage <in/AR>
- 花の唄
- April Showers
- Aimer(エメ)
- 女性シンガーソングライター。幼少期よりピアノやギターでの作曲や英語での作詞を始め、15歳のとき声が一切出なくなるというアクシデントを経験し、それがきっかけとなり独特の歌声を獲得する。2011年から音楽活動を本格化させ、同年9月にシングル「六等星の夜 / 悲しみはオーロラに / TWINKLE TWINKLE LITTLE STAR」でメジャーデビューを果たした。2014年6月に2ndアルバム「Midnight Sun」と、澤野弘之とのコラボレーションアルバム「UnChild」を同時発売し、同年9月には菅野よう子、青葉市子らが参加する新作「誰か、海を。」を発表した。2016年7月にONE OK ROCKのTaka(Vo)と凛として時雨のTK(Vo, G)が提供およびプロデュースした楽曲を収めた両A面シングル「insane dream / us」、8月にRADWIMPSの野田洋次郎(Vo, G)制作の「蝶々結び」を収めたシングルをリリース。9月にTaka、野田のほか、andropの内澤崇仁(Vo, G)、スキマスイッチが楽曲提供およびプロデュースをした新曲を含むアルバム「daydream」を発表し話題を集める。2017年5月にベストアルバム「BEST SELECTION "blanc"」と「BEST SELECTION "noir"」を同時リリース。8月に初の東京・日本武道館単独公演を行い、13000人を動員した。2018年2月にCocco提供の「眩いばかり」を含むニューシングル「Ref:rain / 眩いばかり」を、9月に映画「累-かさね-」の主題歌「Black Bird」を収録したシングルをリリース。2019年1月に劇場版「『Fate/stay night[Heaven's Feel]』II.lost butterfly」の主題歌「I beg you」を収めたトリプルA面シングルを発表した。4月に2年半ぶりとなるオリジナルアルバム「Sun Dance」「Penny Rain」を2枚同時リリース。