ナタリー PowerPush - SawanoHiroyuki[nZk]:Aimer
Aimer×澤野弘之対談
初めての1人に選ばれたのがうれしくて
──ところがepisode 7の主題歌「StarRingChild」は真のラスボスではなかった。先日、東京と大阪でSawanoHiroyuki[nZk]:Aimer名義のライブを開いて(参照:澤野弘之×Aimer「ガンダムUC」の世界を音で彩る特別公演)、このたびアルバム「UnChild」もリリースすることになったわけですから。
澤野 episode 7の制作に入った頃、(「機動戦士ガンダムUC」シリーズの制作会社)サンライズのスタッフの方から「最後、イベントもやりたいですよね」って話があったんです。これまでオーケストラと一緒にサントラに特化したライブはやっていたんですけど、もっと小さな編成のバンドでツアーを回ってみたら面白いですよねって。で、そのとき僕が思い付いたのはバンド編成でボーカルをフィーチャーすることで。それならepisode 6とepisode 7の主題歌を歌ってくれたAimerさんとやりたい。それで僕のボーカルプロジェクト、SawanoHiroyuki[nZk]として一緒にライブをすることになったんです。ただ「RE:I AM」と「StarRingChild」だけやっても面白くないんで、「UC」のサントラの中にあるボーカル曲をAimerさんバージョンにしよう、と。
──その発展型がアルバム「UnChild」?
澤野 そうですね。カバーバージョンを何曲も揃えるくらいなら思い切ってAimerさんと1枚のアルバムを作ったほうが面白いんじゃないか、って。またも僕の思い付きでそういうことになっちゃってました(笑)。
Aimer でも澤野さんとアルバムを作るっていうお話をいただいたときは「RE:I AM」のお話をもらったときと一緒。やっぱりすごく光栄で。澤野さんが1人のボーカリストをフィーチャーしたアルバムを作るのは初めてだと聞いていたので。
澤野 そうですね。
Aimer その初めての1人に選ばれたのがすごくうれしくて。しかも今回のアルバムの「UnChild」は「RE:I AM」や「StarRingChild」も英詞バージョン。全曲英詞になるって聞いてからは「面白そう」「歌ってみたい」っていう思いが本当に大きくなっていました。
歌詞はサウンドの一部という理解
──お話を聞くだに実はAimerさんも思い付きの人ですよね(笑)。ロックチューンを歌うのは控えていたはずなのに「RE:I AM」の話が来たら面白そうだから乗ってみるし、「UnChild」の全英詞曲っていう試みにも面白そうだから乗ってみる。
Aimer けっこう感覚的に行動している面はありますね(笑)。自分の技術と相談しながら英詞をいかにカッコよく歌いきれるかっていう挑戦をすることはすごく楽しそうだと思えたので。そういう感性や感覚を信じるようにしています。
──そもそもなぜ全曲英詞に? 日本語詞の「RE:I AM」「StarRingChild」を英訳しているし、原曲はドイツ語詞だった「Sternengesang」も「But still...」に改題した上で英訳しています。
澤野 もともと英詞のほうが好きなんですよ。日本語詞とはちょっとグルーヴ感が違うのが面白いので。あと実はもともとそんなに詞の意味に重きを置いていないというか。詞もサウンドの一部と捉えているので、メッセージ性よりも響き。このメロディに対してはこういう音を当ててほしいということのほうが気になるんです。だからメロディに対して言葉のハマリがいいなら、実は何語でも構わないのかもしれない。
──ただ「RE:I AM」「StarRingChild」も原曲の詞は澤野さん自身が日本語で書いてますよね。しかもどちらも現状や過去に対する苛立ちや怒りの先に希望の光を見ようとする内容になっています。
Aimer そうですね。澤野さんの伝えたいことって実はハッキリしているんじゃないんですか?
澤野 逆に言いたいことはそれくらいしかないのかもしれない(笑)。自分で詞を書くときはやっぱり「このメロディにはこういう音が乗っていてほしい」っていうサウンド感、響きのよさを重視してますから。だから、その言いたいことについても聴く人に押しつけるつもりはなくて。どこか1行でも気にしてくれればいい。気になる1行を見つけて、それをきっかけに自由に解釈したり、イメージを膨らませたりしてくれるといいなって感じなんですよね。僕が英語がそれほど達者ではないこともあって「UnChild」の詞は作詞家さんにお任せしているんですけど、気にしたところは自分で書くときと一緒。詞をいただいたらまず、意味よりもメロディと言葉のハマリ具合をチェックしてましたから。
Aimer だからなんでしょうけど、すごくいい環境で挑戦をさせていただけたと思っていて。私のこの声質で歌ったときにどう響くかを考えた上で言葉を選んでくださっているのがはっきりわかる歌詞だったので、すごく気持ちよく英詞に臨むことができました。
何も考えてないのがよかったのかもしれない
──一方アレンジなんですけど、澤野さんの言う通り、本当にバンド感あふれるものになっている。「ガンダムUC」ありきの企画なのかもしれないんだけど、ちゃんと“SawanoHiroyuki[nZk]:Aimer”という1つのバンドになっているというか。
Aimer SawanoHiroyuki[nZk]のメンバーにはもう5年以上一緒にやってらっしゃる方もいるんですよね?
澤野 そうですね。単にバンドメンバーっていうだけじゃなくて、普段から一緒に飲みに行くような間柄だから、よりバンドらしく聞こえるのかもしれないですね。仕事だけの堅い関係じゃなくて、「まあ飲もうよ」って言い合える関係、冗談を言い合いながら一緒にいられる人たちと仕事したいなって思っているから、こういう音になるのかもしれない。
──いや、それ以上というか、澤野さんたちとAimerさんの関係もバンド的ですよね。「SawanoHiroyuki[nZk]がゲストボーカルのAimerさんに歌ってもらいました。おしまい」とはなっていない印象を受けたんです。
澤野 ああ、本当ですか。なら何も考えてないのがよかったのかもしれないですね。ただ「Aimerさんとこんな曲やりたいな」ぐらいの感じで作っちゃっただけなので(笑)。
- Aimer 2ndアルバム「Midnight Sun」/ 2014年6月25日発売 / DefSTAR Recordst
- 「Midnight Sun」
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3600円 / DFCL-2068~9
- 通常盤 [CD] 3200円 / DFCL-2070
CD収録曲
- WHEN YOU WISH UPON A STAR -prologue-
- 眠りの森
- 7月の翼
- words
- Cold Sun
- AM03:00
- 小さな星のメロディー
- VOICE
- RE:I AM
- StarRingChild
- 星の消えた夜に(Re-echoed by Genki Rockets × give me wallets)
- Iris
- WHEN YOU WISH UPON A STAR
初回限定盤DVD収録内容
- 「眠りの森」MUSIC VIDEO
- 「今日から思い出」MUSIC VIDEO
- 「ポラリス」MUSIC VIDEO
- 「RE:I AM(Live ver.)」
- SawanoHiroyuki[nZk]:Aimer アルバム「UnChild」/ 2014年6月25日発売 / DefSTAR Recordst
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3600円 / DFCL-2068~9
- 通常盤 [CD] 3200円 / DFCL-2070
収録曲
- UnChild
- StarRingChild -English ver.-
- A LETTER
- Destiny
- But still...
- Just say good bye
- Next 2 U
- bL∞dy f8
- REMIND YOU
- EGO
- Because we are tiny in this world
- RE:I AM -English ver.-
Aimer(エメ)
女性シンガーソングライター。幼少期より両親の影響で音楽に親しみ、ピアノやギターでの作曲や英語での作詞を始める。15歳のときに声が一切出なくなるアクシデントに見舞われるが、回復とともに独特の歌声を獲得。2011年から本格的に音楽活動を開始し、2011年9月にシングル「六等星の夜 / 悲しみはオーロラに / TWINKLE TWINKLE LITTLE STAR」でメジャーデビューを果たす。以来、2012年8月発売のシングル「あなたに出会わなければ ~夏雪冬花~」がテレビアニメ「夏雪ランデブー」のエンディングテーマに、2013年のシングル「RE:I AM」がアニメ「機動戦士ガンダムUC episode 6 ~宇宙と地球と~」の主題歌に採用されるなど、各方面から大きな注目を集める存在に。そして2013年11月にはスタジオ収録の新曲とライブ音源をパッケージしたアルバム「After Dark」を、2014年5月、表題曲が「機動戦士ガンダムUC」シリーズ最終章となる「episode 7 ~虹の彼方に~」の主題歌に採用されたシングル「StarRingChild」を発表。さらに6月には2ndソロアルバム「Midnight Sun」と、「ガンダムUC」シリーズの劇伴を手がけ、「RE:I AM」「StarRingChild」のプロデューサーでもある澤野弘之らとのコラボレーションアルバム「UnChild」を同時リリースした。
澤野弘之(サワノヒロユキ)
1980年東京都生まれの作曲家、編曲家。幼少期よりピアノに親しみ、10代のうちに坪井伸親に師事。現在はテレビドラマ「医龍」シリーズや、アニメ「ギルティクラウン」、「進撃の巨人」、「キルラキル」「機動戦士ガンダムUC」シリーズなどの劇伴を手がけるかたわら、室屋光一郎らとのプロジェクトSawanoHiroyuki[nZk]も始動させ、積極的にライブ活動を展開している。2014年6月には「機動戦士ガンダムUC episode 6 ~宇宙と地球と~|」の主題歌「RE:I AM」と、「同episode 7 ~虹の彼方に~」の主題歌「StarRingChild」を歌ったAimerとのコラボレーションアルバム「UnChild」を発表した。