ナタリー PowerPush - agraph
新鋭エレクトロニカアーティストのアニヲタ疑惑を徹底検証
agraphのルーツ=「ブギーポップは笑わない」?
──ご自身の楽曲を作る上で、アニメからの影響が反映されることはありますか?
やっぱり多感な時期にアニメをいっぱい観ていたので、それが濾過されて出ているんじゃないかとは思いますね。1stアルバムの「a day, phases」(2008年12月3日発売)は今思うと、たぶんアニメ版「ブギーポップは笑わない」の影響がある作品なのかなぁ、と。「a day, phases」のこもったフィルターは、あのアニメの全体にただよう暗さから来てるのかなと思っています。サントラにrei harakamiさんの曲も収録されてるし。1stアルバムに「and others」って曲があるんですけど、原作小説の「ブギーポップ」第1巻の英語副題が「Boogiepop and Others」なんですよ。
──あー。無意識に出てしまったんですね。
あとで気付いて戦慄を覚えました。ね、業が深いですよね……(遠い目)。
──最近のアニメ音楽で、アーティストの目線で気になった作者は?
NARASAKI(COALTAR OF THE DEEPERS)さんですね。ナッキーさんが手がけた「はなまる幼稚園」のスコアがすごいんですよ。すごすぎて、ナッキーさんに「すごく良かったです! ぜひ僕のも聴いてください!」って手紙書いて送りましたもん。
──面識ないのに?(笑)
ないです!
──牛尾さんは石野卓球さんとの出会いもそうですけど、結構思い切ったアプローチをしますよね。
ええ、ええ。「好きです!」ってナッキーさんに送ったら、気に入っていただけたみたいで。うれしかったですねー。
──NARASAKIさんは「さよなら絶望先生」シリーズなどシャフト作品に多くかかわっていますけど、基本的には「アニソンはアニソン系のアーティスト」という住み分けがなんとなくできてますよね。例えば牛尾さんのように、アニメに造詣の深いアーティストがどんどんアニソン/劇伴を手がけるようになると、さらにシーンが活性化するんじゃないかと思うのですが。
メチャメチャやりたいですよ……。
──この監督、この演出家、この制作会社の作品で音楽をやりたい、という明確な希望はありますか?
第一にあるのは、昔から個人的に親交のある佐藤大さんですかね。あの方はもともとテクノレーベル「フロッグマン」の人でテクノにも詳しいし、シリーズ構成と脚本を担当した「交響詩篇エウレカセブン」でも面白いスコアを使われてたので、きっと楽しく仕事できるだろうなと。あと、渡辺信一郎監督(「カウボーイビバップ」「サムライチャンプルー」など)は音楽に相当こだわったアニメを作られる方なので、一緒にやってみたい。……あー、でも挙げだしたらキリないなー。Production I.Gともやりたいし、GAINAXとなら絶対ムチャやれるし(笑)。
──ヲタ仲間であるミトさんは、ついに声優さんの楽曲、しかも「けいおん!!」の平沢唯役を務める豊崎愛生さんの楽曲を手がけることになりました(11月10日発売のシングル「Dill」)。アニヲタ界隈でも大きな話題を集めましたが、牛尾さんはもし声優さんからオファーがあった場合引き受けますか?
そりゃもう、すっごいやりたいです!!
──このインタビューが世に出ることで、声がかかる可能性もありますよ。
いや、それはないでしょう。……どうなんでしょう(笑)。
だって僕、アニヲタなんだもん!
──深夜系のアニメではない、王道の少年マンガ系アニメも観てますか?
あんまり観ないですねー。だって、エロくないんだもん!
──なるほど(笑)。エロはやっぱり重要なファクターですか?
エロと言っても別に、ホントにそれで何かをするっていう意味のエロではなくて(笑)、突き抜けたものが観たいんです。こないだ「ストパン」1期をぶっ通しで観たとき「あっ、パンツに触れねえんだ!?」ってことにあらためてすごいなと思ったんですよ。「ガンダム」ってすべての不条理を“ミノフスキー粒子”に閉じ込めますよね。言ってみれば“ミノフスキー粒子”っていうガジェットのためにSFが成り立ってる。「ストパン」は、プロットだけ読めば硬質な話を“パンツ”に押し込めてるんです。これは徹頭徹尾狂った人の仕業だなと。すばらしいなと思いました。だってSFだもん(笑)。
──卓球さんとか、普段近くで仕事されている方とはアニメの話はしないんですか?
ないですねー。卓球さんはもともと特撮好きだから、今のアニメにハマる素養はあると思うんですけど、あまり興味がないそうで。たまに現場でポロッとアニメの話が出ると、ドン引かれてますね。Twitterもつぶやくたびにフォロワーが減るんです(笑)。
──今回のインタビューでは「ポロッ」では済まないぐらいアニヲタとしてのコアが全開になってますけど、これは大丈夫ですか?
だって僕、アニヲタなんだもん! アハハハハハ。ナタリーにはこういうかたちで取り上げていただいたので、あとは普段観てる個人サイトの「カトゆー家断絶」とか、さらしるさんのとことか、「変人窟」とか、「今日もやられやく」とかにも取り上げてもらえたら、もう思い残すことはないです。
──この記事が「agraph本気だぞ」みたいなかたちでピックアップされる可能性は全然ありますね。
そうなったらすごくうれしい。僕の昔からの友達もみんな大喜びです(笑)。
CD収録曲
- lib
- blurred border
- nothing else
- static, void
- nonlinear diffusion
- flat
- a ray
- light particle surface
- while going down the stairs i
- while going down the stairs ii
- lib (remodeled by alva noto)
agraph(あぐらふ)
牛尾憲輔のソロユニット。2003年よりテクニカル・エンジニアとして石野卓球、電気グルーヴ、RYUKYUDISKO、DISCO TWINSの音源制作やライブをサポート。2007年に石野卓球主宰レーベル・platikから発表されたコンピレーションアルバム「GATHERING TRAXX VOL.1」にkensuke ushio名義で参加。agraphとしては2008年12月3日リリースのアルバム「a day, phases」が初の作品となる。