a flood of circle「伝説の夜を君と」佐々木亮介ソロインタビュー|金字塔を打ち立ててなお満たされないフロントマンの渇望 (2/2)

ここはピークじゃない

──バンドの金字塔であり集大成と銘打ちながらも、タイトル曲の「伝説の夜を君と」では「ピークのようで 始まりに過ぎない夜を」と歌ってるわけで。ここがピークではないとも感じているところもある?

もちろん。今までに比べれば最高ではあるけど、自分の人生のピークがここだとは到底思いたくないです。バンド人生において、これが最高だっていう作品も瞬間もまだないし。

──a flood of circleはそれを繰り返してますよね。毎回最高傑作と言いながら、現状に満足できていないという発言が必ず出てくる。

いまだに怒りや悔しさ、コンプレックスみたいなものが曲作りや歌の原動力になっていて、それはずっと変わらないんです。別に歌ってることはずっと一緒じゃんって自分でも思うし(笑)。だから10年前でも歌えたし、10年後も歌えるんじゃないかな。

佐々木亮介

佐々木亮介

──曲を作るときに自分が10年後に歌えるかどうかは意識しているんですか?

いや、未来のことはあんまり考えてないな。立ったことがない武道館とか大きな野外会場の景色を想像しながら書いてるところはあるけど、あくまでも“今”の自分の夢や妄想込みなんですよね。

──なるほど。ちなみに今作のような、好きな音楽を追求するモードは今後も続くんでしょうか?

うーん、今回のアルバムでケリをつけたいんですが、どうなるかはこのあとのツアー次第かな。曲は書けるんですけど、次の作品をどうするかは今のところ自分ではノープラン。

──お話を聞いていると、佐々木さんはa flood of circleに対して希望を持っていて、続けることに対して強い思いを持っているんだなと思いました。同時に何がそこまで佐々木さんを魅了するんだろうと。

自分でもマジでわかんないです。まず音楽をやめることはないと思うんですけど、なんでa flood of circleをやめないんだろうな。バンドって調子がいい日も悪い日もあるので、悪い日は「なんでこんなことやってるのかな」ってなるんです。そういう気持ちになることって誰にでもあるんでしょうけど、本気でa flood of circleをやめようと思ったことは一度もないですね。メンバーには「a flood of circleをやっててくれてありがとう」という気持ちが強まる一方で。俺はバンドを続けることに美学や大切さを感じているんですが、続けることってやっぱり難しいんです。同じことをしていれば飽きもくるし、毎回ベストなものを作っていても「もっとよくできた」というポイントが絶対出てくる。メンバーはそれぞれ自主的にそれを解消しようとしているところもありつつ、俺に付き合ってくれてる部分の両方がある。そう感じながらも感謝を直接伝えるのが苦手なんで、毎年「ありがとう」の気持ちを込めて誕生日プレゼントをあげるようにしてます(笑)。

──微笑ましいですね。

一緒にいるのが長い分、メンバーの中でもなべちゃん(渡邊一丘 / Dr)が一番付き合ってくれてる感があるな。昔から俺は「なべちゃんがa flood of circleだ」と言ってるんですよ。我慢してくれているところはたくさんあると思うんですけど、なべちゃんが「これは無理」と言うことだけはやらないようにしているんです。ネガティブな意味じゃなくて、なべちゃんの意見がa flood of circleとしての一線になってると思うので。

──HISAYOさん(B)や(アオキ)テツさん(G)に対する印象はどうですか? 変わったところなど。

加入当時に比べて、姐さん(HISAYO)が一番距離感が変わった気がするんですよね。昔はほかのアーティストのサポートも多かったからかもしれないけど、最近はa flood of circleにすごく時間をかけてくれてるのを感じるし、ファンクラブのことも一生懸命やってくれてる。メンバーのことをまとめてくれるし、昔より内側に入ってくれている気がします。テツは、ライブではメンバーの中で一番存在感があって、華があるんですよね。まだ自分のスタイルを探しているところはありつつ、ライブでは迷いを見せず、ズバッと決めてくれるので頼もしいです。

佐々木亮介

佐々木亮介

歳を取ったほうがカッコよくなる佐々木亮介

──今年、a flood of circleは結成15周年を迎え、佐々木さんも35歳になりましたが、歳を重ねることについてどう感じていますか?

俺、18歳くらいから自分は歳を取ったほうがカッコよくなるタイプだと思ってるんですよね。

──何か理由はあったんですか?

昔からブルースやジャズが好きだったんですが、ブルースマンとかジャズマンは1つのことを続けてきたからこそ出せるカッコよさや味わいがあると思っていて、それに憧れていたんです。そうありたいという願望も含めて、歳を取ったほうがカッコよくなるという発言になるんですが(笑)。もともと一瞬で燃え尽きるものや、若さにあんまり惹かれないんですよ。

──ああ、過去の曲を聴いていてもそれは感じます。さっきの歌詞の話もですが、佐々木さんってずっと芯の部分がブレないですよね。

いや、自分ではいっぱいブレてるところはあると思います。でも、結果的にブレてないと思わせられれば“勝ち”かなと(笑)。昔、a flood of circleのメンバーが決まらなくて迷ってたときに、SCOOBIE DOのメンバーから「こうやって右往左往してても、あとで俯瞰でみたらだいたいまっすぐに歩いているから大丈夫だよ」と言われたことがあったんです。そのときは「SCOOBIE DO、器デカっ!」と思ったし、今もその言葉を言ってもらってよかったなと。最終地点で人に「いいじゃん」と思わせることができれば、過去が全部OKになる。

──確かに。a flood of circleとして現時点での金字塔を打ち立てて2022年を迎えるわけですが、来年の佐々木さんの目標や展望などを教えてください。

今年はこのアルバムに時間をかけたので、次はソロをやりたくて。コラボ相手がたくさん思い付いたので、5曲入りEPを8枚くらい出したい(笑)。そんなに出して意味あるのかって言われるかもしれないけど、発表するかどうかはさておきアイデア自体はいろいろあって、あれもこれもやりたい感じ。

──音楽制作に対する渇望感がすごいですね。

作ってる時間が楽しいんですよ。曲ができる瞬間が好きで。

──そうやって佐々木さんは一生音楽を作り続けていくんでしょうね。

そう思います。その環境を保ち続けていきたいです。

佐々木亮介

佐々木亮介

ライブ情報

Tour「伝説の夜を君と」

  • 2022年2月26日(土)大阪府 BIGCAT
  • 2022年3月9日(水)兵庫県 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎(※ゲストあり)
  • 2022年3月11日(金)熊本県 Django(※ゲストあり)
  • 2022年3月12日(土)鹿児島県 CAPARVO HALL(※ゲストあり)
  • 2022年3月19日(土)茨城県 mito LIGHT HOUSE
  • 2022年3月21日(月・祝)青森県 八戸ROXX
  • 2022年3月22日(火)青森県 八戸ROXX
  • 2022年3月24日(木)岩手県 Club Change WAVE
  • 2022年4月12日(火)千葉県 千葉LOOK
  • 2022年4月14日(木)東京都 新代田FEVER
  • 2022年4月16日(土)石川県 vanvanV4
  • 2022年4月17日(日)長野県 LIVE HOUSE J
  • 2022年4月21日(木)京都府 KYOTO MUSE(※ゲストあり)
  • 2022年4月22日(金)広島県 広島CLUB QUATTRO(※ゲストあり)
  • 2022年4月24日(日)高知県 X-pt.(※ゲストあり)
  • 2022年4月30日(土)神奈川県 Yokohama Bay Hall(※ゲストあり)
  • 2022年5月7日(土)宮城県 Rensa
  • 2022年5月12日(木)北海道 帯広MEGA STONE(※ゲストあり)
  • 2022年5月14日(土)北海道 CASINO DRIVE(※ゲストあり)
  • 2022年5月15日(日)北海道 札幌PENNY LANE24(※ゲストあり)
  • 2022年5月27日(金)愛知県 THE BOTTOM LINE
  • 2022年6月1日(水)岡山県 PEPPERLAND
  • 2022年6月3日(金)福岡県 BEAT STATION
  • 2022年6月4日(土)大分県 club SPOT
  • 2022年6月10日(金)大阪府 umeda TRAD
  • 2022年6月12日(日)香川県 DIME
  • 2022年7月8日(金)東京都 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)

プロフィール

a flood of circle(アフラッドオブサークル)

佐々木亮介(Vo, G)、渡邊一丘(Dr)、HISAYO(B)、アオキテツ(G)による4人組ロックバンド。2006年に結成され、2009年4月に1stフルアルバム「BUFFALO SOUL」でメジャーデビュー。ブルース、ロックンロールをベースにしつつ最新の音楽要素を吸収したサウンドと、佐々木の強烈な歌声や観る者を圧倒するライブパフォーマンスで話題を集める。結成10周年を迎えた2016年には初のイギリス・ロンドン公演や海外レコーディングを行ったほか、主催フェス「A FLOOD OF CIRCUS」を立ち上げる。2021年8月に提供曲のみで構成されたアルバム「GIFT ROCKS」を、12月にオリジナルアルバム「伝説の夜を君と」をリリースした。