音楽ナタリー Power Push - 佐々木亮介(a flood of circle)×住野よる
バンドマン×小説家のシンクロする思い
もともと立場が弱い人に向けて書いている
佐々木 住野先生はa flood of circleのほかにどんな音楽が好きなんですか? 音楽を聴くきっかけとか知りたいです。
住野 10年前ぐらいにRADWIMPSで初めてバンドの音楽に出会って、そこからバンドの音楽ばかり聴いてますね。僕、清水音泉(※大阪を拠点とするライブの企画や運営を行うイベンター)がめちゃくちゃ好きで。
佐々木 すごい名前が出てきたなあ(笑)。俺らにはなじみがあるけど、まさか作家さんとのインタビューで清水音泉っていう名前が出てくるとは思わなかった。
住野 a flood of circleはもちろん、清水音泉が関わっているバンドはほとんど好きなんです。THE BACK HORNとか、サンボマスターとか……a flood of circleとの出会いも清水音泉のイベントでした。
佐々木 清水音泉のおかげなんだ、今、対談できてるの。確かに清水音泉ってユニークなイベンターでこだわりがあって、イベントにはカッコいい本物のバンドしか呼ばないっていうポリシーがあるんですよね。
住野 そこが好きです。だから、「このバンドが対バンしてるバンドだから聴いてみよう」ってなってどんどん聴くアーティストの数が増えていって。
佐々木 ちなみにa flood of circle初体験はいつだったんですか?
住野 対談に来る前に思い返して、ディスコグラフィを見たんですけど、「LOVE IS LIKE A ROCK’N’ROLL」ぐらい。
佐々木 ってことは、2011年かな?
住野 はい。ライブに行き始めたのが「Dancing Zombiez」を出された頃です。
佐々木 思ってたより聴いてくれてる期間が長くてうれしい。でもバンドが好きだったら、自分でもバンドをやるっていう発想にはならなかったんですか?
住野 大学時代にギターを始めようかなと思ったんですけど、そのときにはすでに小説家になると決めてて。ギターの練習をする前に、プロになるまでは小説に集中するべきじゃないかと。
佐々木 すごいストイック! ちなみにa flood of circleの何が引っかかったんですか?
住野 あくまで僕にとってなんですけど、a flood of circleの音楽のイメージって「闘争」と「夜明け」なんです。闘争と言っても誰かを叩きのめすとかではなくて、自分と世界との戦い。夜明けも暗い世界から抜け出して、新しい日に向かっていく感じ。例えば「BLUE」には夜明けを感じるし、「ベストライド」には闘争のイメージがある。そこに惹かれました。
佐々木 うれしいですね。
住野 佐々木さんや担当編集者がいる前で言うことじゃないんですけど、「君の膵臓をたべたい」が変に売れちゃって。
佐々木 え、一番カッコいいパターンじゃない!
住野 いや、予想していなかった形で売れた分、これだけで消えちゃダメだっていう思いのほうが強くなって。「よるのばけもの」を書いているとき不安になるたびに「ベストライド」を聴いて、「俺のベストはいつも今なんだよ」っていう佐々木さんの歌に奮い立たせてもらったんです。
佐々木 ホントにうれしいです。ちょっともう1回言って!
住野 ははははは(笑)。ライブのMCも好きなんですよね。一番心を撃ち抜かれたのが「RADIO CRAZY」に出演されたときで。そのときのMCで佐々木さんが、一番大きいステージに向かって「来年はあっちに立つから」じゃなくて、「ここにいる全員あっちに連れて行くから」って宣言してて、カッコいいなあと思ったんです。心がキュンとしました。
佐々木 え、全然覚えてないな。そんなこと言ってたんだ(笑)。もちろん言ったことに嘘はないけど。さっきの住野先生の話じゃないけど、自分が書いてる曲ってホントに弱ってたり、もともと立場が弱い人に向けて書いていることが多くて。あとは自分が思ってること言いまくってる感じなんですね。誰かの応援ソングになればと思ったことはないんですけど、俺を離れたところで支えになっているのならよかった。曲が世に出される意味がそこにあるというか。
次のページ » 「NEW TRIBE」まだ聴いてないんです
- a flood of circle ニューアルバム「NEW TRIBE」2017年1月18日発売 / IMPERIAL RECORDS
- 「NEW TRIBE」
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3780円 / TECI-1534 / ※初回盤のみ「ホログラムジャケットステッカー」仕様
- 通常盤 [CD] / 3240円 / TECI-1535
CD収録曲
- New Tribe
- Dirty Pretty Carnival Night
- Flyer’s Waltz
- BLUE
- ジュテームアデューベルジャンブルース
- Rock’N’Roll New School
- El Dorado
- Rex Girl
- Rude Boy’s Last Call
- The Greatest Day
- Wolf Gang La La La
- Honey Moon Song
初回限定盤DVD収録内容
2016.12.1 Billboard Live Tokyo「a flood of circle 10th Anniversary Climax “X’mas Party!!!”」ライブ映像
※バイノーラルレコーディング選択可
- Christmas Time
- コインランドリー・ブルース
- 月面のプール
- BLUE
- Party!!!
- I LOVE YOU
a flood of circle(アフラッドオブサークル)
佐々木亮介(Vo, G)、HISAYO(B)、渡邊一丘(Dr)による3人組。2006年に結成。2009年4月に1stフルアルバム「BUFFALO SOUL」でメジャーデビューする。ブルース、ロックンロールをベースにしつつ最新の音楽要素を吸収したサウンドと、佐々木の強烈な歌声や観る者を圧倒するライブパフォーマンスで話題を集める。結成10周年を迎えた2016年には初のイギリス・ロンドン公演や海外レコーディングを行ったほか、自主企画ライブイベント「A FLOOD OF CIRCUS 2016」や東阪のBillboardLiveでワンマンライブを開催。2017年1月に7枚目のオリジナルアルバム「NEW TRIBE」を発表し、3月から全国ワンマンツアーを行う。
住野よる(スミノヨル)
小説投稿サイト「小説家になろう」に投稿していた「君の膵臓をたべたい」が注目を集め、同作で2015年にデビュー。2016年2月に2作目の小説となる「また、同じ夢を見ていた」、12月に「よるのばけもの」を発表する。なお「君の膵臓をたべたい」は実写映画化が決定しており、浜辺美波と北村匠海(DISH//)のダブル主演で2017年8月に全国公開予定。