ナタリー PowerPush - a flood of circle
気鋭バンドフロントマン熱血対談
聴き手に自由に受け取ってくださいっていうのは嫌(佐々木)
佐々木 俺はロックンロールにとって歌詞ってすごく大事なポイントだと思っていて。ライブは暴れても腕組んで観てもらってもどっちでもいいんですけど、ライブで届けた言葉が、日常に戻っても意味があるような歌にしたいなと思ってるんです。洋平さんはロックンロールと歌詞の関係についてどう思ってます?
川上 歌詞の内容は正直どうでもいいと思ってます(笑)。メロディに関しては、自分でも才能があると思ってるし、聴こえ方をすごく気にしているんだけど、歌詞って詩ではないじゃないですか。CDを買ってまず歌詞カードを読んで、これどういう意味なんだろう、何を言ってるんだろうって考えて。曲を聴いた瞬間にこういうことなんだと納得する。でも、その納得したところを説明してって言われるとわからない。そこの部分って歌詞の内容とかじゃない気がしていて。OASISの曲って聴いてるとすごい感動するし、泣くし、歌いたくなるんですけど、あの歌詞を説明できる人ってこの世に1人もいないと思うんです。ノエルだってインタビューで、「あの歌詞どういう意味なんですか?」って訊かれて「俺もさっぱりわからない」って答えてますから。でも、それが素晴らしさだなと。メロディと合わさって初めて奇跡が起きる。だからそれを生み出すという意味での歌詞は大事だと思うけど、内容はなんでもいいと思うんです。曲と合わせて初めて想像できるし、雰囲気が出てくるし。僕は詩人は目指してないので、そういう意味での歌詞はあんまり重視してないですね。
佐々木 サウンドのリンクや音の響きを優先するということ?
川上 歌詞はメロディを作ったときにあるんで、意味は全く通じなくても崩したくないんです。メロディを作ったときにできたものをほとんど主体にしてますね。俺の中の名曲ってだいたい歌詞の意味がわからないんですよ。でもメロディを乗っけると素晴らしい言葉になる。
佐々木 俺は歌詞にこの言葉を入れたいと思ったら、それに合わせてメロディを変えちゃうタイプなんです。ちょうど中学ぐらいのときにTHE ROLLING STONESやTHE BEATLESを聴いて、歌詞の意味が言葉だけでもよくわかったし、感動したし。だから俺の場合は、言葉を伝えるためにメロディを書くというのが好きで、聴き手に自由に受け取ってくださいっていうのは嫌なんです。
──佐々木さんが歌詞を書くにあたって一番影響を受けたのは誰ですか?
佐々木 スピッツの草野マサムネさんですね。小学生のときからTHE BEATLESばかり聴いてたんですけど、日本の音楽で初めて衝撃を受けたのがスピッツで。洋平さんも同じ帰国子女だから似てるかもしれないですけど、日本でやっていく自信がなくなったときってありませんか?
川上 俺は今でもないですよ。
佐々木 俺もないんですけど、今向こうに帰ってもなじめないから、結局居場所もない感じがするんです。その不安な居所の正解をロックに教えてもらっている。ロックンロールは、俺の生き方の全部の接点になっているんです。そういう意味では、スピッツには日本語でやっていいんだよって教えてもらったところがあって。日本に帰ってきたときにおじさんからギターをもらって弾き始めたんですけど、自然と日本語の曲でいいんだなって思えて。そことジミヘンとかブルースが好きな俺なりのミックス感覚が自分にはあると思っています。だから昔の音楽を無視できないんですよね。ブルースの生々しさは、今風に翻訳してもちゃんと伝わるリアリティがあるし。俺が思ってる不安な思いを曲にすることで、同世代で今を生きてる人たちとリンクできるのなら、日本語で歌う意味があるんじゃないかと思っていて。あとになってから理屈を付けたんですけど(笑)。
「世界一になりたいんです」って言わないと(川上)
──川上さんがバンドを活動をするにあたって影響を受けたアーティストは誰ですか?
川上 OASISとPRIMAL SCREAMは外せなくて。結局ロックバンドであっても、そのアーティストが作るポップソングや歌謡曲が好きなんですよ。日本だとミスチルかな。
佐々木 ミスチルの音楽は歌謡曲ですか?
川上 ポップソングではあると思います。あとFATBOY SLIMやUNDERWORLDも好きですね。僕はお酒も飲まないし、たばこも吸わないし、ドラッグももちろんやらないし、トリップする感覚がわからないんですけど、音楽を聴くとその感覚がわかるんですよね。
──そういった影響を受けながら、自分たちが最先端でロックシーンを引っぱっていくという意識がある?
佐々木 シーンを引っぱるという意味で言うと、謎の自信がありますね。さっき洋平さんに、「今年一番良かったアルバムなんでしたか?」って訊いたら、2位がノエルの新作で、1位が[Champagne]のアルバムだって言ってて。俺も最近MCで「11月に出す『LOVE IS LIKE A ROCK'N'ROLL』が日本で今年一番カッコいいロックンロールアルバムだと思うから、聴いて確かめてほしい」って言ってるんですけど、全く同じだなって(笑)。
川上 日本人って「一番になりたいんです」って言えない雰囲気があるなと思っていて、今もこれを読んでる人は「日本一って、佐々木も洋平もバカじゃん」って言うと思うんです。
佐々木 俺も思いますもん(笑)。
川上 でも、だからこそあえて言わないとダメだと思うんです。夢があるじゃないですか。それにイチローみたいに有言実行してる人もいるし、俺も言い続けていれば、[Champagne]がいつか一番になれると本気でそう思ってます。
佐々木 ありがとうございます。俺もそうですけど、洋平さんもロックシーンの"異星人"ですよね。
川上 メンバーにも宇宙人って言われてます(笑)。今度出すシングルでそういうことを歌ってるんだけど、日本に帰ってきていじめられたことがあって。帰国子女だったからだと思うんだけど、それがなくてもいじめられていた気がして。元々変わった考えを持ってるし。そこで周りに合わせるか、自分の道を貫き通すかで迷うと思うんですけど、俺は3つ目があると思っていて、自分の道にみんなを引っぱって侵略しちゃう。ハリウッド映画とかで宇宙人が地球に来たらやることを、自分もやればいいって。
佐々木 俺はいじめてもらえるほどもかまってもらえなくて、全然友達いなかったですけど(笑)。でも、自分でどうにかするしかないという感覚は似てるかも。それでステージに上がっていたところはあります。
──自分が存在している主張というか。
佐々木 哲学的な言い方ですけど、そうかもしれませんね。
CD収録曲
- I LOVE YOU
- Blood Red Shoes
- Whisky Bon-Bon
- Sweet Home Battle Field
- 賭け(Bet! Bet! Bet!)
- Hide & Seek Blues
- YU-REI Song
- Boy
- The Beautiful Monkeys
- King Cobra Twist ~-session #6-
- 感光
初回限定盤DVD収録内容
- I LOVE YOU(Video Clip)
- Blood Red Shoes(Video Clip)
- Miss X DAY(Live Video Clip)
- Sweet Home Battle Field(Live Video Clip)
タワーレコード各店店頭にて、フリーペーパー「LOVE IS LIKE A ROCK'N'ROLL 第二号」配布中! a flood of circle佐々木亮介と[Champagne]川上洋平対談の別バージョンを掲載。
2011年12月16日(金)東京都 赤坂BLITZ
OPEN 18:00 / START 19:00
<出演者>[Champagne] / Nothing's Carved In Stone / a flood of circle
a flood of circle(あふらっどおぶさーくる)
2006年に結成。メンバーは佐々木亮介(Vo, G)、HISAYO(B)、渡邊一丘(Dr)の3名。ブルースや70年代ロックをベースにしたフリーキーなサウンド、ボーカル佐々木の強烈な歌声と、観る者を圧倒するライブパフォーマンスで話題を集める。結成当初は下北沢・渋谷界隈を中心にライブを行い、次第に活動地域を拡大。2007年7月に初音源となるミニアルバム「a flood of circle」をリリースする。同時期に新人バンドの登竜門「FUJI ROCK FESTIVAL '07」のROOKIE A GO-GOステージに出演し反響を呼ぶ。2009年4月、1stフルアルバム「BUFFALO SOUL」でメジャーデビューを果たすが、全国ツアー中の7月に当時在籍していたギタリストが失踪。しかしバンドは活動を止めることなくライブを継続し、同年11月にアルバム「PARADOX PARADE」を発表。2010年12月より現在の体制で活動している。2011年11月に現体制では初となるフルアルバム「LOVE IS LIKE A ROCK'N'ROLL」を発表。
[Champagne](しゃんぺいん)
川上洋平(Vo, G)、磯部寛之(B)、白井眞輝(G)、庄村聡泰(Dr)の4人からなるロックバンド。2007年より本格的に活動を始める。2010年1月にRX-RECORDSから1stアルバム「Where's My Potato?」、7月にシングル「city」を発表。美メロとパワフルなバンドサウンドを武器に、さまざまなイベントやフェスに出演しファンを獲得する。2011年2月には2ndアルバム「I Wanna Go To Hawaii」、12月にニューシングル「spy」を発表。