夢が見つからない人を肯定したい
──2曲目の「DRIVE」は「ホンダカーズ」中部エリアCMのタイアップ曲ですけど、どういう流れで生まれたんですか?
最初に中村泰輔さんから曲をいただいて、そこからタイアップのご要望も踏まえつつ、どういう歌詞を乗せていくのかを考えました。中村さんは「DRIVE」や「Good day」もそうですし、デビュー曲「ココロハレテ」もそうなんですけど、背中を押してくれる曲が多いんですよね。応援ソングを作るなら中村さんとやりたいと思うくらい、私自身も歌ってて元気になれる。中村さんの作ってくださるメロディもそうですし、アレンジも全部好きですね。
──サウンドとしては、どんなところを意識されましたか?
車のタイアップ曲ということで、運転をしているときに聴いて前向きな気持ちになれたらとか、悩んでいる人の背中を押せるのも目指した形ですけど、何よりライブを意識して作りました。ひさびさに疾走感があるサウンドになったなと思います。
──前作のインタビューのときは、「コロナで落ち込んでいる人が多いタイミングだからこそ、応援ソングを作る選択肢もあったんじゃないですか?」と聞いたら「その選択肢もありましたけど、今は私の目の前にいる恋愛で悩んでいる人を救う必要があると思った。だから『朝になったら削除します』を作りました」と話してましたよね。それが、このタイミングで「DRIVE」という応援ソングを作ったのはどういう理由があったんでしょうか?
応援歌を作ろうと思ったのは、コロナ禍であることもそうなんですけど、リリースさせてもらうのが2月3日というのが大きいです。春になったら学生の方にとってはお別れの行事が待っているし、あとは進路の選択をする時期でもあって。世の中にはいろんな夢を持っている人がたくさんいる一方で「夢ってなんだろう」「これから私は何をすればいいんだろう?」と悩んでいる人も多いと思うんですよね。私のお兄ちゃんもまさにそういうタイプなんです。サラリーマンをしてるんですけど、やりたいことをできているわけじゃなくて。そもそもやりたいことがわからない、と言ってるんです。よく兄妹でお互いの仕事について話をするんですけど、お兄ちゃんから「佳奈はやりたいことが仕事にできて、本当に素晴らしい環境にいるね」と言ってもらうことが多くて。
──特に足立さんのように人前に立つお仕事は、羨望の眼差しで見られるでしょうね。
お兄ちゃんのように夢が見つからなかったり、目標がない人が身近にいるからこそ、そういう人たちを肯定してあげられるような曲はできないんだろうか?と思ったんです。それは、身近な人を応援したいという私が音楽をするうえでの思いが根底にあるからこそ。これからどう生きていこうか?と迷っている人に、「DRIVE」を通して「どうなるかわからないけど、楽しく生きていきたいな」と思ってもらいたいですし、あと一歩が踏み出せない皆さんの“その一歩”を、この楽曲とともに踏み出してもらえたらと思って作りました。
NakamuraEmiの「メジャーデビュー」に
勇気をもらった空白時期
──足立さん自身は「どこへ向かっていけばいいのかわからないまま、ただ毎日を過ごす」という経験はあるんですか?
ありました。15歳のときに「LINEオーディション」でグランプリを獲得して、「これで私もアーティストになれる」と高校も音楽関係の学校に進学したんです。でも、デビューするまでに2年半も空白の時間があって。「これから私はどうしていくんだろう?」と、自分が人前で歌っている姿がまったく想像できなかった。音楽をするために音楽高校へ進学したけど、もしかしたら何もないまま就職活動をする可能性もあると思ったら、先のことが不安になったんです。そもそも、この学校に通っている意味は何?とか、オーディションを受けた意味はなんだったんだろう?と悩む期間が長くありました。だけど、そういうときに支えてくれたのも音楽だったんです。NakamuraEmiさんという女性アーティストの「メジャーデビュー」という曲を聴いたときに、すごく胸が熱くなって。メジャーデビューをすることはキラキラした世界への第一歩にも思えますけど、NakamuraEmiさんのように厳しい世界だと覚悟して、強い決意を持って乗り込む方もいるわけで。
──「メジャーデビュー」の「うーわNakamuraEmi 思ったより大した事ねーな 飲み込んで前に進め ぶれんじゃねーぞぶれんじゃねーぞ」の箇所なんて、まさにそうですよね。
はい。アーティストの中にも、いろんな気持ちを持ってメジャーで戦っている人がいる。きっと私たちにはわからない悩みを抱えて進んでいるんだなと感じたときに「そっか。苦しさを感じているのは、私1人じゃないんだよな」と思えた。NakamuraEmiさんの曲に刺激をもらって、またがんばろうと勇気が湧きました。その後、自分でも何かアクションを起こそうと、SNS上で15秒の動画を投稿したら、いろんな人からの支持を得て「デビューしてみませんか?」と大人の方から言っていただけたので、やっぱり何かにつけて音楽が支えになっているのはありますね。
──それこそNakamauraEmiさんは、もともと幼稚園の先生をされていたんですよね。そこから音楽活動を続けながら工場、アパレル、飲食と仕事を転々として、メジャーデビューをしたのは30代に入ってから。音楽を続けてきたからアーティストという職業に就けたわけで。走るのを辞めなかったから「いつか誰かが認めてくれる」ということが人生にはありますよね。
そうなんですよね。誰かが輝いているタイミングで自分が輝いていないと、やっぱり落ち込むことがありますし、どうしても他人と比べちゃうことがあって。だけど「好きなことを好き」と言い続けたその先で、大きなチャンスが巡ってきたり、それが評価されたり、そういうことが本当にあるよなって。
──去年は5年ぶりに新卒の就職率が70%を切ったり、学生の自殺者が増加してしまったり、どうやって生きていいのかわからない若者は多くなっていると思うんですよ。そんな中、多くの教師が「具体的な人生プランを考えろ」と言いますけど、ついていけない人はいるはずで。だからこそ「DRIVE」のように「目指す目的地なんていらない いろんな道を見つけたらいい」と訴えることは、すごい支えになると思うんですよね。
目標は明確にすればするほど周りの人にも伝わりやすいですし、応援されやすいと思うんですけど、それにプレッシャーを感じてほしくないのはありますよね。それは私もたくさん悩んできたし、今も悩んでいることなので難しいですけど。ただ、「DRIVE」はこれから歌っていく中で自分自身もがんばろうと思える大切な曲になるだろうなと思います。
──ちなみに、音楽を作るうえでモチベーションになっていることはなんですか?
それこそNakamuraEmiさんとか、アンジェラ・アキさんとか、ほかのアーティストさんが私の気持ちに寄り添ってくれたように、自分自身の気持ちを歌にすることによって誰かに寄り添いたいという思いが音楽を続ける活力になっていると思います。
──今、自分が歌うべきことってなんだと思います?
孤独な思いをしている方がいたとしたら、寄り添えるような優しさと、背中を押す気持ちを持って歌っていきたいです。というのも受験勉強をしていたファンの方から「佳奈ちゃんの音楽を聴いて、勉強をがんばってます」と言ってもらえたり「行きたかった志望校に受かりました!」といううれしい報告をいただけているから、そう思えるのかなと思います。
歌番組に出たい!
──2月12日からは全国8カ所を回る「ADACHI KANA LIVE TOUR 2021~ Dear. ~」の開催を予定されています。ツアーコンセプトは決まっているんですか?
「Dear」というタイトルの通り、やっとファンのみんなと会えることに対する愛の深さを伝えつつ、温かみのあるツアーになったらいいなと思ってます。なのでアコースティックな感じを考えています。
──改めて2021年はどんな年にしたいですか?
ファンクラブの動画でもお伝えしたんですけど、もっと歌番組に出たいなって。ライブの開催が難しいコロナ禍だからこそ、テレビだったらみんなとつながることができるし「佳奈ちゃん、がんばってるんだな」と思ってもらえる気がするので。家族団欒をしている中、私の歌っている姿を観ていただけたらうれしいので2021年は歌番組に出たいです!
──何か理由があったんですか?
瑛人さんが「ミュージックステーション」や「紅白歌合戦」に出演されている様子を見て、きっとプレッシャーはあったと思いますけど、それ以上にすごく楽しそうに歌っている気持ちが伝わってきたんです。それで私も純粋に歌を楽しく届けられるアーティストになりたいと思ったのが大きくて。だから今までのような活動を続けつつ、歌番組やテレビを通しても多くの方に元気を与えられるようになりたいです。
ツアー情報
- ADACHI KANA LIVE TOUR 2021~ Dear. ~
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- 2021年2月12日(金)北海道 cube garden
- 2021年2月27日(土)広島県 広島セカンド・クラッチ
- 2021年2月28日(日)福岡県 DRUM Be-1
- 2021年3月12日(金)宮城県 仙台MACANA
- 2021年3月14日(日)東京都 EX THEATER ROPPONGI
- 2021年3月25日(木)大阪府 BIGCAT
- 2021年3月27日(土)石川県 Kanazawa AZ
- 2021年4月2日(金)愛知県 DIAMOND HALL