09.20
──学生に向けた「Just Do It」と対になっているのが、足立さんが自分自身を歌った9曲目「20」だと思います。
20歳になったからといっても不安はたくさんあるし、大人から言われたことに従わなくちゃいけないのかなと思ったりして、何が正しいのか迷っている方もいると思うんです。私なんて、まさにそのタイプで。だからこそ「自分の人生なんだから、好きなことを好きなだけやればいいんだよ」と自分に言い聞かせつつ、同世代の子にも聴いてほしいと思って1番の歌詞を書きました。
──2番の歌詞はどうですか?
私は、輝いている人に対して「どうせ、あの子だからできたんでしょ。私には無理だし……」と思ってしまう部分があって。そんなときに「言いたいことがあるなら隠さないで言いなよ」と友達から言われたんです。で、2番はそのままの出来事を表してます。「黒く染まらないでよね」と歌っている箇所は「相手の目の前で言えないことなら影でも言っちゃいけない。それを大人になっても忘れないでね」という気持ちを込めてます。
──足立さんがここまで自分の本音をさらけ出したのは初めてな気がします。
今まではたくさんの人に元気を与えたいとかエールを届けたいと思っていたので、特定の誰かに当てはまるような強い言葉は言わないようにしていたんです。でも、20歳になったからこそ言っていいんじゃないかなって。思っていることを言わないと周りには伝わらない。そういう意味ではやっと自分の殻を破れたなって。
10.music
──そして10曲目「music」は、一緒にツアーを回っているバンドメンバーの松本ジュンさんが作曲と編曲をされてますね。
バンドメンバーと一緒に作るからこそ、ライブで楽しめるような曲にしたいと思いました。あと初めてデモを聴いたとき、雨の日にタクシーの後部座席に座りながら外を眺めている映像がバーッと浮かんだんです。そのイメージを浮かべつつ、タイトルの意味に合うように歌詞を作りました。
──この曲はライブで歌うことを念頭に置きつつ、音楽についても歌った曲ですね。
はい。歌詞には昔から入れたいと思っていたワードを入れました。中学の卒業式で、音楽の授業を担当していた担任の先生が「音楽はいつだってあなたたちの側にあります」と壇上から言葉を送ってくれて「確かにそうだ」と思ったんです。卒業したらみんな離れ離れになるけど、音楽だけは友達のようにいつまでも寄り添ってくれる大切な存在だって。あれから5年が経って「music」のタイトルが浮かんだときに、先生の言葉を入れたいと思いました。それが「流れてるmusic いつだって君のそばにいる」なんです。ライブを意識した曲にはなっているんですけど、先生から受け継いだ「音楽はいつもそばにある」という思いをステージでみんなに伝えられたらいいなと思ってます。
11.Good day
──11曲目の「Good day」は、アニメ「七つの大罪 神々の逆鱗」をイメージして作られたんですよね。
はい。私は「七つの大罪」のいち視聴者だったので、タイアップのお話をいただけたときは本当にうれしかったです。最初は主人公のメリオダスの目線で歌詞を書こうと思ったんですけど、ヒロインのエリザベスちゃんの女の子目線のほうが書きやすいなって。なので、エリザベスちゃんがメリオダスに向けて歌っているんですけど、「七つの大罪」を観ていない人も曲の内容が理解できるように一人称を僕にしました。
──この曲は応援歌でもあり、ラブソングでもありますね。
そうなんです。「昨日よりも昨日よりも あと少し強くなって」という歌詞は、エリザベスちゃんが自分を奮い立たせている応援ソングの面を表現して、最後の「だからそばにいて」は彼女のメリオダスに対する恋愛の思いを盛り込んでます。「あなたといるからがんばれるし、あなたとこれからもいたいからがんばる」という、2人で1つだからこそお互いがんばらなければいけないというのが「七つの大罪」の話でもあるんですよね。「七つの大罪」のおかげで応援歌でもラブソングでもある、新しいタイプの曲ができました。
12.二子玉川
──そして12曲目は「二子玉川」です。
友達が二子玉川に住んでいるので、映画を観るときはいつも二子玉川の映画館へ行くんです。ある日、その友達とレイトショーで「イエスタデイ」を観に行ったんです。映画の中で「Let It Be」が流れるんですけど、その曲が劇場を出ても頭から離れなくて。それが1番のAメロ「レイトショーを見た日の帰り道は エンドロールの鼻歌うたって」のところです。
──その後、サビでカップルの話になりますよね。
映画を観たあと、私は終電で帰ったんですけど、ガラガラの車内に1組の若いカップルが座っていて。女の子は男の子の肩に寄りかかって寝ていたんです。その様子を見たときに「待てよ……これは曲が書けるんじゃないか」と思い、スマホを取り出して電車の中で1番のAメロを完成させました。男の子は何を考えているのかなと観察を続けていたら、彼がふと窓を眺めていて。視線の先には高層マンションが立ち並んでて、もしかしたら1軒1軒の明かりを見て、彼女との未来を想像しているのかなと。そう思ったら「窓の向こうに映る オレンジ色の部屋の 光を見つめながらさ 未来の僕らを描いてた 君はまだ夢の中」というサビの歌詞ができました。
──アコギの生音と、温かみのある足立さんの歌声も印象的でした。
初めて弾き語りでレコーディングをしたんです。しかも、一発録りなので失敗したら最初からやり直して。スタッフさんに見守られながら、気付けばレコーディング開始から10時間が経ってた。最後に録ったテイクがCDに収録されている音源なんです。時間をかけた分、本当に納得いく音が録れました。
──最後に、去年は「20歳になりますけど、どうですか?」という質問を色んな場面で聞かれたと思うんですけど、実際に20歳を迎えてみて10代の頃と考え方は変わりましたか?
「いい子でいる」と言うんですかね? 今まではスタッフさんに「佳奈ちゃん、これはどう?」と聞かれても、みんなが求めている正解を答えてきたんです。言ってしまえば、その場しのぎの言動をしていた。でも20歳になって「うんうん、そうですね」と賛成するだけの人だったら、別にアーティストをやっていなくてもいいのかなって気付いたんです。だから、今回は自分のやりたいことをすべて言わせてもらったし、ジャケット写真、メイクについても今までにないくらいこだわりました。意見を言えば言うほど、そこには責任も生まれる。だからこそやりがいも感じられるし「今の自分をちゃんと出せる自信作になったな」と胸を張って言えます。アルバムタイトルを考えるとき、「ME」にするか「I」にするかすごく迷ったんですよ。でも「ME」だとポップな感じがして、「I」は自立した芯のある字体が私の求めている今の姿だと思って付けました。
ライブ情報
- 足立佳奈 Live Tour 2020 "You & I"
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- 2020年3月6日(金)東京都 Veats Shibuya
- 2020年3月12日(木)大阪府 BIGCAT
- 2020年3月14日(土)石川県 Kanazawa AZ
- 2020年3月27日(金)愛知県 DIAMOND HALL
- 2020年3月28日(土)兵庫県 神戸VARIT.
- 2020年4月3日(金)広島県 広島セカンド・クラッチ
- 2020年4月4日(土)福岡県 DRUM LOGOS
- 2020年4月17日(金)宮城県 spaceZero
- 2020年4月19日(日)北海道 cube garden
- 2020年5月30日(土)東京都 EX THEATER ROPPONGI