05.面影
──5曲目「面影」は、ピアノの旋律が際立つ壮大なラブソングです。
「あなたと出会えたことが奇跡」ということを歌った曲です。でも、奇跡と言ってもイメージしづらいと思うんです。で、試しに世界の人口を調べたら77億人もいることがわかって。それで冒頭に「君と出会えたこと 77億分の1の 奇跡だったと知りました」という歌詞を入れて、そこから奇跡の相手はどういう人なのかを掘り下げていきました。「恋人と出会えてよかった」と歌う曲はよくありますけど、恋人と出会わない人生を歌った曲は少ない気がしたんです。あえて強い言葉を入れたので皆さんにハッとしてもらえたらうれしいです。
──「面影」の前にリリースした「ひとりよがり」は、好きな女の子に思いを打ち明けられないで焦る男の子の心情を歌った曲でした。「面影」も男の子目線のラブソングではあるけど、あえて「僕」という一人称を使わないことで聴く人の間口を広くしたとか。
そうなんです。「ひとりよがり」は、実際に男の子からすごい反響があって。私、学生時代は野球部に入っていたので、地元に男友達が多くて「『ひとりよがり』めちゃくちゃ響くわ」という感想をたくさんもらったんです。今回は女の子も共感できるような切ないラブソングを作りたいと思い、あえて「僕」を入れずに書きました。
06.ひとりよがり
──先ほども触れた6曲目の「ひとりよがり」は、夏の恋愛に特化したシチュエーションのナンバーですね。
この曲はAbemaTV「今日、好きになりました。夏休み編」のテーマソングだったので、最初に夏を軸にしようと決めました。特に、情景によって男女の関係性を表した、新しい歌詞のアプローチに注目してもらえたらうれしいです。
──聴くだけで夏の海辺の風景が脳裏に浮かびました。
はい。1番では波打際を仲良く手をつないで走る男女がいて。2番の歌詞では恋の終わりを表すように、打ち寄せる波が砂浜に2人の足跡をサーっと消していくイメージなんです。
──しかも花火を一緒に見上げる場面では「彼女のことが好きだけど好きって言えない……だけど言いたい」みたいな感情の揺れ動きがあって。
歌詞を考えたあとに「これって実際にあるのかな?」と思って、地元の友達に話を聞いてみたんです。そしたら3人の男の子がまさに「ひとりよがり」の主人公と同じ状態だったんですよ。仲はいいんだけど、告白するまではいかなくて「相手の気持ちはどっちなんだろう?」みたいな。中には、好きな女の子と花火大会へ行った子もいて。花火が打ち上がっているとき、相手に告白しようと決めていたにも関わらず、気付けば最後の花火が終わってしまったという話を聞いて「それは歌詞になる!」と(笑)。そうやって実際に起きたエピソードを取材しつつ、番組の映像と当てはめて「ひとりよがり」を作りました。
07.Call me
──そして7曲目「Call me」では、Michael Kanekoさんとタッグを組まれました。
初めて英詞に挑戦したんですけど、Michaelさんはネイティブな英語が話せるので、歌詞のニュアンスや英語と日本語のバランスなどいろんなアドバイスをいただきました。
──過去のインタビューで「子供っぽくなりすぎず、でもかわいらしさを感じられるように意識した」と言ってましたね。
そうなんです。サビで歌う「LOV&E」という言葉って、自分の中ではけっこうかわいい感じなんですね。なので子供っぽくなりすぎずに、だけど甘さを残した歌い方をしたいと思って、歌のニュアンスはこだわりました。最終的には楽しく、明るいラブソングになりました。
──歌詞でいうと1番、2番は男女が電話越しに仲良く会話をする様子が描かれてて。Cメロで「同じ空 月明かりに照らされて 気づけば朝日が2人をいま」と時間の経過を伝えることによって、全体の雰囲気が引き締まっていると思います。
これは、自分の恋愛の実体験を踏まえているんです。まだ初々しい男女の関係だと夜中の12時に電話が始まったかと思ったら、気付けば朝4時になって「外が明るくなってるよ!」「え、ヤバイ!」みたいな。全体の雰囲気に合わせつつ、そういう自分の実体験も入れてます。
08.Just Do It
──8曲目の「Just Do It」は「個別指導学院フリーステップ」のCMソングですが、受験生に向けて書いたんですか?
そうですね。塾のCMソングだったので、毎日ひたむきに勉強されている方に向けて書きました。たくさん勉強しても点数が上がらずに自分に対してイライラしたりモヤモヤしたり、他人の成績と比べてしまって窮屈に感じたり。自分が塾に通っていた高校時代を思い出しながら、Carlos K.さんと一緒に作りました。
──「どうしても人と比べて 窮屈になっていくより 君らしさが大切なんだよ 自分を信じることと 決して諦めないこと」という歌詞は受験生に響くと思います。
ありがとうございます。歌詞はもちろんですけど、歌い方もすごく意識したんです。応援ソングって一生懸命に歌うと、かえって伝わりにくくなると思っていて。
──どういうことですか?
「フレーフレーわたし」(2017年11月リリースの2ndシングル)のときは、かなり一生懸命歌っていたんです。でも今、客観的に聴いたら、聴いている人が私に対して「佳奈ちゃんがんばれ!」と思うような歌い方だなと感じて。
──エールを届けるはずが、歌っている自分が応援されてると。
だから今は応援歌を歌うときは、一歩引いて向き合うようにしてます。それによって聴いている人が「この曲は自分のことを応援してくれてるんだ」と感じてもらえる、というのが最近の気付きですね。
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09. 20 ~ 12. 二子玉川