足立佳奈|もうすぐ20代の私が考える“大人の恋愛”

ギリギリ10代の私だからこそ書けた歌詞

──「ひとりよがり」は現在AbemaTVで放送されている恋愛リアリティショー「今日、好きになりました。夏休み編」のテーマソングになっています。去年発表した「私今あなたに恋をしています」などもそうでしたね。

足立佳奈

また担当できてうれしかったです。「今日、好きになりました。」は告白をしない限り、その相手が好意を持っているのかどうかわからない番組なんですよね。例えばバーベキューのシーンがあるんですけど、ある子の袖はまくってあげるのに、もう1人の子にはやってあげない男の子がいて。「袖をまくってあげなかった子は興味がないのかな」と思ったら、あとで「あなたのことが気になってます」と告白してて。言ってることと行動が矛盾してて、どれが本音かわからないんです。「ひとりよがり」の「あいまいな恋なんて バカみたいだな」「忘れない 忘れられない このまま時が止まればいいのに」という歌詞は、まさに出演している子たちの姿を見て書きました。一方的に「大好き!」というより、「ちょっと疑うような気持ちがあってもいいんじゃないかな」と思ったら歌詞が浮かんできて。

──「私今あなたに恋をしています」と「ひとりよがり」の2曲を比べて、足立さん自身は何か変化を感じましたか。

「私今あなたに恋をしています」は中学生の頃に作ったんですけど、あの曲は情景が描かれていないんですよね。主人公の女の子と、好きな男の子、嫉妬している友達の3人のことだけを歌ってた。だけど「ひとりよがり」は“僕”と“君”、さらに2人の感情を揺さぶる情景についても触れているんです。

──確かに、情景を想起させる言葉が散りばめられているので、男の子の心理描写がよりリアルに描かれていますよね。

1番の「砂に残る足跡 まだ終わらないで夏」という歌詞に対して、2番では「波が消した足跡 戻らないと知っていても」と書いていたり。足跡が波によって消えてしまうことで「2人の時間はもう戻らないんだな」とわかるし、その情景で切なさやもどかしさが伝わるんじゃないかと。

──「ひとりよがり」の中で、19歳の今だからこそ書けた歌詞はありましたか。

「手をつないで走った」という歌詞は、これ以上大人になったら書かないかもしれないです。「大人が手をつないで、全力で走ることってあるかな?」と思って。

──確かにドラマではありえるけど、現実では見ないですね。

これはギリギリ10代の私だからこそ書けた言葉なのかなと。あとは「最後の花火」という歌詞もそうですね。友達と一緒に電車に乗って、浴衣姿で花火大会に行くことって、大人になったらそんなに体験できないと思うんです。このシチュエーションも、今だからこそ書けるものかもしれません。

私がどう思われたいかを考える

──足立さんが書くラブソングの魅力は、恋心の繊細さをリアルに映し出している部分にあると思います。この恋愛観はどのように形成されたんでしょうか。

足立佳奈

ほかの方の音楽から教わることが多いですね。でも「Pretender」や「別の人の彼女になったよ」のような切ない曲は、昔の私だったら絶対に魅力がわからなかっただろうし、歌詞を読んでも理解できなかったと思うんです。いろんな人を観察する姿勢が身に付いてからは、自分の曲の内容も、作り方もどんどん変わっていきました。

──作品ごとに違うのかもしれないですけど、足立さんは誰に向けて曲を作ることが多いですか?

んー……自分ですね。例えば「ひとりよがり」だったら、私は“僕”にどう思われていたいか考えました。ほかにも応援ソングなら、自分がどんなふうに応援されたいか意識しますし。もしかしたら全曲、自分の視線を軸にしているかもしれないです。

──てっきり「ひとりよがり」に出てくる“僕”は、足立さんが男の子だったらどう思うか想像して書いているのかと思いました。

それよりもある人物に対して、私がどう思われたいかをイメージしました。「ひとりよがり」の“僕”はすごく相手のことが好きなのに、最後は自分から恋を終わらせるんです。その引き際のいい姿は「“僕”は一途で優しい人だったらいいな」と考えていくうちに生まれましたね。

──人によっては、他人に言えない思いを手紙につづる感覚で作詞する方もいますが。

私も基本はそのスタイルですが、結局その手紙は私に対して書いているものが多いです。中にはお母さんとか近所の人、友達に向けた曲もあるんですけど。