初オーディションでグランプリ獲得
──そんな足立さんが歌手になる第一歩を踏み出したのは、中3の夏に受けた「LINE×ソニーミュージック オーディション」ですね。どうして受けることになったんですか?
ただ歌うことが好きで、なんとなく「ずっと歌い続けられる仕事に就けたらいいな」と思っていたんですが、音楽だけで食べていくって難しいじゃないですか? 家族からもずっと「安定した職に就きなさい」と言われていたし、私も将来の道を悩んでいたんですね。それで家族が「現実を見なさい!」という感じで、夢をあきらめさせるためにオーディションに応募したんです。LINEで簡単にエントリーできたみたいで、母がいきなり「応募しといたよ」って。
──事後報告だったんですね(笑)。
はい。昔撮ってもらった私の弾き語り動画を勝手に送られちゃいました(笑)。ただ私もオーディション自体初めてだったし、「へー、そうなんだ」みたいな。最初はどこか他人事でしたね。
──でも、それで結果12万5094人の中のグランプリに。1次、2次、3次、最終と審査があったそうですが、オーディションで印象に残っていることは?
やっぱりファイナルステージです。最後は8組が残ったんですが、何を歌うか1週間前くらいに聞かれたとき、私は「自分の作った曲を歌いたい」って申し出たんです。こんな機会は二度とないから、今まで応援してくれた地元の人たちや友達、オーディションでお世話になったスタッフさんへの「ありがとう」の曲をイチから作って歌いたいですって。
──そうなんですね。
でも、最初はオリジナル曲を歌うのはダメって言われたんです。こんな大舞台で歌うのに、1週間前に作るような曲じゃきっと中途半端になるって。でも私はどうしても歌わせてほしかったから、すごくワガママなんですけど、無理を通してもらって。許可してくれたスタッフさんにも感謝ですね。ちなみに、ファイナルステージで歌う前には、地元の方々や学校の仲間からの応援ビデオメッセージがサプライズで流されたんです。私の知らない間にスタッフさんが撮ってきてくれたみたいで、それもすごくありがたかったし、やっぱりオリジナル曲で「ありがとう」を伝えられて本当によかったなって思いました。
──グランプリに決まった瞬間はどうだったんですか?
一瞬、「え……?」ってなりました。と言うのも、オーディションの終盤にみんなで受けたボイストレーニングで私は全然伸びなくて、上達していく周りを見ながら自分は絶対ダメだと思っていたんです。だから本当にビックリしましたね。審査員の方には「将来性に期待して選んだ」という言葉もいただいたので、これからは自信を持ってがんばっていこうって思いました。
ふかわりょうさんの言葉で人生が変わった
──話は前後しますが、そのファイナルステージの歌唱後、ゲスト審査員のふかわりょうさんからうれしいコメントをもらったそうですね。
まだ最終の結果発表が行われる前だったんですけど、ふかわりょうさんが私の歌を聴いた直後に「グランプリになってもならなくても、楽しんで歌うことを続けてほしい」と言ってくださったんです。本当に真剣な、まっすぐな瞳で。その言葉で私の人生が変わったといっても過言ではなくて、今まで家族からも誰からも歌い続けることを認められなかった私が「歌ってていいんだ」って思えたと言うか。すごく自信が持てました。
──グランプリには賞金などのほかにソニーミュージックからのデビューに向けたサポートが約束されたそうですが、その後はどんな活動をしていたんですか?
ボイストレーニングや演技レッスンのために2週間に一度東京に出てくる生活が始まりました。そこで下積みをしていたんですけど……実はその時期、2つ目のチャンスというか、デビューにつながるきっかけがあって。お兄ちゃんに置いていかれて家で1人留守番してたときに、その気持ちを即興で歌にした短い動画をすごく軽いノリでTwitterに上げてみたんですね。
──ちょっとした仕返しって感じ?
そうです(笑)。お兄ちゃんに何度電話しても無視されるから、お互いフォローしてるTwitterならいずれ見るだろうと。お兄ちゃんは「ふざけんな!」って怒って帰ってきたんですが、作戦は大成功でした!
──あはははは(笑)。そこからちょくちょくいろんな歌の動画を上げるようになったんですか?
そうですね。ただの日常の延長線上と言うか、普段、ちょっとした感情が自分の中で湧いたときに即興で短い歌を作ってアップしていきました。最初は何を言われるかわらかない怖さもあったんですけど、いろんな人に「いいね」って言ってもらえたり、何かしらの反応をもらえることがうれしかったです。
“キムチ”動画でフォロワー1日1万人増
──今年2月にアップした15秒動画「キムチ~笑顔の作り方~」は中高生を中心に話題となり、2500万インプレッションを記録しました。現時点での足立さんの代表作となっていますが、この曲はどうやって生まれたんですか?
単純にキムチが食べたいと思って冷蔵庫を見たらなくて、すごい悲しかったんです。で、そのままギターを持って鏡の前で「悲しいな。キムチ……」みたいに歌い始めたら、「あれ? 悲しいはずなのに私笑ってる!」って思って。
──キムチの「チ」で口角が上がると。
はい。「これすごい! 笑顔が作れる!」っていうそんな発見から一気に歌にした感じですね。
──それが公開されるやいなや一気に拡散され、たちまち人気動画に。Twitterのフォロワー数も急激に伸びたんじゃないですか?
キムチの動画を上げてからは1日1万人ずつくらい増えて、「何が起きてるんだ!?」って感じでした。動画を真似してくれる人も多くて、それが沖縄の学生さんだったときは「日本の端っこまで届いてるなんてすごい!」と思ったし、学校の廊下を歩いてて知らないクラスからみんなでキムチを歌ってる声が聞こえてきたときはビックリしましたね。
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とにかく笑顔になってもらいたい
- 足立佳奈「笑顔の作り方~キムチ~ / ココロハレテ」
- 2017年8月30日発売 / SME Records
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初回限定盤 [CD+Blu-ray]
1500円 / SECL-2178~9 -
通常盤 [CD]
1300円 / SECL-2180
- CD収録曲
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- 笑顔の作り方~キムチ~
- ココロハレテ
- だいじょうぶっ!
- 初回限定盤Blu-ray収録内容
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- 笑顔の作り方~キムチ~ ビデオクリップ
- ココロハレテ ビデオクリップ
- 足立佳奈スペシャル映像
- 足立佳奈(アダチカナ)
- 岐阜県海津市出身の現役高校3年生。母親が歌手になる夢をあきらめさせるために応募した「LINE×ソニーミュージック オーディション」でグランプリを獲得し、デビューのチャンスをつかむ。学業の傍ら歌のレッスンに励む中、2017年2月にTwitterに投稿した15秒動画「キムチ~笑顔の作り方~」が話題を集める。8月にシングル「笑顔の作り方~キムチ~ / ココロハレテ」でデビュー。