a crowd of rebellion|小林亮輔をフィーチャーした“最もダークな作品”を作った理由

ダーク=俺たちの根底にあるもの

──“バンド史上最もダークな作品”というキャッチコピーが付いた本作ですが、もちろんダークで重々しい面がありつつも、メロディのよさやエモーショナルな歌詞のほうが印象に残りました。

宮田大作(Vo)

宮田 ありがとうございます。「今までよりダークなサウンドの曲を作ろう」っていう思いで作った楽曲ではないので。ただもともとスクリーモ、メタル、ハードコアっていうジャンルは憎しみや反骨精神からできた音楽なので、「楽しもうぜ!」とかそういう気持ちでやるものではないですよね。俺たちが憧れてたバンドが持ってるもの、それを聴いてきた俺たちの根底にあるものを表した言葉って“ダーク”なんじゃないかなと思って。

──では、リベリオンがこれまで積み重ねてきたものをシンプルに出すことが“ダークなアルバム”につながったんですね。

宮田 そうです。ストレートに表現するっていう。

──YouTubeでタイトル曲「Ill」のミュージックビデオが公開されたとき、ファンの方が「デビュー当時っぽい」と喜んでいたのが印象的でした。この反響についてはどう感じますか?

宮田 それっぽさは確かにあると思うんですけど、俺たちのもともと持ってるものにプラスされているものは確実にあって。もしかしたら「元に戻った」って思ってる人もいると思うけど、違うんですよ。メジャーデビューして出してきた作品をちゃんと踏まえたうえで、また別次元の方向に昇華できてると思うから。

──なるほど。前作アルバム「Gingerol」にはお祭り感満載の「MATSURI WWWeapon」やスタイリッシュでダンサブルな「NIACIN FLUSH」など、パンチの効いた楽曲も多くありましたよね。「カッコよければOK」というボーダーラインのうえで振り切って作ったアルバムだったそうですが、前作があったからこそ今回のストレートなアルバムが完成したという部分もありますか?

宮田 その通りですね。前作でいろんなことに挑戦して、自分らの可能性や幅の広さを確認したんです。「俺たちなんでもできるぜ!」「どのジャンルのバンドにだって勝てるぜ!」って。自分たち自身でそれを具現化した音楽ができたから、「じゃあその中でもともと持ってるものを凝縮したらどうなるの?」って。

──リベリオンを凝縮したのが今回のアルバムなんですね。

宮田 はい。ダークをテーマにしてるけど、ちゃんと心に届くアルバムになったと思います。それこそダークな気持ちの人が聴いても、明るい気持ちになれたり「がんばろう」って思えたりするだろうし、いろんな景色が見られる作品だと思います。

聴く人それぞれの“サヨナラ”を見出せる「Ill」

──今作の1曲目は子供の声や小林さんの語りが入っている「Prologue -Insomnia-」。その物語からタイトルトラック「Ill」の冒頭「サヨナラ」という歌詞につながりますが、どんな意図でこういった流れにしたのですか?

小林 「Prologue -Insomnia-」は「Ill」よりあとにできた曲で。「サヨナラ」っていう言葉をアルバムの頭に入れたいという構想は制作中からあったんですけど、「Prologue -Insomnia-」からつなげることで物語の始まりをより表現できると思ったんです。歌詞通りに読むと「Prologue -Insomnia-」にある“裏切ってしまった人達”に向けての「サヨナラ」とも取れるんですけど、僕はこれまでの自分自身に向けて歌っています。

──さよならは別れの言葉ですけど、「Ill」の頭の「サヨナラ」は何かを断ち切ったあとの始まりとも感じ取れました。

小林 そうなんですよね。「サヨナラ」で始まるのってすごい面白いなと思って。終わる言葉からアルバムが始まるっていう。聴く方それぞれの“サヨナラ”がこの曲からは見出せるんじゃないかなと思います。

──丸山さんによる「Ill」のリミックスバージョンも配信されましたね。丸山さんはエンジニアとして活躍されていますが、リミックスを手がけるのは初めてだったそうで。

丸山 個人的にいろいろと作ってはいたのですが、発表するのは初めてですね。「Ill」は原曲がバンドサウンドなので、デジタルな感じで遊びました。もう、やりたいように好きにやらせていただいて楽しかったです。聴き比べてもらえると面白いと思います。

今までは難しい言葉ばかり使って、自己完結してた部分があった

──小林さんは自分自身を真ん中に据えたアルバムを作るにあたって、今までと歌詞の書き方は変わりましたか?

a crowd of rebellion

小林 まったく変わりました。今までは「知りたい人は調べろよ」って感じで難しい言葉をバンバン使ってたし、言葉を優先して譜割りを無視してたんですよ。でも今回は仮歌にぴったり合う母音や子音の言葉を持ってきたし、同じ譜割りや韻で作るっていう部分にすごくこだわりました。難しくしすぎて伝わらないのは嫌だし、でも自分が表現したいもののグレードは落としたくない。そういうところでずっと戦ってました。たぶん、今までは難しい言葉ばかり使って自己完結してた部分があったんですよ。

──なぜ今回はそうならなかったんでしょうか?

小林 メンバーがせっかく自分を際立たせたいって言ってくれたんだから、もう入れたい言葉をぶち込むのはやめよう、やるならとことん書いてやろうって。宮田さんと2人で書いた歌詞をもっとお客さんたちに読んでもらいたいし、全員で出した音をもっと聴いてもらいたいって思ったんです。

──そうだったんですね。今作は「Calling」や「紡冬」などに見られる、小林さん自身が過去を振り返るような歌詞がとても印象的でした。

小林 「紡冬」に関しては言いたくないので……ちょっと伏せておきます(笑)。「Calling」に関しては「大人になったってなんだろう?」っていうところから、宮田さんと歌詞を考えていって。一緒に書いてて自然に歌詞がハマって、すごい気に入ってます。