ステージ上でうずまくさまざまな感覚
──本作を観ていて改めて思ったのは、ACIDMANのライブにはすごく緊張があるし、神聖な雰囲気も感じられますよね。単に盛り上がるだけはないと言うか。
大木 ライブはとことん真剣にやらないとダメだと思ってるので。ステージに上がるのは今もキツいし、もしかすると嫌いかもしれない。だけどやり終えたときの達成感だったり、お客さんの「感動しました」という言葉、ステージから見えるみんなの表情があるから続けられているんだと思います。自分でも不思議なんですよね、そこは。プレッシャーとも違うんだけど、ステージの上にいるときはなんとも言えない感覚があって……自分自身ととことん向き合ってる感覚もあるし、他者と向き合っている瞬間もあるし、ときにはもっと大きなものとつながってる、神事のような雰囲気を感じることもあって。年に数回、アスリートが言うゾーンみたいな状態になることもあるんです。歌ってるときに目の前が真っ白になって、身体もぜんぜん疲れてなくて、気付いたら演奏が終わってるっていう。
──そういう真剣な表現をエンタテインメントに結びつけているのもACIDMANのすごさだなと。
大木 ありがとうございます。できるならもっとわかりやすいエンタメにしたいんですけどね(笑)。ラブソングも書いてみたいし。でも、不器用だからやれないんですよ。さっきも言いましたけど、迎合せず、誤解を恐れず、自分の世界観を伝えるしかないので。
浦山 うん。ドラマーの目線で言うと、大木のメッセージが伝わりやすくすることが大事なんですよ。歌いやすいリズムを示して、ボーカルとしっかりシンクロしながら演奏することがすべてなので。そういう話はライブのたびにしているし、打ち上げのときのコミュニケ—ションにも意味があって、そこで波長を合わせていると言うか……。
大木 (笑)。
浦山 ん? どうした?
大木 それ、いつも俺が一悟に言ってることでしょ。
浦山 そう……だね(笑)。
佐藤 (笑)。そういうことを意識し始めたのは、実は最近なんですよ。以前は自分自身が楽しむことが第一だったんですが、今回のツアーから「大木のメッセージを伝えるためにはどうすればいいか?」ということをしっかり考え初めて。
大木 そういう精神的な話は、撮影してくれたアキさんともよく語り合ってますね。目に見えないものだけど、誰に何を言われても、僕たちはこのやり方で続けてきたので。そうやって生きるしかないんですよね。
これからも、描いている理想を作品の中で伝えるだけ
──最後に今後の活動についても聞かせてください。武道館ライブのMCでも告知していましたが、2019年3月から5月にかけて、ファンからのリクエストをもとにセットリストが構成される全国ツアー「ANTHOLOGY 2」が開催されます。
大木 第1回の「ANTHOLOGY」は2014年だったんですが、本当は2年に1回くらいのペースでやりたいのに、いつの間にか4年近く経ってしまって。自分たちにとっては「ようやくやれる!」という感じですね。「Λ」のツアーもそうでしたけど、オリジナルアルバムのツアーは、どうしても新曲がメインになるじゃないですか。イベントやフェスに出させてもらっても、30分から50分くらいのステージだから昔の曲を演奏する機会がどんどん減ってしまって。まあ、THE BACK HORNがやってる「マニアックヘブン」(シングルのカップリング曲、アルバムの収録曲など、レアな楽曲を中心にしたライブ)のパクリなんですけど(笑)。ファンが聴きたい曲をまとめてやりたいと思ったのがきっかけですね。迎合しまくるライブです。
浦山 迎合って(笑)。
大木 (笑)。アルバムを携えたツアーはまったく迎合しないから、その真逆のライブがあってもいいかなと。今回もリクエストの上位30曲の中から厳選してセットリストを決めようと思ってます。
浦山 今回は月ごとに投票を締め切っているので(モバイルサイト「ACIDMAN MOBILE」の会員は毎月3曲、非会員は毎月1曲のリクエストが可能)、月によってどんどん順位が変わるんですよ。
大木 僕自身もモバイルサイトの会員なので、毎月投票してますよ。絶対やりたい曲が圏外になってたりして、「ヤバい!」って(笑)。マニアックな曲だけじゃなくて、いつもライブで演奏している楽曲が上位に入ってるのもうれしいんですよね。
佐藤 前回も好評だったし、楽しみですね。ひさびさに演奏する曲も多いので。
大木 ひさしぶりすぎて、耳コピから始める曲もあるんだけど(笑)。しっかり練習します。
──期待してます! 「Λ」はACIDMANにとっても大きなポイントとなるアルバムだったと思いますが、その後のビジョンはもう見えているんですか?
大木 いつも同じなんですが、すでに自分の中にストックが30曲くらいあって、それを温めている段階です。まだ言葉(歌詞)はなくて、「こういう曲にしよう」というアイデアを煮詰めている状況。制作の中で、一番楽しいときですね。生まれたばかりの曲には、無限の可能性があるんです。でも、言葉を入れて、メンバーに聴かせて、レコーディングしていくうちに、その形が決まってしまう。作品としてパッケージされると、もう形は変えられないですから。
──子供を育てているような感じですね、それは。
大木 まさに。よく「レコーディングが終わった曲は二十歳になる」って言ってるんだけど、そこでサヨナラなんですよね。成人してもう自分にしてあげられることはないし、干渉もしないと言うか。うれしさと寂しさが混ざったような感じで、そこからは完璧に自分の思い通りにはならない。だからこそ、こうやってずっと曲を作り続けてるんだと思います。
──20周年を超えても活動のペースはまったく変わらないですからね。バンドに向かうモチべーションにも変化はないですか?
大木 そうですね。描いている理想を作品の中で伝えるだけなので。
浦山 20周年のときに開催した「SAI」というフェス(2017年11月開催)があまりにも素晴らしくて、夢のような1日だったんですよ。こういう時間をまた作りたいと思ったし、それがモチベーションにつながっているところもありますね。
佐藤 今回の武道館の映像作品もそうですが、ACIDMANのライブの空間は本当に素晴らしいし、その中にいられることにすごく感謝していて。より一層、精進しなくちゃいけないなと思ってます。
- ツアー情報
ACIDMAN LIVE TOUR "ANTHOLOGY 2" -
- 2019年3月2日(土) 沖縄県 桜坂セントラル
- 2019年3月11日(月) 福島県 いわき芸術文化交流館アリオス 中劇場
- 2019年3月15日(金) 大阪府 Zepp Osaka Bayside
- 2019年3月21日(木・祝) 香川県 高松オリーブホール
- 2019年3月23日(土) 宮城県 Rensa
- 2019年4月6日(土) 福岡県 Zepp Fukuoka
- 2019年4月7日(日) 岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
- 2019年4月13日(土) 石川県 金沢EIGHT HALL
- 2019年4月21日(日) 愛知県 Zepp Nagoya
- 2019年5月10日(金) 北海道 サッポロファクトリーホール
- 2019年5月17日(金) 東京都 Zepp Tokyo
- 2019年5月18日(土) 東京都 Zepp Tokyo(※追加公演)
- ACIDMAN「ACIDMAN LIVE TOUR “Λ”in 日本武道館」
- 2018年11月28日発売 / Virgin Music
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[Blu-ray2枚組]
6480円 / TYXT-19016~7 -
[DVD2枚組]
5400円 / TYBT-19025~6
- 収録内容
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- 白い文明
- ミレニアム
- 新世界
- FREE STAR
- prana
- stay on land
- イコール
- 赤橙
- ユートピア
- 水の夜に(album version)
- 彩-SAI-(前編)
- 彩-SAI-(後編)
- Λ-CDM(instrumental)
- 世界が終わる夜
- 最後の星
- MEMORIES
- 空白の鳥
- 光に成るまで
- 愛を両手に
- ある証明
- Your Song
全国16公演での彼らのライブステージおよびオフショットを押さえたドキュメンタリー映像
- ACIDMAN(アシッドマン)
- 1997年に結成された、大木伸夫(Vo, G)、佐藤雅俊(B)、浦山一悟(Dr)の3人からなるロックバンド。2002年に限定シングル3作(「造花が笑う」「アレグロ」「赤橙」)を連続リリースし、2002年10月にアルバム「創」でメジャーデビュー。2007年7月に初の日本武道館公演を開催し、2009年のアルバム「A beautiful greed」発表後には、2度目の日本武道館単独公演を実施する。生命や宇宙をテーマにした独特の詞世界、静と動の両面を表現する幅広いサウンド、映像とリンクした演出を盛り込んだライブなどが高い評価を得ている。2013年6月、自らのマネジメントオフィス「FREESTAR」を設立。2016年10月には結成20周年を記念したベストアルバム「ACIDMAN 20th Anniversary Fan's Best Selection Album "Your Song"」を発売、同年11月より初のツーマンツアーを行った。2017年11月には地元・埼玉県のさいたまスーパーアリーナにて、初の主催フェス「SAITAMA ROCK FESTIVAL "SAI"」を実施。同年12月に通算11枚目のオリジナルアルバム「Λ」をリリースした。2018年11月、「Λ」を携えたツアーの最終公演の模様を収めた映像作品「ACIDMAN LIVE TOUR “Λ”in 日本武道館」を発売。2019年3月よりリクエストライブツアー「ACIDMAN LIVE TOUR "ANTHOLOGY 2"」を行う。