ACIDMANがライブBlu-ray / DVD「ACIDMAN LIVE TOUR “Λ”in 日本武道館」を11月28日にリリースした。
11thアルバム「Λ」を引っ提げた全国ツアー「ACIDMAN LIVE TOUR“Λ”」の最終公演であり、彼らにとって通算6回目となった東京・日本武道館ワンマンライブの模様を完全収録した本作は、ACIDMANの現時点における集大成と呼ぶべき映像作品に仕上がっている。さらにBD / DVDには全国16公演のステージ、オフショットなどを収めたドキュメンタリー映像も収録。ツアー中のメンバーの表情がリアルに感じられるのも、本作の魅力だ。
音楽ナタリーでは今回、この記念碑的な映像作品についてメンバーの大木伸夫(Vo, G)、佐藤雅俊(B)、浦山一悟(Dr)にインタビュー。「ACIDMAN LIVE TOUR “Λ”in 日本武道館」にまつわるエピソードはもちろん、ライブに対するスタンス、今後の活動などについても語ってもらった。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 前田立
お客さんに泣かされた武道館
──Blu-ray / DVD「ACIDMAN LIVE TOUR “Λ”in 日本武道館」がリリースされます。アルバム「Λ」に伴う全国ツアーの最終日であり、ACIDMANにとって通算6度目の日本武道館公演だったわけですが、改めてどんなライブでしたか?
大木伸夫(Vo, G) 自分にとっても特別な1日でしたね。WOWOWで放送された映像を観たときもそうだし、今回の映像作品を観たときも感じたんですが、本当に贅沢な場所にいさせてもらったなと。当日は自分自身もめちゃくちゃ感動してたんですよ。思わず泣いてしまったシーンがあるんですが、言葉を選ばずに言えば、お客さんに泣かされたんですよね。歓声が耳に入ってきて、「みんなに支えられてる」と肌で感じて。そういう経験はなかなかできないですから。
──本作の中でも、観客の皆さんの表情をしっかり観ることができますね。
大木 そうなんです。撮影してくれたのは10年以上の付き合いがあるアキさん(小田切明広)なんですが、いつもツアーに同行してくれて、自分のメンタルのケアもしてくれる人で。映像作品は基本的にアキさんにお任せしているんですけど、今回はお客さんの様子をふんだんに取り入れてくれてるんですよ。名前も知らない人たちだけど、音楽を通して、彼らとACIDMANはしっかりつながっている。みんなの表情を観ていると、それぞれの人生が伝わってくるような気がして、編集のチェックをしているときに号泣してしまったんです。
浦山一悟(Dr) そうだね。お客さんの表情をじっくり観ることができたのもすごくよかったなと。
佐藤雅俊(B) 映像を観て、客観的に「すごい世界観を持ったバンドだな」と改めて感じましたね。大木が真摯に伝えようとしている姿にも心を打たれたし、こういう素晴らしい場所に立たせてもらったことに感謝です。
浦山 こちらが伝えようとしていることをお客さんがしっかり受け止めてくれて。ACIDMANと観客の皆さんの関係が凝縮された、美しい空間だったと思います。
──アルバム「Λ」はACIDMANの世界観や大木さんのメッセージがこれまで以上に強く反映された作品でしたが、このライブを通して「しっかり伝えられた」という手応えがあったのでは?
大木 そういう手応えって、あるようでないんですよね。ステージに立っているときは「届いた!」という実感があったけど、実際どうかはわからないので。あとは心の持ちようと言うか、届いていることを信じるしかないなと。マニアックな世界観を表現していることはわかっているし、リスナーに迎合したりせず、誤解されることも恐れないでやり切ったという自負はありますけどね。「Λ」は自分でもよくできたアルバムだと思っているし、ライブを想定して作っていたのも事実で。「こういうふうにライブをやりたい」と思い描いていたものと実際のライブの雰囲気がすごく合ってたんですよ。ここまで合致したのは、今回が初めてかもしれないですね。
十字架を背負うように、“Λ”を背負って演奏したかった
──武道館のライブで、特に印象に残ってる曲は?
佐藤 いろいろありますが、特に印象的だったのは、インスト曲の「Λ-CDM」ですね。お客さんも集中して聴き入っていて、演奏し終わったときの歓声が一段とすごくて。“聴くパワー”みたいなものを感じました。
浦山 「水の夜に」のレーザーを使った演出もすごかった。ステージからはわからなかったのですが、映像で観ると、会場全体が水の中に包まれているような雰囲気で、すごく神秘的でした。
大木 演出に関してはほぼ自分が考えているんですが、今回はスタッフのみんなもがんばってくれて、やろうと考えていたことがほとんど実現できたんです。特にこだわっていたのが、大きな“Λ”のマークのLEDを後ろに置くということ。今までは映像を使うことが多かったんですが、どうしても“Λ”を背負って演奏したかったので。予算的にもギリギリだったんですが、なんとかやれました。
──最初から「ステージの後ろに巨大な“Λ”がそびえ立っている」というイメージがあった?
大木 そうですね。MCでも半分冗談、半分本気で言ってたんですが、「Λ」は宗教みたいなアルバムだと思っていて。僕自身は何の宗教も信仰していないけど、この作品には宗教的な雰囲気がすごくあるし、だからこそ“Λ”を十字架に見立てたステージセットを作りたかったんです。日本では「宗教」って言うとネガティブなイメージを持つ人もいるじゃないですか。それはわかってたんですけど、自分の中にはそういう感覚がないんですよね。
──例えばホーキング博士の宇宙理論もそうですが、真理を追求していく過程では、どうしても宗教色を帯びてきますからね。
大木 ええ。僕が目指している信念自体は、キレイ事かもしれないけれどすごく美しいと思っています。だからそれを、音楽で届けようとしているんですよね。例えば死後の世界を信じることだったり、日々は死と生の連続であって、誰しもいつ死ぬかわからない状態で生きていることだったり……武道館はすごく神聖な雰囲気の場所だし、「Λ」の世界を伝えるためには最高の会場だったと思います。神社仏閣のような佇まいで、気持ちが落ち着くんですよ。
──ACIDMANが初めて武道館のステージに立ったのは、2004年に開催されたASIAN KUNG-FU GENERATION主催フェス「NANO-MUGEN FES.」出演時でした。初の武道館ワンマンは2007年で、今回が6度目。皆さんにとって武道館はどんな場所ですか?
浦山 毎回ライブの色が違うので、一概には言えないんですよね。個人的なことで言えば、以前はただただ緊張しながらやっていたけど、今回は感謝の気持ちだったり、ACIDMANと観客の皆さんの信頼関係を感じながら演奏できたことはよかったなと。
佐藤 うん。常に真剣勝負の場ですね、武道館は。
ACIDMAN=西遊記?
──本編の武道館ライブの様子はもちろん、全国16公演のステージ、オフショットを交えたドキュメンタリー映像も非常に興味深かったです。移動中や打ち上げのとき、皆さん本当に楽しそうですよね。
大木 楽しくないと嫌なんです。事前のリハーサルはしっかりやるけど、旅に出てからは、毎日楽しく過ごすのが目標なので。よく佐藤くんに「つまんなそうにするなよ」って注意するんです、僕。
佐藤 (笑)。
浦山 ライブはめちゃくちゃ真剣にやって、それ以外は楽しく過ごすっていうバランスの大切さは、ツアーに出るたびに感じてます。
──なるほど。それにしても、ライブの緊張感とオフショットの楽しげな様子のコントラストがすごいですよね(笑)。
浦山 確かに(笑)。
──映像を観ていると、西遊記みたいだなと思いました。崇高な目的の旅を続けているんだけど、その過程は珍道中と言うか。
大木 いいですね、その例え。西遊記大好きなので。
浦山 そうすると俺が猪八戒で、佐藤が沙悟浄ですね(笑)。
佐藤 大木は孫悟空か?
大木 三蔵法師かな(笑)。いや、孫悟空も兼ねてるかも。真剣なときが三蔵法師で、ふざけてるときが孫悟空。
浦山・佐藤 ははははは(笑)。
──ギャップが大きいですよね、本当に。
大木 そこもファンの人たちには伝わっていると思いますけどね。メジャーデビューした頃は周りに「大木くんはしゃべらないほうがいい」なんて言われてたけど(笑)、イメージを大事にしているわけではないので。ライブは真剣だけど、ふざけたいときはふざけるし、そこを含めて自分たちですから。
──その実像を伝えるという意味でも、こういった映像作品は必要ですね。
大木 そうですね。どんな記録媒体もいつかは消えてなくなると思うと、儚さも感じますけど。僕は例えば上野の西郷隆盛の銅像を見ても「これもいつかはなくなるんだな」って切なくなってしまうんですよ。物質は永遠じゃないのに、どうしても形のあるものを残さずにいられない。そういう滑稽さ、愛らしさが人間っぽいなと。だからこそ、自分たちも CDや映像作品を作りたいんですよね。いつか消えてなくなるかもしれないけど、せめてそれまでの間だけでも存在してほしいなって。
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ステージ上でうずまくさまざまな感覚
- ACIDMAN「ACIDMAN LIVE TOUR “Λ”in 日本武道館」
- 2018年11月28日発売 / Virgin Music
-
[Blu-ray2枚組]
6480円 / TYXT-19016~7 -
[DVD2枚組]
5400円 / TYBT-19025~6
- 収録内容
-
- 白い文明
- ミレニアム
- 新世界
- FREE STAR
- prana
- stay on land
- イコール
- 赤橙
- ユートピア
- 水の夜に(album version)
- 彩-SAI-(前編)
- 彩-SAI-(後編)
- Λ-CDM(instrumental)
- 世界が終わる夜
- 最後の星
- MEMORIES
- 空白の鳥
- 光に成るまで
- 愛を両手に
- ある証明
- Your Song
全国16公演での彼らのライブステージおよびオフショットを押さえたドキュメンタリー映像
- ACIDMAN(アシッドマン)
- 1997年に結成された、大木伸夫(Vo, G)、佐藤雅俊(B)、浦山一悟(Dr)の3人からなるロックバンド。2002年に限定シングル3作(「造花が笑う」「アレグロ」「赤橙」)を連続リリースし、2002年10月にアルバム「創」でメジャーデビュー。2007年7月に初の日本武道館公演を開催し、2009年のアルバム「A beautiful greed」発表後には、2度目の日本武道館単独公演を実施する。生命や宇宙をテーマにした独特の詞世界、静と動の両面を表現する幅広いサウンド、映像とリンクした演出を盛り込んだライブなどが高い評価を得ている。2013年6月、自らのマネジメントオフィス「FREESTAR」を設立。2016年10月には結成20周年を記念したベストアルバム「ACIDMAN 20th Anniversary Fan's Best Selection Album "Your Song"」を発売、同年11月より初のツーマンツアーを行った。2017年11月には地元・埼玉県のさいたまスーパーアリーナにて、初の主催フェス「SAITAMA ROCK FESTIVAL "SAI"」を実施。同年12月に通算11枚目のオリジナルアルバム「Λ」をリリースした。2018年11月、「Λ」を携えたツアーの最終公演の模様を収めた映像作品「ACIDMAN LIVE TOUR “Λ”in 日本武道館」を発売。2019年3月よりリクエストライブツアー「ACIDMAN LIVE TOUR "ANTHOLOGY 2"」を行う。