音楽ナタリー PowerPush - Acid Black Cherry

「L-エル-」を巡る12人の証言

Acid Black Cherryにとって約3年ぶりのオリジナルアルバム「L-エル-」が完成した。これを記念して本特集では、Acid Black Cherryオフィシャルブログや「L-エル-」特設サイトでインタビューを受けた、ABCに縁の深いアーティスト12人のメッセージを掲載する。そのラインナップはAKIHIDE(BREAKERZ)、IKUO(BULL ZEICHEN 88、Rayflower)、淳士(SIAM SHADE、BULL ZEICHEN 88)、千聖(PENICILLIN)、HIRO(Libraian、La'cryma Christi)、山崎慶(Venomstrip)、YOU(DEAD END)など、yasuと旧知の仲であったり、ライブのサポートメンバーであったり、今作やこれまでの作品に演奏で参加したりという盟友ばかり。彼らだから語れる、yasuの魅力、音楽的ポテンシャル、「L-エル-」という作品の奥深さとは。

取材・文 / 武市尚子

AKIHIDE(G / BREAKERZ)

AKIHIDE(G / BREAKERZ)

最初に音だけを聴いたとき、Acid Black Cherryのサウンドがすごく鋭くソリッドになったなって感じたんです。今まで以上に無駄な音が削ぎ落とされて、楽器1つひとつの音やyasuさんの透き通る声がより研ぎ澄まされたなっていう印象を受けました。「この音を届けるんだ」っていう気持ちがナイフのように心にズバズバ突き刺さってくるようでした。

さらに、ブックレットやストーリーブックを見ながら聴くと、今までのyasuさんは、楽曲だったり歌詞だったりでいろんな景色を聴き手に見せてくれていたと思うんですけど、今回はyasuさんの心の中にある深い森を見せてくれているように感じられました。例えば「Loves」の歌詞にもそれを強く感じましたし、今回のアルバムは、そんな“今までにないAcid Black Cherry”をいろんなところで感じることができた気がします。

サウンド面でも、ラストの「& you」からは僕の知らないAcid Black Cherryを感じました。最初にこの曲を聴いたとき、「今までのAcid Black Cherryのギタリストにはないアプローチだ!」って思ったんです。ブルージーな溜め方のギターだったのですごく新鮮で、誰が弾いているのかな?と思ってクレジットを見たらROLLYさんだったので、なるほど!と思いましたね。yasuさんは、楽曲に関することだけじゃなくてトータルプロデューサー的な立ち位置で僕たちプレイヤーの個性やよさを引っ張り出してくれる方で、今作にもそれを色濃く感じました。この先も、いろんなサウンドに挑戦していくことやいろんなアーティストと一緒にやることで、Acid Black Cherryの振り幅が広がっていくんだろうなと感じた1枚でした。

IKUO(B / BULL ZEICHEN 88、Rayflower)

IKUO(B / BULL ZEICHEN 88、Rayflower)

僕は今回のアルバムの中で、シングル曲の「Greed Greed Greed」「黒猫 ~Adult Black Cat~」「INCUBUS」と、新曲「versus G」のベースを弾かせていただいています。どれも激しい楽曲という共通点があるのですが、どうやらyasuくんが僕に求めているのが、ヘヴィであり、ラウドであり、テクニカルなベースみたいなんですよね(笑)。なので、すべての楽曲で5弦ベースを使って、yasuくんがその曲の中に求めるベースをしっかり弾かせてもらいました。

中でも印象的だったのが「Greed Greed Greed」。この曲は、yasuくんがスラップベースにハマって、ベースをすごく勉強して緻密にフレーズを考えて作った楽曲でもあって、僕はそれを具現化させてもらったんですが、この曲は僕のベーシストとしての名を上げてくれた作品になったんです。僕はたまにベースセミナーとかも開催しているんですけど、そこに来てくれる生徒さんたちの中にAcid Black Cherryのファンがたくさんいて、みんなこの「Greed Greed Greed」について聞きたがるんですよ。この曲からベースという楽器に興味を持ったっていう生徒さんもいましたからね。ここまでベースをフィーチャーした音作りができるアレンジ力を持っているyasuくんは天才だと思います。

今回のアルバムには激しい曲はもちろん、すごく柔らかくてメロディアスな楽曲もたくさんあるんですけど、どちらにもやっぱり一貫してyasuくんらしいモダンなメロディがあるんですよね。憂いがあるというか、哀愁があるというか。僕はyasuくんが作るそういったメロディが大好きです。今作は100ページにわたるストーリーブックも付いているんですけど、お話と曲がリンクすることによって、より深く胸を打つんです。純粋に音を楽しむだけでなく、お話を読みながらアルバムを聴くとまた印象が変わると思うので、ぜひいろんな楽しみ方をしてみてほしいですね。

SHUSE(B / †яi¢к、La'cryma Christi)

SHUSE(B / †яi¢к、La'cryma Christi)

yasuはいつもデモの段階でほとんど完璧な形にして持ってきてくれて、そこからいろいろと広げていくんですけど、Acid Black Cherryの最初の頃はお互いどう来るかな?って探り合ってる部分もあったんですよ。でも4作目のアルバムとなる「L-エル-」では、一緒に音を積み重ねてきた経験もあって、yasuのやりたいことがすごくわかって向き合えた感があったというか、より強く感じるようになりましたね。

僕が語るとなるとベースをメインとした話になってしまうんですけど、1枚目のアルバム「BLACK LIST」の頃って、わりとメロディアスなベースラインが多かったんですよ。わかりやすさやキャッチーさを追求していたっていうかね。でも今回の「L-エル-」は、玄人ウケするシブいアレンジになったというか。休符のタイミングが凝っていたり、音使いにしても、メロディとギターがあって、シンセとかの装飾音があって、その合間を縫ってベースがあるっていう構成になっているんですよ。そこにもすごい成長を感じましたね。毎回yasuのアレンジ力には感心しますけど、今回は特にアレンジ面が素晴らしいと思います。通好みというか。ほんまに楽器のこととかアレンジのこととか、すごい勉強してるんやろなあって思いますね。

それに、今回はストーリーブックもすごい。「BLACK LIST」の頃からコンセプトアルバムを作っているというのもあってか、「L-エル-」のストーリーはかなりクオリティが上がってる(笑)。純粋にすごいと思った。お話の流れに沿ってアルバムが進んでいく感じになってるんやけど、そんなふうにストーリーを音で具現化して魅せるアーティストってそんなにいないと思うし、いろんな人に共感してもらえるような内容なので、ぜひ多くの人に聴いてもらいたいなと思いますね。

淳士(Dr / SIAM SHADE、BULL ZEICHEN 88)

淳士(Dr / SIAM SHADE、BULL ZEICHEN 88)

僕の中でyasuの好きなところは、コンセプトアルバムが作れるところだったりするんです。曲って1曲1曲に物語が存在すると思うんですけど、yasuの場合、それがアルバムになったときに全部がつながってくるというか。その素晴らしさには毎回感動させられるんです。今回の「L-エル-」も、あれだけのお話を作れるってすごいですよね。

作曲家としても作詞家としても、彼は本当に素晴らしいなと思います。今回のアルバムにもいろんな楽曲が入っていますけど、本当にどの曲も素晴らしいですし、アレンジ力も含め、頭の中で作った音を実際に形にする能力はすごく長けてると思います。研究熱心だし、オタクだなって思いますよ。

yasuは本当にいろんな楽器が好きなんですよ。きっと、ドラムに関しては間違いなく俺よりも好きだと思います(笑)。デモはyasuが宅録で作って持ってくるんですけど、そのドラムは日に日に進化を遂げていて、僕の予想の領域をはるかに上回ってますからね。楽曲を作る上で、まずはドラムの音から作っていくみたいで、ドラムさえ決まればあとは楽みたいなんですよ。それくらいドラムにこだわりを持ってます、yasuは。そんな彼のこだわりが伝わるからこそ、僕がAcid Black Cherryでドラムを叩くときは、“yasuの好きな音”が僕の好きな音になるんです。

歌詞も天才的だと思いますね。アルバムの中に「L-エル-」っていうちょっとかわいらしい印象の楽曲があるんですけど、これがまた最高にグッとくるんですよ。今回はこれまでと比べて特に歌詞のいい曲が多いなって思います。そういった意味でも、「L-エル-」は最新版のyasuが詰め込まれた最高のアルバムになってると思います。

ニューアルバム「L-エル-」2015年2月25日発売 / motorod
CD+DVD Project「Shangri-la」LIVE盤 / 5184円 / AVCD-32241/B / Amazon.co.jp
CD+DVD Project「Shangri-la」ドキュメント盤 / 4860円 / AVCD-32242/B / Amazon.co.jp
CD / 3240円 / AVCD-32243 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. Round & Round
  2. liar or LIAR ?
  3. エストエム
  4. 君がいない、あの日から…
  5. L-エル-
  6. Greed Greed Greed
  7. 7 colors
  8. ~Le Chat Noir~
  9. 黒猫 ~Adult Black Cat~
  10. versus G
  11. 眠れぬ夜
  12. INCUBUS
  13. Loves
  14. & you
Project「Shangri-la」LIVE盤DVD収録内容

Project「Shangri-la」Encore Season~Arena tour~日本武道館公演(2014年5月29日)

  1. Greed Greed Greed
  2. Murder Licence
  3. 楽園
  4. 1954 LOVE/HATE
  5. 黒猫~Adult Black Cat~
  6. 君がいない、あの日から…
  7. Maria
  8. so…Good night.
  9. ピストル
  10. 罪と罰 ~神様のアリバイ~
  11. Black Cherry
  12. シャングリラ

<アンコール>

  1. doomsday clock
  2. scar
  3. SPELL MAGIC
  4. 20+∞Century Boys
Project「Shangri-la」ドキュメント盤DVD収録内容
  • Project「Shangri-la」完全密着ドキュメントムービー
  • Project「Shangri-la」MCベストセレクション
  • Greed Greed Greed(MUSIC CLIP)
  • 黒猫~Adult Black Cat~(MUSIC CLIP)
  • 君がいない、あの日から…(MUSIC CLIP)
  • INCUBUS(MUSIC CLIP)
Acid Black Cherry(アシッドブラックチェリー)

Janne Da Arcのボーカルyasuによるソロプロジェクト。2007年7月にシングル「SPELL MAGIC」でメジャーデビュー。2011年にはデビュー4周年を記念し、「ABC Dream Cup」と題して着うた無料配信、4万人フリーライブなど4つのプレゼントを実施。さらに9月から5カ月連続シングルリリースを行い、話題を振りまく。2012年3月、前作から約2年半ぶりとなる3rdアルバム「『2012』」を発売し、自身初のオリコン週間チャート1位を記録。20万枚を超えるヒット作となる。2013年から2014年にかけて新作リリース、全都道府県ツアー、ファンと触れ合うイベントを並行して行う「Project『Shangri-la』」を実施。2015年2月に約3年ぶりのアルバム「L-エル-」をリリースした。