ナタリー PowerPush - Acid Black Cherry
今しかできないアルバム「『2012』」
僕はボーカリストだから歌モノが好き
──音楽的な部分では、今回も非常に多彩なサウンドが描かれていますね。
はい。アルバムにはなるべくいろんな音楽を入れたいんですよね。元々自分は「これしか好きじゃない」っていう感じじゃなくて、へヴィロックも好きだし、歌謡曲やポップスも好きだし、いろんなものを聴くんですよ。それを良い感じでまとめて、聴く人に楽しんでもらいたいなっていうのはいつも考えてますね。
──メロディのテイストもかなり幅広いですよね。
あ、そうですか? 実は僕の中ではものすごく狭い気がしていて、それをどう装飾するか?って考えてるんですけどね(笑)。ただ、J-POPのようにメロディアスでキャッチーな歌モノは好きです。カッコいいバンドサウンドが好みだけど、その中でも歌メロがちゃんとしてる曲がいいな、と。僕はボーカリストですからね。メロディのラインが良くないと歌っててもつまらないので。それくらいシンプルなことだと思います。
──最近のJ-POPはいかに海外のサウンドとリンクさせるか、という方向が主流になりつつあるような気がしますが、それについてはどう思いますか?
やっぱりサウンドに関しては向こうが最先端だろうし、音楽の専門の人たちが海外のサウンドに憧れるのは当然やと思うんです。ただ僕は、古き良き邦楽っていうか、良いメロディっていうのも大事にしたいんですよね。洋楽のロックって、象徴的なリフがあって、それを元に曲が展開していくパターンが多いでしょ? 邦楽はそうじゃなくて、コードによって展開していくんですよね。僕の作る曲も自然とすっごいコードが多くなるんです。だから、なんだかんだ言って邦楽のほうが好きなんでしょうね 。
──確かに、ABCの音楽の成り立ちは伝統的な歌謡曲に近いかも。
まあ、そうは言ってもロックサウンドですから、日本ではアンダーグラウンドなものだと思いますけどね。そこを俺の手で変えてやるなんてサラサラ思ってないし。もちろん今のスタイルは好きだから、ずっと続けていきたいとは思ってますけど。
パッケージにこだわることがABCのアイデンティティ
──最後にABCの今後についても少し訊かせてください。ABCは音楽性、世界観を含めyasuさんのセンスを全面に出したプロジェクトなので、やりたいことがバランス良く実現できている手ごたえがあるんじゃないですか?
「これがやりたかった!」というわけでもないんですけどね。むしろ「そのときにやりたいことを精一杯やるためには、この形が一番だった」という言い方が正しいんじゃないかな。
──では、これから形が変化していく可能性もある?
そうですね。最初にも言いましたけど、変わらないところがあるとすれば、CDというパッケージにこだわるということですね。CDって、買わなくてもいいツールになりつつあると思うんですよ。それを手に取ってくれる人には「買って良かった」と思える何かを感じてほしい。いつまでネタが続くかわかんないし、もしかしたらCD自体が存在しなくなるかもしれないけど、それまでは精一杯パッケージにこだわっていきたい。それがABCのアイデンティティなのかもしれないですね。
──わかりました。また、5月4日から全国ツアーがスタートしますが、ライブはどんなふうに捉えていますか?
ライブはねえ、世界観を見せるような演出は最低限にして、ロックコンサートでいいと思ってるんですよ。というか、ロックコンサートがいい(笑)。僕とメンバーの演奏が最大の演出だと思うので。
Acid Black Cherry / 『2012』告知ムービー
CD収録曲
- ~ until ~
- Fallin' Angel
- in the Mirror
- ピストル
- 少女の祈りIII ~『2012』ver. ~
- Re:birth
- 指輪物語
- CRISIS
- ~ the day ~
- その日が来るまで
- so…Good night.
- doomsday clock
- 蝶
- イエス
- シャングリラ
- ~ comes ~
Acid Black Cherry
(あしっどぶらっくちぇりー)
Janne Da Arcのボーカルyasuによるソロプロジェクト。2007年7月にシングル「SPELL MAGIC」でメジャーデビュー。その直後に東名阪フリーライブを行い、「SUMMER SONIC 07」に出演したほか、秋にBREAKERZらが参加した主催イベントを開催。その後は精力的なリリースとライブ活動を続け、2011年にはデビュー4周年を記念し、「ABC Dream Cup」と題して着うた無料配信、4万人フリーライブなど4つのプレゼントを発表。さらに9月から5カ月連続シングルリリースを行い、話題を振りまく。2012年3月、約2年半ぶりとなる3rdアルバム「『2012』」を発売。5月からは全国ツアーを敢行する。