音楽ナタリー Power Push - 安倍なつみ
神様がくれたチャンスと私の使命
この体と声を通してメッセージを伝えていく使命
──年末の2本のステージが今年のライブ納めとなるようですが、2015年は安倍さんにとってどんな1年でしたか?
今年もいろんなお仕事に挑戦させていただいて……歌の面で言うと、童謡や昭和歌謡に挑戦したり、ピアノ1本で歌う機会もあったり、今まで経験したことのない音楽や環境の中で歌う場面がたくさんあって。本当に1つずつが挑戦ですよね。怖いけど、行けー!みたいな。どれもすごく次につながる経験だったなと思います。写真集も作らせていただいたり、映画もひさびさだったりして。でもどのお仕事も気負いなく向かっていけるようになったなあと思いますね。ちょっとだけだけど、気持ちに余裕ができたのかもしれない。
──では2016年以降の安倍さんはどうなっていくと思いますか?
音楽はずっと続けていけたらなと思っていて。「classical & crossover」の世界観ももう少し極めていきたいし、ポップスだって歌い続けたい。ジャンル的な線引きはあまり考えていなくて、どんなお仕事も今の自分だからこそいただけるものだと思うので、「これ私?」と思うような意外なものでも何か意味があると思うんです。この先どんな曲に出会えるのかなあという楽しみがあるし、皆さんにも楽しみに待っていてほしいですね。
──そのチャレンジ精神ってどこから湧いてくるんでしょう。
たぶんね、本当に歌や表現が好きなんですよ。
──その気持ちはモーニング娘。の頃から変わらない?
ちょっと違うものなのかもしれないです。デビューする前はもっともっと純粋な気持ちで音楽が好きだったんだと思う。でもいろんなことを覚えて、私がどういう人なのかがわかってきたり、ときには見たくないものを見たりしていく中で(笑)、音楽が嫌いになっちゃうかもしれないなという瞬間もありました。それでもあきらめる理由が見つからなかったんです。それはやっぱり音楽が好きだからで、「今この瞬間、この歌で人生が変わる人もいるんだろうな」という瞬間を目撃すると……自分にできることはそういうことかもしれないと、勝手にですけど使命を感じるんです。私はこの体と声を通してメッセージを伝えていく使命があって、神様がそういうチャンスを与えてくれているのかなあと思う場面がこれまでに何度もあったんです。だから、辞めるってことはしちゃいけないというか。今の自分に与えられたお仕事に常に感謝しながら、できる精一杯でそれと向き合うことが自分のやるべきことなんだなあと思います。
──運命に選ばれている以上、止まるわけにはいかない。
もちろん、もっともっと立派な人や素敵な人はたくさんいますけど、そんな中で私が続けられているのは、きっとそういうことだと思うんです。勝手にそう思っているだけですけど。だって、こんなに長くやってるなんて思ってなかったですからね。18年も(笑)。「東京は自分の住む場所じゃない! 早く夢を叶えて、やるべきことをやったら室蘭に帰るんだ!」ってずっと思ってましたから(笑)。田舎で「警察密着24時」みたいな番組を観てたんで「ここは犯罪だらけの街だ! 誰も信用できない!」って(笑)。そんな自分がこんなに長く東京にいるなんて。
──そんな東京で神聖なクリスマスライブをやるなんて。
そうなんですよ(笑)。そんな私が東京の教会でクリスマスに歌うなんて。面白いですね。
前例なき“なっち”の人生
──余談ですけど、安倍さんが最近気になったアーティストは?
サカナクション。すごくいいですよね。
──おお。サカナクションみたいな音楽を自分でやりたいとは思いませんか?
いやいやいや! 今はラジオのDJもやっているし、普段からラジオを聴くのが好きなので、新しい音楽にはラジオで出会うことが多いんです。最近ふと引っかかったのはサカナクションですね。
──ちなみにモーニング娘。'15のことはどう見ていますか? 昔とはまた違った方向性で進化を遂げていると思うのですが。
本当にそうですね。モーニング娘。と付いてはいるけど、'14、'15と名前を変えた理由もわかります。今のグループとして進化しているから、私たちの頃とは全然違う。道重(さゆみ)が抜けてからは本当に知らない子たちばかりなので、会社で会っても少しよそよそしくなっちゃって(笑)。
──今も新しいメンバーでドラマが続いていて、その先端に安倍さんたちがいるという。大河ドラマですよね。
私たちなんてもう遠い昔の……モノクロ写真にされちゃいそうなぐらいの出来事ですよ(笑)。
──お話を聞いていると、安倍さんはあまり「自分の背中を見て育ってほしい」というタイプではなさそうですね。
ないですね。グループにいたときはどこか後輩のことを少しは意識していたと思うんですけど、結局は1人ひとりだと思うんです。個人個人の戦いじゃない?という気持ちがどこかにあって。それはきっと「ASAYAN」からスタートしていることが大きいんですよ。それぞれがボーカリストになりたいという気持ちで集まったライバル、というところから始まっているので。気付いたらアイドルになっていたっていう。つんく♂さんに「私たちアイドルって呼ばれてるけどいいんですか?」って質問したのを覚えてるんですけど(笑)、「アホか、ええことやで」って言われました。グループとして集まったわけじゃなかったから、1人ひとりそれぞれの人生でいいんじゃない、っていう思いがあるんですよね。
──確かに初期のモーニング娘。は特殊なグループでしたし、そこから巣立った安倍さんの歴史を振り返ったときに、「ポスト安倍なつみ」と呼べる人が想像つかない、独特な道を歩んでいるように思います。前例もないし後継者もいないというか。
そうかあ。新種ですね(笑)。だからなのか、ここを目指してというわかりやすい行き先がないんですよね。切り開いてるんです。地味にコツコツと(笑)。
2015年12月15日(火)東京都 キリスト品川教会グローリア・チャペル
OPEN 18:30 / START 19:00
演奏:Acoustic Cafe
料金:7500円(全席指定)
※未就学児の入場不可 / サイリウム・ペンライト等の使用不可
2015年12月25日(金)東京都 アクト*スクエア
[第1部]OPEN 17:00 / START 18:00
[第2部]OPEN 20:00 / START 21:00
料金:15000円(全席指定 / オードブルビュッフェ&1ドリンク付き)
DISC 1収録曲
- 風を感じて
- ポアンカレ
- beautiful
- お願い
- 嘘つき
- 好きで×5
- Lady Greedy
- あなた色
- Summer Breeze
- 心の友
- あなたに会えたなら
DISC 2収録曲
安倍なつみ Summer Live 2014
~Smile…♡~ Birthday Special
- OPENING
- BEST FRIEND
- トウモロコシと空と風
- くちびるで止めて
- スイートホリック
- ふるさと
- 微風
- 息を重ねましょう
- 愛しき人
- 雨上がりの虹のように
- せんこう花火
- 33~Smile Life~
- 空 LIFE GOES ON
- 夕暮れ作戦会議
- ライブBlu-ray「安倍なつみ Birthday Special Live 2015 at LIQUIDROOM」
- 「安倍なつみ Birthday Special Live 2015 at LIQUIDROOM」
- [Blu-ray Disc]2015年12月16日発売 / 6800円 / UP-FRONT WORKS / UFXW-1009
安倍なつみ(アベナツミ)
1981年生まれ、北海道出身の女性歌手、女優。1997年にモーニング娘。のメンバーに選ばれ、翌1998年にシングル「モーニングコーヒー」でメジャーデビュー。「なっち」の愛称で人気を博す。同グループ在籍中からCMやテレビドラマ出演など、ソロ活動を開始。2004年1月にモーニング娘。卒業を機に、本格的にソロデビューを果たした。ソロシンガーとして活動する傍ら、「祝祭音楽劇トゥーランドット」「三文オペラ」など数々のミュージカルや舞台でも活躍している。ソロデビュー10周年を迎えた2014年10月には、国内外の名曲をクラシカルなアレンジでカバーしたアルバム「光へ -classical & crossover-」をリリース。2015年6月には通算7枚目のオリジナルアルバム「Dreams」を発表した。同年末には「安倍なつみ Gloria Chapel Concert~Shiny Night!~」「安倍なつみ☃X'mas Special Time~Love Christmas Night~」と2本の異なる内容のライブを行う。