音楽ナタリー Power Push - AbemaTV
音楽特番総まとめ特集
AbemaTVで年末特番放送決定! Zeebra&UZIに聞く「フリースタイルダンジョン」がもたらしたシーンへの影響
この盛り上がりは前の“ラップバブル”とは違う
──「フリースタイルダンジョン」の放送開始からの1年を振り返って、日本語ラップシーンを取り巻く状況が変わった実感はありますか?
Zeebra モンスターや審査員に限らず、チャレンジャーとして出てきた連中も、とにかく仕事が増えてまして。ホントにこればっかりはテレビ様様ですな(笑)。
UZI それだけに留まらずさ、フリースタイルバトルのイベントが目白押しになって。
Zeebra でかい大会はチケットが即完してるし、もう“ラップバブル”と言っても過言ではないですね。でも俺らは前のバブルを知ってるから、浮足立つことなく地に足付けてやれてます。
──「前のバブル」というのは2000年代前半のことですね。
Zeebra ただ以前の流行はバブルとは言っても表層的というか、「この人たちの歌はメロディがないんですね」って言われるレベルの入り口中の入り口だったので。今はラップのやり方や楽しみ方がたくさんの人に広がってるのを実感してる。俺らも軽々しく「バブル」って言いがちだけども、ホントに上っ面だけではなく、中身も伴った盛り上がりな気がしますね。
UZI うん、前回は喉元を過ぎたら忘れ去られるような一過性の熱さだったけど、今回のブームは地熱がじっくりじわじわ広がってる感じがするから、日本に文化として定着する第1歩を踏めたような手応えがありますね。
Zeebra 以前、天皇皇后両陛下にライブを観ていただく機会があったので、終わったあとに「僕、ラップというものをやっておりまして」ってご挨拶させていただいたら、天皇陛下が皇后陛下に「ラップというのは、あなたがやっていたのとは違いますか?」ってお聞きになられて。皇后陛下が「あのね、ポリネシアとかインドネシアとか、地名がいろいろあるでしょ? あれを覚えるためにラップを書いたことがあるの」っておっしゃるから、もう頭が真っ白になって。
──それは確かに驚きですね。
Zeebra まあたぶんダンジョンとは直接関係ないかもしれないけど、天皇皇后両陛下が「ラップは韻を踏むもの」と理解されていて、文化として捉えていただけてるのは感じました。
──番組きっかけで新しく日本語ラップのファンになった人はどういう層が多い印象ですか?
Zeebra 「BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権」が若年層にウケて今の流れがあるのは間違いないけど、「フリースタイルダンジョン」に関してはその流れプラス、「俺も昔は日本語ラップにハマってたんだけど」っていう奴らが一気に戻ってきたのを感じる。
──なるほど。日本のヒップホップも長い歴史をたどってきたので、昔と比べてリスナーの年齢層が幅広くなっていそうですね。
Zeebra 自分は、10代のラッパーがバンバン世に出てこれるような現場を作りつつ、ジャズミュージシャンとブルーノートに出たり、ホテルオークラでディナーショーやったり大人向けの仕事をしてるから、今のヒップホップが年齢的にすごく多様化してるのを感じるんです。ちょっと前までの日本は世代間で断絶しやすかったんどけど、自分の息子よりも年下の奴と普通にTwitterで「うぇいよー!」とか言い合ってるし、もう断絶もクソもねえっつうか(笑)。60代の近田春夫さんから15歳のラッパーまでいる今のヒップホップシーンの層の厚さは、ホントに待ってましたって感じ。こうしたかった。
「意外と大丈夫な人たちなんだ」ってわかってもらえたと思う
──この1年の日本語ラップシーンの盛り上がりが、お二人に影響を与えていることはありますか?
UZI やる仕事の幅が広がったっていうか。ダンス番組の司会とか、司会の仕事がすごい増えたんですよ。俺、母校が慶應大学なんですけど、今度三田祭でやるラップバトルの早慶戦で司会をやることになって。さらに大学OBが集まる三田会っていう同窓会でライブやることも決まって、同じ年に三田祭と三田会に両方出ることになったという。
Zeebra 慶応つながりで言うと俺は、現代芸術の授業で1回ゲストスピーカーをやったら、それが評判よくって。さっきも「広がってる」って言ったけど、それは学術的な広がりでもあって、アメリカでは当たり前のように大学でヒップホップを研究してるんです。日本もようやくそういうことになってきたんだと思う。
UZI やっぱり日本ってお堅いんで、ガラが悪いイメージのヒップホップは敬遠されてたと思うんですよ。でもダンジョンのおかげで柵が取り除かれた印象はありますね。
Zeebra うん、そうだね。MCバトルのいいとこってホントにそこで、不良みたいな奴だけじゃなくて、オタクみたいな見た目の奴がいたり、女の子が出てきたりして戦うから、ヒップホップの多面性がみんなに伝わったんだと思う。もし、ただ怖いだけの不良がバトル中にオタクぶっ飛ばしたら、「ああ、やっぱりそうか」ってことになって番組1回で終了だから。
UZI ね(笑)。
Zeebra 「あ! 意外と大丈夫なんだ! やり方によっては話ができる人たちなんだ!」ってわかってもらえたと思う(笑)。
UZI ラップがうまければ、ガリガリな奴でも番長みてえな強い奴を倒せちゃうんだって、みんな学んでくれたと思うんですよ。
俺ずっと紅白狙ってたんですよ
──「フリースタイルダンジョン」はテレビ放送だけでなくAbemaTVでの配信も行っていますが、AbemaTVに期待していることは何かありますか?
Zeebra AbemaTVはホントにヒップホップコンテンツがいっぱいあるでしょ。専門チャンネルを作って、それをぜひまとめていただけたらいいなって話をしてるんですよ。
UZI ちょっとチャンネルがばらけちゃってたからね。だからメインのチャンネルはあったらいいよね。ヒップホップ知りたきゃまずそこ観ろ、的な。
Zeebra 俺は「ながら見」って必要だなと思ってるんです。今ってYouTubeで観たいもの観れるし、なんでも能動的じゃないですか。でも音楽って受動的に新しいものを知ることも多いんです。例えばクラブだって自分が聴きたい曲をかけてくれるわけじゃないし、昔の例えで言うとジュークボックスで誰かがかけた曲は必ずしも自分が聴きたい曲じゃない。ただ、その能動的でない部分を通じて新しいものを知ったりすることもあるんです。YouTubeも関連動画を教えてくれるけど、そこからもう一歩先に踏み込むことはない。1990~2000年代のアメリカのライフスタイルみたいな「家に帰ったらとりあえずMTVつけっぱなし」っていうメディアも少しは存在するべきだと思うから、AbemaTVにはそうなってもらいたいですね。
UZI 間違いない。
──年末にAbemaTVで「フリースタイルダンジョン」の特別編「AbemaTV presents フリースタイルダンジョン東西!口迫歌合戦」を配信すると伺いました。
Zeebra 「AbemaTVで紅白の裏番組やりたいです」っていうのは藤田くん(藤田晋。サイバーエージェント代表取締役社長)から今年の頭ぐらいに相談されてて、「じゃあいっそのこと、紅白みたいにMCバトルやったら面白いね」「東と西に分かれて戦うのはどうかね」って話をしてたんです。「フリースタイルダンジョン」もチーム制に変更したり、みんなに飽きられてこのブームがすぐに終わったりしないようにマイナーチェンジを繰り返してるんですけど、東西に分かれて戦うっていうのもその中で出たアイデアで。
UZI 俺ずっと紅白狙ってたんですよ。「ひとり酒」っていうヒップホップ演歌を作って「これで紅白出るぜ」って思ってたんだけど、氷川きよしとかジェロに妨害されて(笑)。だからうれしいっすね。やるしかねえって思ってます。
Zeebra 東西それぞれから力強い応援団たちが駆けつける予定だし、「さすがAbemaTV! 年末のヒップホップスペシャルは豪華ですね」ってことになると思います。
──「東西!口迫歌合戦」に向けて、意気込みはありますか?
UZI 俺たちは司会進行だからバトルするわけじゃないけど、デカいお祭りをやるからには最高の大会にしたいですね。というか絶対なっちゃうし、もうなることはわかってる。とんでもねえお祭りになるっす。
- Contents Index
- 話題のフェスを生中継!2016年を彩った音楽ライブ番組
- ONE OK ROCKやBABYMETALも登場!年末年始オススメ音楽特番
- 「フリースタイルダンジョン」Zeebra&UZIインタビュー
AbemaTVは、サイバーエージェントとテレビ朝日が共同で“無料で楽しめるインターネットテレビ局”として展開する、新たな動画配信事業。オリジナルの生放送コンテンツや、ニュース、音楽、スポーツ、ドラマなど多彩な番組が楽しめる約30チャンネルをすべて無料で提供している。2016年4月11日に本開局して以来、放送した累計番組数は10万を超え、2016年11月2日時点でダウンロード数が1000万を突破するなど、急速に利用者を伸ばしている。登録は不要で、スマートフォンやPC、タブレットなどさまざまな端末でテレビを観るような感覚で利用することが可能。このほかGoogle CastやAmazon Fire TVシリーズ、Apple TV(第4世代)など新たにテレビデバイスへの対応も強化しており、今後も順次拡大が予定されている。
Zeebra(ジブラ)
東京都出身のヒップホップアクティビスト。キングギドラのフロントマンとして1995年にデビュー。日本語ラップの礎を築いたグループとして高い評価を得つつも、翌年にグループは活動を休止。1997年にシングル「真っ昼間」をリリースし、ソロアーティストとしてメジャーデビューを果たす。日本のヒップホップシーンの顔役として活動し、2014年に自身のレーベル「GRAND MASTER」を設立。また、「クラブとクラブカルチャーを守る会」を発足し、会長として風営法改正にも貢献した。渋谷区観光大使ナイトアンバサダーにも就任し、オランダとドイツで開催された国際会議にも参加。2015年9月にスタートしたテレビ朝日「フリースタイルダンジョン」のメインMCを務めている。
UZI(ウジ)
東京都出身のラッパー。1996年、アンダーグラウンドヒップホップの名盤「続・悪名」にて「マグマ沸騰」でデビューを飾ったのち、Zeebraを中心に結成されたヒップホップクルー・URBARIAN GYMに旗揚げ時から参加。圧倒的な破壊力を持つパフォーマンスとずば抜けた存在感は、ヒップホップシーンの枠には収まらず、格闘技界ではリングアナとして、ゲーム界ではプロゲーマーとして活躍の場を広げている。2015年9月にスタートしたテレビ朝日「フリースタイルダンジョン」では進行とナレーターを務めている。