ナタリー PowerPush - 阿部真央
愛と感謝を込めた自信作「戦いは終わらない」
「なんのために売れたいのか」が大事
──あと、「側にいて」をシングルでリリースするタイミングでインタビューしたときに真央さんは「もっと売れたいと思うから、そのために自分に厳しくしようと思う」と言っていて。そういう思いがセルフプロデュースにもつながったのかなと。
そうなんですよ。だから、これで結果が出ればうれしいんですけどね。でも、満足のいく結果が出なくても、間違いなく今後の私の基盤となるアルバムができたと思うから。だから、今は売れる、売れないについてはフラットに考えていて。それよりも、アルバムをリリースするたびにツアーができて、チケットがちゃんとソールドアウトして、少しずつ会場が大きくなっていくことがすごく大事だと思うので。なんのために売れたいと思うのかがすごく大事じゃないですか。
──そうですね。
私にとっては、多くの人に自分の曲を届けたいから売れたいと思う。多くの人に聴いてもらえれば、たくさんの人の前でライブができるとか、単純明快な理由なんですよね。前はもっと焦ってたんですよ。私は音楽にめちゃくちゃ詳しいわけではないから、一般人的な感覚で音楽業界の流れとかを見ているんですけど。そうすると、テレビによく出ている人って、ポーンと出てきて、フッといなくなる印象があって。それがすごく怖いなと思う。でも、逆に、例えば大分の実家の両親とかからすると、そういう存在にならないと売れてるとは認識しないから(笑)。
──でも、自分自身も曲も消費されたくないしね。
そうそう。だから、今の活動の流れはすごくいいと思っているんですけど、もっと多くの人に曲を届けるためには飛躍しなきゃなとも思います。そこにつなげるためのセルフプロデュースでもあったし、何年後かの私にも力を及ぼしてくれるアルバムができた実感がある。今はそれが重要だと思うんです。
前より音楽に興味が出てきた
──今作はあいかわらずサウンドも声色も多彩な曲が揃っていて、ロックシンガーであり、ポップシンガーであり、シンガーソングライターでもある阿部真央の今を感じられる作品になっていて。「戦いは終わらない」「世界はまだ君を知らない」の2曲を軸にそのほかの曲はどういうピースを集めたいと思いましたか?
アルバムリリース後のツアーも決まっていたので、それを意識して、もうちょっと盛り上がる曲が欲しいなと思ったり。やっぱりライブを強く意識しましたね。
──それで1曲目の「How are you?」を書いたり?
そうそう。「プレイボーイ」もそうですね。アレンジのバランスはすごく考えました。ここをちょっとハネさせればライブでお客さんがタオルを回せるなとか、ここでクラップを入れるんだったら、ここをこうして、ああして、とか。やっぱりライブこそが、って思うんです。私自身、やっぱりライブに行って初めて誰かのファンになるんですよ。私もそういうタイプのアーティストだと思うし、ライブはすごく大事ですね。
──一方、「ここにいて」とかソングライターとして成熟を感じさせるラブソングもいいですね。こういう曲も今だからこそ書ける曲だと思う。
まさにそうですね。10代の私には書けなかったと思います。22歳になって、それなりに恋愛観とか人付き合いの仕方とか、パートナーに対する考え方も成長したと思っていて。それが出てると思います。今作も今までどおり自分のリアルを歌詞に反映してはいるんですけど、変化した点もあって。自分が経験したことをそのまま書くだけではなくて、私がそこで経験した気持ちや視点を誰かに託すというフィクショナルな書き方もするようになったんです。そういうふうに書くことも今の阿部真央を伝えるひとつの方法だと思ったので。
──それができるようになったのはなぜだと思いますか?
前より音楽に興味が出てきたからじゃないかな。
──すごいな、その発言(笑)。今まで興味なかったんだ?
前にもそこまで音楽が好きなわけじゃないって言いませんでしたっけ?
──いや、初めて聞いた。
そもそも自分を表現できれば、別に音楽じゃなくてもよかったんです。例えば「Sunday morning」のような、こんな歌謡曲っぽい歌を自分が書くようになるとは思ってもみなくて。でも、今回のレコーディングで気付いてしまったんですよね。私の中にこういうポップな曲の魂が流れてるということを。ずっとテレビの歌番組を観て育ってきて、日本のポップスが身体に染み込んでいるんですよね。作曲をするときにそれが自然と出たことで、自分にとっての音楽は感情を吐き出すための術だけではなくなってきたんだなと思った。そうなると、音楽が好きになっている自分を認めざるを得ないですよね(笑)。
──アレンジのイメージもより明確に浮かぶようになった?
そうなんですよ。それも、このアルバムのために曲を書いたのが大きいと思います。曲を書いてからアレンジ、レコーディングするまでの期間が短かったから、最初に鳴った音をそのまま具現化する感じで。イメージをアレンジャーさんに伝えるときに抽象的なことしか言えないんですけど、前よりしっかり伝えられるようになりましたね。あと、音楽的にわからないことがあれば「それはわからないんですけど、私はこういうイメージです」って言えるようになって。正直に言うことを覚えたというか、自分のイメージを明確に伝えることに遠慮がなくなったんですよね。どの曲のアレンジも「これはこうじゃなきゃダメ」とはっきり思えたので。
CD収録曲
- How are you?
- 戦いは終わらない
- 世界はまだ君を知らない
- 春
- 君を想った唄
- 側にいて(piano ver.)
- 嫌われてないかな
- Sunday morning
- プレイボーイ
- ここにいて
- 18歳の唄
- for you
初回限定盤DVD収録内容
- 側にいて (music clip)
- 世界はまだ君を知らない (music clip)
- 「世界はまだ君を知らない」&「戦いは終わらない」(ジャケット メイキング)
- 世界はまだ君を知らない(music clip メイキング)
- あべまおらじお【番外編】メイキング
- NHK「春ナビ」メイキング
- 側にいて(music clip メイキング)
阿部真央(あべまお)
1990年1月24日生まれ。大分県出身。2009年1月にアルバム「ふりぃ」でポニーキャニオンからメジャーデビュー。等身大の歌詞とポップなメロディ、表現力豊かなボーカルが、同世代を中心に支持を集める。2010年1月に2ndアルバム「ポっぷ」、2011年6月に3rdアルバム「素。」をリリース。全国ツアーや夏フェス出演、アヴリル・ラヴィーンのサポートアクト起用など精力的なライブ活動を展開する。2012年6月に4thアルバム「戦いは終わらない」を発表し、自身初の全国ホールツアー「阿部真央らいぶNo.4」を開催する。