ナタリー PowerPush - 阿部真央
大傑作アルバム「ポっぷ」完成 若き天才シンガーの不安と自信
指図されるのキライなんですよね(笑)
──で、シングルの2週間後には、待望の2ndアルバム「ポっぷ」が到着します。一聴して感じるのは「表現の幅がさらに広がったなあ」ということだったんですけど。
ありがとうございます。今回のアルバムで一番感じるのは、私が自分に責任をちゃんと持ててるなってことなんですよ。「私の作品ですよ」ってちゃんと責任持って言える。批判されても褒められても平気なぐらいに、ちゃんと自分の意見を言ったし、私も一緒に作ったって言えるから。私の頭の中で鳴ってるイメージにとても近い形で全部収めることができたので、その辺は自信があります。
──曲はデビュー前のストックから選んだんですか?
ですね。デビューしてからの曲は2曲です。「いつの日も」と、デビューしてすぐに作った「15の言葉」の2曲。
──選曲はどういう基準で?
今までリリースした曲って、ストックをバーッと並べて、このへんが「ふりぃ」で、このへんがシングルで、みたいな感じで自然と順番に出してるんですよ。ただ、全体の色的にこういうのがないから、こっちのやつを持ってこようとか、そういうことはありますよ。
──それっていうのは、要するに曲ができた順に収録していってるということ?
そうです。できた順です。だから「ふりぃ」が高1から高2の曲が主だとしたら、今回は高2から高3が主なんですよね。あえて、そういうことやっとこうと思って。
──なんか写真のアルバムみたいですね。
そうそうそう。っていうか「え、そういうことなんじゃないの?」って思うんですよ。じゃないと、なんでCDをアルバムっていうのか、意味わからないですもん。アルバムを作るために写真を撮るっていうのは、私の感覚にはないんです。写真ありきのアルバムだと思ってるから。
──それ面白い。じゃあ3枚目のアルバムを出すっていうことになったとしても、そこに向けて曲を作るのはちょっと違うなっていう感じなんだ。
うん、ヤダ。なんかね、指図されるのキライなんですよね(笑)。曲がなかったらアルバム出さなくていいじゃんって思いますもんね。なんでそんな使命感に追われてやらなきゃいけないんだよ、みたいな(笑)。
──アハハハ。阿部さんらしいね。じゃあここに収録されている、高2から高3の頃にできた曲たちをあらためてご自身で眺めてみると、どんな印象がありますか?
「1曲1曲よく作ったなぁ」っていう感じがすごくしてて。並び的にはポップだなって思うんですよね、全体的に。つかみやすいっていうか。聴いてる人も覚えやすいと思うし。
──なるほど。アルバムタイトルもその印象から持ってきたものなんですか?
はい。でも「ふりぃ」のときもそうだったんですけど、カタカナでも英語でもかっこ悪いなと思ってたから、今回もひらがなでいこうかなと。でもね、「ぽ」があんまりかわいくなくて(笑)。いろいろ書いてたときに「ポっぷ」が出てきて。私が書くと特にそうなんですけど、見た目的に「ポ」と「ぷ」が似てたんですよ。その左右対称な感じが、いいじゃんと思ったんです。
「モンロー」は1stのイメージを壊せる曲だと思っていた
──内容的に言うと、まず「モンロー」は無視できないですよね。エレクトロポップなサウンドは、これまでの阿部さんのイメージをガラッと覆します。
全部の曲がそうなんですけど、曲ができた時点でこういう感じにしようっていうのが頭の中に鳴ってるんですよ。だからそれを出しただけ。「モンロー」は高3のときに書いたんですけど、その段階からピコピコ、テロテロした感じっていうイメージはあったんで。だから新しいことにチャレンジしたとかっていう感じではないんです。
──とは言え、デビューからのイメージという部分で、「モンロー」を世に出すことの不安とかはなかったですか?
それはありましたね。なにかしら言われるんだろうなとは思っています。取材とかでも100%突っ込まれますからね(笑)。でも、私の中で「モンロー」は、デビューする前から「絶対に2ndアルバムに入れる」って決めてたんですよ。いい意味で、1枚目である程度できたイメージを壊せる曲だなって思っていたから、飛び道具として使おうと。それが実践できたのは良かったですね。
──1曲としてのインパクトはありますけど、全体を通して聴いたときに、浮いている印象がないのが不思議でした。
ですよね(笑)。そこは良かったですね。曲順もかなり迷いましたから。最初は「モンロー」を1曲目にしようと思ったんですよ。それは大反対されましたけどね(笑)。
──結果、「未だ」が1曲目になっていますけど、この始まりもちょっと面白かったんですよ。声のトーンが低めですよね、かなり。それが新鮮で。
これもそんなに考えて歌ったわけではないんですけど、低い声はどっちかっていうと苦手なんで、ちょっと難しかったです。でも、聴いてみるとかっこいいんですよね。だから極めたいなって思いました、録ってみて改めて。
10人に10ずつ伝えるより、1人に100をぶつけたい
──あと、全体を通して感じたのは、阿部さんはやっぱり人と繋がりたいと強く思っている人なんだなぁということで。だからこそ人との関係で思いっきり悩んでしまうんだと思うし。そういう部分が曲にすごく見えている感じがしました。
根底にはそういう気持ちがあるんだと思いますね、やっぱりどっかで。それが曲としてはいろんな形で出てるというか。例えば「わかるの」なんかは、そこに対して怒っているときの曲だし、「ポーカーフェイス」なんかは、自己紹介的な私の考えを私自身がすくい取って吐露してるみたいな、そういう感じだし。
──さまざまな表現で感情が綴られていますけど、阿部さんの曲って心底、人を突き放すような曲は皆無だと思うんですよ。そういう部分で、気持ちとしてはやっぱりすべての人にわかってほしいと思っているんでしょうか?
そこはすごく難しくって。例えば、すべての人にわかってもらわなくてもいいって思ってたら、多分私は歌ってないんですよね。でも、中途半端に知られるのはすごくイヤなんです。だから1人か、1万人か、どっちかみたいな。100人ならいらない、みたいな(笑)。そういうところはあるかもしれないですね。
──アハハハ。
でも「ポーカーフェイス」っていう歌を書いたときなんかは「自分の気持ちは大事な人用に取っておこう」っていうのがすごくあったんです。自分の気持ちを10人に10ずつ伝えていくよりは、1人に100ぶつけるほうが強い。それは今でも変わってなかったりもするんですけど。なので、それがちゃんと切り取れた「ポーカーフェイス」は、すごく好きな歌なんですよね。
──1人に100ぶつけたいっていう気持ちは、リスナー1人1人に全力でぶつかっていく阿部さんの姿勢に直結してる感じがします。さて、新作からスタートを切る2010年、どんな年にしましょうかね?
いい年にしたいですねえ。エンジンがかかってきたんで(笑)。
──3月からは初の全国ツアーも決定してますし。
不安ですが、心折れないようにがんばります。「もうヤダよぉ!」ってなんないように(笑)。でも、「阿部真央ライブNo.0.7」でのライブは大きな成功だったと思うんですよ。なので、あれぐらい全てを出し切ったライブを毎回、全国の人に見せていけたらいいなって思うんですよね。目指すところはちょっと高いんですけど、それを実現できるように、自分の中で固めるべきところを固めてがんばれたらいいなって思います。
CD収録曲
- 未だ
- I wanna see you
- モンロー
- 貴方の恋人になりたいのです
- 伝えたいこと
- 都合の良い女の唄
- 15の言葉
- もうひとつのMY BABY
- loving DARLING
- わかるの
- ポーカーフェイス
- いつの日も
- サラリーマンの唄
初回盤DVD収録内容
- 内容未定
阿部真央(あべまお)
1990年1月24日生まれ。大分県出身。愛称は「あべま」。高校1年のときにギターを始め、地元・大分市を中心に弾き語りで路上ライブを開始。高校2年のときに「YAMAHA TEENS' MUSIC FESTIVAL 2006」に出場。大分県大会で優勝し、全国大会では奨励賞を獲得する。高校卒業後、2008年春に上京。2009年1月にアルバム「ふりぃ」でポニーキャニオンからメジャーデビュー。