ナタリー PowerPush - 阿部真央
話題の片想いソング「貴方の恋人になりたいのです」ついにCDリリース
私たちはゆとり教育に振り回されて疲れた世代
──2曲目には「マージナルマン」というナンバーが。これ、好きですねぇ。
高2の冬にできたんで、これもかなり初期の曲。私も好きなんですけど、最初にディレクターさんに伝えるときはちょっと大変で。「それ何? それ何拍子?」とか言われつつ(笑)。
──変拍子で始まる曲ですもんね。
そうなんですよ。これはもともと最初のAメロとサビがあって、それをどうやってつなげようかって思いながら温めていた曲だったんです。でも、どうやってもつながらないから、もうムリヤリくっつけちゃったっていう。だから、ちょっと不思議な構成になったんです。
──そこがクセになるんですよね。パートごとに表情がガラッと変わるところが。
バンドアレンジはけっこう悩みましたね。結果、Aメロは若干ジャズ調で、Bではちょっと開けて、サビではズダダダンダンにして。みんなノリノリで演奏してくれました。
──当然、サウンドに合わせて声も変化しますよね。
歌い方は変わりますよね、やっぱり。Aはちょっとおどろおどろしい感じで、Bは16、17歳の私が助けてほしいと思って嘆いている感じ。で、サビで“ドーン!”って爆発するみたいな(笑)。そういう歌い方はデモの段階でもう決まってました。
──歌われている内容は、大人への怒り。大人と子供の境界にいる、まさにマージナルマンである時期に思うことが詰め込まれています。
私たちの世代って、ゆとり教育が始まって勝手に終わらされた時代なんですよ。すごい振り回されて疲れたと思ったんで、この曲を書いたんですよね。書いてから時間は経ったけど、まだまだ私も全然子供だし、おかしいじゃんって思うことはいっぱいあるから、この歌詞は今でも納得できますね。
──大人への怒りをぶちまけつつも、自分たちのことを「情ケナイ」とも歌っていますよね。そこが面白いなと思ったんですが。
要は、私たちは、そういう教育しか受けてないから、自由をもらっても使い方がわかんないんですよ。それがすごく情けないと思ったんです。なんかすごく揺れ動いてる感じはありますね。
──縛られ、振り回されることに対する怒りがありつつ、でも自由になっても動けない。そこの間でのもどかしさですよね。
うん。でも、結局、何かに属してる限り、振り回されるのは仕方ないんだと思うんです。それは大人になっても、成人してもたぶんそのまんまなんだなっていうことに最近気づきました。規則とかね、いろんなものに人間は縛られ続けるんだなと思って。
──悟ってるねぇ(笑)。
アハハハ。いや、悟ってはないですけど(笑)。でも、だからこそ曲を書けたり、何かを表現しようとしたり、がんばったりできるんだとも思うんですよね。人間って面白いなってすごく思いますね、うん。
曲にして吐き出したけど、やっぱり救われなかった(笑)
──で、もう1曲はギター弾き語りの「会いたいよ」。恋人との温度感の違いによって芽生えた寂しさが切なく歌われています。
切ないですねぇ(笑)。好きな人に対しては弱さを出すことができないからがんばって強がるんだけど、「じゃ、その切なさはどこに吐き出せばいい?」という気持ちを、曲として書きました。ほぼ自分の体験まんま。高3のときに作りました。
──曲に吐き出したことで救われた?
やっぱり救われなかった(笑)。でも、これを私が歌うことで、同じようなことで悩んでいる人とか、そういう恋をしている人が“キュッ”て気持ちになってくれたら、それは私の作品として残した意味があるかなぁって思いますね。
──大人になりたくない感情を歌った「マージナルマン」とは対照的に、こっちでは「もっと早く大人になりたいよ」って歌われていますね。
矛盾しちゃうんですけど、やっぱりそういう感覚もあるんですよねぇ。大人になりたいって思うときもあれば……。
──大人ふざけんなってときもある、と。
アハハハ。そうそう(笑)。
──ギター1本のシンプルなサウンドの上で、歌声がリアルに響いてきます。
この声はまさにファーストテイクのものなんですよ。だから、ピッチを気にしてとかっていうよりは、感情だけで歌っている感じですね。成長した今の私が歌う「会いたいよ」を披露することはできるけど、やっぱりこの曲はそのときに完成したような気が私はしていて。だから、当時の私のギューっとしている感情とか切なさとかを、CDでは感じていただけるのではないかなって思ってます。
阿部真央(あべまお)
1990年1月24日生まれ。大分県出身。愛称は「あべま」。高校1年のときにギターを始め、地元・大分市を中心に弾き語りで路上ライブを開始。高校2年のときに「YAMAHA TEENS' MUSIC FESTIVAL 2006」に出場。大分県大会で優勝し、全国大会では奨励賞を獲得する。高校卒業後、2008年春に上京。2008年10月に「MY BABY(AG VER)」がiTunes Store「今週のシングル」に選ばれ、合計10万ダウンロードを記録。オフィシャルMySpaceのプロフィールビューは現在100万PVを突破。2009年1月にアルバム「ふりぃ」でポニーキャニオンからメジャーデビュー。