菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)×山田将司 (THE BACK HORN)×斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)×田邊駿一(BLUE ENCOUNT)|先輩、後輩、同世代バンドが語る9mmの魅力

9mm Parabellum Bullet初のトリビュートアルバム「CHAOSMOLOGY」と11枚目のシングル「白夜の日々」が9月9日に発売された。

9月9日を“9mmの日”と定め、新作をリリースしたり恒例の自主企画「カオスの百年」を実施したりと、毎年精力的な活動を行っている9mm。今年の“9mmの日”に発売される「CHAOSMOLOGY」は、“歌盤”と題されたDISC 1と“instrumental盤”と題されたDISC 2の2枚組構成で、9mmにゆかりのあるアーティスト計18組が参加している。

音楽ナタリーでは「CHAOSMOLOGY」と「白夜の日々」の発売を記念して、菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet / Vo, G)、そして“歌盤”に参加しているアーティストの斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN / Vo, G)、田邊駿一(BLUE ENCOUNT / Vo, G)、山田将司(THE BACK HORN / Vo)という4人の座談会を企画。4人に「CHAOSMOLOGY」について、そして9mmから見ると先輩、同世代、後輩バンドに所属する山田、斎藤、田邊に9mmや菅原の魅力について語ってもらった。また特集の後半では、“終わらない”ツアーと銘打たれ、いまだ始まってない9mmの全国ツアー「カオスの百年~Never Ending Tour 2020~」にちなみ、「俺たちの“Never Ending”9mm愛!」と題した企画を展開。田邊、斎藤、山田の3人それぞれのトークで、9mmのさまざまな側面を掘り下げていく。

取材・文 / 酒匂里奈 撮影 / 伊藤元気

ジェンガで一騎打ちした菅原卓郎と山田将司

──菅原(卓郎)さんは、皆さんと会うのはひさしぶりですか?

田邊駿一(BLUE ENCOUNT) 僕はこの前イベント(7月に開催されたオンラインイベント「LIVE HOLIC extra vol.4 -another edition-」)でお会いしました。

菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)

菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet) そうだよね。(山田)将司さんとは浴衣を着るイベント(7月に開催されたオンライン弾き語りイベント「夏のSHIKABANE 〜OMATSURI MOOD〜」)で一緒になって。

山田将司(THE BACK HORN) 浴衣着るやつね(笑)。

菅原 そう思うと(斎藤)宏介以外はわりと会ってるかな。

斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN) すごいなんか……疎外感(笑)。

──なるほど(笑)。今日の座談会メンバーは、9mmから見るとTHE BACK HORNが先輩、UNISON SQUARE GARDENが同世代、BLUE ENCOUNTが後輩バンドにあたります。「CHAOSMOLOGY」の話はもちろん、山田さん、斎藤さん、田邊さんには9mmや菅原さんの魅力も聞いていければと思います。

菅原 褒められ役だ。

──褒められ役です。皆さんガンガン褒めていただければ(笑)。ではまずはTHE BACK HORNと9mmの出会いについて聞かせてください。

山田 2007、2008年くらいかな?

菅原 アレですよ。挨拶はしたことあったかもしれないけど、ちゃんと話したのは「COUNTDOWN JAPAN 07/08 -WEST-」の帰りの新幹線。前の席がTHE BACK HORNのみんなだったんですけど、突然前の席がクルっと回転して(菅波)栄純さんが目の前に登場して。

田邊 そんなポップに?(笑)

菅原 そう(笑)。「9mmだよね!」って。

山田 「ライブよかったよ」みたいな感じで話しかけてね。

斎藤 優しい!

菅原 そのときに「対バンしたいね」とか、メンバーの出身地の話をして。

山田 そうだ。「うちのメンバーにも東北出身のやつがいて」みたいな話をした。それから2、3年後の2009年にスプリットツアー「大惨事目眩対戦」を一緒にやって。スプリットツアーやったらだいぶ仲良くなったよね。

菅原 5本くらい一緒に回りましたしね。常に盛り上がってました。

山田 打ち上げですごい酔っ払ってた記憶はある(笑)。

菅原 9mmのライブで使うものを入れている“ライブ用楽屋箱”にジェンガを入れていて、何本目かからジェンガをみんなでやって、最後のほうは将司さんと俺の一騎打ちみたいになりました。

山田 本番5分前までやってたよね。

菅原 その日はTHE BACK HORNが先攻で9mmが後攻で、THE BACK HORNのライブが「マジでもう始まりますよ!?」という時間までずっとやってた。

山田 すごい高く積み上がってたよね。「やめたくない」みたいな気持ちになったというか、「集中力が高められて逆にいいかもしれない」って。

菅原 それくらい仲良くなってはいましたね。

出血大サービス

──続いてユニゾンと9mmの出会いについても聞かせてください。

斎藤 バンドを結成したのがまったく同じ年で、バンドとしては同い年なんです。でもデビューしてからバンドが大きくなるスピードが9mmのほうが圧倒的に早くて。「The World tour」(2007年5月から7月にかけて開催された9mm Parabellum Bullet初の全国ツアー。茨城・club SONIC mito公演でUNISON SQUARE GARDENと共演)で対バンしたときは、格上バンドだと思って勝手に萎縮してました。だからそのときは仲良くなるって感じまで至らなくて。ただそのライブで、滝(善充)さんのギターのヘッドが卓郎さんに当たって血が出てしまって、それでもライブを続けていて、卓郎さんはハッキリと「避けられなかった俺が悪いんだ」と言っていたのを見て「すげえな」って思いました。数年後のライブ中に、俺がうちのメンバーの竿で殴られて血が出ちゃったことがあったんですよ。そのときに俺は明らかに自分が悪くないと思って。そう思ったときにふと水戸の記憶が蘇って、「卓郎さんって器がデカいなあ」って。そこからまた新たなリスペクトが生まれました。それからバンドを続けているうちに、だんだんと親密になっていった感じですかね。

菅原 そうだね。僕らの結成年と、LIQUIDROOMが新宿から恵比寿に移転した年が同じなんですよ。それでLIQUIDROOM発の企画でユニゾンと俺たちの対バンを2回やっていて、「俺たちは同じ時間を過ごしてやってきてるんだな」と感じて。そのときにより特別な関係になりましたね。

──流血の印象から、お互いを節目で祝いあうような仲になったんですね。

田邊 血でつながってますね。

菅原 滝くんはステージ上では近付いちゃいけない人だったから。赤信号で道を渡ってしまったようなものだって、怪我をしたときは思ってたよね。

斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)

斎藤 俺は歩道に車が突っ込んできたくらいの感じだったな。

田邊 普通だったら斎藤さんのお気持ちになると思います(笑)。

山田 そういえば俺も(岡峰)光舟のベースのペグがおでこに刺さったことあったな。だけど、その状態のまま歌ってる自分にまた興奮してきちゃって(笑)。

斎藤 確かに似合う気がします。流血が似合う。

田邊 有刺鉄線の絵柄が似合うみたいな感じですね。

斎藤 そうそうそう。俺のときはもうファンが引いちゃってて。「俺はこのままで歌います。これがホントの出血大サービスだ!」って言ったらめちゃめちゃスベりました。

全員 はははは!(笑)

菅原 めっちゃ面白いのに(笑)。ステージ袖で聞きたかったもん。なんで自分が血を流したとき言わなかったんだろうってくらい面白いよ。

斎藤 (田邊に向かって)よかったら使ってください。

田邊 ありがとうございます(笑)。いつかステージで血を流したときは「出血大サービスだ!©斎藤さん」みたいな感じで言わせてもらいます!

約束の対バン

──次はブルエンと9mmとの出会いを教えてください。

田邊 出会いは、なくなる直前の表参道FABでした。9mmが所属していたレーベル主催のイベント(2010年7月に開催された「GOLDKIDZ FESTIVAL 2010」)で、cinema staffとかも出演していて。僕はバンドで1stミニアルバム(2010年4月発売の「the beginning of the beginning」)を出したばかりの頃で、右も左もわからない人間だったんですけど、たまたま主催のレーベルの方とそのとき所属していたレーベルの当時の社長さんが知り合いで、FABのライブに招待していただいたんです。ライブが終わってからなぜか打ち上げにも参加させてもらったんですよ。もちろん居場所はなくて、バーカウンターの隅っこで自分たちの盤を持ったまま立っていて。そしたら菅原さんがパーッといらっしゃってくれて。うちのギターの江口(雄也)と僕で「大ファンで…!」って数十秒の間にバーッと9mmへの愛を伝えて、自分たちの盤を渡したら、菅原さんが目の前で包装を開けて、歌詞カードを広げて見てくださって。

菅原 ちゃんとやってんね、俺。

田邊 はい(笑)。「失礼ですがお写真いいですか」ってお願いしたらホントに気さくにお写真も撮っていただいて。そのあとは江口と2人でバーカウンターのお酒を全部飲む勢いで飲みましたね。いまだにそのときの写真も残っています。そのあとに2015年にツアー(「カオスの百年TOUR 2015」)に呼んでいただきまして。Zepp Nagoyaでしたよね。

菅原 そうそう。

田邊 僕たちはキャリア的に初めてのZepp Nagoyaで、もちろん9割が9mm先輩のお客さんで……すみません、これは掛けたわけじゃないです(笑)。でもやったるぞ!と思って最初の曲「ロストジンクス」でブワーッと前に出たら、距離感がわからなくて、イントロで足を踏み外してステージから落ちちゃったんですよ。

菅原 「田邊が消えた!」ってなったね(笑)。

左から田邊駿一(BLUE ENCOUNT)、山田将司(THE BACK HORN)、菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)、斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)。

田邊 綺麗にストンって落ちて、セキュリティの屈強なお兄さんたちが足をつかんでくれて、そのままの体勢できれいにステージに戻って、無事Aメロにも間に合うという奇跡が起きました。

菅原 ホント落ちたときと同じ姿勢でステージに上がってきたよね。あれは言わなくていいの? 最初に会ったときに俺が「いつか対バンしようね」って言ってて、Zepp Nagoyaで対バンのときに田邊が「あの約束を守ってくれたんですね。ありがとうございます!」と言ったら「あれ、そうだっけ」って忘れてたやつ。

田邊 そうでした……(笑)。でもそのときのMCが素晴らしかったです。忘れていたことを包み隠さずおっしゃっていて、「今日一緒にやれるようになるまで、彼らは音楽をやり続けてくれた」と話していただいて感動しました。

菅原 本当にそのときのBLUE ENCOUNTと対バンしたくてオファーしたから結果的にはよかったんですけど「調子いいこと言ってんな!」って感じですよね(笑)。