ナタリー PowerPush - 5つ数えれば君の夢

東京女子流の初主演映画を徹底解剖

きくおインタビュー

繊細で深みがある、女性監督らしい作品

──映画の主題歌となる女子流の新曲を担当すると聞いたときの心境から教えてください。

きくお

すごく面白そう、と思ったのが第一印象ですね。「今までの女子流の曲とは違うものにしたい」とも言われたので、挑戦しがいがあるなと。

──もともと女子流が好きだったんですか?

もちろん名前は知ってましたし曲も聴いたことはありましたけど、特別なファンというわけではなくて。だからある日突然話が来て驚いたんですよ。地下アイドルの曲は作らせてもらったことがあったけど、ここまでメジャーの方をやって大丈夫だろうかって不安もありましたし。

──女子流にはどんなイメージを持ってましたか?

歌がめちゃくちゃうまいですよね。芯のある声で上手に歌っていて、もう……とにかくすごいなあと。

──ファンもたくさんいるアーティストですし、プレッシャーもありました?

映画「5つ数えれば君の夢」

ありましたよ、正直すごい怖かったです(笑)。だからこそいいもの作らないといけないと思ったし、今までと同じような曲にしても意味がないとも思っていて。

──今までにCM曲やゲームのテーマソングは担当されていますけど、アイドルの曲というとまた別モノですか?

確かに初めての経験だったけど、でもやらせていただくお仕事は毎回新鮮で、いつも挑戦なんですよ。だから今までと同じようにチャレンジするだけでしたね。時間をかけて準備をして、下調べをして、じっくり考えて。

──実際の制作は、映画の脚本を読んでから?

そうですね。何度も読み込んでから始めました。

映画「5つ数えれば君の夢」

──脚本を読んだときの印象は?

繊細で深みがあるというか、女性監督らしい作品だなと思いましたね。映画のエンディングは「夜のプールで踊る感じ」と言われていて、そこにどんな曲が合うのかをずっと考えてました。でも最初に作った曲は、監督に聴いてもらったら「なんか違う」ということになっちゃって。

──そうなんですか。

確かに僕の中でも「もっとできるかな」「これでいいのかな」という悩みはあったから、やっぱりそうかとも思いつつ。どう手直しするかを話し合った結果、一度撮影現場に行くことにしたんですよ。

それぞれの声にすごく特徴がある

──映画の現場は初めて?

映画「5つ数えれば君の夢」

そうですね、すごい刺激的でした。しかもちょうどエンディングを撮る日にお邪魔させていただいて、「夜のプールで踊る感じ」と言っていたイメージがようやくつかめたんですよ。最初は4拍子の踊りやすい音にしていたんですけど、これは3拍子のワルツが合うなと。それで現場でiPadを使って、すぐに新しい音源を3曲作って。

──その場ですぐにできるものなんですか?

普段はパソコンでCubaseというソフトで作るんですけど、持ち歩いているiPadにも簡易版を入れてるんですよ。それで図書室で黙々と……。

──図書室?

映画「5つ数えれば君の夢」

あ、学校で撮影をしてたので、控え室が図書室だったんですよ。もうけっこう夜も遅くて寒かったけど、一気にラフ段階まで作って監督に聴いてもらい、選んでもらったものを持ち帰って完成させた、という流れですね。

──もともと作っていた曲を修正したわけではなく?

はい、イチから作りましたね。当初の曲はもう跡形もないです(笑)。

──キラキラしているし3拍子だし、なぜこの曲調になったのか不思議だったんですよ。そういう作り方だったんですね。

映画の現場を見たのも初めてで、当たり前な話なんですけど皆さん真剣で、緊張感を肌で感じたんですよ。実際に撮影している雰囲気を見ていたら、ようやく足りないものがつかめましたね。

──女子流のメンバーと会ったのはその日が最初ですか?

そうですね、でもちゃんと話せたのはレコーディングの日です。

──実際会ってみた印象は?

映画「5つ数えれば君の夢」

イメージ通りの、かわいい女の子たちでしたね。でもアイドルオーラはすごいですよ。アーティストとしての自覚があるというか、あの若さなのにしっかりしているし、芯がある感じ。しかも生歌を聴いてみたら、予想以上に皆さんが特徴的な歌声をしてらっしゃるんですよ。音源になっているものは当然、1つの曲として自然に聴けるよう、ある程度均一に整えられているので気付かなかったんですけど。今思うと、この個性を毎回1つにまとめられていたなんて、作曲家さんやエンジニアさんの力量、すごいなあって(笑)。

──(笑)。実際に歌ってもらった感触はどうでした?

本人たちは戸惑ってたと思いますね。かわいく歌うにはどうすればいいんだろう?って考えていたみたいで。

──では現場できくおさんからアドバイスも?

映画「5つ数えれば君の夢」

いや、彼女たち自身の解釈で、一番歌いやすい方法で伸び伸びやってもらうのがいいのかなと思っていて、特に何も言ってないですね。すごく練習して作り込んできた子もいるし、常に自然体な子もいるし。

──なるほど、歌を聴けばそこまでわかるものですか?

わかりますね。やっぱり声にも個性って出るんですよ。レコーディングでは丸1日歌ってもらいました。みんな本当に努力家なんです。

いろんな方に観てもらって初めて完成

──今までの女子流とは違う曲調ですが、ライブでやったらどうなるんでしょうね?

映画「5つ数えれば君の夢」

いやあどうなんでしょうね? 本当に映画のためだったので、ライブでやることを想定してないんですよ。楽しみだけど……やっぱり不安ですよ。そもそも、女子流のメンバーがどう思ったのかも心配だし。観たいような観たくないような。怖いなあ。

──ファンの方からの反響も楽しみですよね。

そうですね。受け入れられない人もいるかもしれないけど、今までの女子流とは違うよさが出たらいいなという気持ちですね。これはこれで面白い、って思ってもらえたらうれしいです。

──ちなみに、映画音楽を作りたいという願望は持ってらっしゃったんですか?

いつかやれたらいいなとは思ってたので、すごいうれしいですね。自分で曲を発表するだけでは出会えない人って絶対いて、映画を通して初めて聴いてくれる方がたくさんいるはずなんです。その届く広さの違いは魅力的ですよね。1人で作って完結するだけの作品とは、喜びもまた違った種類というか。

──では最後に、完成した楽曲を聴いてみて、手応えは?

映画「5つ数えれば君の夢」

曲としていい悪いというより映画のための音楽だから、公開されていろんな方に観てもらって初めて完成だと思うんですよ。たくさんの方に感想をいただいて、初めて気付くこともあるはずで。まあ今は非常に不安なんですけど……やれることはやったので、天命を待つって感じですね(笑)。もし評判がよければ……いや、いいです。

──なんですか!?(笑)

できることなら、これからももっと女子流さんの曲を作らせてもらいたいですね。ライブ向けのアッパーな曲も作れるし、やってみたいなと思ってます。もし可能であれば、なんですけどね、本当に(笑)。

映画「5つ数えれば君の夢」2014年3月8日(土)シネマライズほか全国順次公開
映画「5つ数えれば君の夢」

出演:東京女子流 / 大和田健介 / 栁俊太郎 / 渡辺佑太朗 / 平野鈴 / 椿かおり / 内田春菊 ほか

監督・脚本:山戸結希

音楽:Vampillia

企画:針谷建二郎 / 直井卓俊

主題歌:東京女子流「月の気まぐれ」(作詞・作曲・編曲:きくお)

東京女子流ニューシングル「Partition Love」 / 2014年2月12日発売 / avex trax
Type-A [CD+DVD] / 2100円 / AVCD-48876/B
Type-B [CD+DVD] / 1890円 / AVCD-48877/B
Type-C [CD] / 1050円 / AVCD-48878
Type-A CD収録曲
  1. Partition Love
  2. 月の気まぐれ
  3. 約束 -Acoustic Ver.-
  4. Partition Love(Instrumental)
  5. 月の気まぐれ(Instrumental)
Type-A DVD収録内容
  1. Partition Love(Music Video)
  2. Making Movie -Jacket Shooting-
  3. Partition Love -Short Movie-
Type-B CD収録曲
  1. Partition Love
  2. 月の気まぐれ
  3. Partition Love(Instrumental)
  4. 月の気まぐれ(Instrumental)
Type-B DVD収録内容
  1. おでかけムービー -名古屋・大須編/東京・月島築地編-
Type-C CD収録曲
  1. Partition Love
  2. 月の気まぐれ
  3. Partition Love -Royal Mirrorball Mix-
  4. Partition Love(Instrumental)
  5. 月の気まぐれ(Instrumental)
東京女子流ライブBlu-ray / DVD「TOKYO GIRLS' STYLE LIVE AT BUDOKAN 2013」 / 2014年4月16日発売 / avex trax
Blu-ray Disc 3枚組 / 10500円 / AVXD-91695~7
Blu-ray Disc / 6825円 / AVXD-91698
DVD 2枚組 / 5880円 / AVBD-92070~1
東京女子流(とうきょうじょしりゅう)

東京女子流

小西彩乃、山邊未夢、新井ひとみ、中江友梨、庄司芽生からなるダンス&ボーカルグループ。 エイベックスにとって約7年ぶりのガールズグループとして2010年1月1日に結成された。 同年5月にデビューシングル「キラリ☆」をリリース。2011年5月には1stアルバム「鼓動の秘密」を発表する。2012年12月には初の日本武道館単独公演を成功に収め、その1年後の2013年12月に2度目の武道館ライブを行う。また近年は、J、小出祐介(Base Ball Bear)、八王子Pといった幅広いアーティストからの楽曲提供、Maltine Recordsとのコラボ作品発売も話題に。2014年は2月にシングル「Partition Love」(カップリングには初主演映画「5つ数えれば君の夢」の主題歌「月のきまぐれ」を収録)、4月に武道館ライブの模様を収めたDVD / Blu-rayをリリースする。