ナタリー PowerPush - ザ50回転ズ
メンバー3人と行く淀川アンダー ザ ブリッジ
俺らの二枚目が世間の三枚目やから
──くさい部分は残しつつも、ラブソングという体裁を取ったことで、バンドのシリアスな面もわかりやすく伝わるようになりましたね。
ドリー 確かに、ロックンロールを二枚目な音楽だと思ってる人には、「ロックンロール世界旅行」は絶対届かないですよね(笑)。
ダニー 「ロックンロール世界旅行」は五枚目やもん! 普段ロックを聴いていない人からしたらきっとダメダメダメ! でも今回のアルバムもそういう人からしたら三枚目寄りかもしれんね、ジャケットからして(笑)。
──でも今作はザ50回転ズの持つ三枚目の部分を活かしつつ、二枚目感も出てるんです。だからええ感じなんですよ。
ダニー 二枚目半というやつね(笑)。それは確かに出てるかも。今回は最初二枚目を目指してたとこもあるけど、結果やっていくうちにこういう感じになったというか。
ボギー 俺らの二枚目が世間の三枚目やから。
ダニー だからこの二枚目半のあたりがちょうどええのかもね。THE ROLLING STONESやAC/DCなんかも三枚目な部分はあるけど、あの音を聴いてると、そんなんすっ飛ばしてくれるやないですか。そういうロックの力、ゾクゾク感みたいなもんを信じてるとこはありますよね。というかね。例えばTHE BLUE HEARTSも「こうやったら変わり者として映るんやろな」と計算しているんやなく「こうやったらカッコええやろな」と思って演奏しとるんやと思うんですよ。でも、テレビの歌番組とかに出ると冷ややかな視線もあったりするだろうし。僕らも近いものがあるとまでは、よう言わないですけど、ただ根元は一緒じゃないのかなとは思いますね。好きなものが一般とは違った悲しさというか。
ドリー 自分らがガツンとやられる人は、昔から“こっち側の人”だったんですよね。
ダニー “こっち側の人”って、ええ表現やね!
こっち側とあっち側の橋渡し的な作品になってるかも
──気が早いかもしれませんが、次の作品はどんなものになるんでしょうか?
ドリー 正直、今は全てを出し切ったから、次の展望みたいなものはないんです。でもいつも必ず自分たちが面白いというものがあって、それをいつもどおり形にしていくだけなんで。
ダニー いつも何かあるもんね。「もう飽きた」とかないもんな。
──今作はロックンロールにガツンとやられた“こっち側の人”だけでなく、普段ロックを聴かない“あっち側の人”にも届く可能性を秘めている気がするんですよね。
ダニー 確かに今作は、こっち側とあっち側の橋渡し的な作品になってるかもですね。もしかしたら、あっち側との距離が真ん中の中洲くらいまで近づいてるのかもしれないですけど。でも別に俺らがあっち側に渡ってやろうとも思ってないんですよ。フラットにラブソングを書いたらこうなっただけで。
──好きなことをいつもどおりやってきただけ?
ダニー あっち側を意識しすぎたら俺ら舞い上がってしまうと思うんで。
──大衆を意識したりしたわけじゃないのにこうなったというのがええんですよね。知らず知らずのうちに、中洲側をもザ50回転ズのロックンロールで泣かしていたみたいな。
ダニー 「中洲を泣かす」……なるほどね! さすがライター!
──いや(笑)、別にそういうつもりで言ったんじゃないんですが。
ダニー あはは(笑)。でももう何をやってもザ50回転ズの音になるという自信があるので、心配せんで見といてほしいというのは強く思いますよ(笑)。
ドリー やりたいことだけやって、作品が完成する気持ちよさったらないもんね。
ダニー でも深く考えてへんだけかもね。金だけはずっと欲しいわけやし(笑)。まあ、作りたくもないものを作ってしょーもない金をつかむなら、バイトやってたほうがええし。
──確かにそうだと思います。
ダニー わかりやすく言うと「ロックンロール世界旅行」は心の震えを誘発するタイプのアルバムではないと思うんです。馬鹿馬鹿しくて盛り上がるけど、毎日聴くレコードではないという(笑)。そういう意味では「ロックンロール・ラブレター」のようなレコードは毎日聴けるし、「人生の1曲になりました!」と言ってもらえる可能性もあるレコードやと思う。天邪鬼な気持ちで作ったわけじゃなくて、作りたくて作ったわけやからね。馬鹿馬鹿しいのも感動的なのも、どちらもちゃんとザ50回転ズなんですよ。
ドリー でもこんだけ言っときながら、次はあっち側の人をバリバリに威嚇する天邪鬼なアルバムになったりして(笑)。
ダニー それやったらまだええけど、こっち側の人であるロックンロール好きをバリバリに威嚇するヒップホップアルバムになったりしてな!(笑)
──(笑)。とにかくあっち側とこっち側の垣根を越えて、少しでも多くの人の心を震わせるロックンロールレコードを、これからも作り続けてください!
一同 はいっ!
CD収録曲
- 涙のスターダスト・トレイン
- エイトビートがとまらない
- ロックンロール・ラブレター
- おねがいR・A・D・I・O
- Baby,I Love You
- ぶっちぎりのラブソング
DVD収録内容
- The 50KAITENZ JAPAN TOUR LIVE AT TOKYO
ザ50回転ズ(ざごじゅっかいてんず)
ダニー(G, Vo)、ドリー(B, Vo)、ボギー(Dr, Vo)の3名により2004年に大阪で結成。「なにわのラモーンズ」と呼ばれるパンキッシュなガレージサウンドが特徴。2006年1月にアルバム「50回転ズのギャー!!」でメジャーデビューを果たし、「FUJI ROCK FESTIVAL '06」や「SUMMER SONIC」などの大規模フェスに多数出演。世界最大の音楽見本市「SXSW」やドイツ「ASIA PACIFIC WEEKS」へ招聘されるなど海外での活動も積極的に行う。2010年にソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズに移籍して以降は、ミニアルバム3部作「ロックンロール・マジック」「ロックンロール世界旅行」「ロックンロール・ラブレター」を発表。「ロックンロール・ラブレター」収録の「涙のスターダスト・トレイン」は映画「荒川アンダー ザ ブリッジ」の主題歌に起用された。