ナタリー PowerPush - ザ50回転ズ
メンバー3人と行く淀川アンダー ザ ブリッジ
底に濃い原液が溜まってた
──ラブソングというのは非常に多くの人に伝わりやすいテーマだと思うんですが、今後の作品もこの路線で行こうという考えはありますか?
ドリー このミニアルバム3部作全て「これがザ50回転ズだ」と思ってます。でもラブソングというコンセプトはおそらく今回だけのものになるでしょうね。
ダニー ミニアルバムやからこそできたというのもあって、このイメージでフルアルバムというのはクドいんちゃうかな(笑)。ミニアルバムでコンセプトを決めたからこそ、振り切ったもんが作れたんやと思うんです。
ボギー ミニアルバムの強さやね。フルではこれは出てこないよね。
ダニー だからもし次フルアルバムを作るとしたら、この3作で出たものを踏襲した上で、ザ50回転ズのロックンロール一直線にいくのは間違いないなと、今はより思うんですよね。
──関西のバンド特有の臭みは持ちつつも、今作はより大衆的というか、ポピュラリティがあると思うんです。
ダニー ほんまですか!? でも6曲目の「ぶっちぎりのラブソング」みたいなズッコケた曲を入れてしまうというのが関西特有の血ですよね(笑)。ほかの曲を聴くとシュッとしてるかもやけど、6曲目やジャケットを見たらガッカリみたいな(笑)。でもいろんな人に聴いてもらって勝負できる曲が集まったのは間違いないと思いますね。
──カルピスで言うたら、原液そのまんまの濃さで飲ますやり方もあると思うんです。でも今作は薄まりすぎずええ感じの濃さをちゃんと作れてるのかなと。
ダニー そういう意味ではええ希釈なんかもね。でも最後6曲目にいったら、底に濃いいのが溜まってたみたいな感じなんかも。
「4人で日本中を泣かしてやりましょうや!」
──タイアップというとネガティブなイメージを持たれることもありますけど、今回のタイアップは非常に幸せなケースだと思うんです。依頼されて作った主題歌が、ミニアルバム全体にもええ影響を及ぼしてくれたわけですから。
ダニー ほかの大人を介さずに、監督が気持ちで直接来てくれたいうのがうれしかったね。現場to現場でね。監督みたいな物作りをしている人の中に、ザ50回転ズを本当に好きでいてくれる人がいたんやなというのはバンド冥利に尽きるというか。もちろんそのためにバンドをやってるわけではないですけど。
ドリー 監督が曲に求めている方向性や熱さが、すごくストレートに伝わってくるんですよ。
ダニー 歌詞の内容はロマンチックにいきすぎず、ビートも破天荒にいきすぎず、でも一番50回転ズの良さが出るようにっていう話を、監督としてたんですよ。「監督とバンドの4人で日本中を泣かしてやりましょうや!」みたいな。話もらってうれしすぎて、ええ曲書けてうれしすぎて、映画館で実際に聴いてほろっときてうれしすぎて。自然とロマンチックな心持ちになりますよね。
ありふれてないラブソングの形を示せた
──ラブソングという一般的なコンセプトを、ザ50回転ズが選ぶことについてはいかがでしたか?
ドリー そうですよね。はっきり言うとラブソングってめちゃくちゃ世間にありふれてるじゃないですか。「好き」だの「嫌い」だの(笑)。
ダニー 「ありがとう」だの「さようなら」だの!
ドリー そんなんばっかりや(笑)。
ダニー でも胸キュンでロマンチックなラブソングというのも、別に今までのザ50回転ズになかったわけじゃないですし、俺らもそういうの好きですからね。
──そんな中、今回はザ50回転ズ流のラブソングになっていると思います。
ドリー うん、今回はありふれてないラブソングの形は示せた気がしますね。
ダニー 俺らとしては逆をいってやろうとかではないんやけど、ただ歌詞の世界で言うと、現実と距離を置いてるところはあるかもしれないですね。今の若い人に訴えかけるのであれば、ケータイとかパソコンとかSNSとかいろんなフレーズ入れたほうがええかもしれんし。でもそれを俺らは出したくない。偉そうに言っちゃいましたが(笑)。
──ザ50回転ズはくさいことを歌っているけど嘘くさくはないんですよね。
ダニー そうそう! ほんまに思ってることを歌ってるから嘘くさくはない。でも、くさいんは好きなんよ。AからF♯マイナーにいってしまうみたいなね、コード進行で言うと(笑)。あれが一番胸にくるんですよ!
ドリー 好きな曲みんなそれやもん(笑)。
CD収録曲
- 涙のスターダスト・トレイン
- エイトビートがとまらない
- ロックンロール・ラブレター
- おねがいR・A・D・I・O
- Baby,I Love You
- ぶっちぎりのラブソング
DVD収録内容
- The 50KAITENZ JAPAN TOUR LIVE AT TOKYO
ザ50回転ズ(ざごじゅっかいてんず)
ダニー(G, Vo)、ドリー(B, Vo)、ボギー(Dr, Vo)の3名により2004年に大阪で結成。「なにわのラモーンズ」と呼ばれるパンキッシュなガレージサウンドが特徴。2006年1月にアルバム「50回転ズのギャー!!」でメジャーデビューを果たし、「FUJI ROCK FESTIVAL '06」や「SUMMER SONIC」などの大規模フェスに多数出演。世界最大の音楽見本市「SXSW」やドイツ「ASIA PACIFIC WEEKS」へ招聘されるなど海外での活動も積極的に行う。2010年にソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズに移籍して以降は、ミニアルバム3部作「ロックンロール・マジック」「ロックンロール世界旅行」「ロックンロール・ラブレター」を発表。「ロックンロール・ラブレター」収録の「涙のスターダスト・トレイン」は映画「荒川アンダー ザ ブリッジ」の主題歌に起用された。