ナタリー PowerPush - ザ50回転ズ
串カツトークに花が咲く これがロックンロール新世界旅行!?
他者を否定せんでも言いたいことは言える
──3人とも大阪を愛してるのは伝わってきますけど、そのせいで活動が偏ったりすることもないですよね。
ダニー レコード作ってツアー行ってというのは、どこに住んでてもやれるからね。むしろ、大阪に住んでるほうがツアーのアドバンテージはあるかも。東京におるとなかなか九州行かれへんしね。ツアーバンドとしては、関西に住んでるのは大きなアドバンテージあると思いますよ。日本中どこでも行ける。
──若手バンドの中には、関西のインディーズシーンや関西のライブハウスにこだわり過ぎてる子らもいると思うんです。
ダニー アンチっぽい感じですよね。でも、みんな一度はその道を通っていると思いますよ。そこを経て、心地よい状況で自分のやりたいことができるようになるんやないですかね。
──「東京の業界人は信用できない」と思い込む若い子もいたりすると思うんです。でも、中にはちゃんとバンドへの愛がある人もいるわけやないですか。ザ50回転ズは、そこに気付いたのが早かったように思えて。
ダニー それはどうやろ?
──でも実際メジャーで5年間も活動を続けてるわけですし。
ダニー 協力してくれる人にはありがたいことに出会えてますけど。うーん、まあなんというかな、状況ごとにいろいろ経験して、同じ轍を踏まへんようにというか……。そうやってアホなりに学んできただけで(笑)、意地張ったけど結果あかんかったこともあるし。例えば、こだわりすぎてライターさんや記者さんにケンカを売ったら、全然おもろない記事が上がってくるとかね(笑)。
ドリー わかるわ(笑)。
ダニー 他者を否定せんでも、言いたいことは言えますから。
ドリー でもひねくれた時代を通ってきてるバンドのほうが俺は好きやけどな。話ができそうな気がする。
ボギー 気は合うやろな。
ダニー そりゃそうや。最初から大人の言うことを全部聞いてるバンドなんてクソくらえや(笑)。
──すみません。結果、他者を否定させちゃってますね(笑)。
ダニー (笑)。まあやりたいことがある以上、自分の意地は通したいですから。レコード出してキャンペーンやって、ツアーしてという中で、年々やりたくないことは減ってきてるし。わかるまで時間はかかったけど、そのおかげで5年やってこれたんやろし。
ドリー ちゃんとぶつかってきたから。常々やりたいことはできてるし、今が一番できてるかな。
ダニー リリースのたびに幸せですよ! 毎日楽しいてしゃあないなと思ってますよ!
ジャケにこだわらんバンドはたいしたことない
──自分たちの殻に閉じこもってるほうが逆に楽だと思うんです。ちゃんと広げようとして、たくさんの大人たちと絡んで戦うほうがほんまに大変ですよね。特にザ50回転ズみたいな、関西の臭みのあるバンドは特に。
ダニー 臭みどころか腐臭漂うバンドですから、我々は(笑)。ただそんな大変なもんやないけど、好きなことやりながらも、ちゃんと枚数や動員を少なからず気にしていかなあかんという自覚はあるんですよ。でもそれを前提にバンドをやってるわけでもないですけど。話のわからん大人は山ほどおりますが、今は話のわかる大人と出会えてますから。俺らを汲み上げる努力をしてくれてますからね。
──どんな仕事でも愛のある人とない人はいますしね。
ダニー 俺らの場合はスタッフも常に音楽に触れてる人がいいです。「ストーンズやったら何枚目がええ!」とか、そんな話ができるような(笑)。
──今「何枚目」って言わはりましたけど、CDを買わず、配信で済ます人も増えてきてますよね。
ダニー そうやけど、でもスタッフにはやっぱりパッケージングされたものへの愛は持っといてほしいですわ。
──ダウンロードを否定するわけではなくても、やっぱりジャケットや歌詞カード込みで音源を愛する部分はありますしね。
ドリー ウチらもジャケットは自分らでデザインしてきたし、人にデザインしてもらうときも、常に話し合って意見を出してますからね。そこをないがしろにされると寂しいというか。
──わかります。ザ50回転ズのディスコグラフィはジャケット写真を見ているだけで楽しいですもんね。
ダニー そうそう、アクがすごいっ! 画面がうるさいっ! 俺たちは満足してるけど、初めて手に取る人の戸惑いを考えるとデメリットを感じないこともないですね(笑)。でも好きでやってることだから、そこはわかってもらわないとね。
──一貫したこだわりは感じます。
ダニー 俺の知り合いの看板屋のオッサンが言うてたんですけど、「看板に力入れへん店はたいしたことない!」って。だから、ジャケにこだわらんバンドはたいしたことないですよ。なぜなら、パッケージされたものの美しさを信じてるから! いやー、でも俺らのジャケットはカロリー高いわ(笑)。やりたいことやってきたけど、時代とかけ離れた質感は改めて感じますね。でも、これからもやっていくんでしょうね! きっと時代に逆走しながら! コースアウト感がすごい!
写真見て「なんじゃ!?」って思うようなバンドに憧れる
──なんなんでしょうね。この関西のバンド特有の、全力でやればやるほど伝わりにくくなる、素敵な残念感というか(笑)。
ダニー 本人たちが好きなことを全力でやってんのに、全然売れてないとかね! ……俺たちやないか! バカヤロウ!(笑)
ドリー 家の近くのライブハウスとか遊びに行っても思うんやけど、知らんバンドでもやりたいことをやってるバンドはおもろいもんね。演奏とか曲とかおいといて、やりたいことやってるバンドは光ってる。
──でも、上辺だけのイメージで判断されて、なかなか広がらない悔しさを感じたりしませんか?
ダニー 例えば今回の撮影もそうですけど、顔を作っちゃうやないですか。そのおかげでひときわキャッチーになるのも事実やし、かつ、あの顔のせいでスッと入ることのできない人がいるのも事実!
──ちゃんと、その辺りの自覚は持たれてるんですね。
ダニー 持ってます(笑)。てか、最近考えたらそうでした! でも俺らが昔から好きなのはTHE TIMERSとかTHE TOY DOLLSとか、写真見て「なんじゃ!?」って思うようなバンドだしね。でも音楽を聴いたらカッコいいっていう。俺、これよく言うんですけど、「サーカスで一番うまい人がやるのがピエロや」って。そういうものへの憧れがあるんですよ。覚悟の上でやってますから。
──みんな、わかりやすいものを求めすぎなんですかね。
ダニー でも、例えばタモリさんが「いいとも」で、いまだに四カ国語麻雀のネタしかやらんかったら、それはあかんでしょ?
──そうですね(笑)。
ダニー やらしくなく広がってほしいし、興味ない人にどんどん聴いてもらいたいと思ってますからね。で、これだけやっても興味持ってもらえないなら「しゃーない!」って泣きながら言うしかないから(笑)。
──アーティストがわざわざ「俺ら実はこんなことを考えていて、実は努力してるんですよ」みたいなことをしゃべっても仕方ないですからね。
ダニー そういうの一番嫌いなんですよ! わかってないふりしてたほうがカッコいいでしょ(笑)。
──それを今インタビューでしゃべらせてるのも申し訳ないですけど(笑)。
ダニー いやいや、大丈夫ですよ! ただ門戸の開け方はインテリジェンスを問われますよね。RAMONESで言うたら、ジョニーが音だけでなくイメージ戦略も担っていて、ディー・ディーが髪を切ったら怒られたんですよ。ディー・ディーはオシャレボーイやから「こんな時代錯誤の髪型は嫌だ!」と。でも、ジョニーは「それがおもろいねん!」って言うわけです。だから俺らはディー・ディーじゃなくて、ジョニーの発想に近いんでしょうね。最初、お客さんはジャケットとかアー写とかテレビでちょっとだけ流れるPVとか一側面しか感じられへんわけやないですか。そこからたどってライブまで足を運んでもらう。その入口は大事にせなあかんですよね。
ザ50回転ズ(ごじゅっかいてんず)
ダニー(G, Vo)、ドリー(B, Vo)、ボギー(Dr, Vo)の3名により2004年に大阪で結成。「なにわのラモーンズ」と呼ばれるパンキッシュなガレージサウンドが特徴。2006年1月にアルバム「50回転ズのギャー!!」でメジャーデビューを果たし、「FUJI ROCK FESTIVAL '06」や「SUMMER SONIC」などの大規模フェスに多数出演。世界最大の音楽見本市「SXSW」やドイツ「ASIA PACIFIC WEEKS」へ招聘されるなど海外での活動も積極的に行う。2010年、ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズに移籍し、約2年ぶりとなるミニアルバム「ロックンロール・マジック」をリリース。2011年7月に「ロックンロール世界旅行」を発表した。