ナタリー PowerPush - ザ50回転ズ
ポップで踊れるロックンロールがドーン! 痛快ミニアルバム「ロックンロール・マジック」
一発でドーン!ってロックンロールを鳴らしてやろうと
──ライブでは今作の曲をもう披露しているんですか?
ダニー やってます! お客さんの反応もかなりいいですよ。簡単な曲やし、すぐ覚えられますから!
ドリー 初めて聴いてもだいたい2番からサビを一緒に歌えるようになるからね(笑)。
ダニー そう、お客さんがAが来たらBが来るなって予想する、そのとおりに鳴っているので。何も裏切らない! そのままズドーン!とお客さんの望むとおりにいくでっていう。そういう曲が6曲ここに並んでおります。
──それを鳴らしながら、今改めてロックンロールの本質を体感しているような実感があるのでは。
ダニー そうなんです! やっぱり小手先でイジり倒すような音楽は鳴らしたくないんですわ。どうせやったら一発でドーン!ってロックンロールを鳴らしてやろうと。それは50回転ズが始まったときから何も変わってないですわ。
──今、日本の音楽シーンの中で、ロックンロールの市民権ってどんどん高くなっていると思うんですよ。
ダニー そうなんですかね?
──若いリスナーもポップな音楽として捉えている側面もあるし、事実、ロックンロールバンドの作品がチャートの上位に入ることも珍しくなくなってきたし。
ダニー ああ、なるほど。そう言われるとそうかもしれないですね。
──その中で50回転ズは、自分たち独自のロックンロールをどうシーンに打ちつけたいと思いますか。
ダニー 俺たちはロックンロールシーンのなかではけっこう浮いた存在やと思うんですね。なぜそうかと考えると、プンプン匂う歌謡曲の香りやあまりにも前に出ている色モノ感が俺たちのロックンロールにはあって。俺たちが求めているのは、ポップで、ガツンと踊れるロックンロールで、かつ見た目でも楽しめるバンドであるということ。ステージアクションであり、おそろいの衣装であり、顔の動きであり、髪型でありね。自分たちもそういうバンドが好きだったんですよね。SCREAMING LORD SUTCHとかね。THE ROLLING STONESやプレスリーもカッコいいと思われる寸前は「なんかおかしなやつが出てきたな」という感じやったと思うんですよね。
──トリックスターがロックスター、ポップスターに成り上がっていくような。
ダニー と、思うんですよね。だから世間に合うカッコいいもんとかには興味がないんです。俺たちがやろうとしても無理なのはわかりますが、二の線でロックンロールをやることにも興味がなくて。もともとサーカス的要素とかショー的要素があるロックンロールライブがしたくてバンドを組んだところがあるので。
──ロックンロールバンドは最高のエンターテイナーでもあれという?
ダニー まさにそうです。音楽を鳴らすだけやったらDJにも任せられる。ステージで目の前にいる3人が汗だくになって飛んだり跳ねたりしながら見せるライブ感を大事にしたい。だいたい見てくださいよ、この(アーティスト写真の)衣装。街中でその格好で歩いていたら変質者ですよ!
──まあ、100%職質されますよね。
ダニー こういう格好を臆面もなくできる人がステージに上がるべきやと思うんですよ!
──トラウマになるかもしれないほどキャッチーというね。
ダニー そう、そういうところが大事やと思うんですよね、ロックンロールは! ミュージシャンとしてお金をもらってステージに上がってるんやったら、半ば芝居がかっているように見えるかもしれないけど、別世界に連れていかれるような感覚をお客さんに味わってもらいたい。それこそ「ロックンロール・マジック」を信じてるから。
ドリー うん、信じてるね。
ボギー フェスとかでTシャツ、短パンの兄ちゃんがステージにポンポン出てきて、その間に俺らみたいなんが出てきたらめちゃめちゃ面白いじゃないですか。ひとつのアイコンとしても覚えやすいと思うし。
井口監督は僕らと近い感覚を持っている
──そして、井口監督が手がけたショートムービーなんですけど。これが、すさまじい。
ダニー いいでしょ?
──荒唐無稽でどこまでも過剰なんだけど、だからこそ一瞬も見逃せなくて。ここにも50回転ズに触発された、井口さんの「ロックンロール・マジック」が注がれていると思う。どういう流れで井口さんに監督にビデオ制作を依頼したんですか?
ダニー まず「この6曲のストーリーで映画を作らない?」って話になったんです。ビデオクリップとして、ショートムービー風の映画を作ったら絶対面白いやんって。そうなったときにこのストーリーを普通に撮れる人はいっぱいおるやろうけど、そこに監督流の解釈を新たに加えて、異次元にぶっ飛ばしてくれるような人はいないか、ということになって。
──そう、このショートムービーのほうには、原案とは異なる監督オリジナルのストーリー解釈が施されているんですよね。
ダニー そう、井口さん流の解釈で咀嚼してもらった形がこのビデオで。これだけ飛躍できる人はほかにおらんなって思います。そもそも俺たちは井口監督の存在を存じ上げていなかったんですけど、監督の作品を観てみるとくだらなさ、バカバカしさは俺たちがロックンロールに求めているものと一緒じゃないかと思いまして。それで実際お会いしてお話したら、監督にもその場で50回転ズのロックンロールを気に入っていただいて。監督も俺たちの存在をご存知なかったと思うんですけど、「ロックンロールに対する憧れが自分の中にもある」とおっしゃっていて。すぐに通じ合うことができましたね。
──ストーリー解釈や演出は基本的にお任せして?
ダニー そうですね。お任せしてケミストリーを期待したら、大爆発が起きましたね! 井口さんのやりたいこと──ゾンビ、お色気、ギャル、アクション、マシンガン、ヤクザ、全部出てます! 撮影もスムーズで、2日で録りました。スタッフはヘロヘロでしたけど(笑)。
ボギー 監督がカメラを回して、モニターを観ながら誰よりも爆笑していたのが印象的で。ああ、この人はやっぱり僕らと近い感覚を持っているんやと思いましたね。撮りたい画があるから無理やりストーリーを飛躍させてしまう感覚とかすごく共感できた(笑)。
──では最後に改めて、このミニアルバムをリスナーにどう楽しんでもらいたいですか。
ダニー 「ロックンロール・マジック」という全体を通したコンセプト、ストーリーがはっきりしているので。何も意識せずに聴いても「ロックンロールってええもんやなあ! マジックかけられたで!」って感じてもらえると思います。俺たちがやりたいこと全部ここに詰め込みました!
ザ50回転ズ(ごじゅっかいてんず)
2004年に大阪で結成された3ピースバンド。「なにわのラモーンズ」というキャッチコピーがよく似合う、パンキッシュなガレージサウンドが特徴。2006年1月にはアルバム「50回転ズのギャー!!」でメジャーデビューを果たし、「FUJI ROCK FESTIVAL '06」や「COUNTDOWN JAPAN 06/07」などの大規模フェスティバルにも出演。年末にTOMMY RAMONEより絶賛された「1・2・3・4!!」を発表。2007年には世界最大の音楽見本市「South By South West」に参加。2ndアルバム「50回転ズのビリビリ!!」をリリースし、翌2008年にミニアルバム「レッツゴー3匹!!」を発表。2009年初頭には3rdアルバム「50回転ズのビックリ!!」をリリースするなど、ハイペースで作品を世に送り出す。また毎年数多くのライブを敢行。そのパフォーマンスにも定評がある。2010年、ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズに移籍し、約2年ぶりとなる新作ミニアルバム「ロックンロール・マジック」をリリース。この作品を携えての発売記念イベント「50回転ズのロックンロール・マジックアワー」と全国ツアー「50回転ズのロックンロール・マジックツアー」が決定している。