ナタリー PowerPush - 4D-PIANO ANIME Theater!
4人のピアニストが織りなす四次元アニソンプレイ
摩訶不思議でアドベンチャーなピアノプレイ
──その事務員さんアレンジの「ドラえもんのうた」に象徴されるように、このアルバムって3Dのとき以上にド王道のアニソンばかりを集めてますよね。最新のアニソンにしても「太陽曰く燃えよカオス」「ジョジョ ~その血の運命~」と、どちらも去年から今年にかけて一番話題になった楽曲ですし。
紅い流星 そういえばそうだ(笑)。ただそれはたまたまというか、あえてそういう選曲をしようとは思ってなくて。ソロ曲はもちろんなんですけど、合奏曲もそれぞれ好きな曲を持ってきただけ。そうしたらこういう並びになっていたというだけなんですよ、実は。
まらしぃ ですね。僕は今でこそ大学卒業が危ぶまれるくらい朝起きられないんですけど(笑)、昔は毎週日曜日、ちゃんと早起きして「おジャ魔女どれみ」を観る子供だったし、しかもすでにニコ動にテレビサイズバージョンの「演奏してみた」動画を公開していたこともあったので、今回もソロで「おジャ魔女カーニバル!!」を弾いてみたって感じですから。で、プレイスタイルは事務員さんとは正反対。レコーディングのとき、なぜかすごく楽しくなっちゃったので、そのテンションに任せてガンガン弾いてみたら、なんか思いっきりハシャいだというか、スゲーリズミカルなアレンジになっちゃってました(笑)。
──合奏曲のうち、まらしぃさんが選んだ曲って?
まらしぃ 「太陽曰く燃えよカオス」と「ハレ晴レユカイ」ですね。僕、この4人の中では屈指のニコ厨なので、ニコ動で超メジャーなこの2曲を選ぶべきだろう、と(笑)。
紅い流星 特に「ハレ晴レユカイ」は当然僕も事務員さんも好きな曲ではあったので、3人でまらしぃならではのロックピアノアレンジでガンガン弾いてみた、と。で、僕もまらしぃと一緒で、子供の頃「ポケモン」と「ドラゴンボール」がすごい好きだったから「めざせポケモンマスター」と「摩訶不思議アドベンチャー!」を選んでみたって感じですね。ただ「めざせポケモンマスター」は僕の得意分野でもあるラテンジャズテイストに仕上げたのでアレンジもプレイも比較的スムーズだったんですけど「摩訶不思議アドベンチャー!」が……。原曲がそもそも難しいので、それをがんばって2人で弾いてみたらどうなるのかっていうテーマを設定してみたら、ホントにすごいがんばらなきゃいけない事態になっちゃって(笑)。
H ZETT M ホント摩訶不思議というか、アドベンチャーしましたねえ……。
「アニメソング」とは何か?
──そして流星さんのソロ曲が「葛飾ラプソディ」。「ド王道を集めましたよね」と言っておきながら、実はこの選曲は意外だったんですよ。確かにタイトルからして「こち亀」のための曲ではあるんだけど、原曲って堂島孝平さんの書いたホントにウェルメイドなポップミュージックですよね。いわゆるアニソンの文脈からはちょっと外れているような……。
紅い流星 でもおっしゃる通りタイトルにせよ、森雪之丞さんの書いた詞にせよ、ものすごくアニメに寄り添ってるじゃないですか。あと僕、ホントに「こち亀」が好きなので、僕的にはこれは“Theアニソン”なんですよ。しかも原曲は僕のスタイルに近いというか、ちょっとスウィングしている楽曲なので、ホンキートンクピアノを使ってラグタイムっぽいアレンジにしてみただけ。選曲もアレンジも自然とそうなっていたって感じですね。
事務員G でも確かに「じゃあアニソンって何?」って聞かれると、その線引きって難しいですよね。
紅い流星 確かに。例えば「エヴァ」のエンディングテーマの「Fly Me to the Moon」って、言ってしまえばただのスタンダードジャズのカバーですもんね。でも「かつて地球には黒い月と白い月が衝突していて……」っていう「エヴァ」のストーリーとリンクしているから、あの曲は僕の中ではアニソン。すごく的確な選曲なんですよ。
H ZETT M だから楽曲がアニメの世界観をどれだけ守ってくれてるかってことが分かれ目になるんでしょうね。
──そのH ZETT Mさんが選んだのが……。
H ZETT M 「鉄腕アトム」と「ジョジョ ~その血の運命~」ですね。どっちも昔から好きだったっていうのがまずあって。「鉄腕アトム」はいつか弾きたいな、弾きたいな、弾きたいなとずっと思っていたところに、こういう遊ぶ機会をいただけたので、その思いの丈をピアノにぶつけてみたらああいう……。
紅い流星 まさにアバンギャルドなアレンジに(笑)。で「ジョジョ」を弾くことになったのは僕のプッシュがあったからなんですよ。H ZETT Mさんは「ジョジョ」のほかにもう1曲、合奏曲の候補を持ってきてくださっていて「どっちにしよう」って話になったので「ここはジョジョでしょう」と。
H ZETT M 昔から「ピアノはオーケストラだ」みたいな言葉もあることだし、しかも原曲はすごくドラマチックなんだから、ここは4台のピアノでシンフォニックに弾いてみよう、ということで。4人で弾くダイナミクスを極限まで生かして、それこそ4D-PIANOを成仏させる勢いで弾いてみたいな、と。
紅い流星 僕らを殺さないでくださいよ!(笑)
事務員G でも本当にダイナミックなアレンジになりましたよね。
収録曲
- 太陽曰く燃えよカオス(這いよれ!ニャル子さん)
/ 事務員G、紅い流星、H ZETT M、まらしぃ - ドラえもんのうた(ドラえもん)
/ 事務員G、紅い流星、H ZETT M、まらしぃ - おどるポンポコリン(ちびまる子ちゃん)
/ 事務員G、まらしぃ - 鉄腕アトム(鉄腕アトム)
/ H ZETT M - おジャ魔女カーニバル!!(おジャ魔女どれみ)
/ まらしぃ - めざせポケモンマスター(ポケットモンスター)
/ 事務員G、紅い流星、H ZETT M、まらしぃ - 魔訶不思議アドベンチャー!(ドラゴンボール)
/ 紅い流星、H ZETT M - 葛飾ラプソディ(こちら葛飾区亀有公園前派出所)
/ 紅い流星 - アシタカせっ記(もののけ姫)
/ 事務員G - ハレ晴レユカイ(涼宮ハルヒの憂鬱)
/ まらしぃ、事務員G - ジョジョ~その血の運命~ (ジョジョの奇妙な冒険)
/ 事務員G、紅い流星、H ZETT M、まらしぃ
H ZETT M×紅い流星×事務員G×まらしぃ「4D-PIANO LIVE Theater!」ライブ
2013年9月13日(金)東京都 下北沢GARDEN
OPEN 18:00 / START 19:00
※本特集ページの最後にナタリー先行販売の情報あり
H ZETT M(えいちぜっとえむ)
生年月日不詳、青鼻が特徴のピアノマジシャン。1999年よりヒイズミマサユ機名義でPE'Zの一員として活動を開始し、2004~2005年にはH是都Mの名前で第1期東京事変に参加する。2007年、アルバム「5+2=11」(ゴッタニ)でソロデビューを果たし、以来4枚のオリジナルアルバムと、まらしぃ、紅い流星とともに3台のピアノでアニメソングをカバーする「3D-PIANO ANIME Theater!」など3枚のコンセプトアルバムをリリース。2011年には台湾でのワンマンホールライブを行うなど、その高い技巧と唯一無二のパフォーマンスは国内外で大きな注目を集めている。そして2013年6月、まらしい、紅い流星に加え、事務員Gとともに「ANIME Theater!」シリーズ第2弾「4D-PIANO ANIME Theater!」をリリースした。
紅い流星(あかいりゅうせい)
ニコニコ動画の「演奏してみた」カテゴリなどで活躍するキーボーディスト。2008年、ゲーム「ファイナルファンタジーV」のBGMをアレンジした「演奏してみた」動画「俺らぁビッグブリッヂさ行ぐだ」が注目を集めて以来、ソリストとしてさまざまな楽曲をジャズアレンジした「演奏してみた」動画をニコニコ動画などに投稿する。2009年にはインストバンド[Mint]を結成し、ニコニコ超会議、ニコニコ超パーティといったニコニコ動画の公式イベントなどのステージを踏むかたわら、数多のボカロPや歌い手のバックバンドも務めている。また、東方Projectの楽曲を爆音ジャズアレンジする「東方爆音ジャズ」シリーズや、ボーカロイド曲をアレンジする「ボカロ爆音ジャズ」なども制作する。2012年にはH ZETT M、まらしいとともにアニソンカバーアルバム「3D-PIANO ANIME Theater!」をリリースし、2013年には事務員Gと40mPが企画した「虹色オーケストラ」にキーボーディストとして参加。
事務員G(じむいんじー)
ニコニコ動画の「演奏してみた」カテゴリで活躍する演奏者。ピアノをメインにさまざまな楽器を同時に演奏する動画がネット上で大きな反響を呼んだ。2008年よりニコニコ動画でのパフォーマーを集めたイベントを企画し始め、2010年からは台湾・香港を始め海外でのイベント制作も精力的に行う。2012年にはボーカロイド楽曲214曲をつなげて弾いた映像がニコニコ動画「動画アワード」の「演奏してみた」カテゴリでMVDを受賞。2013年6月にはH ZETT M、紅い流星、まらしぃとともに4台のピアノでアニメソングをカバーするアルバム「4D-PIANO ANIME Theater!」に参加している。
まらしぃ
2008年よりニコニコ動画の「弾いてみた」動画などで活動しているピアニスト。ボカロPとしてもオリジナル曲を投稿している。2010年にDMEから1stアルバム「V.I.P(Marasy plays Vocaloid Instrumental on Piano)」をリリース。その後H ZETT M、紅い流星とのコラボでアニメソングをカバーするアルバム「3D-PIANO ANIME Theater!」を発表したり、クレモンティーヌとのライブ競演、武部聡志&鳥山雄司とのセッションなどピアニストとして幅広い活躍を見せている。2012年10月には初の全編ピアノソロアルバム「V-box」を発表。2013年6月、H ZETT M、紅い流星、事務員Gとともに「ANIME Theater!」シリーズ第2弾となる「4D-PIANO ANIME Theater!」をリリースした。