20th Centuryニューシングル「水曜日」インタビュー|「今これを歌いたい」自然体の活動で生まれたミツメとのコラボ曲

20th Centuryのニューシングル「水曜日」が10月17日に配信リリースされた。

5月に曽我部恵一提供の「夢の島セレナーデ」、8月にグソクムズ提供の「風に預けて」を配信リリースしたトニセン。新曲「水曜日」はミツメの提供曲で、“週の後半に向かって進んで行こう”というメッセージがミニマルなバンドサウンドに乗せて歌われている。今回の新曲配信にあたり、音楽ナタリーではトニセンへのインタビューを実施。ミツメとのコラボに至った経緯や、楽曲の聴きどころなどを聞いた。

取材・文 / 三浦良純

ミツメとのコラボ

──曽我部恵一、グソクムズの提供曲に続いて、今回はミツメの提供曲で、なかなかチャレンジングな印象を受けました。

井ノ原快彦 そうですか? 実はそんな感じもなくて、僕らの範囲内に収まっている曲だと思うんですよ。個人的なお付き合いはないですけど、それぞれ気になっているアーティストさんを出し合う中で「ミツメさんいいよね」という話になったんです。それで最初にもらった仮歌を聴いたあと、僕の解釈で仮歌を入れ直して、それを2人に聴いてもらったら「おー、こういうことね」と。それをミツメさんに返したらオケを新しく作り直してくれて、この形になりました。

坂本昌行 若い方のフィルターを通すと、こういう形になるんだって新鮮さはありましたね。“がんばらない楽しさ”みたいなものが感じられて、聴くと落ち着ける楽曲だと思います。

井ノ原 この曲はやっぱり長野くんの歌い出しがいいんだよ。ね?

長野博 「ね?」って(笑)。

井ノ原 「そうね」って言っていいと思うよ。柔らかいところから入ってくれるから。歌詞は「どんな月曜日だったの」と問いかけるところが寄り添う感じでいいよね。やっぱり月曜日はすごく憂鬱だって人が多いと思うけど、それを乗り越えて水曜日まで来てもまだ半分。だから木曜日からも楽しめるような曲が欲しいってオファーをしたんですよ。逆に言えば、それしか言ってないんです。そしたらまさに「水曜日」というタイトルの曲が来て。「水曜日ってこういう日であってほしいよね」という曲です。

坂本 僕は最後の「二度と同じ日はない 今日」という歌詞がなかなか言えないことだなと。当たり前ではあるんですけど、嫌なことでも楽しいことでも二度とないし、貴重なんだなって思えますよね。それをサラッと最後に持ってくるのが素敵だし、「二度と同じ日はない」と思ったら明日からもがんばれそうだなって。

井ノ原 水曜日に限らずだよね。毎日そうなんだなって思う。長野さんはどうです?

長野 個人的なことを言うと、実家が自営業で、水曜日が定休日なんですよ。家族でどこかに出かけるかもしれないし、水曜日はなんか特別だったから、しっくりくるんですよね。小学生のときは早く帰ろうって思ってましたね。

井ノ原 えー、めっちゃいい話じゃん。

長野 その「水曜日」ってワードに歌詞のすべてが寄り添っている印象を受けました。

井ノ原 素晴らしいね。

20th Century「水曜日」ジャケット

20th Century「水曜日」ジャケット

今歌いたい曲を歌っている

井ノ原 レコーディングはどうでしたか?

長野 レコーディングの前から聴いていて、馴染んでいた曲だったのでやりやすかったです。

──活動にあたって、いろいろな楽曲を集めているとのことですが、今回の楽曲もそうして集まったストックからですか?

井ノ原 そうです。だからこの曲もずいぶん前から聴いていて。MENT RECORDINGのチームがすごく動いてくれているんですよね。とてもぜいたくなやり方だと思うんですけど、配信に前向きに取り組み始めて、「今これを歌いたいんだよ」って曲を出させていただけるんですよね。以前は先にリリースすることが決まって、タイアップが決まってから、最後に曲が決まることが多かったので。もちろんモノで欲しいって人もまだまだいるから、その欲望も満たせるような計画も立てつつなんですけど、気軽に曲を選べるぜいたくさがありますね。

坂本 僕らにとっては知らない楽曲に触れるチャンスでもあって。「なるほど、こういうのもあるんだ」「僕らが歌ったら面白くなるんじゃないか」と思いながら選ばせていただいています。

長野 今は、「この曲いいよね」というところがスタートで。選ぶ素材がたくさんあるのはすごく幸せなことですし、今までとは違うペースでやれているのはぜいたくだと思いますね。全然がんばらず、自然に楽しみながらやれています。

井ノ原 何より自分たちが楽しいからやる、っていうのを一番大事にしています。

──楽曲については、3人でお互いに意見を出し合っているんでしょうか?

坂本 特にそういうのはなくて。「これやりたい」「あれやりたい」じゃなくて「これいいよね」「これ楽しいね」ってことからスタートしていて、衝突もない。言葉を交わさなくても同じところを見ているような感じで、自然と導かれて楽曲ができていくんです。

井ノ原 僕はいろんな音楽が好きなので、「今こういうのやるの興味ある?」と2人に聞いたりすることはありますね。僕は2人の感覚をすごく信じてるから「今じゃないんじゃないかな?」とか「ちょっとわかんないな」って意見も信じるようにしているし。自分たちが聴き心地のいい音楽、歌いやすい音楽をやってる感じです。自分たちのラジオで好きな曲をかけたときに「音数が少ないのが今はいいな」と思ったんですよね。何が鳴ってるかわかるくらいの曲を聴きたい。それで「音は増やさないでください」って発注して。音数の少ない1970年代の音楽とか聴くと、3人とも「いいねえ」と思えるんですよ。

坂本 昔の音楽は、ものすごく音がつかみやすくて、体に入ってくる。わかりやすさ、馴染みやすさの感覚をみんなわかっているというか。ズチャズチャとか相槌の音も歌っちゃったりして。

長野 今の若い方たちも昔の音楽を聴いてインスパイアされた曲を作っていくわけじゃないですか。まったく音楽を聴かないで作るわけではない。ベースとなる昔の曲は、今聴いてもいいんですよね。