音楽ナタリー PowerPush - 164
ボカロPから“ギターヒーロー”へ
この人たちなら間違いない
──今回その“生ドラマー”として凛として時雨のピエール中野さんや、Sound HorizonのサポートドラマーのKen☆Kenさんたちが参加していますけど、以前から親交があったんですか?
はい。ピエール中野さんとは、以前「リズム&ドラム・マガジン」のお仕事でご一緒させていただいて、それ以来親交がありましたし、Ken☆KenさんとはETAのステージでご一緒させていただいてました。
──傍目にはベスト盤ならではのお祭り感を演出したというか、あえて派手なゲストを揃えたようにも見えるんだけど、ご本人としては実は自然な流れで集めたメンバーだった、と。
そうですね。僕もプロのアーティストなので、事務所を通せば全然面識がない人にもお願いできるとは思うんです。ただやっぱり自分が近くでプレイを観たことのある人じゃないと信じられないというか。この人なら間違いないっていう人だけに声をかけるようにはしました。
──その人たちとのバンドアレンジは164さんが主導で?
基本的には僕が譜面を書いて渡しているんですけど、レコーディングのときには皆さんに自由に解釈してもらうっていう作り方をしてます。「リセット」のベースラインとかも亜沙さんがけっこうアレンジしてたりしますし。で、そういう皆さんのプレイやフレーズに合わせて、僕のギターのアプローチの仕方も変わるから、原曲とは違う雰囲気のアレンジになったんだっていう面もあるんでしょうね。
じゃじゃ馬ですら計算通り
──第一線で活躍するプレイヤー陣がそれぞれの個性を発揮して取り組んだとなると、原曲とはもちろん、164さんがイメージしていたバンドアレンジともけっこう違うものになるような気がします。
確かにそうなんですけど、それってある意味計算通りなんです。参加してくれた人がじゃじゃ馬タイプのプレイヤーだったとしても、その人に声をかけたのは僕。その人がじゃじゃ馬だっていうことを理解した上で弾いてもらってるので(笑)。レコ—ディングに関してはむしろそのじゃじゃ馬たちの解釈を大切にしたかったので、基本的にNGはあまり出さないようにしてました。Ken☆Kenさんの「未来線」のレコーディングは大阪でのETAのライブの翌日だったんですけど、そのライブで「未来線」を叩いてもらっていたこともあったので、1テイクで終わりにしてますし。
──164さんの思う理想的なバンド像って、どんなものなんでしょう? アレンジャーとしてガッチリスコアを書いているから絶対的なイニシアチブをとる人がいるべきだと思ってるのかな?って思ってたんですけど、メンバーとの関係は意外と民主的。それぞれの個性や解釈には全幅の信頼を置いているわけですよね。
まさにそういう状態のバンドがいいバンドなんだと思ってます。サウンドの方向性を決めるリーダー的存在は絶対に必要だし、今回ならその立場に僕がいたんだとは思うんですけど、音を作る上では全員フラットな関係でいたい。実際、今回のレコーディングもそうでしたし。僕はギタリストだから最後に録ることになってたんですけど、ベースやドラムに好きにやってもらったあと、自分は彼らの音の上でどう遊ぶかって考えるのがすごく楽しみでした。個性を持った人たちを集めたんだから、皆さんにはその個性のままに思いっきり突っ走ってもらいたかったんですよね。
──そうか。何もメンバーのプレイを完璧にコントロールするだけがイニシアチブのとりかたではない。メンバーに自由にプレイしてもらうことを選べるのもリーダーならではってことなんですね。
そういう感じなんだと思います。それでも僕がギターを弾けば、調和を図れるはず。そういうサウンド作りを意識してました。皆さんがレコーディングしたトラックを聴いてみると、やっぱり思っていたアレンジとは違う部分が多々あるんですけど、僕の中には「みんながそういうアプローチでくるなら、ギターをこうすれば成り立つよね」っていうビジョンが常にあったので。
──“ギタリスト164”の存在感を示すためのベスト盤なのに、エゴよりも調和を優先した?
リズム隊のプレイに合わせたからといって、自分のギタープレイの個性が消えるとは思っていないので。
──実際、アルバムの中の164さんってホントに楽しそうにギターを弾いてるとは思うんですけど、なんで調和を図りながらも、個性的でいられるんだと思います?
なんでできるかはわかんないですね。感覚なのかなあ……。
流行に乗ろうとは思わない
──そこで「感覚に従えば個性的でいられる」って言えるのって強いなあっていう気が(笑)。
そうかもしれないですね(笑)。ただ実際、これまでも感覚を信じて活動してきていて、そのおかげである程度成功してこれたっていう自信はあるんです。「これは絶対イケる!」って思った曲は実際に反応がよかったりするし、反対に「これ、面白い曲だとは思うけど、ウケはしないかもなあ」って自分で思ってると、やっぱり再生数もそれなりだったっていう経験が多々あったので。
──「ニコ動のトレンドは読めない」なんて話もよく耳にしますけど……。
さすがに「天ノ弱」についてはこんな支持してもらえるとは思ってなかったんですけど(笑)、基本的にはわりと投稿するときの想定と近い結果が出てるなあっていう気はします。ニコニコのランキングにも当然そのときどきで流行り廃りがあると思うんですけど、自分が作った音楽が、その流れに合致しているなって思えたときはやっぱり多くの人に喜んでもらえるし、「この曲は今の流行とはちょっと違うかな」と思ったら、あんまり結果はついてきません。ただ、流行に乗ろうとは思わないんです。流行り廃りを眺めながら、その中で自分にしかできないこと、自分にとってカッコいいことを信じてやっていれば、ときどきはちゃんと結果が付いてくるし、個性も発揮できるものなんだと思ってます。それは僕のギタープレイについてもそうですし。
──というと?
僕がギタリストとしてステージに上がるようになったのは社会人になってからなんですけど……。
──もともとはドラマーだったっておっしゃってましたよね(参照:164 feat. GUMI, MAYU「BLURRY」インタビュー)。
はい。ギタリストデビューが遅かったこともあって、ライブハウスなんかに出たときには、対バンのギタリストをとにかくよく見て研究してたんです。彼らのプレイを吸収するためじゃなくて、ほかの人がやっていない、でも僕らしくてカッコいいプレイスタイルを探るために。
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- 164ベストアルバム / 164 feat. GUMI「THIS IS VOCAROCK」/ 2014年7月16日発売 / 2160円 / EXIT TUNES / QWCE-00367
- 164 feat. GUMI「THIS IS VOCAROCK」
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収録曲
- 天ノ弱[G:164 / B:mao / Dr:ピエール中野]
- sleeping beauty[G:164 / Piano:Starving Trancer / B:亜沙 / Dr:Ogunya.]
- 迷妄少年と小世界[G:164 / B:mao / Dr:Ogunya.]
- 4時44分[G:164 / B:mao / Dr:Ogunya.]
- リセット[G:164 / B:亜沙 / Dr:Ogunya.]
- STATIC[G:164 / B:YM / Dr:Ogunya.]
- heavenly blue[G:164 / B:東野恵祐 / Dr:ピエール中野]
- 例えば、今此処に置かれた花に[EG:164 / AG:おさむらいさん / B:mao / Dr:ピエール中野]
- ミスターデジャブ[G:164 / B:東野恵祐 / Dr:ピエール中野]
- 異世界ノットパンピー[G:164 / B:東野恵祐 / Dr:Ken☆Ken]
- タイムマシン[G:164 / Piano:40mP / B:東野恵祐 / Dr:Ken☆Ken]
- 未来線[G:164 / Piano:40mP / B:東野恵祐 / Dr:Ken☆Ken]
- end tree[G:164 / Piano:ふわりP / B:亜沙 / Dr:Ogunya.]
- 青[EG:164 / AG:りょーくん / B:YM / Dr:Ken☆Ken]
- shiningray[G:164 / B:YM / Dr:Ogunya.]
- イベント出演情報
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EXIT TUNES ACADEMY FINAL SPECIAL 2014
- 2014年8月3日(日)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
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EXIT TUNES ACADEMY SUMMER TOUR 2014
- 2014年8月16日(土)東京都 Zepp Tokyo
- 2014年8月17日(日)東京都 Zepp Tokyo
- 2014年8月23日(土)北海道 Zepp Sapporo
- 2014年8月27日(水)愛知県 Zepp Nagoya
- 2014年8月29日(金)大阪府 Zepp Namba
- 2014年8月31日(日)福岡県 Zepp Fukuoka
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EXIT TUNES ACADEMY 2014 広島 ~HOME開局45 - 1周年記念ライブ~
- 2014年11月3日(月・祝)広島県 上野学園ホール
164(イチロクヨン)
2008年から動画共有サイトにボーカロイド楽曲を発表しているボカロP。自らのギター演奏によるパワフルなロックサウンドと、クオリティの高い調声で一躍注目される。2009年に1stアルバム「EXIT TUNES PRESENTS THE COMPLETE BEST OF 164 from 203soundworks feat.初音ミク」をリリース。2011年に動画共有サイトで公開した「天ノ弱」が、トリプルミリオン再生突破の大ヒット曲となる。EXIT TUNESが主催するライブイベントでは持ち前のギタープレイを披露し、プレイヤーとしても注目を集めている。2014年7月、キャリア初のベスト盤「THIS IS VOCAROCK」を発表した。