ナタリー PowerPush - BLURRY 164 feat. GUMI, MAYU
ギター1本で“BLURRY”な世界と渡り合う
CDデビューは「ぜひぜひ!」「喜んで!」
──「天ノ弱」がヒットする一方で、2009年にはEXIT TUNESから1stオリジナルアルバム「EXIT TUNES PRESENTS THE COMPLETE BEST OF 164 from 203soundworks feat.初音ミク」もリリースしています。
その頃「shiningray」のほかにもう1曲、かなり再生された曲があって、それが追い打ちになったって感じで、いくつかのレーベルさんからお話をいただいてたんですよ。
──そういうお話が来たときってどういうお気持ちでした? 失礼ながら言ってしまえば、全国ツアーを回るくらい成長したバンドを組んでおきながら一度挫折をしているわけじゃないですか。
だから「ぜひぜひ!」「喜んで!」って感じでしたよね(笑)。僕に限らずミュージシャンってやっぱりメジャー流通、全国流通でCDを出したいと思ってると思うんですよ。それがボカロで曲を作り始めて1~2年で叶ったわけですから。
──では正直な話、ボカロPとして活動を開始した頃から、ある程度将来は見据えていた?
最初はさすがに「自主制作でCDを出して、みんなに聴いてもらえるくらいになれればなあ」って思ってたくらいですけど、確かにこの活動を形にしようっていう気持ちはありましたね。
上京が164にもたらしたもの
──そして今回の「BLURRY」が4枚目のオリジナルアルバムになるわけですけど、ミュージシャンにとって4作目ってどういう位置付けのものなんでしょう?
うーん……。僕に関しては枚数的な話よりも今回は環境的な話のほうが影響が大きくて。っていうのも、3rdアルバム(2012年3月リリースの「THEORY -164 feat.GUMI-」)までは地元の山口で曲を作ってたんですけど、そのアルバムを出したあと上京してきたんですよ。だから「BLURRY」は初めて全曲東京で書いたアルバム。かつ「ETA」(2013年4月開催のイベント「EXIT TUNES ACADEMY -EXIT TUNES 11th ANNIVERSARY SPECIAL-」。参照:「EXIT TUNES ACADEMY -EXIT TUNES 11th ANNIVERSARY SPECIAL-」ライブレポート)にも出していただいたことで、コミュ障もだいぶ解消されまして(笑)。みきとPさんとか40mPさんとかジミーサムPさんとかに声をかけて、ボーナストラックでコラボできたのも、上京してきていろんな人と一緒にイベントに出たりするようになったおかげですから。
──ボーナストラック以外、アルバム本編にもゲストプレーヤーが参加していますよね。だから以前の作品に比べると、今作はかなり“ナマ”っぽい。
そうですね。僕自身が生で弾いてるのはギターだけなんですけど、「神巫詞」は亜沙さんがベースを弾いていて、表題曲の「BLURRY」のベースはYMさん。あと「BLURRY」ではStarving Trancer(Another Infinity)さん、「end tree」はふわりPさんにピアノを弾いてもらってます。今まではほかの人にお願いなんかしなかったのに、コミュ障が解消されたおかげで(笑)、ようやくほかの人に「楽器を弾いて」って頼めるようになりました。
──ということは「これからは絶対に1人で音楽をやろう」と思ってボカロPになってはみたものの、やっぱりセッションに対する憧れはあった?
そうかもしれない。バンド出身っていうこともあるのか、基本的にバンドで演奏することを想定して曲を書くし、アレンジをしていましたから。
いきなり楽譜に向かって作曲&アレンジ
──実際の作曲ってどうやって進めるんですか?
パソコンの前に「よいしょ!」って座って、(マウスを操作するしぐさをしながら)こういう感じで。
──今のそぶりを見る限り、ギターはおろか、鍵盤すら押さえてないですよね。
ええ。いきなりシーケンスソフトの五線譜に音符を置いて楽譜を書き進めるって感じですね。ギターもたまには使いますけど、マウスで曲を書いたほうが早いんですよ。絶対音感はないんだけど、相対音感みたいなものはあるので。
──頭の中に思い浮かんでいるメロディの最初の音さえ探り当てられれば、例えば最初の音が「ド」であることがわかりさえすれば、あとは「次の音はこのくらい上がる感じだから、たぶん『ラ』だな」って探り当てた上でスコアを書けるっていうこと?
そうですそうです。昔、スーパーファミコンに「音楽ツクール かなでーる」っていう作曲ソフトがあったんですよ。子供の頃、そのソフトが好きでメッチャ使ってたんですけど、そのソフトのインターフェイスがスコアロールだったんです。だからたぶん、その頃の名残なんでしょうね。
──アレンジは?
メロディと同時ですね。メロと一緒にドラムパターンとベースラインも頭に思い浮かぶのでいっぺんに打ち込んで……。
──打ち込むというよりも、スコアを書いて(笑)。
はい(笑)。で、リズムパートとメロディができたら、ギターを重ねるって感じですね。
- 164 feat. GUMI、MAYU「BLURRY」 / 2013年9月4日発売 / 2000円 / EXIT TUNES / QWCE-00309
- 164 feat. GUMI、MAYU ニューアルバム「BLURRY」
収録曲
- Rebirth / 164 feat.GUMI
- NO STARS / 164 feat.GUMI
- 神巫詞 / 164 feat.MAYU
- BLURRY / 164 feat.GUMI、MAYU
- ユメバナ / 164 feat.MAYU
- A Transparent Picture / 164 feat.GUMI
- ミスターデジャブ / 164 feat.MAYU
- サイコロジック / 164 feat.GUMI
- イージーモード / 164 feat.MAYU
- 迷妄少年と小世界 / 164 feat.GUMI
- ウロノキ / 164 feat.MAYU
- トオリスガリノダレカ / 164 feat.GUMI
- おやすみの街 / 164 feat.MAYU
- end tree / 164 feat.GUMI
- 青 / 164 feat.MAYU
- 天ノ弱 / 164×みきとP(ボーナストラック)
- 青 / 1640mP(164×40mP)(ボーナストラック)
- shiningray / 164×ジミーサムP(ボーナストラック)
164(いちろくよん)
2008年から動画共有サイトにボーカロイド楽曲を発表しているボカロP。自らのテクニカルなギター演奏によるパワフルなロックサウンドと、クオリティの高い調声で一躍注目される。2009年に1stアルバム「EXIT TUNES PRESENTS THE COMPLETE BEST OF 164 from 203soundworks feat.初音ミク」をリリース。2011年に動画共有サイトで公開した「天ノ弱」が、ダブルミリオン再生突破の大ヒット曲となる。2013年9月に4作目のアルバム「BLURRY」を発売。