ナタリー PowerPush - BLURRY 164 feat. GUMI, MAYU

ギター1本で“BLURRY”な世界と渡り合う

動画共有サイトにて、ダブルミリオン再生をマークした楽曲「天ノ弱」で知られる、ボーカロイドクリエイター・164が4thアルバム「BLURRY」をリリースした。

これまでエモーショナルながらも、どこかヒネくれたギターロックを作り続けてきた164は今作でその作風をさらに深化させ、みきとP、40mP、ジミーサムPら多数のゲストプレーヤーとともにさらにキャッチーで、しかしさらにストレンジなギターサウンドを作り上げた。

ナタリーでは今回「BLURRY」の発売を記念して164を直撃。本作の魅力や制作秘話はもちろん、彼の音楽遍歴、大ヒットナンバー「天ノ弱」に対する思いなど、広く聞いた。

取材・文 / 成松哲

鼓笛隊に参加したからドラマーに抜擢

──今回のアルバム「BLURRY」のキャッチコピー「ぼやけた世界を 傷だらけのギターで 晴らしに来た」ってすごく言い得て妙だな、と思ってるんですよ。どの曲を聴いても「この人、楽しそうにギター弾くなあ」って感じがしたので。

確かに(笑)。

──だからアルバムについてはもちろんなんですけど、164さん自身についても掘り下げたくて。生まれて初めて買ったCDってなんですか?

たぶんCHAGE and ASKAさんのCDです。

──あらっ? 今の音楽性にはほとんどつながらない。

現状の僕には何も反映されてないですね(笑)。買ったのはたぶん中1くらいで、それ以前から一応ドラムをやっていたりもしたんですけど、そっちもそっちで全然違うことをやってましたし。

──中学校に上がる以前からドラムをやってたんですか?

小学校って鼓笛隊を組んだりするじゃないですか。僕の学校でも鼓笛パレードがあったんですけど、やっぱり希望者がいっぱいいて、その中でも小太鼓が人気だったんですよ。で、音楽の先生がオーディションをしたんですけど、僕が受かって。ちょうどその頃、友達の中にちょっとマセたヤツがいて、そいつが「バンドやろうぜ」って言いだしたとき「小太鼓がうまかったから」って理由でドラムに誘われたんです。それでドラムを覚えました。

──小学生バンドはどんな曲を?

FIELD OF VIEWとかのコピーでしたね、確か。やっぱり今の僕の音楽にはあんまり反映されていない(笑)。

──じゃあギターをガツガツ弾き倒す今の作風に影響を与えたアーティストって?

中学校のときに親父に教えてもらったDEEP PURPLEとかLED ZEPPELINとかかなあ。中1くらいのときに、大晦日だったか、年末の音楽番組であるミュージシャンがギターを弾いてるのを観てたら、親父が押し入れからギターを出してきて「お前、弾け」と。それでギターを弾くようになったら、今度は「ギターを弾くならこれを聴け」って感じでDEEP PURPLEとZEPPELINを渡されたんです。それからですね。今、自分が作ってるようなロック方向に向かうようになったのは。

社会人になって晴れて自由の身=ギタリストに

──そしてギタリストに?

いやドラムでした。中学校でも一応バンドをやっててGLAYとかL'Arc-en-Cielとかのコピーで文化祭に出たりとかはしてましたね。

──まだ今の音楽性やプレイスタイルに至ってないどころか、ギタリストにもなってない(笑)。

ドラマーって基本的に人口が少ないじゃないですか。だからけっこう需要が高くて、いろんなバンドで叩かされてました(笑)。晴れて自由の身、人前でギターを弾くようになったのは高校を卒業してからですね。

──「自由の身」って言っちゃうほどドラムはイヤだった?

ドラムはドラムで楽しかったんですけど、やっぱりステージの前のほうに立って目立ちたいじゃないですか。それでなくても中1のときに親父からもらってからずっと、家ではギターを練習してたので、バンドのギターのヤツとかを見てても「俺の方がギター上手いし」とか思ってましたし(笑)。で、卒業したあと、友達を誘って自分がギターを弾けるバンドを組んだって感じですね。だからギタリストとして活動をスタートしたのは社会人になってから。結構なスロースターターなんです。

──社会人時代のバンドって順調だったんですか?

最初に組んだバンドでオリジナルを作って、ライブをやってたら「あいつ、ギターうまいらしいぜ」みたいな感じになって、メッチャ掛け持ちしてたんですよ。よく聞く“バンドマンあるある”なんですけど(笑)、最大10コくらい掛け持ちしていて。ギタリストとかバンドマンっていうよりもサポートギタリストみたいな時期があったんです。で、最後に組んでいたハードコア系のバンドはけっこういい線いったっていうか。ツアーを回ったりもしてましたね。たぶん当時やってた音楽が今の音楽性にも反映されてるのかな……とは思ってます。

──確かに。表題曲の「BLURRY」がまさにそうなんですけどサビは白玉一発っていう感じでコードをかき鳴らしつつ、Bメロには複雑な上に、かなりヒネったギターフレーズをかぶせている。シンプルなギターロックが好きな人ではないな、っていう気がしてました。

そうですね(笑)。あの頃やっていた音楽や聴いていた音楽には影響を受けてます。

164 feat. GUMI、MAYU「BLURRY」 / 2013年9月4日発売 / 2000円 / EXIT TUNES / QWCE-00309
164 feat. GUMI、MAYU ニューアルバム「BLURRY」
収録曲
  1. Rebirth / 164 feat.GUMI
  2. NO STARS / 164 feat.GUMI
  3. 神巫詞 / 164 feat.MAYU
  4. BLURRY / 164 feat.GUMI、MAYU
  5. ユメバナ / 164 feat.MAYU
  6. A Transparent Picture / 164 feat.GUMI
  7. ミスターデジャブ / 164 feat.MAYU
  8. サイコロジック / 164 feat.GUMI
  9. イージーモード / 164 feat.MAYU
  10. 迷妄少年と小世界 / 164 feat.GUMI
  11. ウロノキ / 164 feat.MAYU
  12. トオリスガリノダレカ / 164 feat.GUMI
  13. おやすみの街 / 164 feat.MAYU
  14. end tree / 164 feat.GUMI
  15. 青 / 164 feat.MAYU
  16. 天ノ弱 / 164×みきとP(ボーナストラック)
  17. 青 / 1640mP(164×40mP)(ボーナストラック)
  18. shiningray / 164×ジミーサムP(ボーナストラック)
164(いちろくよん)

2008年から動画共有サイトにボーカロイド楽曲を発表しているボカロP。自らのテクニカルなギター演奏によるパワフルなロックサウンドと、クオリティの高い調声で一躍注目される。2009年に1stアルバム「EXIT TUNES PRESENTS THE COMPLETE BEST OF 164 from 203soundworks feat.初音ミク」をリリース。2011年に動画共有サイトで公開した「天ノ弱」が、ダブルミリオン再生突破の大ヒット曲となる。2013年9月に4作目のアルバム「BLURRY」を発売。