バンド結成25周年を迎えた10-FEETのコラボレーションアルバム「10-feat」が3月22日にリリースされた。
本作は、10-FEETの楽曲をさまざまなジャンルのアーティストが再構築する「6-feat」シリーズの第3弾として制作されたもので、岡崎体育、氣志團、クリープハイプ、G-FREAK FACTORY、dustbox、Dragon Ash、 Hakubi、ヤバイTシャツ屋さん、山下康介楽団、WANIMAが参加している。音楽ナタリーではアルバムの発売を記念して、10-FEETと綾小路 翔(氣志團)の対談をセッティング。ともに1997年に結成され、同じ時代を生きてきた2組の交流歴や、本作で氣志團がカバーした「goes on feat. 氣志團」の制作についてはもちろん、それぞれのバンド主体で開催されている「京都大作戦」「氣志團万博」のエピソードなど、さまざまなことについて語り合ってもらった。
取材・文 / 森朋之撮影 / 須田卓馬
この人たち、もしかして面白い人らとちゃうか?
──10-FEETと氣志團はともに1997年結成なので、同じ時代を生きてきた同志とも言えますよね。
綾小路 翔(Vo / 氣志團) そうなんですよ。結成当初は、CDバブルの尻尾を追いかけて……。
10-FEET一同 ハハハハハ!
綾小路 もうちょっとデビューが早かったらお互いにミリオンヒットをいくつか出していたはずなのに、残念ながら間に合わなかった(笑)。
NAOKI(B, Vo / 10-FEET) ちょうどそういう世代やね。
──10-FEETと氣志團のメンバーが初めて会ったのは?
TAKUMA(Vo, G / 10-FEET) SKY RECORDS(1998年にNICOTINEのメンバーが設立したインディーズパンクレーベル)主催のボウリング大会ですね。
KOUICHI(Dr, Cho / 10-FEET) 確か、高田馬場のボウリング場だったよね。
綾小路 ライブハウスではなく、ボウリング場で出会いました(笑)。ちょうど21世紀になった頃だから、もう20年くらい前。俺らはNICOTINEパイセンに誘っていただいたんですよ。
TAKUMA パンクスがボウリング場で交流しているという(笑)。その頃、氣志團はもう雑誌とかにも出ていたから、有名でしたね。よく覚えているのが「氣志團現象」の映像。タワーレコードの店頭で流れてたんですけど、めっちゃ寸劇やってて(笑)。
綾小路 くだらないことばっかりやってましたね。わざわざ閉館後の東京タワーを借り切って撮影したり。
TAKUMA 雑誌のインタビューではガシッと決めてるのに、映像では寸劇をやってたから「この人たち、もしかして面白い人らとちゃうか?」と思ってた(笑)。
綾小路 あの頃の俺らには居場所がなかったんですよね。例えば10-FEETとROTTENGRAFFTYはライバルであり、兄弟分でもあり、バンドシーンで切磋琢磨していた関係じゃないですか。俺らはちょっと雰囲気が違って、殺害塩化ビニールのSKB社長にガチでビール瓶が飛び交うイベントに誘ってもらったり、鳥肌実さんとべしゃりで張り合ったり、人気ヴィジュアル系バンドのオープニングアクトとしてツアーに同行したりと、それはもう毎日が刺激だったのだけど、ホームというものは一切なかったんですよね。同世代のバンドの友達も少なくて。だからSKY RECORDSのイベントに呼んでもらったときはすごくうれしかった。そのときはあまり話せなかったけど、10年以上経って「京都大作戦」に呼んでいただいたんです。
10-FEETのステージで氣志團がスベるのが夏の風物詩
──氣志團は「京都大作戦」に過去4度出演していますね。
綾小路 初めて参加させてもらったのは2012年で、「俺が憧れていた世界のすべてがここにある!」と感激しました。ライブハウスでしのぎを削り合っていたバンドたちが京都に大集合して、全員でフェスを盛り上げて。特に2017年の「京都大作戦」は忘れられないなあ。雷雨で中断してしまったんだけど、20時までに終えないといけない。だから出演バンドが曲数を減らしながらも本気のパフォーマンスで最後までやり切った。オーディエンスの皆さんも「とんでもないものを観た。来てよかった」と思っただろうし、俺らのような出演者から見てもその光景は素晴らしくて……。そういう奇跡が毎年のようにあるのが「京都大作戦」なんですよね。
TAKUMA ありがたいです。氣志團が出てくれたのはすごくうれしかったですね。対バンの機会はなかなかなかったんだけど、実は僕の姉貴が氣志團の大ファンで。
綾小路 え……ホントに!?
TAKUMA それまでは「『京都大作戦』、遠いしな」と言って来てくれなかったのに、氣志團の出演が決まったら「絶対行く!」って(笑)。ライブはめちゃくちゃよかったです。熱いライブ、微笑ましいライブは観たことあったけど、腹の底から笑かしてくれて、開いた毛穴から音楽をドーン!とぶち込むようなステージは氣志團にしかできないと思うから。
NAOKI カッコよさ、面白さを兼ね備えたバンドですよね。本番前の気迫がとにかくすごくて、ステージに出たらバチコーンと決める。「ずるいな」と思いました(笑)。
TAKUMA ホント、全部持ってくからな。
KOUICHI 氣志團が出ると、会場の空気がガラッと変わるんですよ。曲がいい、ライブがいいのはもちろんだけど、翔やんのMCにも感化されてますね。去年の「京都大作戦」でやってた“コール&ハミング”(ハミングによって飛沫を抑えたコール&レスポンス)とか。
NAOKI あれ、すごいよな(笑)。
KOUICHI 「翔やんが考案した」って説明して、俺らもやらせてもらってます。
綾小路 わはは! マジで? うれしい! ありがとうございます!
──10-FEETは「氣志團万博」の常連で、2014年から2018年まで5年連続で出演しています。
綾小路 本当にありがたいです。
TAKUMA いい思いしかしてないですね、「氣志團万博」では。
NAOKI 楽しさしかないです(笑)。
TAKUMA 出演直前に流してくれるVTRがめちゃくちゃ面白いんですよ。ただ、あれほど緊張するフェスもないけどね。
綾小路 緊張してるんだ?
TAKUMA 緊張してるよ。いろんなジャンルのお客さんが集まるフェスだし、「わかる人だけわかればいい」じゃなくて、10-FEETに興味がない人にも「よかった」と思ってもらわないといけないから。そうじゃないと「氣志團万博」に参加したことにならないと思うんですよ。で、本番直前に氣志團のメンバーに助けを求めるっていう(笑)。
綾小路 本番10分前くらいに寸劇の台本……という紙をペラ1枚渡されるんですけど(笑)。「ステージに出てきて、因縁をつける」みたいなひと言しか書いてないんですよ。10-FEETのステージで氣志團がスベるのが、夏の千葉の風物詩になってますね(笑)。
TAKUMA あとで「ごめんな」って、めちゃくちゃ謝ってます(笑)。
綾小路 いやマジで!(笑) しかしながら10-FEETのライブはモノノフ(ももいろクローバーZのファンの呼称)の皆さんとも親和性が高いんですよ。モノノフがモッシュやダイブを楽しんでいる姿は、「氣志團万博」でしか見られないと思います(笑)。
TAKUMA サッカーボールをバットで打ってるようなもんやな(笑)。
KOUICHI お客さんも楽しいよね。あそこまで振り幅があるアーティストを1日で観られるフェスはほかにないから。
──それとTAKUMAさんは氣志團に楽曲提供(2017年のアルバム「万謡集」収録の「フォーサイクル」)したこともありますよね。
綾小路 その節はありがとうございました! バンド20周年のときに「これまでに経験してないことをやってみよう」と思ったのがきっかけで、我々がリスペクトする音楽家に曲を提供してもらったんです。世代的にバンドは自分たちで曲を作ることが正義だと思っていたし、俺らもそうやってきたんだけど、20年続けてきて、「大好きなバンドマンやミュージシャンに曲を書いてもらえたら最高だよね」と思って。「フォーサイクル」、めちゃくちゃいい曲です。
TAKUMA 最初のアイデアは、“Mötley Crüeがヤンキーだったら”ですね(笑)。デモ音源はシンプルだったんですけど、氣志團がカッコよくアレンジしてくれました。
綾小路 そこだったんだ……(笑)。今でもライブでやらせてもらってる大事な曲です。
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氣志團なのに10-FEETを感じるカバー