10-FEETが19枚目のニューシングル「シエラのように」をリリースした。発売を記念して音楽ナタリーでは、TAKUMA(Vo, G)と、YouTubeで定期的に配信されている番組「しげおとたくまの『フタリセカイ』」で共演している高橋茂雄(サバンナ)の対談を企画。兼ねてからテレビ番組などで10-FEETの魅力を語ってきた高橋とTAKUMAが一緒に番組を配信するようになったきっかけや、新曲「シエラのように」に込められた思い、またTAKUMAの曲作りの手法など、対談ではさまざまなことについて語り合ってもらった。
取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 上山陽介
こういう時期だからこそ実現した「フタリセカイ」
高橋茂雄 最近、TAKUMAくんといろいろご一緒させてもらっていますけど、最初に交流を持ったのはNAOKI(B, Vo)くんやったんです。確かTwitterで僕が「自分に似てるものなんやろな」というつぶやきをしたら、いろんな人から「綿棒」とか「ゆで卵」とか「チャールズ皇太子の若い頃」とかのリプライが来て。その中に「10-FEETのNAOKIくん」というのがあったんです。そうしたらNAOKIくん本人からも「昔から僕も言われます」みたいなリプライが届いて。それがきっかけでNAOKIくんとごはんに行かせてもらって、そこからライブにも呼んでもらえるようになったんです。
TAKUMA 僕と茂雄くんがごはんに行ったのはもっとあとやし、なんならコロナ前は1回くらいしかなかったよね?
高橋 「京都大作戦」のバックヤードで乾杯をしたことは何度かあったけど、少人数でごはんに行くような機会はあまりなかったよね。1回だけ、TAKUMAくんから「今日東京やねん」と連絡してくれたことがあって。僕、自分ではそんな意識してなかったつもりなんですけど、そのとき付き合ってた彼女が「どうしたの? そんなに興奮して」と言ってたのをよく覚えてる。
TAKUMA そんなに興奮したんや(笑)。
高橋 彼女に「10-FEETというバンドのボーカルのTAKUMAくんが飲みに誘ってくれたんだよ」って説明したら「よかったね。あなたにとってのヒーローなんでしょ」と言ってくれたんです。誘ってくれてうれしかったなあ。
TAKUMA 茂雄くんと僕は同年代で、同じ京都出身で。ちゃんと話すのはそのときが初めてだったんですけど、すごく話しやすくて。
高橋 育ってきた環境とか小さい頃に見ていたものとかが似てるから、共通項が多いんですよね。だから最初の飲み会のときから気兼ねなくいろんな話をしてた気がする。
──YouTubeで配信されている「しげおとたくまの『フタリセカイ』」という番組はどういうきっかけで始めたんですか?
高橋 新型コロナウイルスの感染が広がって世の中が自粛期間に入ったとき、僕がYouTubeで動画投稿をし始めたんです。家でなんかできることやろうって思って。ちょうどその頃「京都大作戦」が中止になったというニュースを見て、めっちゃ悔しい思いをしたんですよ。毎年楽しみにしてたイベントだし、きっと同じような思いをしているファンも多いやろうなと思って、「京都大作戦」の話をする動画をアップロードしたんです。
TAKUMA 動画がめっちゃオモロくて、すぐに茂雄くんに連絡したんです。そうしたらその流れで、一緒に何かやろうという話になった。
高橋 そこからが早かったんですよ。僕がミサイルマンの西代(洋)に声をかけて、TAKUMAくんがHEY-SMITHの猪狩(秀平)くんを呼んで、いつ配信をするかをすぐ決めた。確かTAKUMAくんがタイトルを「フタリセカイ」にしようと言ってくれたんだよね?
TAKUMA 最初は「ヒトリセカイ」とかじゃなかった?
高橋 自粛期間で1人の時間が多かったのもあって最初は「●●のヒトリセカイ」にしようという話があったけど、「それやったら『フタリ』でええんちゃう」みたいに言ってくれて。
TAKUMA とにかくスピード感があったよね。
高橋 うん。本人同士が「やろう」と言っても、結局やれないことってたくさんあるじゃないですか。僕も会社所属の人間だし、TAKUMAくんのところにも事務所があるから、普通だったら1回話を持ち帰って企画を通して……みたいな大人の筋を通すんですけど、テレビ業界も音楽業界もどうなるかわからない状況でどこかに許可を取るとかそういうことを考えてられなくて。だからその場の思い付きとアイデアですぐ配信することを決めたんです。こういう時期だからこそ、いろんなことを飛び越えて力を合わせることができた気がするんですよね。
TAKUMA 自粛期間で僕も弾き語りの動画とかを公開していたんですけど、みんなの元気が出るような、面白がってもらえるものができたらいいなあと思っていたんです。そんなとき、茂雄くんと一緒に番組を配信できることになってすごくありがたかったなあ。番組と言っても、僕らが楽しく話しているのをただ観てもらうだけなんですけど(笑)。
ギターを弾かないで曲を作る
高橋 初めて「フタリセカイ」を配信したとき、TAKUMAくんが弾き語りで「ヒトリセカイ」を披露してくれたんですよ。僕はてっきり毎回歌ってくれるものかなと思っていたら、それ以降しばらく歌ってくれなくて(笑)。
TAKUMA あはは(笑)。
高橋 「フタリセカイ」のテーマ曲ぐらい作ってくれてもええやん?
TAKUMA そういえば、まだ作ってないなあ。
高橋 TAKUMAくんだけじゃなくて猪狩くんもソングライターなんだから、どっちかが作ってくれればいいのに、腰が重すぎる! 結局KOUICHI(Dr, Cho)くんとサクさん(桜井誠 / Dragon Ash)と三部(卓真)さんがやってる「ドラ3ちゃんねる」で「フタリセカイ」のテーマソングを作ってくれて……。
TAKUMA ここまで来たら作らないノリなのかなあと思って(笑)。
高橋 でもこの間、TAKUMAくんがビール飲んで酔っぱらったときに即興の曲を作ってくれたよね。
TAKUMA アレは大変やったなあ。
高橋 キーワードを決めて、それに沿って曲を作るところなんてなかなか見れないじゃないですか。ラッパーのフリースタイルなんかはテレビでもよくやってたけど、バンドのソングライターがどうやって曲を作るのか、興味津々で。
TAKUMA 僕もリアルタイムで曲を作るところなんて見せたことなかったから「ホンマにできんのか、お前!」って自分に言い聞かせながらやってました(笑)。もし失敗しても誰かがなんとかしてくれる精神を持てるくらい頼りになる仲間がいたから、挑戦できたかもしれない。
高橋 僕のイメージでは、1行詞を書いたらギターを弾いて、また1行書いたらまたギターを弾いて、みたいな形かと思っていたんですよ。でもTAKUMAくんは全然ギターを弾かないで曲を作っていたんですよね。アレ、すごくビックリした。
TAKUMA ギターを弾きながら曲を作るときもあるけど、頭で鳴ってる歌があるときはギターを弾かずに作ることも多くて。これは人によって全然違うと思うんですけど、僕の場合は実際にギターを持ってコードを弾き始めちゃうと、たまに手癖で第1希望じゃないコード進行になってしまうときがあるんですよ。「あ、第1希望のコードのほうが絶対合うのに、間違えて第2希望に行ってもうた」というのが頭ではわかってはいるんですけど、実際に音が出ちゃうと第2希望の印象が強くなってそっちに意識が持っていかれることが多い。だからコード進行まで思い付いたらなるべくギターに触らず、頭の中でコードを流しながら、もう1人の自分に歌ってもらったほうが理想的な曲が作れる。
高橋 それは10-FEETの曲でも同じなの?
TAKUMA バンドの曲でもそういうパターンが多いと思う。
高橋 へー!
TAKUMA もちろんいきなりギターをガツンと弾いて、即興で歌ってできる曲もある。でもどちらかと言ったら頭の中でミニTAKUMAが演奏してて、ミニTAKUMAがベース弾いて、ミニTAKUMAがドラムを叩いて……で曲を作ることのほうが多いかな。
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