04 Limited Sazabysが10月18日にセルフカバーアルバム「Re-Birth」をリリースした。
「Re-Birth」はバンドの結成15周年を記念して制作されたアルバムで、「swim」「monolith」「Squall」といった人気曲を含む11曲をリアレンジして収録。アレンジャーとしてフレデリック、松田“CHABE”岳二(LEARNERS、Neil and Iraiza、CUBISMO GRAFICO FIVE)、ミト(クラムボン)、中川大二郎(JYOCHO)、玉屋2060%(Wienners)、DAIKI(AWSM.)の6組が参加しており、これまではアレンジを含めてバンド内で楽曲制作を行ってきた04 Limited Sazabysのサウンドに新たな風を吹かせている。
音楽ナタリーではメンバーにインタビューし、「Re-Birth」のアレンジャーの人選理由や制作エピソード、結成15周年を迎えた心境などを聞いた。
取材・文 / 小林千絵撮影 / 笹原清明
“座って観られるフォーリミ”を見せたい
──セルフカバーアルバム「Re-Birth」は、豪華な作家陣がアレンジを手がけていますね。全体的に温かみのあるアコースティックサウンドに生まれ変わりましたが、サウンドの方向性は最初から決まっていたのでしょうか?
GEN(B, Vo) はい。コロナ禍にモッシュやダイブができない、座席ありのライブをすることが増えて、それをきっかけに“座って観られるフォーリミ”を見せたいと思った。そこからこの作品の構想が生まれました。
──アレンジは04 Limited Sazabysと同世代のバンドや親交のある大先輩など、計6組のアーティストが担当しています。ということで1組ずつ人選や選曲理由を伺わせてください。まずは「Re-Letter」「Re-Squall」を手がけたフレデリックからお願いします。
GEN コロナ禍にフレデリックのアコースティックライブを観たんですが、そのときのアレンジがすごくよかったのでお願いしました。「Letter」は僕らの結成10周年ライブで健司(フレデリックのボーカル・ギター三原健司)をゲストに迎えて一緒に歌ったことがあったので、ゆかりがあっていいかなと。
──フレデリックから2曲のデモを受け取ったときはどう感じましたか?
GEN みんなしびれたんじゃないかな?
RYU-TA(G, Cho) うん、そうだね。「Re-Squall」はサーッという雨の音から始まるのが面白いなと思ったし、フレデリック節も感じる。俺らじゃ思いつかない表現ばかりだなと思いました。
HIROKAZ(G) デモの段階ですでにクオリティが高くて。しかもデモは康司(フレデリックのベーシスト三原康司)が仮歌を担当してくれていて、それもよかったね。
GEN 「フレデリックの曲に聴こえる!」と思ったよね。
HIROKAZ うん、俺らの曲じゃないみたいだった。
GEN この2曲に限らずどの曲も、歌を録り終えるまで「本当に04 Limited Sazabysの作品になるのか?」と思っていました。
KOUHEI(Dr, Cho) デモを受け取ったあとに、武(フレデリックのドラマー高橋武)から「一緒にスタジオに入りませんか?」とLINEが来たんですよ。それで一緒にスタジオに入って、「この楽曲はこのアーティストを意識したハットワークです」とか、それくらい細かい話までしてくれた。新鮮な経験でしたね。
──続いて「Re-milk」と「Re-Chicken race」のアレンジは松田“CHABE”岳二さんが担当しています。2曲ともCHABEさん節全開ですね。
GEN CHABEさんには「CUBISMO GRAFICO FIVEのこの曲のこういう感じにしてほしい」と、けっこう具体的に伝えました。
──なるほど。特に「Re-Chicken race」は原曲からかなり変わりましたね。
GEN パーティサウンドっぽい仕上がりになるかと思っていたんですが、デモを聴いたらボッサだったのでびっくり。サビは自分たちの曲ではやったことがない3拍子だったので、最初は戸惑いましたね。
KOUHEI 自分たちの中に3拍子で演奏するという考えがなかったので、最初はやりづらかったですね。でも自分たちではやらないアレンジだし、今回のほかの曲にはないパターンだからこそ面白いなとも思って。今後のフォーリミの曲で3拍子の曲が生まれる可能性もなくはないのかなと思いました。
GEN 3拍子の曲、作りたくなったなあ。
HIROKAZ 実際にCHABEさんがバンジョーを録っているところを見学できたのも面白かったです。
RYU-TA 「Re-Chicken race」の三拍子のところで、シャンシャンシャンってベルの音が鳴っているのもいいよね。これから冬になるのでぴったりだなって。完成した音源を聴いたときに、CHABEさんと一緒にライブしたいなと思いました。
GEN あと僕のキーが高いから、CHABEさんをはじめ、仮歌を担当してくださった皆さんは1オクターブ下で歌っていたんですね。「Re-Chicken race」も原曲のキーだと元気よくなりすぎちゃうし、デモでCHABEさんが歌う1オクターブ下の感じがすごくよかったので、レコーディングでも思い切って下げて歌ってみました。僕としては普段の歌い方と違う、話しているときの“声”に近い歌い方をしました。
クラムボンに影響を受けたセルフカバーアルバム
──「Re-midnight cruising」と「Re-swim」はクラムボンのミトさんがアレンジを担当してます。
GEN そもそもこのセルフカバーアルバムの企画自体、クラムボンに影響を受けていて。僕はクラムボンの「Re-clammbon」シリーズが大好きで、あのシリーズのようなことをフォーリミでもやりたいと思ったのがセルフカバーアルバム制作のきっかけなんですよ。「Re-clammbon」くらい大胆なアレンジをした、ただのアコースティックカバーじゃないものにしたかった。だからミトさんはマストでアレンジをお願いしたいと思っていました。
──そんなミトさんからこの2曲のデモを受け取っていかがでしたか?
GEN しびれましたね。「クラムボンの曲みたいだ!」と感じられてうれしかったです。俺らじゃ絶対やらないような音の遊び方だったり、プログレっぽい要素が入っていたりして、一聴するとシンプルなメロディに感じるけど、音楽的にはちゃんと練り込まれている感じで、ミトさんの熱意を感じました。同時に「自分たちに再現できるのかな?」という気持ちにもなりましたけど……。
KOUHEI とにかく演奏するのが難しいんですよ。初めて聴いたとき「やめてくれー」って思いました(笑)。
RYU-TA アコースティックで演奏するときは基本このスタイルなんですけど、今作ではGENはボーカルのみで、ベースは僕が弾いているんです。だからミトさんからデモを受け取って、「これはどうやって弾いてんだ?」と頭を抱えました。僕とHIROKAZはミトさんの家に行って演奏について教えてもらったんですよ。一応耳コピしてから行ったんですけど、実際に教えてもらったら全然違いました。最終的にはなんとかちゃんと弾けてよかったです。ちなみに「Re-midnight cruising」に関してはミトさんがウッドベースを弾いてくれています。さすがに俺はウッドベースは弾けなくて。
HIROKAZ RYU-TAがベースを担当している分、僕はバッキングとリードの2パターン弾かなくちゃいけないので、ワケがわからなくなりました(笑)。でも分解して教えてもらうと意外と普段使っているコードだったりするんですよ。そういう学びがあって面白かったです。
KOUHEI ドラムはどうしても速くなると力みがちですけど、ミトさんに「パワーで押し切ってはダメなんだよね」と教えていただいたので、それはすごく意識しました。録り終わったあとに、ミトさんに「年取ったビートでいいね!」と言われてすごくうれしかったです。
GEN へえ!
──その“年取ったビート”というのは、今後の04 Limited Sazabysに生きていきそうですね。
GEN そうですね。
KOUHEI 今メインでやっているジャンルだったら使わないでしょうけど、できることが増えたことは今後楽曲を作るうえで絶対に生かせると思う。僕らの曲の中に「eureka」というスローな曲があるんですが、その曲をセルフカバーアルバムのレコーディングのあとにライブでやる機会があって。リハで「eureka」を演奏したときに、自分の中でそれまでと聴こえ方がだいぶ変わったんですよ。それだけでも今作はすごく自分の力になっているのを感じましたね。