音楽ナタリー Power Push - ∞Z

独創性を貫く“フュージョンポップパワートリオ” 紅一点・ERIKAが思いを語る

歌に込めたラブ&ピース

──4曲目の「Boat」はKenjiさんが作曲を手がけていますね。

ERIKA(Vo, G)

ジャンル的にはアメリカーナっていうのかな。けんちゃんは大陸の雄大な自然風景を意識して作ったって話してました。私は最初にデモを聴いたとき、すごくロマンチックな曲だと思ったので、歌詞では“私とあなた”をテーマに、2人が互いに思いを伝え合っていくストーリー性のある内容になってます。この曲の歌詞に出てくる2人は楽しいこともつらいこともあって、山あり谷ありな人生の中で、相手が道を踏み外しそうになったとしたら、手を差し伸べてよい方向に導いてあげたいとか、そういう愛が詰まった楽曲になっています。

──続く「くちびるにこの歌を」は直球のラブソングですね。

こっちはShingoさんが作ったラブ&ピースがテーマの曲です。長いものに巻かれたり、自分の損得で動くのではなく、ただ誰かのために一生懸命になってほしいという願いが込められた歌です。そういう流れがでてきたらもっと世の中が平和になりそうですね。すごくドラマチックなアレンジも聴きどころです!

──“くちびるにこの歌を”というフレーズは、この歌をみんなが歌ってくれたらいいなってことを意味しているんでしょうか?

そうです。悲しいことがあったときに、歌を歌えば平和な気持ちになるんじゃないかなって。負の感情に飲み込まれそうなときにこの曲を歌って平和な気分になってくれたらうれしいです。人を思いやるとかちょっと親切にしてあげるってだけでも愛の連鎖が生まれていけばいいなって思いが込められています。

──では今作のラストナンバー「Star Geo」は?

これはタイトルが星と大地って意味で、暗い内容の歌詞になってます。

──抽象的かつロマンチックな歌詞だなと思いましたが、違うんですね。

人が亡くなったとき、「あの人は星になった」なんて言い方をしますよね。それで生きている人は大地から離れることはできないから星に向かうことはできなくて……みたいな自分と会えなくなってしまった人の立ち位置のようなものを表しています。実は暗い曲で、愛する人に会えなくなってしまったという。でもいつかは悲しさからは決別しないと、前向きには生きていけないっていうことを歌っています。悲しい内容ですけど、楽曲アレンジはフュージョンで、ソロで3人とも見せ場があるっていう遊び心も織り交ぜてます。そんな対比も楽しんで聴いてほしいかな。

独自の路線を貫く理由

──オリジナリティというものにかなりこだわっているようにも感じたんですが、最近流行りの要素を取り入れようとは思わないんですか?

なんかフェスとかに行って速いBPMの曲を聴くと全部同じに聴こえちゃうんです、正直。だから自分たちではやろうと思わないです。∞Zでは同じような曲ばかり作るのは嫌だなって。飽きちゃうから。ライブって確かにジャンプしてモッシュして楽しかった! っていうのも好きではあるけど、曲にしたいことのシチュエーションもインスピレーションもさまざまだから、毎回違うアレンジに挑戦したくなるんですね。ライブだと3人のインプロがあって、ギターソロもベースもドラムもライブ毎で違うし、毎回同じ演奏をしないんです。そういうところがこのバンドの面白いところだと思います。

──なぜ流行りに迎合しない姿勢を貫くんでしょうか。

ERIKA(Vo, G)

私はもともとエリック・クラプトンから遡ってDerek & The DominosとかCreamも聴いたりしてて。特にCreamはトリオだし、フロント1人だけのバンドじゃなくて、3人それぞれにスポットが当たるバンドですよね。実際3人ともソングライティングするし、インプロもたくさんあって毎回ライブで違う演奏をする。自分たちはこういうふうになりたいのかなって。でもあの時代にああいうスタイルの音楽って斬新だったからレコード会社に売り込んでいっても「流行りとかけ離れてるし、売れない」って言われてたみたいなんですけど、その時代にはなかった音楽を開拓したというか、新しいものを自分たちで生み出して、それを世の中に「どうだ!」って自信を持って活動して、自分たちの信念を貫いたからこそ今ではレジェンドとして音楽シーンに名を刻んでいて。まだ駆け出し中の私たちがCreamのように新たなシーンを開拓したいなんて言ったら笑われるかもしれませんけど、リスペクトするアーティストの生き様を見て、新しいシーンを切り開いていくっていうことを目指しています。

──現時点での活動の拠点は、福島、仙台、東京がメインですが、今後のフィールドや戦略はあるんですか?

それをどうしていこうかってまさに考えて、悩んでいるところです(笑)。大きいフェスに出たいって気持ちもあるけど、東京ドームとかアリーナクラスの会場でライブをやるっていうことが目標ではなくて。そういうところよりももっと音楽をじっくり近くで楽しめるブルーノートとかでやってみたいです。私たちは日本国内でもまだまだ無名ですけど、いつかフィールドを世界にも広げていきたいとも思っています。

──「東北から世界へ」というお話ですね。具体的に世界に向かうにあたって実行していることはあるんですか?

YouTubeの動画をアップするとき、日本語の歌に関しては英訳した歌詞を載せようとか……今はまだそれくらいです。まずはシンプルに海外でライブができたらいいなっていう。もちろん、1番は日本だけど、人種も国境も超えて本当にいろんな人に∞Zというジャンルの音楽を届けたい。私たちの活動を通して東北に関心をもってもらえたら嬉しいし。でも正直、何をどうしたら自分たちの音楽を広められるかっていうことに関してはまだまだ手探り状態ですね。

来年は2000人規模のワンマンに挑戦

──12月2日に新作をリリースして、6日に福島・Live Space C-moonで行うワンマンライブを皮切りにツアーをスタートさせます。2016年の展望を聞かせてください。

来年はフルアルバムを出したいです。あと2016年の11月ってまだけっこう先ですけど福島県文化センターの大ホールっていうキャパ2000人くらいの会場を押さえてありまして、そこでワンマンをやる予定です。

──ちなみにこれまでのワンマンはどのくらいのキャパだったんですか?

300人くらいなので、大きな挑戦です。地方会場でキャパ2000人って有名な人でも埋まらないことがあるんですよ。私たちは完全にインディーズで活動しているので、もちろん正直いろんな負担も大きいです。でも有名になってから大きいことをするっていうことじゃなくて、常に大きな挑戦を重ねてさらに大きくなれたらいいなって。まずは全国各地の人に∞Zというバンドの音楽をもっと浸透させていきたいですね。

──全国各地に活動の幅を広めていけるといいですね。

ですね。ツアーも調整中で、来年は日本中を回りたいなって思ってます。

──いろんな人が全国各地で興味を持ってくれたら本望ですよね。

理想としてはそうありたいですし、そういう風潮を作りたいって思います。だけどまずはもっとみんなに知ってもらえるようにしたいですね。いきなりEDMを入れてみるとか、そういうことをせずに自分たちのスタイルに自信を持ってこれからも活動していきたいです。売れ線を狙った音楽を作るのって芸術としての音楽からはかけ離れてる気がしますし。でも、ほかのバンドにはない、面白くていい音楽やってるなって自負を持って活動しています。だから自分たちはスタンスを崩さずにこれからもやっていきたいですし……ライブにも観に来てほしいな!

──でもほかのアーティストが流行を採り入れるのには理由がもちろんあるはずですし、ビジネス面で成り立たないと活動をし続けることが難しくなってくると思うのですが。

そこは今後の課題です。私たちの楽曲やライブに興味を持ってもらえて、浸透したらそれが新しい音楽のビジネス開拓につながるかもしれないけど、そうなるまでにはまだまだ及ばないって自覚してます。このインタビューもそうですし、YouTubeにアップしてる動画とかを観て、面白いバンドがいるなって思ってもらえたらうれしいです。ライブを全国でやっていきたいので、近くで観るチャンスがあったらぜひ観てもらえたら“フュージョンパワーポップトリオ”の意味が理解できると信じています。

ERIKA(Vo, G)
∞Z ライブスケジュール
2015年12月5日(土)
宮城県 仙台市地下鉄東西線 宮城野通駅
2015年12月6日(日)
福島県 Live Space C-moon(※ワンマンライブ)
2015年12月11日(金)
福島県 岩瀬書店富久山店プラスゲオ(※ERIKA弾き語り)
2015年12月12日(土)
福島県 飯坂温泉 楽屋(※ERIKA弾き語り)
2015年12月18日(金)
福島県 Live Space C-moon
2015年12月19日(土)
東京都 タワーレコード八王子店(※インストアライブ)
2015年12月20日(日)
宮城県 タワーレコード仙台パルコ店(※インストアライブ)
2015年12月25日(金)
福島県 clubSONICiwaki(※ERIKA弾き語り)
2015年12月26日(土)
山形県 新星堂エスパル山形店(※インストアライブ)
2016年1月3日(日)
福島県 新星堂エスパル郡山店(※インストアライブ / ERIKA弾き語り)
2016年1月8日(金)
埼玉県 新星堂アリオ深谷店(※インストアライブ)
2016年1月9日(土)
東京都 gee-ge(※ERIKA弾き語り)
2016年1月10日(日)
静岡県 タワーレコード静岡店(※インストアライブ / ERIKA弾き語り)
2016年1月15日(金)
福岡県 clubSONICiwaki
2016年1月16日(土)
新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
2016年1月24日(日)
福島県 郡山CLUB #9
2016年2月7日(日)
秋田県 Club SWINDLE
2016年2月11日(木・祝)
静岡県 タワーレコード静岡店(※インストアライブ)
2016年2月11日(木・祝)
静岡県 KJホール
2016年2月13(土)・14日(日)
沖縄県 那覇市内の複数会場(※「Sakurazaka ASYLUM 2016」 / 出演日程・会場未定)
2016年2月20(土)
渋谷LOOP ANNEX
∞Z(ゼロゼロゼット)
∞Z

福島県福島市在住のERIKA(Vo, G)、Shingo Katagiri(Dr, Cho)と、宮城県仙台市在住のKenji Sato(B, Cho)からなる3人組バンド。2011年5月より福島、宮城、東京を中心に活動している。キャッチーなJ-POPサウンドを基軸にしつつ、フュージョン、ジャズ、ブルースの要素や、テクニカルな演奏を織り交ぜた楽曲が特徴。これまでに2012年12月に1stミニアルバム「musicα」、2014年6月に2ndミニアルバム「musicβ: remember&reborn」を発表している。東北各地でのライブイベントに多数出演しているほか、東日本大震災の被災者を応援するために仮設住宅や、幼稚園、小学校などでボランティアの一環としてライブを実施。さらに音楽で東北を盛り上げるべく「東北ライブハウス大作戦」「LOVE FOR NIPPON」にも参加している。2015年には世界の約150都市で活動しているアマチュアバンドのライブコンテスト「エマージェンザ」で勝ち進み、7月に東京・TSUTAYA O-EASTで日本での決勝大会では3位という好成績を残した。12月に3rdミニアルバム「musicγ」を発表し、福島・Live Space C-moonでリリース記念ワンマンライブを開催。この単独公演を皮切りにインストアイベントやERIKAの弾き語りライブを含む全国ツアーをスタートさせる。