個性を極めたライブとアグレッシブなスタンスで、この15年間のアイドルシーンを盛り上げ続けてきたでんぱ組.incとえびちゅう。2019年5月にZepp DiverCity(TOKYO)で行われた「私立恵比寿中学合同合唱コンクール」以来約5年ぶりとなった今回のツーマンライブで、彼女たちは通常の対バン形式とは異なる、曲ごとに入れ替わり立ち替わりステージに立つというセットリストでパフォーマンスを繰り広げ、満員の観客を沸かせた。
冒頭から予想外の展開に
でんぱ組.incの藤咲彩音と、私立恵比寿中学の真山りかによる影ナレを経て、まずステージに登場したのはでんぱ組.inc。新体操のリボンを携えたメンバーが「でんでんぱっしょん」を歌い始めると、会場の盛り上がりが一気に最高潮に達した。これを皮切りにでんぱ組.incのライブが始まるのかと思いきや、曲が終わるとステージが暗転し、再び照明が灯るとそこにはえびちゅうの姿が。直前に欠席とアナウンスされていた星名美怜を除く9人で「仮契約のシンデレラ」を披露し、予想外の展開に観客のテンションがますます上昇していく。2010年代前半のアイドルシーンを彩った2曲の連発に、これからスペシャルな夜が始まる予感を多くの人々が抱く中、2グループのメンバーは全員横一列に並んで一緒に自己紹介をし、ツーマンライブの開会を力強く宣言した。
ここからは2組がそれぞれ3曲ずつパフォーマンスを披露。先攻のえびちゅうは「Knock You Out!」でアグレッシブなラップのマイクリレーを繰り広げ、クールな一面をアピールする。しかしその一方で、続く「ハイタテキ!」では欠席した星名の代打として小林歌穂がセンターで指揮をして、慣れないことにあたふたしている姿にメンバーみんなで笑顔になる場面も。そして「Go!Go!Here We Go!ロック・リー」を歌い、えびちゅうはでんぱ組.incにたすきをつなぐ。えびちゅうに負けていられないとばかりに「ギラメタスでんぱスターズ」でアグレッシブなライブを開始したでんぱ組.inc。そのまま「衝動的S/K/S/D」「ちゅるりちゅるりら」と沸き曲を連発し、フロアを熱狂にいざなった。
リクエストタイムで前も後ろも大盛り上がり
MCで2組が再び横並びになって互いのステージを称え合ったのち、始まったのは「スペシャルリクエストタイム」だ。事前にでんぱ組.incとえびちゅうのメンバーが観てみたいお互いの曲を2曲ずつリクエストしていたとのことで、でんぱ組.incの鹿目凛は「私、楽曲派なんだけど、えびちゅうさんの曲は全部いいじゃん? そんな中でも私にすごくドンと響いた曲があってね」、藤咲彩音は「私もえびちゅうさんとは長い付き合いなんですけど、『あのえびちゅうさんがそんな一面も出せるんですか!』という曲です。でんぱには絶対出せない一面だよね」と、それぞれ自分たちがリクエストした曲について説明。えびちゅうの安本彩花は「めっちゃ盛り上がる、みんなで大きい声出せる曲! あと、えびちゅうとちょっとゆかりがある思い出の曲なんですよ」と、何をリクエストしたのかのヒントを出した。
でんぱ組.incがリクエストしたえびちゅうの1曲目は「BLUE DIZZINESS」。スタイリッシュなサウンドに乗せて歌い踊るえびちゅうの後ろで、でんぱ組.incのメンバーもステージに残って至近距離でライブを楽しんだ。寒い時期に披露されることが珍しいサマーソング「夏だぜジョニー」がセットリスト入りしたのもリクエストタイムならでは。そして前後交代してステージの前に出てきたでんぱ組.incは、えびちゅうメンバーの目の前でキラーチューン「でんぱれーどJAPAN」と、奇しくも翌26日でちょうど発売10周年の「バリ3共和国」をパフォーマンスした。ある意味で、客席側にも背後にもオーディエンスがいるという状況で行われたこのリクエストタイムは、前も後ろも大盛り上がりになって会場中が一体に。歌い終えた2組は「こんな間近で見られると緊張するね」「後ろで一緒に踊ってもらえてうれしかったです」と、楽しそうに感想を語り合った。
衣装交換で互いの曲を完璧にカバー
その後はでんぱ組.incの相沢梨紗、天沢璃人、高咲陽菜、えびちゅうの小林歌穂、小久保柚乃、桜井えま、仲村悠菜がステージに残ってフリートーク。高咲はアイドルになる前にでんぱ組.incとえびちゅうがかつて共演した2015年の「ミュージックステーション」を録画して繰り返し観ていたことを振り返り、今回のツーマンライブを迎えた感慨を噛み締めた。また、相沢が前日の山梨公演に行くための集合場所を間違えた話、小林が先日開催されたイベント「STARDUST THE PARTY 2024」に、すべての荷物を入れていたリュックを忘れて行ってしまい、現場でほかのアイドルからコスメなど必要なものを借りて乗り切った話、という先輩メンバー2人の最近のドジエピソードが明かされ、会場はほのぼのとした雰囲気に包まれた。
続いて始まったのは、古川未鈴、藤咲彩音、鹿目凛、小鳩りあのでんぱ組.incメンバーユニットによる、えびちゅう「売れたいエモーション!」のカバー。えびちゅうが「梅」のミュージックビデオで実際に着用していた制服風の衣装に着替えた4人が姿を現すと、フロアから驚きの声が湧いた。真山りか、安本彩花、中山莉子、桜木心菜、風見和香によるえびちゅうユニットは、「我ら令和のかえるちゃん!」のカエル衣装を身にまとい、でんぱ組.incの「冬へと走りだすお!」を披露。どちらもほかでは観ることのできない貴重なカバーでありながら、2組とも振付もバッチリ仕上がっており、互いへのリスペクトを感じさせるパフォーマンスとなった。
この2人がそろったってことは……
そしていよいよライブは終盤戦へ。でんぱ組.incが桜ソング「サクラあっぱれーしょん」を歌えば、それにアンサーするようにえびちゅうが梅ソング「梅」を歌い、さらにでんぱ組.incが「商売繁盛!元祖電波屋!」、えびちゅうが「ちちんぷい」と、1曲ごとに目まぐるしく攻守交代しながら歌をつないでいく。
その後のMCでは相沢が、このライブに向けて音楽ナタリーに掲載された2組の座談会に触れて「あの記事に書いてあったこと、かなりいっぱい実現できてるね」と満足げ。これに対して鹿目は「確かにいろんなことができたけど……まだ叶えられてないことがあるんじゃない? 私と真山ちゃんがそろったってことは、短歌を詠まなきゃいけないんじゃない?」と声を上げる。アイドルが短歌を発表し合うイベント「アイドル歌会」の第1回で共演し、その後もたびたび出演している鹿目と真山。この日は「アイドル」というお題で、鹿目が「あの頃は よかったけれど 今だって あの頃以上に 幸せなの」という一首で、「長年アイドルをやっていると『あの頃は好きだったな』と言われて悔しい思いをすることもあるけど、今が一番、あの頃以上に楽しいんだ」という思いを表現。真山は「見逃した ライブ写真 セトリ確認 アイドルの味方 ナタリーで」と日頃からの音楽ナタリーへの感謝の思いを詠んだ。
深い感動、エモーショナルな余韻
このライブが終わりに近付いてきたことを観客に告げた古川は、続けて「どんなに楽しいライブでも終わりが来るんですよ」と語り始める。「明日からも毎日が続いていくわけじゃないですか。楽しくないこともあるかもしれない。でも私たちはアイドルなので、みんなの明日が最高になるような、そんな曲をお届けします。聴いてください」という彼女の曲振りから始まったのは、えびちゅうの「ヘロー」。グループの“これまで”と“これから”を称えるこの曲が、古川の言葉も相まってより一層エモーショナルに響く。さらにそこからでんぱ組.incが「あした地球がこなごなになっても」につないで熱唱。これまでフロアを沸かせるアッパーチューン中心のセットリストだったが、ここでの2曲はオーディエンスに深い感動を与えた。
客席を背にして2組で一緒に記念撮影をしたのち、ついにそれぞれのラストナンバーへ。えびちゅうが最後の曲に選んだのは、2015年の「ミュージックステーション」ででんぱ組.incと競演した際に歌った曲でもある「スーパーヒーロー」。彼女たちは2025年1月のライブをもってエンディングを迎えるでんぱ組.incを送り出すように「今 ここがスタートライン」と歌い上げた。2時間にわたって掛け合いのように繰り広げられたライブの最後を飾ったのは、でんぱ組.incの「キラキラチューン」。アウトロでえびちゅうメンバーも舞台袖から飛び出して合流し、曲の終わりに「はい、ナタリー!」の掛け声で一緒にポーズを決めた。特殊な構成によってそれぞれのグループの持つ魅力をはっきり見せたこのツーマンライブは、エモーショナルな余韻を残して閉幕。公演終了を告げるアナウンスが流れたあとも、アンコールを求める声はしばらく止むことはなかった。
セットリスト
「ライブナタリー でんぱ組.inc × 私立恵比寿中学 ~ヘロー!ウェルカム!踊るでんぱえび共和国~」2024年11月25日 KT Zepp Yokohama
01. でんでんぱっしょん / でんぱ組.inc
02. 仮契約のシンデレラ / 私立恵比寿中学
03. Knock You Out! / 私立恵比寿中学
04. ハイタテキ! / 私立恵比寿中学
05. Go!Go!Here We Go!ロック・リー / 私立恵比寿中学
06. ギラメタスでんぱスターズ / でんぱ組.inc
07. 衝動的S/K/S/D / でんぱ組.inc
08. ちゅるりちゅるりら / でんぱ組.inc
09. BLUE DIZZINESS / 私立恵比寿中学
10. 夏だぜジョニー / 私立恵比寿中学
11. でんぱれーどJAPAN / でんぱ組.inc
12. バリ3共和国 / でんぱ組.inc
13. 売れたいエモーション! / でんぱユニット(古川未鈴、藤咲彩音、鹿目凛、小鳩りあ)
14. 冬へと走りだすお! / えびちゅうユニット(真山りか、安本彩花、中山莉子、桜木心菜、風見和香)
17. サクラあっぱれーしょん / でんぱ組.inc
16. 梅 / 私立恵比寿中学
17. 商売繁盛!元祖電波屋! / でんぱ組.inc
18. ちちんぷい / 私立恵比寿中学
19. ヘロー / 私立恵比寿中学
20. あした地球がこなごなになっても / でんぱ組.inc
21. スーパーヒーロー / 私立恵比寿中学
22. キラキラチューン / でんぱ組.inc
古川未鈴 @FurukawaMirin
ナタリーのレポきたー!!!
ぜひライブを思い出しながら見てください!
私のパツパツの
真山ちゃん衣装も!
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