すべてを詰め込んで挑む
ちゃくらは東京都八王子市の専門学校での出会いをきっかけに2022年6月に結成されたサクラ(Vo, G)、ワキタルル(B, Cho)、まお(G)、葉弥(Dr, Key)からなるガールズロックバンド。2022年12月に1stシングル「海月(Demo ver.)」を配信リリースし、下北沢を拠点に全国各地で地道なライブ活動を続けている。ワキタの実体験をもとにした共感性の高い歌詞、多彩なアレンジのロックサウンドが評判を呼び、今年11月には初のCD作品「こんなとき聞きたくなるのはきみのこえだ」を「ちゃくら全国侵略大作戦」の会場限定で発表した。この公演に向けて彼女たちは「私たちのこれまでの全てを詰め込んだライブを見に来て欲しいです!!」とX(Twitter)に思いをつづっていた。
渋谷CLUB QUATTRO公演のチケットはソールドアウト。フロアを埋め尽くすファンは彼女たちの登場を今か今かと待ちわびるようにステージを見つめる。敬愛するクリープハイプの楽曲「なんてことはしませんでしたとさ」が流れる中、そろいの白いTシャツ姿で登場した彼女たちは一礼して持ち場に着いた。サクラが大きく息を吸って「あいつ」の冒頭をアカペラで歌ったあと、一気に音を重ねて爆音を轟かせる4人。ワキタの情感豊かなボーカルもオーディエンスを惹き付けていった。そして、「ちゃくら始めます!」というワキタの開幕宣言をきっかけに、ちゃくらの真骨頂とも言える恋愛ソング「もういいよ、おやすみ」「どうか」が畳みかけられ、切ない歌詞の世界観とは裏腹に、彼女たちの頭を振り乱しながらのパワフルなパフォーマンスが鮮烈なインパクトを残す。お立ち台に乗ったワキタが躍動感あふれるベースを奏でて「ウソノハナシ」をドロップすると、会場の熱気はさらに上昇。彼女たちは心からステージを楽しむように、時折笑顔を見せながら音を鳴らした。
葉弥のキーボードに乗せてサクラが歌ったのは
「ソールドアウト、ありがとうございます!」と元気いっぱいに感謝を述べたのはワキタ。「人がいっぱいいると思ってうれしくて、笑っちゃいました。ここに4人で立てたことが何よりうれしいです」と感激した様子を見せる。そして、会場の空気を一変させたのは「nei」。真っ赤なライトに染まるステージでメンバーは互いに向き合いながら破壊的なサウンドを鳴らす。サクラの叫びのようなボーカルも相まって、場内はシリアスなムードで満たされた。サクラの歯切れのよいギターカッティング、まおのグルーヴィなギターが心地よいサマーチューン「一、人」のあとに披露されたのは、「こんなとき聞きたくなるのはきみのこえだ」に収録されている、ちゃくらにはめずらしいロックバラード「劇場と負けヒロイン」。哀愁たっぷりのアンサンブルに乗せて、繊細な恋愛感情が描かれた。
ミュージックビデオの再生数が50万回を突破している「海月」、「こんなとき聞きたくなるのはきみのこえだ」に収録されているもう1つの楽曲「ユスリカ」というアップチューンでフロアを盛り上げたちゃくら。ここでメンバーは一度ステージを去り、サクラと葉弥だけが再登場する。「みんな恋をしてますか?」と切り出したあと、自身の恋愛観を語ったサクラは「自分の感情を少し愛おしいって思える、そんな歌です」と言い、未発表の新曲「それほどの一憂と(仮)」を葉弥とともにパフォーマンス。ドラムからキーボードにパートチェンジした葉弥が奏でるエモーショナルな音色に乗せて、サクラが狂おしい感情を歌声で表現した。なお、葉弥がライブでキーボードを弾くのはこの日が初となった。
「全国どこでも皆さんに会いに行きます」
切ない余韻が残るステージに、再び4人がそろった。「普段あまりしゃべらない2人から」とワキタから視線を送られた葉弥は「今日という日を私たちのために使ってくれてありがとうございます。改めて、この4人で大きな舞台に立つことができてうれしいです。活動休止中に気付いたことがあって、自分は音楽に生かされてるなって。音楽人生の中の第1歩をみんなと迎えることができて幸せです」と、ジストニア症状による休養期間を振り返りつつ、舞台に立つ喜びを噛み締めるように思いを語る。「11月28日は2年前、初めてライブをした日です」と言うまおは「あのときの景色と比べたとき、この2年間でたくさんの人に見つけてもらえたんだなと感じました。これからも止まることなく進んでいきたいと思うのでよろしくお願いします!」と決意を述べた。続いてワキタも「あなたは私たちの生きる理由です。私たちのすべてです。音楽があなたと出会わせてくれて、みんなの顔を見ながら信じる音楽ができる幸せを改めて実感しました。全国どこでも皆さんに会いに行きます」と熱い思いをぶつけた。
その後、生きることと真摯に向き合うように「今私生きている様だ」「生きる価値ないし」、強いメッセージが込められた新曲「万人様(仮)」もパフォーマンスされ、ラストスパートへ。瑞々しさにあふれる「19才」では、4人がサビで歌声を重ねると観客がジャンプし、フロアはたちまち一体感に包まれる。ラストソングはちゃくらの生き様を示したような「まるで駄目な女子高生はバンドマンになった」。彼女たちの衝動ほとばしるパフォーマンスに呼応するように、ファンは拳を突き上げた。本編はここで終了。結成わずか2年で堂々たるステージを繰り広げたちゃくらに、大きな拍手が贈られ、いつまでも鳴り止まなかった。
キラーチューンをもう一度
フロアのスクリーンで「劇場と負けヒロイン」のミュージックビデオが初公開されたあと、アンコールでステージに戻ってきたちゃくら。代表曲とも言えるキラーチューン「もういいよ、おやすみ」「まるで駄目な女子高生はバンドマンになった」をもう一度披露して、ファンを熱狂に導いた。最後までストイックなパフォーマンスを展開した4人は充実した表情で舞台を去った。
ちゃくらは2025年3月に全国5カ所を回るワンマンツアー「ちゃくら全国侵略大作戦 第二幕」を行う。YouTubeでは「劇場と負けヒロイン」のミュージックビデオを公開中。
ちゃくら「劇場と負けヒロイン」ミュージックビデオ
セットリスト
「ちゃくら全国侵略大作戦 ~もう一人にはしないよ編~」2024年11月28日 渋谷CLUB QUATTRO
01. あいつ
02. もういいよ、おやすみ
03. どうか
04. ウソノハナシ
05. よだか
06. nei
07. タイトル未定
08. 一、人
09. 劇場と負けヒロイン
10. インスト2
11. 海月
12. ユスリカ
13. それほどの一憂と(仮)
14. 今私生きている様だ
15. 生きる価値ないし
16. 万人様(仮)
17. 19才
18. まるで駄目な女子高生はバンドマンになった
<アンコール>
19. もういいよ、おやすみ
20. まるで駄目な女子高生はバンドマンになった
公演情報
ちゃくら全国侵略大作戦 第二幕
2025年3月2日(日)北海道 BESSIE HALL
2025年3月8日(土)愛知県 CLUB UPSET
2025年3月15日(土)福岡県 Queblick
2025年3月23日(日)大阪府 Shangri-La
2025年3月30日(日)東京都 東京キネマ倶楽部
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Yuji TANAKA @ugtk
「ちゃくら」ってグループあんのか。ニルヴァーナみたいやな。 https://t.co/f3FnajViW8