澤部と街裏によるツーマンライブ「VALETUDO QUATRO」が行われるのは、昨年5月の開催に続いて2回目。今年5月に2人の音声番組「ビッグビューティー」がスタートするなど(参照:スカート澤部渡×街裏ぴんく、全13回のポッドキャスト特番「ビッグビューティー」スタート)、親交を深めてきた彼らは、前回から規模を拡大し、東名阪のクアトロにて毎度3時間にもわたる濃密なツーマンライブを届けた。
次々連鎖していく音楽×漫談
舞台はとある喫茶店の一角。そこには、机を挟んで和気あいあいと会話をする、体の大きい2人の姿が。ツーマンツアーを間近に控える澤部と街裏が、ライブに関する打ち合わせをしているようだ。定期入れがジュラ紀にはすでにあったという雑学や、消耗品にサインしているときが一番興奮するという澤部の意外な一面について取り止めもなく話しつつ、「いや、ツーマンの話ですよ。7月23日が大阪、次の日が愛知、8月5日が渋谷と」「もうあと2カ月もないくらいですからね……中身決めていかないと」とライブ内容の話し合いへ。2人は賞レースにまつわる曲とネタを披露するという冒頭の流れを決め、宙を眺めてその場面をイメージ。すると2人の頭の中が具現化するかのように、彼らのパフォーマンスがステージ上で繰り広げられていく。
まずは澤部が、ステージ下手のマイクの前に立ち、「UNDER 25 OWARAI CHAMPIONSHIP」のテーマ曲「期待と予感」を弾き語り。軽快なメロディとしっとりした歌声が、観客の心を優しく躍らせる。曲が終わると、すかさず街裏がステージ上手へ。「R-1グランプリ2024」でも披露された、石川啄木を題材にした漫談で、会場を爆笑の渦に包み込んだ。その漫談の舞台設定がプールであることから、続く澤部は、同じくプールが舞台の映画「水深ゼロメートルから」の主題歌「波のない夏」を歌唱。数珠つなぎ的に連鎖していく2人のパフォーマンスに、観客の視線は冒頭から釘付けになっていく。……と、これはあくまで喫茶店にいる2人の妄想。あまりに鮮明な“シミュレーション”を終えた2人は「いい始まりじゃないですか?」「ね! ヤバそう! お客さんも喜んでくれるといいですねー」と口々に感想を述べ合う。澤部が「温かい拍手とか聞こえてきたりするかな……?」と疑問を口にすると、客席からは大きな拍手が沸き起こった。
カバーやコラボも続々と
その後も、漫談「だんご3兄弟」の中で出てくる摩訶不思議な曲を、澤部のギターに乗せて街裏が歌うなど、2人の空想の世界が炸裂。お互いへのリクエストパートでは、2016年にリリースされた、澤部初の全国流通シングルの表題曲「静かな夜がいい」と、街裏を象徴する代表ネタの1つ「床穴」が連続で披露されるという、両者のファン垂涎の流れも。さらに、澤部による光GENJI「STAR LIGHT」のカバーも披露された。
街裏は「厚かましい話なんですけど……」と切り出し、自分が作詞をし、そこに澤部がメロディをつけて1曲を作り上げるというコラボを提案。彼は「下半身に特化した衣装(=スカート)」「照れたほっぺたのお色味(=ぴんく)」「犬を切らしたことのない実家」など、2人の要素を取り入れたフレーズを伝えていく。澤部は「やるなんて言わなきゃよかったよ……」と不安がりながらも、そんな奇天烈な歌詞を曲に乗せて歌唱しているところを妄想。その妄想が形となり、伸びやかでクールな歌声がクアトロを包み込んだ。
2時間半の打ち合わせを終え
短めの曲と漫談が6連続で繰り出されたあとには、松浦亜弥をテーマにした漫談、そして2人による「桃色片想い」のカバーなどが披露された。開演から2時間半が経った頃、2人はライブの終わらせ方を相談し始める。話し合いの末、街裏が漫談を披露し、その後澤部がエンディングとして曲を歌うことが決定。街裏の漫談「図工」が終わるやいなや、澤部の「君はきっとずっと知らない」が届けられ、温かい拍手が自然と湧き起こる。ライブ全編の“シミュレーション”を終え、「いやあ、すごくいいライブなんじゃないですか」「豊かだってことが伝わるといいなあ」と胸を躍らせる2人。澤部の「アンコールとか来たらどうします?」という疑問に、街裏が「それはまた、舞台で考えましょう。まあアンコールをいただければいいですけど」と答え、長い打ち合わせを終えた2人は喫茶店から退出した。
締めはあの曲を2人で
2人の思惑通りに鳴り続ける拍手を受けて、澤部と街裏はステージに登場。彼らはこの日初めて観客に語りかけ、街裏が「皆さんに早く語りかけたかったんですけどね。そういう機会のないライブやから」と笑った。澤部は「今年の年明けくらいに、あるイベントでPUNPEEさんが『ODDTAXI』をやったときに、偽スカートとして空気階段の鈴木もぐらさんが出るっていうのがあったんですよ。PUNPEEさんが僕のパートを歌って、鈴木もぐらさんが自作のラップを披露して大盛り上がりみたいな感じだったんです(笑)」と語り、「僕はラップは書けないんですけど、こちらに……」と街裏を示す。街裏は「名古屋と大阪、どっちもミスってるんですよね……」と緊張をにじませながら背水の陣でパフォーマンスへ。澤部が伸びのある歌声を響かせる横で、街裏が見事ノーミスでラップを繰り出し、ツーマンツアーは輝かしいエンディングを迎えた。
Streaming+では、この公演のアーカイブ映像を8月11日まで配信中。またカクバリズムの通販サイトでは、Tシャツやタトゥーステッカーといったオリジナルグッズが販売されている。
セットリスト
「VALETUDO QUATRO 2024」2024年8月5日 渋谷CLUB QUATTRO
01. 期待と予感(澤部渡)
02. 石川啄木(街裏ぴんく)
03. 波のない夏(澤部渡)
04. だんご3兄弟(澤部渡×街裏ぴんく)
05. 景色 / 欄干(澤部渡)
06. 静かな夜がいい(澤部渡)
07. 床穴(街裏ぴんく)
08. STAR LIGHT(澤部渡 / 光GENJIカバー)
09. 雑談漫談:ホイップクリーム(街裏ぴんく)
10. 美しや(澤部渡×街裏ぴんく)
11. チャンピオンの(街裏ぴんく)
12. スミレとヘルメット(澤部渡)
13. スカート目撃録(街裏ぴんく)
14. Aを弾け(澤部渡)
15. プロ(4色ボールペン)(街裏ぴんく)
16. いい夜(澤部渡)
17. あやや(澤部渡×街裏ぴんくスペシャルメドレー)
18. 図工(街裏ぴんく)
19. 君はきっとずっと知らない(澤部渡)
<アンコール>
20. ODDTAXI(澤部渡×街裏ぴんく)
澤部渡 / スカート @skirt_oh_skirt
器こそいびつですが中身に関してはお互いのベスト盤みたいなライヴでした!言葉にするのが難しいライヴなのにナタリーさんがレポート書いてくださってます!配信でお待ちしています!#ぴんくスカート https://t.co/wjh2EAB5Fp