10月9日には追加公演の埼玉・さいたまスーパーアリーナ公演が開催。会場の照明が暗転し、ステージに設置されたスクリーンに潜水艦のフロントガラスを模したオープニング映像が投影されると、満員のオーディエンスから大歓声が起こる。続いて「オレンジジュース」「メダカの格好」のイントロを絶妙にミックスした音源をバックに、メンバー1人ひとりのアーティスト写真が映し出される演出で、ライブがスタートした。
1曲目に鳴らされたのはアルバム「Z」から、壮大なサウンドが印象的な「ライジングボール」。そしてブギスタイルのリフが楽しい「頼みたいぜ」で観客を踊らせたかと思えば、1990年リリースの「ハヴァナイスデー」を披露し昔からのファンを歓喜させる。またこの曲では、2番の歌い出しにおける奥田民生(Vo, G)と阿部義晴(Key)の掛け合いも聴きどころで、この日は「さあて 今夜はどこに繰り出そう」との民生の問いかけに「いやー昨日はいい店見つけましたよ」と阿部が返していた。
そして民生の「昨日に引き続き早いスタートですけどもたくさん来ていただいてありがとうございます」「4時スタートて! こっち的にはリハーサル気分ですよね、もしくはトリじゃないフェス?」といったゆるいMCを経て、阿部のハモンドオルガンソロが鳴り響く。するとステージ下手奥に設置された大きな樽からにゅっと手島いさむ(G)が首を出す。さらに「黒ひげ危機一発」ゲームさながら、EBI(B)が大きな両刃の剣を掲げザクッ!と樽に刺すと、テッシーの「あー!」という絶叫が会場中に響き渡る。オーディエンスはこの時点で笑いをこらえきれず、あちこちからきゃっきゃと声が起きるが、EBIは気にせずもう1本剣を刺す。「あー!!」と2度目の悲鳴がこだまし煙が立ち込めると同時にテッシーの体が宙に浮く、という演出で、このツアーの1つ目のハイライトともいえる「手島いさむ物語」が始まった。
ステージ上空を縦横無尽に飛び回り、これでもかとタッピングを披露するテッシーの様子に誰もが大喜びしたあとは、EBIが空を飛ぶ「BLACKTIGER」。続く「WAO!」では、サビでテッシーとEBIの2人が宙を舞い演奏する大掛かりなパフォーマンスが繰り広げられ、観客もヒートアップする。そして「WAO!」でボーカルをとった阿部がそのままMCを担当し、「今聴いていただいた曲は全米No.1を獲得した『星降る夜にディスタンス』」と微妙なトークを展開。さらに「今日は忘れられない最高の夜にしましょうZ」という歯が浮くようなセリフに続いてチュッとキスをプレゼントすると、客席からは悲鳴と笑いの両方が起こった。ざわめくオーディエンスを前に、そのまま阿部がピアノで聴き覚えのあるイントロを奏でると、今度は絶叫がこだまする。まさかの「Maybe Blue」の演奏に、会場中が熱狂するひとときとなった。
次はEBIがアコースティックギターを抱えてステージ中央に用意された椅子に着席。「それではアコースティックな感じで2曲聴いてください」と口にして「いちじく」を弾き語りで演奏し始めると、2番を歌い始めたあたりで舞台下手からほかのメンバー4人が段ボールで作った打楽器を首から吊るして登場。EBIの歌にあわせて阿部がカズーを、民生がフィンガーシンバル&ギロ代わりのゴーヤを、テッシーが手作りシェイカーを鳴らし、楽曲の持つしんみりとした空気を笑いでかき回す。その様子は、フロントのEBIが「楽しそうでいいね! ホントは後ろに混ざりたいんですよ!」と口にするほどだった。
さらに5人は同じ編成で「水の戯れ ~ランチャのテーマ~」を披露すると、2回目のMCコーナーに突入。民生が「川西さんが手拍子を煽ったせいでね、すっごいやりづらかった! (ステージへの)はね返りを考えろっつーの!」と笑いながらも観客の手拍子の下手さ加減に苦言を呈す。加えて「今度飲み屋で会ったら俺がいちから教えてやるよ」とサービストークを繰り広げ、歓声を浴びていた。
MC後は、最新ミニアルバム「Z II」収録曲の「レディオ体操」からスタート。続く「パパは金持ち」では民生がスタンディングスタイルのドラムセットに移動し、川西幸一(Dr)とのツインドラムで演奏する。さらにアウトロで「手島ショー」「EBIショー」「阿部ショー」「川西ショー」「奥田ショー」と題してメンバーそれぞれのソロを繰り広げ、なかでも「川西ショー」では川西がいつもより長く熱の入ったドラムソロで観客を虜にした。そして「君達は天使」では、序盤でテッシーが使ったセットの樽より、今度はEBIが下半身を茶色い布で包んだ“EBIフライ”仕様の衣装でジャンプアップ。これにはオーディエンスも大ウケだった。
続いて場内が暗転すると、なぜかテッシー、EBI、川西のひそひそ話がマイクを通して聴こえてくる。テッシーが「ちょっと暑いね」と言うも、川西が「え? は? 何?」と返し、「耳が遠い!」と怒られるくだりで客席はまたしても大爆笑。重ねてEBIまで「ホントに聞こえん!」と口にする始末だ。これが、続く「メダカの格好」への前振りだとわかったのは、阿部がシンセベースを鳴らしたとき。ミニアルバム「Z II」の下りを生で再現したようなやり取りに、観客は思わず笑顔を浮かべた。
さらに川西&EBIによるラップユニット・甲殻類をフィーチャーした「ブルース」を経て、「さらばビッチ」へ。この曲は甲殻類のラップと民生&阿部のボーカルが入れ替わり立ち替わり展開される、ユニコーンならではの楽曲だ。そしてここからはライブ終盤に向けて、畳み掛けるように楽曲を披露。「オレンジジュース」では阿部のクールなボーカルを特効の炎が後押しし、「HELLO」では民生の太いボーカルと阿部の奏でる透明感あるピアノがオーディエンスの心をわしづかみにする。さらに民生がキーボードを弾くレアな光景が観られる「Z LIFE」、再びテッシーとEBIが宙を舞う「ヒゲとボイン」と、息つく間もなく名曲が演奏されていく。そして本編最後に鳴らされたのは「デジタルスープ」。スケールの大きなメロディとまっすぐ胸に刺さる歌詞、ユニコーンの5人ならではのグルーヴ感あふれるサウンドに、会場中が魅了され、大きな歓声とともに本編は幕を下ろした。
アンコールの声に促され再びステージに現れた阿部、民生、川西、EBIの4人は、本編の海賊衣装からツアーグッズの「ZトリムT」に衣装替えした姿。そのまま特にMCもなく、舞台下手に準備された椅子に座り、おもむろに子供用の小さな楽器で「手島いさむ大百科」のイントロを奏でる。それと同時に上手から、ラジオのDJ卓のような作り物を首からぶらさげたテッシーが勢い良く登場した。曰く、「このコーナーは『Z II』収録の『手島いさむ大百科』をやるんですが、ステージでいきなりあんなのはできないので! ここでは“DJ TESHIMA”がみなさんからメールで寄せられた質問に答えます!」とのことだ。
その言葉どおり、ファンからの質問に勢いよく返答していくテッシー。「うんともすんとも相手から連絡がない場合はYESですかNOですか」には「うーん、NGです!」、「最近思い切って買ったものはなんですか」には「これは昨日も言ったんですけどね、車買いました」、「自画自賛してください」には「前向きです!」と立て続けに返事をする。しかし「ザリガニのオスとメスの見分け方は?」には「ハサミが大きいほうがオスじゃないですかねえ?」と曖昧な返答を口にし、見かねた民生が「メスのほうが大きいんだよ、なんでもそうなんです」と横やりを入れる場面も。
続いて「自分の一番の魅力は」には「前向きです!」、「人生のピンチはどう切り抜けたらいいですか」には「今俺ピンチ! 誰かおムコにもらってください!」と観客を笑わせる。さらに、前日のライブのMCで、デビューが1987年で1993年に解散し2009年に復活して今は2011年だから、今年でユニコーンは10周年だと説明したことに触れ、「よく考えたら計算間違ってたね! 算数の問題だ! 来年10周年です、やっと10年だよ! 家族より一緒にいるかと思ったけどそんなことないね!」と照れまじりに報告して、拍手を浴びる。そして最後に「幸せなときはどんなとき?」との問いかけに「ユニコーンやってるときは楽しいですな」と答え、「手島いさむ大百科」をきれいに終わらせた。
続くMCでは民生が「テッシーがユニコーン総選挙でセンターになったので、今回のツアーではテッシーがやりたいことをやるようになりました」と淡々と説明。それに対しテッシーが「でも海賊とかいいよね、って言ったのは実は前回のツアーのときなんですけどね」と反論するも、「前回はセンターじゃなかったので」と切って返す民生。さらにテッシーが「わたしのことが嫌いでも、ユニコーンのことは好きでいてください!」とどこかで聞いたような決め台詞を口にすると、場内はわっと沸いた。
このタイミングで、下手から「えふんえふん」と咳き込む声が聞こえてくる。メンバーと観客がそちらの方向に目をやると、そこにはアンパンマンのお面を着けヨロヨロ歩く阿部の姿が見える。「ぜーーーーーーっ……」「ぜーーーーー……げふんげふん」と咳き込みながらも、「Z」と叫びたい様子だ。そのまま民生に歩み寄り「……おじさーん、力が出ないよう……」と訴えると、「……新しい顔を焼くよ?」と返答が。すぐさまステージ上手から、テッシー&EBIのフライングで使われたワイヤーを利用して新しい顔ならぬ新しいお面が届けられると、古いお面を捨て新しいものに付け替える。すると力が戻ったのか、高らかにGコードのトライアドにあわせて「ぜーーーーーーっ!」とシャウトする阿部。そのまま「SAMURAI 5」の演奏になだれ込んだ。
アップテンポなロックンロールをバックに、阿部はステージ上を縦横無尽に走り回る。またサビでは、後方スクリーンに投影されたこの曲のビデオクリップ同様にフラッグを振ると、オーディエンスもそれにあわせて右に左にツアーグッズ「SAMURAIフラッグ」を振り回す。さらに間奏ではいったんバンドの演奏が小さい音になり、それを見計らったように阿部が「俺が海岸線を走っていたとき、あいつが言った」と音源さながらのセリフを口にする。メンバー4人や会場からの「なんてった」の呼びかけに対し、「おっとこの県は海岸がなかったんだ……俺が大宮バイパスを走っていたとき、あいつが言った」と埼玉ならではのサービスも。そして「なんて言った、『あなたのスピード、ほにゃにゃにゃにゃ』って言ったんだ、さあなんて言った!」と民生に問いかける。しかし何を求められているのかいまいちつかみ切れてない表情の民生は、おずおずと「……し、し、おいしくなーい?」と返答する。
それを受けた阿部は「そうだ、『あなたのスピードおいしくない?』だ、っておいちょっと待て」とノリツッコミできびすを返す。もう一度民生に問いかけるも、返ってきた答えは「やめてけれー」。「やめてけろ?」と民生に釘を刺した阿部が、客席に向き直って「違うんだ、お前たちは知ってるよな?」と話しかけると、あちこちから「やばくなーい!」と答えが飛ぶ。「そう、やばくない、だ。頼むぜ? あなたのスピード、って言ったらやばくなーい、だ」とコール&レスポンスを要求。さらにふと思いついたかのように、「ところで今日のライブ、やばくないか?」と問いかけると、会場中から嬌声が起こった。
フェイントまじりのコール&レスポンスを経て、阿部の「あなたのスピード、やばくなーい!」というシャウトが響き渡ると同時に、特効のテープが一斉に発射。キラキラと舞い落ちるロゴ入りテープの中、2番以降を歌い切った阿部は、「サンキュー! 愛してるZ!」と叫んでステージを下りていった。
ほかのメンバーも一旦バックステージに戻るも、鳴り止まないアンコールの拍手を聞いてダブルアンコールのため三度ステージ上に姿を現す。定位置に立った民生が「えー、こんな遅い時間までありがとうございます」とライブ前半のMCに引っ掛けたトークを披露し、オーディエンスを笑わせる。メンバー紹介を挟み、「ツアー、またやるときは来てください」とゆるめの誘い文句を口にして、ラストナンバー「晴天ナリ」を演奏。川西の叩くどっしりとしたドラムに乗り、民生の伸びやかなボーカルとそれを支える阿部のコーラスが絶妙に絡み合うこの曲で、2時間半にわたったライブに終わりを告げた。
なお、このツアーでは退場SEに「ぶたぶた」を使用。メンバー5人がステージを左から右に、そして舞台セットの甲板の上まで階段を上って下りてくるという一連の挨拶まわりを、マーチのリズムで彩っていた。
ツアーを大団円に終了させたユニコーンは、このあとライブイベントに連続して出演する。来週10月25日・26日には寺岡呼人主催の「Golden Circle vol. 16 ジュンスカ×ユニコーン」で日本武道館、28日にはSPARKS GOGO主催の「SPARKS GOGO presents SHIBUYA JUNCTION 2011“また倶知安じゃないジャン!”」でSHIBUYA-AX、29日には「東日本大震災復興祭2011 ~子供たちの未来のために~」で国立代々木競技場第一体育館のステージに登場する。また28日の「SHIBUYA JUNCTION 2011」は全国の映画館での生中継も予定されているので、チケットが取れなかった人は劇場で楽しもう。
ユニコーン全国ツアー「ユニコーンがやって来る zzz...」追加公演
2011年10月9日@さいたまスーパーアリーナ
01. ライジングボール
02. 頼みたいぜ
03. ハヴァナイスデー
04. 手島いさむ物語
05. BLACKTIGER
06. WAO!
07. Maybe Blue
08. いちじく
09. 水の戯れ ~ランチャのテーマ~
10. レディオ体操
11. パパは金持ち
12. 君達は天使
13. メダカの格好
14. ブルース
15. さらばビッチ
16. オレンジジュース
17. HELLO
18. Z LIFE
19. ヒゲとボイン(※前日10月8日は「大迷惑」)
20. デジタルスープ
<ENCOLE>
21. 手島いさむ大百科
22. SAMURAI 5
<DOUBLE ENCORE>
23. 晴天ナリ
タグ
リンク
- UNICORN.JP
- ソニー・ミュージックアーティスツ 劇場生中継★クライマックス・シリーズ!
※記事公開から5年以上経過しているため、セキュリティ考慮の上、リンクをオフにしています。
音楽ナタリー @natalie_mu
ユニコーンたまアリ2日目で「最高の夜にしましょうZ」 http://t.co/pyeqGwCm