ART-SCHOOL戸高賢史の加入20周年を祝福、進み続けてきた先に見えた景色

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ART-SCHOOLが昨日7月18日に東京・Spotify O-EASTでライブツアー「Today Forever」のファイナル公演を行った。

木下理樹(Vo, G)と戸高賢史(G)。(撮影:中野敬久)

木下理樹(Vo, G)と戸高賢史(G)。(撮影:中野敬久)

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「Today Forever」は今年でART-SCHOOL加入20周年を迎える戸高賢史(G)を祝福するツアー。2004年、木下が当時福岡在住でART-SCHOOLのファンだった戸高を誘ったことから、戸高はバンドに加入した。それからART-SCHOOLはメンバーの脱退や活動休止など、さまざまな出来事に直面してきたが、戸高は20年にわたって木下の隣でギターを鳴らし続けてきた。

ART-SCHOOL加入20周年に気付いたこと

ART-SCHOOL「Today Forever」東京・Spotify O-EAST公演の様子。(撮影:中野敬久)

ART-SCHOOL「Today Forever」東京・Spotify O-EAST公演の様子。(撮影:中野敬久)[拡大]

大きな拍手に迎えられながら、ステージに木下理樹(Vo, G)、戸高、サポートメンバーの中尾憲太郎(B)、藤田勇(Dr / MO'SOME TONEBENDER)、やぎひろみ(G / NITRODAY)がステージに登場。今回会場ごとにセットリストを変えてツアーを回ってきた彼らは、「車輪の下」で勢いよく東京公演の幕を開けた。さらに5人は開放感のある空気をまといながら「ローラーコースター」「FLOWERS」をプレイ。ライブ序盤からオーディエンスも高揚感に突き動かされるように拳を突き上げ、楽しげにクラップを鳴らす。このツアーの主役である戸高は「ド平日にこんなに集まっていただいてありがとうございます! 自分がART-SCHOOLに加入して20周年ということで、全国11箇所を回ってまいりました。本当にすごくいいツアーで、バンドもディスカッションしてきて。今日はそういった日々の集大成のようなライブをするつもりできております」と充実した表情で挨拶した。

木下理樹(Vo, G)(撮影:中野敬久)

木下理樹(Vo, G)(撮影:中野敬久)[拡大]

ART-SCHOOLの最新のトピックと言えば、ファンから根強い人気のある1stフルアルバム「Requiem for Innocence」が6月についに各サブスクリプションサービスで配信されたことだろう。戸高の加入前の2002年にリリースされた作品だが、彼も「大好きなアルバム」と語る本作。ここで彼らはこの名盤から立て続けに3曲を披露した。5人はデビューシングル曲でもある「DIVA」で力強くも美しいサウンドスケープを描いたあと、胸をくすぐるようなメロディアスなギターリフから「欲望の翼」を演奏。そのまま「アイリス」へとなだれ込み、前のめりで疾走感あふれるプレイを繰り広げた。

戸高賢史(G)(撮影:中野敬久)

戸高賢史(G)(撮影:中野敬久)[拡大]

「いやー、平日なのにこんなに集まってくれて。本当にありがとうございます」と感謝の思いを述べた戸高。「もう、20年だもんね。おめでとう!」と木下から祝福の言葉をかけられると、戸高は「20年なんてマジであっという間です。本当に早かった。いろんな人がいなくなっていくのを見届けていたら、気付いたら20年経っていた(笑)。でも、こうやって今日みたいな平日にたくさんの人が来てくれることもそうだし、いまだに僕がこうやって板の上に立ってギターを弾いているのもそうだし、一緒に演奏してくれるメンバーがいて、何より木下理樹が生きてくれている」と隣を見る。そして戸高から飛び出したのは「気付きましたよ。木下理樹の幸せは俺の幸せ」という言葉。木下は笑顔を隠しきれず、フロアからは歓声と拍手が沸き起こる。「俺の幸せはみんなの幸せ」と戸高が言葉を続けると、歓声はさらに大きくなり、ピースフルなムードが場内に広がった。

ART-SCHOOL「Today Forever」東京・Spotify O-EAST公演の様子。(撮影:中野敬久)

ART-SCHOOL「Today Forever」東京・Spotify O-EAST公演の様子。(撮影:中野敬久)[拡大]

その後5人はどこか柔らかな空気の中で「LITTLE HELL IN BOY」「イノセント」を届ける。「BUTTERFLY KISS」では儚い歌声と幻想的なアンサンブルが響き渡った。「このツアーのMCを木下さんにお願いしたら、すごくしょうもない感じになって。野球ボールをパスしたら、ラグビーボールになって返ってくるみたいな、会話の続かなさがすごかったです」と戸高はツアーを振り返り、「木下さん、今日のこの日に対して何かありましたらお願いします」と話を振る。MCのバトンを渡された木下はしどろもどろになりながらも「いや、その……あれですね。今まで回ってきたツアーのすべてをここに置いて帰ろうという……感じ」とまっすぐに思いを伝えた。

レア曲連発のセットリスト

ART-SCHOOL「Today Forever」東京・Spotify O-EAST公演の様子。(撮影:中野敬久)

ART-SCHOOL「Today Forever」東京・Spotify O-EAST公演の様子。(撮影:中野敬久)[拡大]

今回のツアーでは戸高がメインボーカルを務める楽曲を3曲歌い上げたのも見どころだった。その中でもなかなかライブで演奏されることのない「クオークの庭」が披露されたのは大きなサプライズ。たゆたうようなアンサンブルに乗せて、アンニュイで透き通るような美しいボーカルが響き渡った。そして彼らは、以前ライブで戸高が「バンドに加入してから一番好きな楽曲」と語っていた「エイジ オブ イノセンス」をプレイしたあと、キャッチーなメロディと跳ねるようなリズムが印象的な初期ナンバー「SANDY DRIVER」を軽やかに奏でた。

木下理樹(Vo, G)(撮影:中野敬久)

木下理樹(Vo, G)(撮影:中野敬久)[拡大]

戸高がメインボーカルを務める「Mary Barker」が始まるとフロアに歓声が沸き起こる。心地のいい歌声を届けた戸高は「僕が加入して20年ということでこのツアー回らせていただいてるんですけども、ART-SCHOOLは来年なんと結成25周年らしいんです。どうですか? 25年を振り返ってみて」と木下に話を振った。「うん、まあ……いろいろあったよね」という木下の言葉を聞き、戸高は「だろうな」と頷く。戸高は「25周年ということで、せっかくなら面白いことをやりたいなと思ってます」と来たるアニバーサリーイヤーに向けて意気込んだ。ここで突然木下が「次のトディの20周年は……」と話を切り出す。「ちょっと待って。俺、そのとき何歳なの?」と戸高は20年後を想像。「こんなのになるよ」とヨボヨボになった様子で「スカーレット」を弾いてみせる。それでも木下が「やろう! ジジイになってもやろう!」と声をかけると、フロアから歓喜の声が沸き起こった。

ART-SCHOOL「Today Forever」東京・Spotify O-EAST公演の様子。(撮影:中野敬久)

ART-SCHOOL「Today Forever」東京・Spotify O-EAST公演の様子。(撮影:中野敬久)[拡大]

木下の強弱を付けたエモーショナルな歌声が印象的な「SKIRT」を経て、5人は昨年新たに発表された戸高のメインボーカル曲「Teardrops」をプレイ。衝動的なサウンドに心を駆り立てられるようにオーディエンスは一斉に拳を突き上げた。戸高は「全国を回っていく中でART-SCHOOLのライブを『楽しい』と言ってくれる人がたくさんいてくれて。20年前に始めた頃は、楽しいなんて微塵も思ってなくて、苦行みたいでした」と加入当時を振り返って苦笑いしつつ、「でも、20年続けて思うんですけど、続けてないと見れないことやわからなかったことが本当にめちゃくちゃいっぱいありました。今日みたいな日を迎えられたのもそうだし、メンバーが抜けていくこともあったけど、そんな中でも節目節目のライブでものすごい景色を見せてもらったり。そういう瞬間があったから続けてこれたなと思います。今日もそういう瞬間になりそうです。ありがとうございます」とフロアを見渡す。木下は「このメンバーでここでやれてよかったなと思っていて。勇さん、憲太郎さん、やぎちゃん、それからトディ。本当にトディにはいくら感謝を言っても伝えられないものがあるんだよ、俺の中には。だから、少しでもね、トディが楽しいようにやれればいいなと思ってます」とあふれる感情を言葉にした。

戸高賢史(G)(撮影:中野敬久)

戸高賢史(G)(撮影:中野敬久)[拡大]

ここから5人は「サッドマシーン」を皮切りにライブを駆け抜けていく。ライブでなかなか披露されることのない「KILLING ME SOFTLY」では木下の焦がれるような歌声に戸高の繊細なコーラスが折り重なった。「ジェニファー'88」では途中で戸高のストラトギターの弦が切れてしまい、ツアーグッズのTシャツにもプリントされているジャズマスターにチェンジ。戸高は「ストラト1本で弾き切ろうと思ってたんですけど、この曲の前に弦が切れるということは、このジャズマスターがTシャツにもなっているのにこのツアーで使ってないから拗ねたな。じゃあ、このジャズマスターで鳴らすべき曲をやります」と述べ、戸高の加入当時に発表された楽曲「スカーレット」でジャズマスターを熱くかき鳴らした。ラストナンバーは昨年発表され、ライブでも人気ナンバーとなっている「Bug」。5人のサウンドが美しく溶け合う最新のART-SCHOOLの盤石のアンサンブルが隅々まで響き渡った。

信じてきたものだけは何も変わってない

アンコールを求める拍手に応えて5人は再びステージに登場。戸高は「あんまり自分のことを褒めたりするのをうまくできるタイプではないんですけど、このツアーを回って、今日こうやってお客さんに来てもらって、やってきたことにも少しは意義があったのかなと思えています。20年やってきましたけど、僕がやったことって、自分がやりたいことを曲げないということ、仲間を信じるということ、あとはお客さんを信じるということ。それしかやってきてないです、本当に。だからみんなのおかげで続けてこれたと本気で思ってるので、お礼を言わせてください。ありがとうございます」と感謝の思いを述べ、「20年経てばさすがにおじさんになりましたけど、信じてきたものだけは何も変わってなくて、それからもそういう自分を忘れないようにがんばっていきますので、もしよかったらまたライブにも遊びに来てください」と語った。

向かい合ってギターを鳴らす木下理樹(Vo, G)と戸高賢史(G)。(撮影:中野敬久)

向かい合ってギターを鳴らす木下理樹(Vo, G)と戸高賢史(G)。(撮影:中野敬久)[拡大]

みずみずしいサウンドが響き渡る「Just Kids」を経て、彼らが披露したのは「汚れた血」。戸高がバンド加入前に福岡でART-SCHOOLのライブを観た際に、アンコールで演奏されていたという思い入れのある楽曲だ。ノスタルジックな空気を漂わせながら彼らはたおやかにアンサンブルを紡ぎ、アウトロにかけてその演奏は激しいものになっていく。朱色のライトに染まったステージで木下と戸高は向かい合い、美しい轟音の中でじっくりと音を鳴らした。

ART-SCHOOL「Today Forever」東京・Spotify O-EAST公演の様子。(撮影:中野敬久)

ART-SCHOOL「Today Forever」東京・Spotify O-EAST公演の様子。(撮影:中野敬久)[拡大]

「ロリータ キルズ ミー」を届けて5人がステージを去ったあとも拍手は鳴りやまない。ダブルアンコールで戸高は「こういう夜があるとバンドはやめられなくなっちゃうな」としみじみと話し、「信じてくれてありがとうございました!」と声を弾ませた。そして木下がステージ前方に出てフライングVをかき鳴らし、「BOY MEETS GIRL」の演奏がスタート。ここから新しい未来が始まっていくように希望に満ちたサウンドが鳴り響いた。最後に彼らが演奏したのは「FADE TO BLACK」。眩い光の中で5人の音を思いっきり轟かせ、彼らは記念すべきツアーに幕を下ろした。

セットリスト

ART-SCHOOL「Today Forever」2024年7月18日 Spotify O-EAST

01. 車輪の下
02. ローラーコースター
03. FLOWERS
04. real love / slow dawn
05. DIVA
06. 欲望の翼
07. アイリス
08. LITTLE HELL IN BOY
09. イノセント
10. BUTTERFLY KISS
11. それは愛じゃない
12. クオークの庭
13. エイジ オブ イノセンス
14. SANDY DRIVER
15. Mary Barker
16. SKIRT
17. Teardrops
18. サッドマシーン
19. KILLING ME SOFTLY
20. ジェニファー'88
21. スカーレット
22. Bug
<アンコール>
23. Just Kids
24. 汚れた血
25. ロリータ キルズ ミー
<ダブルアンコール>
26. BOY MEETS GIRL
27. FADE TO BLACK

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戸高賢史 @toddyphantom

恥ずかしいけどありがたい
まだまだ頑張らないと😌 https://t.co/WIgfdG83j6

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