Adoが国立競技場で偉業を達成、声を震わせながら語ったボカロと歌い手への思い

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Ado初となる東京・国立競技場でのワンマンライブ「Ado SPECIAL LIVE 2024『心臓』」が4月27、28日に開催された。

左からAdo、初音ミク。新曲「桜日和とタイムマシン」をパフォーマンスしている。(Photo by Viola Kam[V’z Twinkle])

左からAdo、初音ミク。新曲「桜日和とタイムマシン」をパフォーマンスしている。(Photo by Viola Kam[V’z Twinkle])

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絶対にすごい2日にする

「Ado SPECIAL LIVE 2024『心臓』」より「DIGNITY」パフォーマンス時の様子。(Photo by Viola Kam[V’z Twinkle])

「Ado SPECIAL LIVE 2024『心臓』」より「DIGNITY」パフォーマンス時の様子。(Photo by Viola Kam[V’z Twinkle])[拡大]

2020年10月発表のメジャーデビュー曲「うっせぇわ」の大ヒットで社会現象を巻き起こし、邦楽シーンに彗星のごとく現れたAdo。2022年1月には1stアルバム「狂言」、同年8月には歌唱を担当した映画「ONE PIECE FILM RED」の主題歌や劇中歌を収めた「ウタの歌 ONE PIECE FILM RED」をリリースし、素顔を見せないながらもその確かな歌唱力で国内外のさまざまなチャートを席巻した。今年2月から4月にかけてアジア、ヨーロッパ、アメリカを回る世界ツアー「Wish」を成功させたAdoはデビューからわずか3年半、女性ソロアーティストとして初となる国立競技場での単独公演に挑む。そんな大舞台の前夜には、X(Twitter)アカウントを通じて「絶対にすごいと言える 絶対に 絶対にすごい2日にする 絶対に」と並々ならぬ決意を言葉にした。

「心臓」のチケットは4月27、28日ともにソールドアウト。国立競技場には2日間で約14万人が駆け付けた。この記事では27日公演の模様をレポートする。

曇り空を晴らすような「うっせぇわ」

「Ado SPECIAL LIVE 2024『心臓』」より。(撮影:木村泰之)

「Ado SPECIAL LIVE 2024『心臓』」より。(撮影:木村泰之)[拡大]

開演前には「踊」や「唱」の制作に携わったTeddyLoidが3階スタンドに設置された特設ステージに登場。オープニングDJとして、Adoの楽曲のリミックスで会場を温めていく。開演を少し過ぎた頃「心という名の不可解」のインストバージョンが流れ、そのボリュームが徐々に大きくなる。ステージの巨大スクリーンで心臓がドクドクと動くオープニングムービーが上映されたあと、2段になったステージにAdoがせり上がりで姿を現した。彼女はライブでおなじみの巨大ボックスの中からステージを展開。バンドメンバーの高慶"CO-K"卓史(G)、Naoki Kobayashi(B)、和久井沙良(Key)、森田龍之助(Dr)と「うっせぇわ」でライブを始めると、曇り空を晴らすように気迫あふれる歌声を放つ。ライトが激しく明滅する中、「Tot Musica」では重低音の効いたサウンドとともに、彼女の持ち味とも言えるがなり声が国立競技場を支配した。その後は、寝そべりながらのパフォーマンスで沸かせた「ラッキー・ブルート」や、狂おしいほどの愛を表現した「愛して愛して愛して」でAdoが序盤を勢いよく駆け抜けた。

すっかり日が落ちた頃、オートチューンのかかったボーカルが印象的な「過学習」では、フリフラ(制御型リストバンドライト)がサウンドに合わせて輝き、幻想的なムードに。前半のハイライトを飾ったのは壮大なバラード「永遠のあくる日」で、Adoの儚くも力強い歌声が空気を震わせ、瞬く間に感動を呼び起こす。そして、優雅に舞うAdoのシルエットも鮮烈な印象を与えた。曲の終わりには花火が打ち上がり、ライトが搭載された複数のドローンによって心臓やAdoのシンボルである青いバラが夜空に描かれる。さらにド派手な演出は続き、「私は最強」ではAdoが「私は最強」と高らかに歌い上げるたびにステージから炎が噴き上がった。

Adoにとってかけがえのない2つのもの

「桜日和とタイムマシン」を歌うAdo(左)、初音ミク(右)。(Photo by Viola Kam[V’z Twinkle])

「桜日和とタイムマシン」を歌うAdo(左)、初音ミク(右)。(Photo by Viola Kam[V’z Twinkle])[拡大]

後半に突入すると、Adoはミステリアスなムードの「ショコラカタブラ」やエモーショナルなサウンドが際立つ「Value」など近年の楽曲を次々とドロップ。楽曲ごとに表情を変えるボーカルでファンを存分に惹き付けた。ここまでAdoはボックスの中からパフォーマンスを繰り広げてきたが、「いばら」からはボックスが取り払われ、ステージを自由に移動しながら歌唱。精魂を込めたロングトーンを響かせ、両手を大きく広げた。「唱」「踊」というキラーチューンの連続には、オーディエンスも大熱狂。ステージの上手下手を闊歩しながら絶唱するAdoに、7万人の熱い声援が降り注いだ。

「Ado SPECIAL LIVE 2024『心臓』」より。(撮影:石井亜希)

「Ado SPECIAL LIVE 2024『心臓』」より。(撮影:石井亜希)[拡大]

MCを挟むことなくストイックに歌い続けてきたAdoが、ようやく口を開いたのは本編の終盤。「皆さん、こんばんは。Adoです」と挨拶し、「ワールドツアーを終えて、今月日本に帰ってまいりました」と改めて報告した彼女は、世界でのライブを今回のパフォーマンスにも生かせたと言う。続けて、「いろんな国を見させていただいて、たくさんの文化を知って、より日本が大好きになりました。だからこそ、私の大好きな日本の素晴らしさを、世界の多くの人々に知ってもらうべきなのではないかと強く思ったのです。このワールドツアーは私にとってスタートに過ぎません。それは、まだ日本のアーティストがやったことのない規模の世界ツアーを行うと誓ったからです」とツアーを経験して芽生えた思いを口にした。

また、Adoはステージを振り返りながら「世界、世間、ここにいる皆さん、愛する文化に対しての喜び、悲しみ、怒り、苦しみ、抗い──すべての感情をお見せしました。ボカロと歌い手がいなければ、私はここに立っていません。その2つがかけがえのないのものであり、大切な“心臓”なんです。Adoという歌い手が大きな存在になれたのは愛する文化と、ずっと歌を聴いてくださった皆さんのおかげです。私の人生においての財産になり、素晴らしいひとときを過ごせました。忘れません」とあふれる思いを伝え続けた。本編の最後に披露されたのは「新時代」。令和を象徴するアーティストの1人として時代を切り開いてきたAdoは、未来に思いを馳せるように生命力みなぎる歌声を放った。

アンコールは豪華コラボの連続

「Ado SPECIAL LIVE 2024『心臓』」より。(Photo by Viola Kam[V’z Twinkle])

「Ado SPECIAL LIVE 2024『心臓』」より。(Photo by Viola Kam[V’z Twinkle])[拡大]

アンコールを求める7万人の熱い声が鳴り止まぬ中、ステージが明転すると、そこには松本孝弘(B'z)の姿が。松本は自身が作曲、稲葉浩志(B’z)が作詞した「DIGNITY」を弾き始める。アンコールからは青いバラを模した巨大セットがステージに出現し、花びらの中央部でAdoは開放感たっぶりにボーカルを轟かせた。松本とのコラボステージを終えたAdoは、鳥かご型のトロッコに乗り込んで「行方知れず」「逆光」「FREEDOM」を歌いながら国立競技場を1周。客席のより近くでアグレッシブなボーカルを届けると、それに呼応するようにオーディエンスの力強いシンガロングが夜空に響きわたった。

「Ado SPECIAL LIVE 2024『心臓』」にサプライズゲストで登場した松本孝弘(B'z)。(Photo by VERMILLION)

「Ado SPECIAL LIVE 2024『心臓』」にサプライズゲストで登場した松本孝弘(B'z)。(Photo by VERMILLION)[拡大]

アンコールではさらなるサプライズが用意されていた。Adoは「しつこいかもしれませんが、ボカロと歌い手が私の“心臓”なんです。この素晴らしい文化がより世界に伝わってほしいと願っているのです。あわよくば、その2つの架け橋になりたいと思っています。その瞬間を今から作ります」と宣言し、新曲「桜日和とタイムマシン」で初音ミクとデュエット。Adoはミクと息ぴったりに歌い踊り、オーディエンスを驚かせた。フィナーレを目前に、Adoは自身の胸の内を赤裸々に語り始める。「情けないですが、私はずっとSNSしか居場所がありませんでした。暗い性格でなんの取り柄もなくて、そのくせ、誰よりも認められたいって欲がすごくて。ずっと1人で活動し続けて、葛藤していました。それでも私が歌ってこられたのは、ボーカロイドと歌い手のおかげです。実際に歌い手のライブを観て、こんなふうになりたいと思って。中学生、高校生になって葛藤することが増えましたが、歌うことを止めちゃだめだって思えたんです。私の愛する文化が私の未来を信じさせてくれました。そして私は今、望んだ未来に立っています」と声を震わせながら、ボカロと歌い手への強い思いを伝えた。ライブの締めくくりにはAdoが「心という名の不可解」をいっそう感情を込めるようにパフォーマンス。手を振りながら、ファンの前から姿を消した。Adoのパフォーマンスを称えるように、夜空には鮮やかな花火が打ち上がった。

国立競技場でのワンマンライブという偉業を成し遂げたAdoは、7月10日には2枚目のオリジナルアルバム「残夢」をリリース。7月14日には大阪・大阪城ホールで自身初の全国アリーナツアー「Ado JAPAN TOUR 2024『モナ・リザの横顔』」をスタートさせる。

セットリスト

「Ado SPECIAL LIVE 2024『心臓』」2024年4月27日 国立競技場

01. うっせぇわ
02. Tot Musica
03. ラッキー・ブルート
04. ドメスティックでバイオレンス
05. 愛して愛して愛して
06. 過学習
07. マザーランド
08. ギラギラ
09. 永遠のあくる日
10. 私は最強
11. レディメイド
12. クラクラ
13. ショコラカタブラ
14. Value
15. Hello Signals
16. いばら
17. 唱
18. 踊
19. 新時代
<アンコール>
20. DIGNITY
21. 行方知れず
22. 逆光
23. FREEDOM
24. 桜日和とタイムマシン
25. 心という名の不可解

ツアー情報

Ado JAPAN TOUR 2024「モナ・リザの横顔」

2024年7月14日(日)大阪府 大阪城ホール
2024年7月15日(月・祝)大阪府 大阪城ホール
2024年7月20日(土)新潟県 朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター
2024年7月21日(日)新潟県 朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター
2024年7月27日(土)広島県 広島グリーンアリーナ
2024年7月28日(日)広島県 広島グリーンアリーナ
2024年8月3日(土)愛知県 ポートメッセなごや 第1展示館
2024年8月4日(日)愛知県 ポートメッセなごや 第1展示館
2024年8月17日(土)北海道 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
2024年8月18日(日)北海道 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
2024年8月31日(土)千葉県 LaLa arena TOKYO-BAY
2024年9月1日(日)千葉県 LaLa arena TOKYO-BAY
2024年9月7日(土)宮城県 セキスイハイムスーパーアリーナ
2024年9月8日(日)宮城県 セキスイハイム スーパーアリーナ
2024年9月15日(日)福岡県 マリンメッセ福岡 A館
2024年9月16(月・祝)福岡県 マリンメッセ福岡 A館
2024年10月12日(土)神奈川県 Kアリーナ横浜
2024年10月13日(日)神奈川県 Kアリーナ横浜

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読者の反応

冨田望(義足の漫画の人) @nozubeya

【ライブレポート】Adoが国立競技場で偉業を達成、声を震わせながら語ったボカロと歌い手への思い(写真7枚) https://t.co/sXtqxhI8J0  改めて「心臓」参加できてよかった

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