30人のダンサーの群舞で幕開け
3月にメキシコ、ブラジル、チリを回る中南米ツアーを行ったRADWIMPS。アジアツアーでは東京・国立代々木競技場第一体育館と神奈川・ぴあアリーナMMで2公演ずつ行ったあと、中国、フィリピン、香港、シンガポール、台湾、インドネシア、タイ、韓国のアリーナ会場を回り、最後に石川・石川県産業展示館でファイナルを迎える。
大きなハンドクラップに迎えられ、ステージに姿を現したRADWIMPSは「人間ごっこ」でライブを開始。総勢30人のダンサーの群舞に彩られながら、スケール感たっぷりに歌を紡いだ。ステージから華やかな光が放たれると、ダンサブルなナンバー「NEVER EVER ENDER」がスタート。開放感のあるアンサンブルが広がる中、野田洋次郎(Vo, G)は花道を歩き、センターステージで自由奔放に飛び跳ねる。「声聞かせてくれよ!」と野田が叫ぶと、会場は盛大なシンガロングに包まれた。桑原彰(G)と武田祐介(B)の熱いソロバトルが見どころとなっている「おしゃかしゃま」では、メンバーが放つ強靭なグルーヴに駆り立てられるようにオーディエンスが大盛り上がり。「早くも最高に楽しいです。いい感じですか?」と野田は会場を見渡し、割れんばかりの歓声ににっこりと笑顔を浮かべた。「季節外れの曲を1曲やります」と野田が告げ、歌い始めたのは夏の終わりを想起させる楽曲「セプテンバーさん」。野田の優しい歌声と掛け合うように、オーディエンスの大合唱が場内に響き渡った。
「‘I’ Novel」では3人がセンターステージへ。温かみのあるメロディアスなサウンドに乗せて、野田が穏やかに言葉を紡いだ。武田は「このライブが終わったら海外に飛び立つので、今日のうちにみんなの日本語と声をたくさん浴びて帰りたいと思います」と述べ、「僕らは海外でライブをするとき、その国々の言葉でMCをするんだけど、毎回ライブをやったあとによく言われることがあります。『武田、日本語が一番へた』って」と笑う。「中国語のMCをちょっとやってみて」と野田から振られた武田は、流暢な中国語を披露し、「何回か行ってる国は、だんだんレベルアップしていくんだよね。でも、日本語はレベルアップしないなあ」と茶目っ気たっぷりに語った。
横浜出身のRADWIMPSにとって、ぴあアリーナ横浜は地元の会場。野田は「頭から地元感がすごくあって、最高にアットホームな空気でライブができています」と晴れやかな表情で話す。そして来週から始まる海外公演に向けて「このホーム感をお守り代わりにしていきます。初めてアジアでアリーナを回るんですけど、僕らも20年やってきて夢にも思わなかったことが現実になるなと。日本人として音楽をずっとやってきて、こうやって俺らを愛してくれるみんながいる。だから、ただただライブをするんじゃなくて、この思いも全部ひっくるめて、俺らがここに存在していることを証明していきたいなと思っています。皆さんぜひ見守っていてください」と360°を囲むオーディエンスに呼びかけた。「1曲一緒に歌ってもいいですか? 来週以降はみんなで合唱はなかなかできないと思うので」と話し、野田が鍵盤で弾き始めたのは「正解」。アリーナから最上階まで、オーディエンスはフルコーラスでこの曲を合唱した。
その後、RADWIMPSは炎が激しく吹き上がるステージで「なんちって」を勢いよくプレイ。カッティングギターが印象的に鳴るファンキーなナンバー「DARMA GRAND PRIX」ではオーディエンスが一斉にジャンプする光景が広がった。「G行為」では無表情のダンサーたちを引き連れて、野田がセンターステージでパフォーマンス。すると舞台が浮き上がって上昇し、うごめくように踊るダンサーの上で、野田がダークな空気を漂わせながらラップを放った。
世界に向けたメッセージ
野田が繊細なタッチで鍵盤を奏でたのは映画「余命10年」の劇伴曲「涙袋」。ドラマチックな空気を引き継いで彼が「スパークル」を弾き始めると、オーディエンスはスマートフォンのライトを掲げ、美しい星が輝く“宇宙”を会場に生み出した。「実は終盤戦もいいところで。後悔がないように思いっきり歌って届けるので、受け取ってくれよ。抱きしめてくれよ」と野田は述べ、「夢番地」「最大公約数」といったファンから長く愛されてきたナンバーを次々と披露。さらに「まだいけんのか? 横浜! 足りねえよ!」とオーディエンスを煽り、大きなコールを浴びながら「05410-(ん)」をプレイした。一体感あふれるクラップが広がった「いいんですか?」では野田がセンターステージに進み、降り注ぐオーディエンスの合唱を受け止めて「愛してるよ!」と叫ぶ。「全部届いてます。ありがとう」と彼は口を開き、「本当に最高。みんなの顔を見ていて……そんな輝きを顔面からあふれ出させる君は、きっとすごい力があるから、明日からも生きていこうぜ。がんばっていこうぜ」と観客に言葉を贈った。
「最後の曲は、すごくひさしぶりに歌う曲です」と話を切り出した野田。彼は「10年ちょっと前に作った曲なんだけど、そのときからちょっと意味合いが変わって聞こえてきたような気がして。『なんで俺は近くにいる人のことをこんなに傷つけてしまうんだろう?』と思って、そんな自分が嫌で作り始めた曲だったと思うんだけど」と振り返り、「日本だけじゃなくて世界中で、愛のある言葉よりも誰かを傷つけたり攻撃したりする言葉のほうが伝播力を持っていて、この地球を覆っていて、時に誰かを殺していて。そして発信した人が無自覚だったりして。歴史的に見ても異常なんじゃないかなと思うけど、僕らはその異常な世界で生きている。人の言葉がどこに向かっていくのかなと思ったりして、今日歌いたいなと思います」と思いを語った。そんな言葉を経て、野田が繊細なタッチで鍵盤を鳴らして歌い上げたのは「針と棘」。心ない言葉にあふれる世界とリンクするメッセージを届け、彼らはステージをあとにした。
交わした約束とともに、いざ世界へ
「もしも」の合唱に呼ばれて、再びステージに登場したRADWIMPS。野田は「今日ライブをやっていて、音楽と一体になれた瞬間が何回もあって。20年やってきたけど、音楽って正解がなくて何もわからなくて。知れた気になる瞬間もたまにあるんだけど、まだまだ大きな音楽の海の、砂浜のチョロチョロっていうところでまだ俺はずっと掘ってるところなんだなと思う。きっと音楽の沖にも出れずに俺は命を終えるんだろうけど、それでも、たとえ浅瀬だろうが、自分だけの音楽の海をずっと探求して生きていきたいなと心から思っています」とまっすぐに語った。その後、野田が「RADWIMPSというバンドに背中を押してもらって『EVERGREEN』の彼方に行こうかなと思います」と宣言すると、ステージ袖から
「グーの音」でギターをかき鳴らしたあと、野田は「また会おうぜよ! 俺は叶わない約束は嫌だから、また必ず会いたい。だからそのときまで健康で、幸せで、泣くことよりもなるべく笑うことが多い、お互いそんな人生でありましょう」と約束を交わす。そして「なんでもないや」をオーディエンスとともに歌い上げ、お互いに心をしっかりとつなげ合った。最後に彼らはありったけの力を放つように「君と羊と青」をプレイ。盛大なコールとシンガロングを受け取った彼らは、紙吹雪が舞う美しい光景の中で世界に向けて旅立っていった。
りぃ @hyororii_69
@natalie_mu 洋次郎の言ってくれた言葉を鮮明に思い出せました。素敵な写真とレポに感謝…
なにより素敵なライブをしてくれたRADやスタッフの皆様に感謝の気持ちを!!