書き下ろし小説の物語を軸に
ライブは三月のパンタシアのX(Twitter)アカウントおよびnoteで公開されている、みあ(Vo)の書き下ろし小説「真冬の薄明に手を伸ばして」の内容を軸に展開された。小説の主人公は、陸上部に所属する高校2年生の藍という女の子。彼女は陸上部に所属しているが、大会中にケガをしてしまったことをきっかけに走ることが怖くなり、部活に復帰できずにいた。部活に戻るのか、あきらめるのか。気持ちが揺らぐ中、藍の心の癒しは、Lilyという女性アーティストの音楽を聴くことと、同じくLilyファンであり、SNS上で知り合った“Summer”と名乗る同い年の女の子との交流だった。藍はSummerとSNS上のみでやりとりしていたが、ついに一緒にLilyのワンマンライブに行くことに。公開された小説にはそこまでつづられており、ライブで物語の続きが描かれた。
東京のライブハウスでの再会
ステージに姿を現したみあは、東京のライブハウスに向かう藍の心情を朗読。「SNS上でしかやりとりしたことのないSummerと初めて出会うことになる。期待と不安が胸にないまぜになる」と言葉にし、小説のテーマ曲として1月に配信リリースされた楽曲「薄明」を歌い始めた。みあはポエトリーリーディングパートを取り入れたこの曲を「ふらつきながら叫ばせてくれよ」と感情を爆発させるように歌い、そのまま日の出前の美しいブルーアワーの情景をバックに「花に夕景」へ突入。熱いコールを浴びながら、バンドメンバーの堀江晶太(G /
その後、自分の思いを伝えられなかった後悔や切なさに満ちた「ソーダアイス」「パステルレイン」といった楽曲を続け、みあは「彼女らしき背中が見える。鼓動が倍速になる」と藍がライブハウスに入ったあとの物語を紡いだ。藍は振り返ったSummerの顔を見て目を丸くする。Summerは、中学時代に些細なことから藍の幼い嫉妬心によって気まずい間柄になってしまい、そのまま離れてしまった親友のハルだったのだ。Lilyのライブがいよいよ始まったところで、みあはライブの高揚感を表すようにダンスチューン「アイビーダンス」を投下。おなじみのキャッチーなダンスをオーディエンスとともに繰り広げたあと、大切な人との穏やかな時間を描いたナンバー「フェアリーテイル」を優しく歌い上げた。
踏み出した大きな一歩
さわやかなメロディが印象的な「レモンの花」、グルーヴ感のあるシリアスなロックナンバー「四角運命」で、異なる空気をまといながらも嫉妬に満ちた心情を歌い上げたみあ。彼女はハンドクラップに包まれながらメジャーデビュー曲「はじまりの速度」を晴れやかに届けたあと、ハルとの時間に居心地のよさを感じているライブ中の藍の心情を朗読した。「そのとき、音が鳴り響く。この曲には何度も励まされた。目の奥が熱くなる。ステージにあふれる光を見上げた」とみあが言葉にして歌い始めたのは、リスナーの不安や寂しさに寄り添うナンバー「ユアソング」。みあは「何度転んだって 私何度も歌うから」とまっすぐな歌声を明るく弾ませた。タオル回しがフロアに広がった「醒めないで、青春」を経て、代表曲の1つ「青春なんていらないわ」で会場は大盛り上がり。ファンと三月のパンタシアの物語がつづられた「ランデヴー」ではフロアから沸き起こる盛大なシンガロングに、みあも「すごい!」と満面の笑顔を見せた。
ライブハウスを出たあとに駅まで歩く藍とハルのやりとりが読み上げられ、物語はクライマックスへ。お互いに誤解があったことが発覚し、ハルと仲直りした藍は「私さ、部活辞めるかも」と自身の状況を打ち明ける。しかし彼女は、ひさしぶりに会ったハルに「でもさ、走りたいんでしょ。だって、本当は走りたくてたまらないって、顔にそのまま書いてあるよ」と見抜かれるのだった。ハルとのやりとりを経て「もう一度走り出してみたいと思った」という言葉で物語を締めくくったみあは、「マイワンダー」を勢いよく歌唱。この曲に込められた葛藤や悔しさ、やるせなさが、部活に行くことができなかった藍の心情と重なる。みあは衝動に身を任て「変わらないと変われない」とまくしたてるように歌い、最後に「踏み出すんだ ああ」と前へ進もうとする心情を歌い上げた。
さらにみあは2月にリリースした最新曲「春嵐」を披露。「春嵐」は「薄明」と連動した、みあによる書き下ろし小説「ファインダ ー越しに見つめる世界」のテーマソングで、ハル側の視点で悩みを抱えながらも人とのつながりを模索する姿が歌われている。みあはこの曲でみずみずしい歌声を場内いっぱいに響かせたあと、夜の街路を歩く2人を彷彿とさせる楽曲「街路、ライトの灯りだけ」を届けた。
一緒に生きていきましょう
「三月のパンタシアが紡ぐ、春の出会いの物語をお届けしてきましたが、楽しんでもらえていますか?」と観客に問いかけたみあ。大きな歓声を浴びた彼女はライブタイトルについて「『ブルーアワー』というのは日の出前と、日の入り後に訪れる、空一面が深い青色に染まる時間帯のことです」と話を切り出し、「物語の少女たちが今日の夜を過ぎて、ブルーアワーが訪れて、そのブルーアワーを飛び越えたときに少しでも前に進めていたらいいなと思ってこのタイトルを付けました」と説明した。さらにみあは「物語とは別として、私個人の思いとして……今日この夜に私と君が出会えた、それってものすごく奇跡的な時間だなといつもライブをやるたびに思うんですよね。もしこれから君がちょっとしんどいな、きついなと思ったときにこの日のライブのことを思い出してもらって、その苦しみを飛び越えていく……そんなライブができたらいいなという思いを込めて、『飛び越えて』というタイトルを付けました」と付け加える。そして「これからもししんどいなと思うことがあったら、今日出会えた私たちの夜のことを思い出してもらえたらうれしいです。私はいつだって君の味方です。だから一緒に生きていきましょう」と観客にメッセージを送った。ライブ終盤を迎え、みあは三月のパンタシアが活動する理由が描かれていると言ってもいい、出会いと別れが交錯する春の楽曲「March」を披露。最後に「ゴールデンレイ」を透明感のある歌声で軽やかに届け、彼女はステージを去って行った。
デュエットも披露した特別な夜
アンコールを求める拍手に呼ばれて、みあは再びステージに登場。“青春の裏側”を描いたダークなナンバー「ピアスを飲む」を狂気をにじませながら歌い上げた。ここでゲストアーティストの
そしてみあは、春の情景を描いたナンバー「花冷列車」をSouとともにデュエット。2人は左右に手を振りながら、軽やかにこの曲を歌い上げてオーディエンスに特別な時間を届ける。「絶対に『パン祭り』、リベンジするからね!」と言い残してSouがステージを去ったあと、みあは「自分のワンマンライブにゲストボーカルの方が来てもらったのは今回が初めて。こうしてライブで歌えるのはとっても新鮮な感じがして、君にとっても私にとっても、すごく特別な夜になったと思います。よかったですね」と微笑んだ。ラストナンバーは「三月がずっと続けばいい」。オーディエンスの息の合ったクラップと合唱が3月の夜に響き渡り、ワンマンライブは締めくくられた。
ライブ中、三月のパンタシアは8月24日に東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)でワンマンライブを開催することを発表した。公式ファンクラブでは、チケットの先行予約の受付が3月12日12:00にスタートする。
セットリスト
三月のパンタシア LIVE 2024「ブルーアワーを飛び越えて」2024年3月10日 EX THEATER ROPPONGI
01. 薄明
02. 花に夕景
03. ソーダアイス
04. パステルレイン
05. アイビーダンス
06. フェアリーテイル
07. レモンの花
08. 四角運命
09. はじまりの速度
10. ユアソング
11. 醒めないで、青春
12. 青春なんていらないわ
13. ランデヴー
14. マイワンダー
15. 春嵐
16. 街路、ライトの灯りだけ
17. March
18. ゴールデンレイ
<アンコール>
19. ピアスを飲む
20. まぼろし feat. Sou
21. 花冷列車 feat. Sou
22. 三月がずっと続けばいい
ライブ情報
三月のパンタシア SUMMER LIVE 2024(仮)
2024年8月24日(土)東京都 Zepp Shinjuku(TOKYO)
宮川(企画) @air_srock
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