ラッパー田我流が41歳で叶えた夢、25年間の挑戦の果てにたどり着いた野音ワンマン

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田我流のワンマンライブ「OLD ROOKIE」が11月11日に東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)で開催された。

田我流(Photo by Yukitaka Amemiya)

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25年の集大成

田我流(Photo by Yukitaka Amemiya)

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1998年、高校生の頃に小さなクラブでマイクを握り始めた田我流。2004年に地元・山梨県笛吹市一宮町の幼馴染とラップグループstillichimiyaを結成し、2008年の1stソロアルバム「作品集~JUST~」発表を機にソロ活動を本格化させていく。2011年に公開された富田克也監督の「サウダーヂ」で映画初主演を務め、全国にその名を知らしめた彼は、翌2012年発表の2ndアルバム「B級映画のように2」でラッパーとして不動の評価を確立。その後も休むことなく活動を続け、2019年に3rdアルバム「Ride On Time」をリリースする。2022年には10年以上在籍したレーベルMary Joy Recordingsから独立。ラップを始めるきっかけとなったYOU THE ROCK★の楽曲タイトルを冠した自主レーベル「BACK CITY BLUES」を設立した。

満席となった日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)。(Photo by Yukitaka Amemiya)

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今年の3月には47都道府県でのライブ制覇も成し遂げた田我流が、活動25周年、ヒップホップ生誕50周年という節目の年にたどり着いたのが日比谷野音。伝説的なイベント「さんピンCAMP」が行われた日本語ラップの聖地であり、彼が目標としてきて掲げてきた夢の舞台だ。言うまでもなく、キャリア史上最大の挑戦となったが、5月に開催が発表されれば、チケットは早々に完売となり、立ち見券までもソールドアウト。開場時間の16:00を迎えると、寒空のもと厚着したファンが客席をどんどんと埋めていく。入口にはスチャダラパーサイプレス上野とロベルト吉野、SUMMIT、カクバリズム、山梨のラーメン屋・蓬莱軒など、さまざまな関係者から届いた祝いの花が飾られており、“大分刑務所受刑者 代表取締られ役“という肩書きでNORIKIYOからの花も届いていた。

「ゆれる」しか知らない人も全然OK

オープニングDJを務めたEVISBEATS。(Photo by Yukitaka Amemiya)

オープニングDJを務めたEVISBEATS。(Photo by Yukitaka Amemiya)[拡大]

ライブのオープニングDJを務めたのは「ゆれる」をはじめ田我流の楽曲を数多く手がけるEVISBEATS。チルなビートで心地いいムードを作り上げ、開演10分前には自身の楽曲「いい時間」を歌った。そして開演時間を少し過ぎた頃、田我流のライブDJを務めるMAHBIEがステージへ。ファンを驚かせた開催発表から半年を経て、田我流がラッパー人生をかけた野音ワンマンがいよいよ始まる。

田我流(Photo by Yukitaka Amemiya)

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イントロが鳴り出すと、バンドメンバーの後関好宏(T. Sax)、上運天淳市(B. Sax)、川崎太一朗(Tp)が鋭くホーンを鳴らし、Izpon(Perc)がエネルギッシュなリズムを刻む中、赤く染まったステージに田我流が登場。41歳の誕生日に発表したEP「OLD ROOKIE EP.1」の収録曲「Wake Up」で口火を切り、ラップに改めて取り組む決意を力強いリリックで示していく。

田我流「OLD ROOKIE」の様子。(Photo by HayachiN)

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「ついにこの日がやってきちゃいましたね! 25年! みんなの声聞かせてくれ!」と叫び、大きな歓声を集めた田我流は、ライブタイトルでもあるEP収録曲「Old Rookie」を続けてパフォーマンス。軽快なフロウで観客の体を揺らし、「47都道府県でライブ制覇! 活動25周年! 自主レーベル設立! Old Rookie フィーチャリング 野音に来てるみんな!」と高らかに声を上げた。

田我流「OLD ROOKIE」の様子。(Photo by HayachiN)

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田我流はこの日を迎えた喜びをあらわにしつつ、「俺の曲、『ゆれる』しか知らない人も全然OKだから! 俺たちがやってんのヒップホップ! 知ったフリして、アー!とかイェー!とか好きなように騒いでってもらってけっこうです! 曲知ってる人、ガンガンかぶせてきてください!」とこの場所に集まった全員を歓迎。ウェッサイなビートの「LAID BACK」、ラテンテイストの「Saudade」、ウッドベースが印象的な「Idea」と多彩な楽曲で観客を楽しませ、地元・山梨を歌った「ICE CITY」や自身の過去を振り返った「BACK IN DA DAY」など1stアルバム「作品集~JUST~」の楽曲でライブを進めていった。

幼馴染とやべ~勢いでぶちかます

やべ~勢いですげー盛り上がるstillichimiya。(Photo by YUSUKE OISHI [MARCOMONK])

やべ~勢いですげー盛り上がるstillichimiya。(Photo by YUSUKE OISHI [MARCOMONK])[拡大]

趣味のレコード収集をテーマにした楽曲「墓場のDigger」では、stillichimiyaのBig Benが登場。田我流とBig Benが「なんかお腹減ったよね。この辺アレないの?」「わかんねえけど、あいつなら知ってるかもしんねえな」という掛け合いから「ラーメン」を歌えば、食通だというMMMも現れる。そこにYoung-Gも加わると、4人は「ずんぶい Saturday Night」で息の合ったマイクリレーを繰り広げ、続く「莫逆の家族」ではスーツ姿のMr.麿が自分の顔をライトで怪しく照らしながら合流。こうして野音のステージに並び立ったstillichimiyaの個性豊かなメンバー5人は、Mr.麿と観客によるカウントダウンから代表曲「やべ~勢いですげー盛り上がる」に突入し、ステージを縦横無尽に暴れ回った。

MAHBIE(Photo by YUSUKE OISHI [MARCOMONK])

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「ひさびさにみんなで歌って、パッて横見たら全員おっさんになってる」とぼやいて笑いを誘った田我流が、年齢を重ねる中での苦労話から披露したのは、コロナ禍中に発表したユーモラスなナンバー「我慢」だ。この曲で田我流が「MAHBIEみたいになっちゃうぞ糖尿病」とラップすると、2020年に糖尿病になってから徹底的に食生活を見直したというMAHBIEの独白がスタート。「もうデブなんて言わせない」と宣言したMAHBIEは、自身の楽曲「D.E.B.U.」で会場を大いに沸かせた。

大好きな盟友たちと2人の“兄貴”

C.O.S.A.と一緒にラップする田我流。(Photo by YUSUKE OISHI [MARCOMONK])

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Ringoと握手する田我流。(Photo by HayachiN)

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ライブが折り返しを迎えると、田我流は観客を一旦しゃがませてから一斉にジャンプさせた「Ride On Time」を皮切りに、3rdアルバムの収録曲を連発。「Hands Up(A Cappela)」で「後半戦まだまだ行けるって奴らはヘンズアップ!」と客席を煽り、勢いあふれる「Hustle」を畳みかける。ここでRed Bullのサイファー企画「RASEN」でtofubeatsがプロデュースしたトランシーなビートが流れると、田我流は自身のヴァースを披露。「手なんて抜けねえよ / やる必死に / この脳裏にあの日のECD」とシャウトした。クライマックスが近付く中、ステージにはゲストが続々登場。田我流と同じく釣り好きという共通点を持つC.O.S.A.は「5PM」「Wave」でパワフルかつスキルフルなラップを繰り出し、レゲエシンガーのRingoは「Nomad」「Easy, You Busy」の2曲で伸びやかな歌声を響かせる。レゲエということで、MAHBIEが湘南乃風の「純恋歌」を突然歌い始め、田我流とRingoを困惑させる場面もあった。

B.I.G.JOEと念願の共演を果たした田我流。(Photo by HayachiN)

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「今日、本当に一緒にステージに立ちたかった俺の大好きな兄貴がいる」と田我流が口にすると、NORIKIYOとのコラボ曲「風を切って」へ。田我流は不在のNORIKIYOのヴァースを観客と一緒に歌い、「早くカムバック!」と彼の帰還を祈った。さらに田我流がNORIKIYOと並ぶ“もう1人の兄貴”としてステージに呼び込んだのは、北海道・札幌のラッパーB.I.G.JOE。田我流は彼と並び立つ機会をずっと見計らっていたものの、彼の器にふさわしいステージがなかなかなかったところ、野音での単独公演が決まり、満を持してオファーしたという。

人間万事塞翁が馬

MILES WORD、SHEEF THE 3RD、丸を迎えた「VIBE」の様子。(Photo by YUSUKE OISHI [MARCOMONK])

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キャロルが野音で電飾を炎上させた解散コンサートを引き合いに出しつつ、「燃やしたくなるわコレ! めっちゃいいバイブだ! これを求めて俺25年間やってきたんすね!」と高揚した様子を見せる田我流。愛する街・神奈川県藤沢からMILES WORD、SHEEF THE 3RD、丸の3人を迎えた「VIBE」で野音の熱気をさらに高めた彼は、オーディエンスから“田我流”コールを受け取ると、ヒップホップ讃歌「あの鐘を鳴らすのは、、俺」を熱唱した。

田我流(Photo by Ayako Suzuki)

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野音に立つ夢を叶え、感慨深げな田我流は「俺のこの夢もみんなの夢も続いていったらいいと思うし、人間万事塞翁が馬で、俺が41歳にして野音に立つようなこともあるんだぜ? とりあえずみんなでチャレンジすることが一番カッコいいじゃん? 俺はそれをスタイルウォーズって呼んだ方がいいと思う」と観客を熱く鼓舞し、EVISBEATSプロデュースの「夢の続き」へ。最後にこの公演を一緒に作り上げた人々への感謝を口にすると、彼がこれまでの人生で見てきた景色を描いた「センチメンタル・ジャーニー」でエモーショナルにライブを締めくくった。

夢の舞台で響く“トンカツ揚げた音”

アンコールで再び登場した田我流。(Photo by Yukitaka Amemiya)

アンコールで再び登場した田我流。(Photo by Yukitaka Amemiya)[拡大]

と言っても、もちろんライブはここで終わらない。興奮冷めやらぬ観客に呼び戻された田我流は「みんなが聴きたい曲すっ飛ばしてました」ととぼけつつ、「この日のために俺はこの曲を書いたんだと思う」という言葉から代表曲「ゆれる」へ。メロウなナンバーながら、コールアンドレスポンスの形で大合唱が起こり、客席はこの日一番と言えるほど沸き上がった。

金銀テープが盛大に打ち上げられた場面。(Photo by HayachiN)

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フィナーレの様子。(Photo by HayachiN)

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「こんなに忙しい1年は初めてでした。それを余裕で超えてくる皆さんの歓声、墓まで持っていける歓声いただきました」とファンの盛り上がりを喜びつつ、「トンカツ揚げた音みたいに聞こえるんだよね。25年追いかけてきたのがトンカツ揚げた音」と笑う田我流。「これから何が起こるかわからないけど、愛とユーモアを持っていけば、みんなでジョークに変えちゃえば、どうにかなると俺は信じてるんで。大人はユーモアを忘れないでくださいね」と呼びかけた彼が、最後に歌ったのは“お笑い芸人”をコンセプトに、挑み続ける姿勢を示した最新曲「TARAREBA」だった。田我流が全力で放つポジティブなリリックとバンドメンバーのソウルフルな演奏により、野音がピースなバイブスで満たされる中、キャノン砲から打ち上げられた金銀テープが盛大に宙を舞い、約3時間におよぶライブは大団円を迎えた。

セットリスト

田我流「OLD ROOKIE」2023年11月11日 日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)

01. Wake Up -Intro-
02. Wake Up
03. Old Rookie
04. LAID BACK
05. Saudade
06. Idea
07. ICE CITY
08. Vaporwave
09. 坂
10. BACK IN DA DAY
11. Back In The Day 2
12. 回る
13. 今日は休みだ
14. 墓場のDigger
15. ラーメン
16. ずんぶい Saturday Night
17. 莫逆の家族
18. やべ~勢いですげー盛り上がる
19. 我慢
20. D.E.B.U.
21. Ride On Time
22. Concrete Jungle
23. Hands Up(A Cappela)
24. Hustle
25. RASEN
26. Deep Soul
27. Sign
28. Changes
29. 5PM
30. Wave
31. Nomad
32. Easy, You Busy
33. Cola
34. 風を切って
35. マイペース
36. Space Brothers
37. VIBE
38. あの鐘を鳴らすのは、、俺
39. 夢の続き
40. センチメンタル・ジャーニー
<アンコール>
41. ゆれる
42. TARAREBA

記事初出時、本文に誤りがありました。お詫びして訂正します。

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【ライブレポート】ラッパー田我流が41歳で叶えた夢、25年間の挑戦の果てにたどり着いた野音ワンマン(写真90枚) https://t.co/oX2I7lVKMF

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