27万2000人が目撃、過去最大の「茅ヶ崎ライブ」
今年6月25日にデビュー45周年を迎えたサザンオールスターズ。デビュー日当日、周年イヤーの幕開け宣言と同時に発表された「茅ヶ崎ライブ」は、桑田佳祐(Vo, G)の出身地であり、サザンの数多くの楽曲の舞台にもなっているファンにとっての“聖地”・神奈川県茅ヶ崎市で行われるライブだ。茅ヶ崎市民の有志が地元にサザンを呼ぶべく署名活動を行ったことをきっかけに2000年に初開催され、ファンの間で伝説と語り継がれている同地での公演。同会場でサザンがライブを行うのは、2013年のデビュー35周年を機に開催された「SUPER SUMMER LIVE 2013 『灼熱のマンピー!! G★スポット解禁!!』」以来10年ぶりのこととなる。今回は9月27、28、30、10月1日と、全4日間の日程でライブが実施されることとなったが、4DAYSという規模で「茅ヶ崎ライブ」が開催されるのは、今回が初めて。また、後半の2公演に関しては全国の劇場でライブビューイングも行われ、2日間で約20万人を動員した。各日のライブ観客数とライブビューイング観客数を合わせた動員は約27万2000人。大きな注目の中、サザンはヒット曲連発の祝祭感に満ちたステージを披露し、45年分の感謝をファンの前で表明した。
加山雄三の歌声響いたオープニング、幕開け飾った1曲は
時刻は17時。1万8000人のファンの大きな期待感と高揚が渦巻く茅ヶ崎公園野球場に響いたのは、茅ヶ崎が生んだ大スター・加山雄三の歌声だった。「君といつまでも」に乗せ、サザンオールスターズの5人はそれぞれの肩に手を置く形で縦1列になって登場。観客たちの歓声に迎えられた彼らは、空に向かって放たれた花火の音を合図に「C調言葉に御用心」でライブをスタートさせた。
長かった夏の終わりを感じさせる心地よい海風に洒脱なハーモニーを乗せ、オーディエンスを歓迎したサザンは、ブラスサウンドが軽快な「女呼んでブギ」を続けてさっそく観客のクラップを誘う。大きな笑みを浮かべながらギターをかき鳴らす桑田が「Yeah “帰ってきたよ!”」と歌詞をアレンジすると、球場はさらなる盛り上がりに包まれた。2曲を終え、桑田は「どうもありがとう! 目立ちたがり屋の芸人、サザンオールスターズでございます!」と、デビュー当時に繰り出したフレーズで自己紹介。「個人的には里帰りさせていただきました。皆さん、ようこそ!」と言葉に感慨を滲ませつつ「このステージは10年ぶり。すっかり高齢者になって帰ってきました(笑)」と冗談めかして、しっかりと笑いを誘った。
夕暮れ、白暮から月夜へ。歌声は海辺の街の風に乗って
流麗なメロディがセンチメンタルなムードを引き立てる「YOU」に、松田弘(Dr)と野沢秀行(Per)の情熱的なプレイが熱いグルーヴを生み出した「My Foreplay Music」と、ライブ序盤から惜しみなくヒット曲の数々を届けていく5人。5曲目の「涙のキッス」に進む頃には太陽が水平線の向こう側へと姿を隠し、切なさをはらんだ桑田の歌声は暮れゆく空へと優しく溶けていく。続く「夏をあきらめて」では、ステージ後方の巨大ビジョンに江ノ島の景色がモノクロで投映され、バンドが浮かび上がらせる“あきらめの夏”の寂寥感をいっそう際立たせた。
夕暮れのオープニングから白暮のひとときを経て、球場がすっかり夜の闇に包まれた頃。「Moon Light Lover」「栄光の男」が演奏された際には、2曲の歌詞にも登場する月の光が東の空を照らし、野外ライブならではの“自然の演出”がステージのムードをぐっと深めた。原由子(Key)がキーボードのブースを飛び出し、ステージの中央で涼やかな歌声を響かせた「そんなヒロシに騙されて」を終えてのMCでは、このMCパートの進行を買って出た関口和之(B)から桑田へ、「故郷・茅ヶ崎へお帰りなさい!」と花束が贈られる場面も。ステージ上のメンバー、サポートメンバー、そして球場を埋め尽くす1万8000人から凱旋を祝福された桑田は「ここで生まれてよかったな、という新曲を歌わせてください」という言葉を返した。
ここは“茅ヶ崎”──故郷への愛をメロディに乗せ
そんな桑田の曲紹介からプレイされた「歌えニッポンの空」は、軽やかなラテン調のサウンドに乗せて、すべての“故郷”への思いを歌い上げるナンバー。桑田が生まれ育った街の情景を想起させるパートでは、茅ヶ崎の夏の風物詩である「浜降祭」の神輿の渡御の様子や野球帽を被った“桑田少年”の笑顔の写真がビジョンに映し出され、桑田は「ここは“茅ヶ崎” 歌え日本の空」と歌詞を替えて故郷への愛を表明する。思いのこもった温かな歌唱を受け止めたファンはひとつになって「ありがっとう!」と声を飛ばし、「喜んで!」と返す桑田の笑顔を誘っていた。
力強く高らかに「Ohh ohh」と歌い上げる桑田の声に導かれるようにスタートした「東京VICTORY」では、観客が手首に巻いたライトバングル「烏帽子ライト」が一斉に光を放って驚きの声を誘う。客席の周回から無数に放たれた白い光の線は球場の上空1点に集まって美しい光の屋根を作り、この美しくドラマチックな演出の中で、オーディエンスは力強く拳を突き上げながらシンガロングを響かせた。その後もサザンは「栞のテーマ」に「太陽は罪な奴」、そして「真夏の果実」と、45年のキャリアの中で絶えずリスナーの心を揺さぶってきた名曲たちを瑞々しいバンドサウンドで送り届けていく。烏帽子ライトがカラフルに明滅する中で披露された「太陽は罪な奴」では、吉田治(Sax)のソロに合わせて桑田、関口、斎藤誠(G)が並び立ち楽しげにリズムに乗り、会場にさわやかな高揚感をもたらした。
加速する熱狂、「これが俺の生き様だ!」
船の汽笛を合図にビタースイートな大人の恋模様が描かれる「LOVE AFFAIR~秘密のデート~」から、原のシンセサイザーが近未来的世界観を演出する「ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)」へ。ダイナミックな曲のつなぎに会場が大いに沸き立つとライブも佳境。銅鑼の音が鳴り響くイントロから2023年の新曲「盆ギリ恋歌」へとなだれ込むと、サザンはこの曲のオリエンタルなサウンドと総勢20名のダンサー陣によるパフォーマンスで、妖しく不可思議な無二の世界観へとオーディエンスを誘った。「世の中いろいろあるけど“水に流す”なんてどうだい?」とブルージーに歌い上げる桑田の言葉を“呼び水”に、「みんなのうた」ではサザンの野外ライブではおなじみの放水パフォーマンスも。片手にマイク、片手にホースでステージを駆け抜け、客席めがけて水をかけまくる桑田のパワフルな振る舞いは熱狂を加速させ、1万8000人がハンドウェーブでリズムに乗る壮観が球場全体に広がった。最高潮の盛り上がりの中で突入した本編ラストの楽曲は「マンピーのG★SPOT」。「まだまだいけるか、茅ヶ崎!」と客席を煽り立てる桑田の頭には、「爺」という一文字と“相模ナンバー”のナンバープレートを組み合わせたヅラが燦然と存在感を放ち、ステージ上と客席の狂騒を加速させる。文字通りのお祭り騒ぎを繰り広げてオーディエンスを熱くさせた桑田は「これが俺の生き様だ!」という言葉を残し、軽やかにステージをあとにした。
祝祭感に満ちたフィナーレ、再会を約束して
5人が舞台袖へと消えたあと、アンコールを求める球場ではウェーブが自然発生。ファンが作り出した“大波”に誘われてステージに戻ったサザンは「ロックンロール・スーパーマン~Rock'n Roll Superman~」でライブを再開させた。続く「Ya Ya(あの時代(とき)を忘れない)」では、デビュー当時のメンバーの姿がステージビジョンに映し出されてオーディエンスの郷愁を誘う。アンコールの2曲を終えると、桑田は「たくさんの方の理解と協力があって、4日目、ここまで来ることができました」と切り出し「またやろうね、本当に。また楽しい逢瀬が叶いますように! サザンオールスターズは次なる計画を練って、皆さんにご報告することをお約束致します!」とファンに誓った。
「もっとやれますかー!」。桑田の熱い呼びかけにファンが大きな声を返すと、原は柔らかなタッチで「希望の轍」のイントロを奏でた。湘南の情景を歌い、JR茅ヶ崎駅の発車メロディとしても親しまれているこの曲をまっすぐに力強く歌い上げる桑田。熱いシャウトを交えながら、最後までバイタリティあふれるパフォーマンスを見せてステージを牽引する彼が「茅ヶ崎、もっと来い!」と煽り立てたのを合図に、ライブはラストナンバーの「勝手にシンドバッド」へ。野沢が吹き鳴らすサンバホイッスルに導かれるように、舞台上にはサンバダンサーや神輿を担ぐお祭り衆も登場し、祝祭のフィナーレを華やかに彩る。1万8000人の力強い「今何時!」コールを受け取った桑田は、間奏で「フレ!フレ! 茅ヶ崎!」というコール&レスポンスを発生させ、この日一番の熱狂と一体感の中で「茅ヶ崎ライブ」を締めくくる。全26曲に、故郷へ、そしてファンへ向けたまっすぐな感謝を込めて熱狂の4日間を駆け抜けたサザン。桑田が「また帰ってきます!」と伝えてステージを去ると、彼らの“感謝”の思いが詰め込まれた大きな打上花火が球場と茅ヶ崎の海辺を明るく照らした。
セットリスト
サザンオールスターズ「茅ヶ崎ライブ 2023」powered by ユニクロ 2023年10月1日 茅ヶ崎公園野球場
01. C調言葉に御用心
02. 女呼んでブギ
03. YOU
04. My Foreplay Music
05. 涙のキッス
06. 夏をあきらめて
07. Moon Light Lover
08. 栄光の男
09. OH!! SUMMER QUEEN~夏の女王様~
10. そんなヒロシに騙されて
11. いとしのエリー
12. 歌えニッポンの空
13. 君だけに夢をもう一度
14. 東京VICTORY
15. 栞のテーマ
16. 太陽は罪な奴
17. 真夏の果実
18. LOVE AFFAIR~秘密のデート~
19. ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)
20. 盆ギリ恋歌
21. みんなのうた
22. マンピーのG★SPOT
<アンコール>
23. ロックンロール・スーパーマン~Rock'n Roll Superman~
24. Ya Ya(あの時代(とき)を忘れない)
25. 希望の轍
26. 勝手にシンドバッド
Yuichiro Kato_71 @ykats_1971
【独自ライブレポート】サザンオールスターズ“故郷”茅ヶ崎で歌い届けた45年分の「ありがっとう!」長い夏の終わり 熱狂の4日間 https://t.co/ICuxF4izxG