幕張メッセに帰還したHYDE、雪辱を果たす壮絶パフォーマンスで観客を圧倒

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HYDEが9月9日と10日の2日間にわたり、千葉・幕張メッセ 幕張イベントホールにて全国ライブツアーを締めくくるアリーナ公演「HYDE LIVE 2023 Presented by Rakuten NFT」を開催した。本稿ではツアーの千秋楽である10日公演の模様についてレポートする。

HYDE(写真提供:VAMPROSE)

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「3年の空白を埋めよう」そんな言葉からツアーファイナルは幕開け

2019年12月に単独公演「HYDE LIVE 2019 ANTI FINAL」を行って以降、L'Arc-en-Cielの結成30周年ライブおよびオーケストラコンサート「20th Orchestra Concert HYDE 黑ミサ 2021 Halloween」の計2回にわたって幕張メッセのステージに立ったHYDEだったが、いずれもコロナ禍の影響で歓声NGやマスク着用をはじめとする制約が課せられていた。しかし、今年の春、約3年ぶりにライブシーンにおいてのさまざまな規制が解除され、満を持して声出しが可能に。6月から「HYDE LIVE 2023」に乗り出したHYDEは、野外フェスへの出演を挟みつつ、ツアーの集大成を披露すべく幕張メッセに帰還。めくるめく濃密なステージングで、会場に集まった約7500人と、Rakuten TVでの生配信を楽しむファンを魅了した。

HYDE「HYDE LIVE 2023 Presented by Rakuten NFT」の様子。(写真提供:VAMPROSE)

HYDE「HYDE LIVE 2023 Presented by Rakuten NFT」の様子。(写真提供:VAMPROSE)[拡大]

開演時刻の「16:66(17:06)」に向けてカウントダウンが始まると同時に、スクリーンには「ANTI FINAL」から今に至るまでのライブ映像が投影され、この3年間のHYDEの軌跡がオーディエンスに伝えられる。時計が「16:66」を表示した瞬間、ホールにこだましたのは地鳴りのような大歓声と、「This is NEO TOKYO. Welcome to the sleepless city of the far east」というアナウンス。荒廃したステージセットの上には、十字架に絡み付く巨大な蛇のオブジェ、その後ろには近未来の東京をイメージした架空都市「NEO TOKYO」の景色が浮かび上がる。そして、その真ん中にはフードを被り、顔の半分を仮面で覆ったHYDEの姿が。「時は来た……3年間の雪辱を果たす時だ。お前たちを縛る規制はない。今日は3年の空白を埋めようぜ。あのときからの続きをしよう」。そう宣言すると、獣を思わせる獰猛な声で「DEFEAT」を歌い始めた。HYDEの「サークルを見せてくれ」というリクエストに応じるように、スタンディングエリアのオーディエンスはサークルモッシュやヘッドバンギングに興じ、1曲目からライブのクライマックスさながらに盛り上がる。目の前に広がるカオスな景色にHYDEは満足気に笑うとフードを脱ぎ、今度はスモークが噴き上がる中でステージを躍動しながら「AFTER LIGHT」を歌唱。さらに「PANDORA」を畳みかけ、ホール内の狂騒に拍車をかけていく。

「大きい声を聞くと興奮する……声を聞かせてくれ!」

「最高の気分だ。いいライブができそうな気がする」と高揚感たっぷりに語りつつも、「大きい声を出しても怒られないから。大きい声を聞くと興奮する……声を聞かせてくれ!」とシンガロングや歓声を貪欲に求めるHYDE。仮面をはぎ取り素顔を見せた彼は、ツインギターを擁するHYDEバンドの破壊力たっぷりのアンサンブルに拮抗するように、拡声器を手にオーディエンスをアジテーションする。パトランプが赤く危険なムードを醸し出し、トーチから炎が立ち上る演出を交えながら届けられたのは、HYDEが2018年のソロ再始動時にリリースした「WHO'S GONNA SAVE US」。NEO TOKYOを横切る稲光を背に、両手でマイクを包み込んだ彼は「WHO'S GONNA SAVE US」、つまり「誰が自分たちを救ってくれるのか」と切実に繰り返す。HYDEは2018年のインタビューで「WHO'S GONNA SAVE US」には「法律じゃ人は守れないから、自分たちでやるしかない。自分たちで生きていかなきゃいけないし、時代を作っていくしかない」という思いを込めたと語っていたが、その言葉は取りも直さず、コロナ禍においてエンタテインメントシーンを自ら守っていったアーティストたちの姿勢に重なるものがあった。

HYDE(写真提供:VAMPROSE)

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ここまでは攻撃性を打ち出したロックチューンが立て続けに披露され、ホール内の熱気は天井知らずで上昇していたが、バンドメンバーが奏でる繊細なピアノの旋律によって狂騒が瞬く間に鎮静。リバーブがかかった音色が波紋のように広がる中、2本のトーチにゆらりと炎が灯り、NEO TOKYOに雨がしとしとと降り始める。HYDEはマイクスタンドに手をかけると、“動”の一面を打ち出したライブ前半とは趣を異にする、粛然とした歌声と佇まいで観客を圧倒してみせる。しかし、「ON MY OWN」のイントロが鳴った瞬間、穏やかな表情を一変させ、「本能のままに!」と観客を焚きつけた。

「そんな守りに入った俺が見たいか? そんなヤツはここにはいないよな?」

「みんな元気そうでうれしい」と顔をほころばせたHYDEは、「普通にライブができるってうれしい。この3年以上いろんな形でライブをしてきました。君たちもたくさんがんばってくれて感謝してます。なんとかここまでやってこれました。メンバー、スタッフ、非常に感謝してます。特にすげえメンバーとやれて光栄です」と紆余曲折のあったコロナ禍の日々を噛み締める。続けて「ソロになってからこの景色を見るまで、道のりはすごく長かったです。大人しくバンドやっていればいいとか、批判的な意見もたくさんありましたし、今もあります。確かに似たようなサウンドをやってうまくやっていれば儲かるとは思うんです」と本音を吐露。「賢くやる方法はもっといっぱいあるけど、そんな俺を見て君たちは感動するか? そんな俺に心奪われる? そんな守りに入った俺が見たいか? そんなヤツはここにはいないよな?」とカメラに向かって訴えた。

ギターが唸りを上げる横で、彼は「昨日の暴れてる君たちを見て、俺はすごくうれしかった。この景色は金じゃ買えない! この3年以上、この景色を見たくてやってきた。待たせたな、幕張! 取り返すぞ!」と気炎を吐くと、「倍返しだ」と言い放つ。その言葉をトリガーに「MAD QUALIA」がスタート。リミッターを外したHYDEとバンドメンバーの熱演に呼応するように、アリーナエリアではサークルモッシュやクラウドサーファー、リフターが生まれ、スタンドエリアではオーディエンスが腕を突き上げ爆音に身を委ねた。

貫禄と凶暴さを兼ね備えた声で絶唱を繰り返したHYDE…最後に放った言葉は

「MAD QUALIA」の終盤でカオティックな空間へと化したアリーナエリアに降り立ったHYDEは、観客に支えられながらそのまま「DEVIL SIDE」を披露。さらに「忘れないけど振り返ったりしない」「限界なんて解らない」と歌う「INTERPLAY」、パンクアレンジを施した「GLAMOROUS SKY」のセルフカバーを投下し、アクセルをグッと踏み込み、会場の熱狂をさらに煽った。

「この曲はもう覚えたよね?」。ステージの熱気を受けて水を被り髪をオールバックにしたHYDEはそう口にすると、9月6日にリリースしたばかりの新曲「6or9」のコール&レスポンスをたっぷり時間をかけてレクチャーする。そうして始まった「6or9」では大きなシンガロングとともに、あちこちでタオル回しが繰り広げられ、揺るぎのない一体感がステージと客席の間に生み出された。そして、空間を切り裂くように鋭利なシンセサイザーの音色が響き、「MIDNIGHT CELEBRATION Ⅱ」へ。ネオンでギラギラと輝くNEO TOKYOを再び稲光が横切り、天井から火花が吹き出し、バンドメンバーがステージ上で奔放に暴れる。カオスとしか言いようのない景色の中心に立ったHYDEは、貫禄と凶暴さを兼ね備えた声で絶唱を繰り返した。

玉座に腰かけながらステージへと移動するHYDE。(写真提供:VAMPROSE)

玉座に腰かけながらステージへと移動するHYDE。(写真提供:VAMPROSE)[拡大]

インターバルを経て始まったアンコールの幕を開けたのは、「思いの丈を吐き出す」というタイトルが付けられた「LET IT OUT」。玉座に腰をかけ、8人の覆面パフォーマーに担がれながら客席後方から悠然と現れたHYDEは、オーディエンスとのコミュニケーションを存分に楽しんだのち、牙をむくようなアグレッシブなパフォーマンスを繰り広げる。3年半という決して短くはないコロナ禍に溜まった鬱積を晴らすように、それぞれのスタイルでライブを楽しむオーディエンスたち。その姿を前にしながらもHYDEは、「お楽しみはこれからですよ!」と攻めの手を緩める様子はない。ジャケットを脱ぎ、上半身裸になると「悔いを残すな!」と繰り返しながら、「AHEAD」「BLOODSUCKERS」「I GOT 666」と激しく勢いのあるロックチューンをシャウトまじりの声で歌い上げる。

オーディエンスに支えられながら絶唱するHYDE。(写真提供:VAMPROSE)

オーディエンスに支えられながら絶唱するHYDE。(写真提供:VAMPROSE)[拡大]

「俺が大人しかったらお前らも大人しい。でもお前らがイカれてたら、俺もイカれちまう。俺をクレイジーにしてくれよ。連れてってくれよ! 愛してるぜ」とエレキギターを抱えたHYDEは、20年前の2003年にリリースしたアルバム「6 6 6」の収録曲である「HIDEAWAY」を歌い出した。予想外の1曲に会場が沸き立つ中、HYDEは20年間の進化を示すように表現力を増した骨太なボーカルを披露。曲のラストでは夜明けを迎えたNEO TOKYOの景色を背に、「Are you ready now?」というフレーズが繰り返される。その言葉はコロナ禍を経て、HYDEの活動がこれからさらに加速していくことを示唆しているようだった。

HYDE「HYDE LIVE 2023 Presented by Rakuten NFT」の様子。(写真提供:VAMPROSE)

HYDE「HYDE LIVE 2023 Presented by Rakuten NFT」の様子。(写真提供:VAMPROSE)[拡大]

2時間にわたるライブのラストを飾ったのは「SEX BLOOD ROCK N' ROLL」。観客とともに最後の瞬間まで大いに暴れたHYDEは、少年のような笑みをその顔に浮かべながら「またこれを更新していきたい。次、会えるまで首洗って待ってろよ!」とオーディエンスとの再会を約束し、愛を込めて投げキッスを贈った。

なおこの日のライブの模様は、動画配信サービス・Rakuten TVにて9月13日20:59まで見逃し配信を実施中。

HYDE「HYDE LIVE 2023 Presented by Rakuten NFT」2023年9月10日 幕張メッセ 幕張イベントホール セットリスト

01. DEFEAT
02. AFTER LIGHT
03. PANDORA
04. TAKING THEM DOWN
05. SICK
06. WHO'S GONNA SAVE US
07. THE ABYSS
08. ON MY OWN
09. MAD QUALIA
10. DEVIL SIDE
11. INTERPLAY
12. GLAMOROUS SKY
13. 6or9
14. MIDNIGHT CELEBRATION Ⅱ
15. LET IT OUT
16. AHEAD
17. BLOODSUCKERS
18. I GOT 666(未発表曲)
19. HIDEAWAY
20. SEX BLOOD ROCK N' ROLL

Rakuten TV「HYDE LIVE 2023 Presented by Rakuten NFT」配信情報

2023年9月13日(水)20:59まで見逃し配信中
配信URL:
https://live.tv.rakuten.co.jp/content/457668/(国内)
https://rtvjapanlive.myshopify.com/products/hyde-live-2023(韓国・香港・シンガポール)

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