シドが念願の「海辺」ツアー完走、最高のファイナルでファンへの愛を全開に

19

1469

この記事に関するナタリー公式アカウントの投稿が、SNS上でシェア / いいねされた数の合計です。

  • 297 923
  • 249 シェア

シドが5月13日に東京・Zepp DiverCity(TOKYO)にて、最新アルバム「海辺」を携えての全国ツアー「SID 20th Anniversary TOUR 2023 『海辺』」の最終公演を開催した。

「SID 20th Anniversary TOUR 2023 『海辺』」Zepp DiverCity(TOKYO)公演の様子。(撮影:今元秀明)

「SID 20th Anniversary TOUR 2023 『海辺』」Zepp DiverCity(TOKYO)公演の様子。(撮影:今元秀明)

大きなサイズで見る(全16件)

このツアーは当初、「海辺」のリリース時期である2022年春に開催が予定されていたが、マオ(Vo)の喉の不調を受けて延期に。約1年を経て万全の体制で全国7都市を舞台に行われ、「令和歌謡」をテーマとしたアルバム収録曲に加え、シドの代表曲とも言えるナンバーが披露された。

黒を基調としたジャケットをまとってステージに登場したメンバーたち。マオがフロアに耳を傾ける仕草をすると、4人を待ち焦がれていたファンから大きな歓声が沸き起こり、ライブハウス内は一瞬で熱狂に包まれた。そしてゆうや(Dr)の刻むパワフルなビートから、アルバム「海辺」のオープニングを飾る「軽蔑」でライブがスタート。ステージに設置された3つのLEDスクリーンにマオがつづった耽美で切ない歌詞が投影され、言葉を軸に作り上げたというアルバムの世界をストレートに伝えていく。

マオ(Vo)(撮影:今元秀明)

マオ(Vo)(撮影:今元秀明)[拡大]

Shinji(G)(撮影:今元秀明)

Shinji(G)(撮影:今元秀明)[拡大]

ドロドロとした情念を歌い上げた「大好きだから…」の余韻が残る中、マオは「すっごい楽しみにしてきました。どれくらい楽しみかと言うと遠足くらい!」と少年のように無邪気な笑みを浮かべ、ファンを骨抜きに。そして「今日は声出し放題! 俺が一番出すと思うけど(笑)」と宣言し、80年代ポップスを想起させるサウンドの「13月」と恋愛小説のワンシーンを切り取ったような「街路樹」を、完全復活した伸びやかな美声で歌唱。「街路樹」ではShinji(G)の奏でるメランコリックな旋律が、うらさびしい秋の景色を描き出して楽曲に彩りを添える。合間のMCではメンバーそれぞれがツアーファイナルを迎えた感慨を口に。明希(B)が「みんながシドの帰る場所を守ってくれたから、ここまでくることができた」と噛み締めれば、Shinjiは「荒波、さざ波に揉まれながら、きれいになって流木みたいにここにたどり着きました。『海辺』ツアーはできるのか不安だったから、こうやってできてうれしいです」とユーモアを交えながらトーク。ゆうやは「最後まで皆さんが楽しんでいけるライブになってますので、気を抜かずに。テーマパークに遊びにきたつもりで、元を取って帰ってくださいね!」とはつらつと呼びかけた。

「SID 20th Anniversary TOUR 2023 『海辺』」Zepp DiverCity(TOKYO)公演の様子。(撮影:今元秀明)

「SID 20th Anniversary TOUR 2023 『海辺』」Zepp DiverCity(TOKYO)公演の様子。(撮影:今元秀明)[拡大]

ゆうやの言葉通り、その後はテーマパークのアトラクションのように起伏のある流れでライブが進行していく。2灯のスポットライトがマオの表情を浮かび上がらせる演出で始まった「白い声」では冬の切なさを表現し、ファンからの人気も高い「hug」では会場を包み込む、温もりのあるアンサンブルを奏でた4人。しかし二胡や古箏の音色が特徴の「慈雨のくちづけ」が始まると、艶美な言葉でつづられた歌詞とサウンドでオーディエンスを惑わすなど、豊かな表現力を余すことなく発揮してみせる。

明希(B)(撮影:今元秀明)

明希(B)(撮影:今元秀明)[拡大]

ゆうや(Dr)(撮影:今元秀明)

ゆうや(Dr)(撮影:今元秀明)[拡大]

その表現力は、ライブ中盤に設けられた楽器隊によるソロコーナーでも全開に。ゆうやがジャズとハードロックの要素を融合させた卓越したプレイで観客を魅せれば、明希(B)はダンサブルなトラックに乗せて音色を重ね、躍動的な一面を打ち出す。またShinjiは、フュージョンのアプローチを取り入れたギタープレイで穏やかなひとときを演出。三者三様とも言えるスタイルを観客の脳裏とステージに刻み付けた。

マオ(Vo)(撮影:今元秀明)

マオ(Vo)(撮影:今元秀明)[拡大]

結成から現在に至るまで、さまざまなタイプの楽曲を発表してきたシド。特に色恋の機微を表現したラブソングには定評があり、ファンから高い人気を誇ってきた。そして、この日も数多くのラブソングが届けられたが、中でも「液体」はむせ返るような色香で会場が満たされる事態に。官能的な言葉の連なり、赤と青の液体が混ざり合う映像、マオの甘い歌声、Shinji、明希、ゆうやが奏でる繊細でジャジーなアンサンブル。1つひとつがゆっくりと溶け合いながらフロアに広がっていく。マオは途中でステージ中央に設けられた台に腰をかけ、焦らすようにしながら足を組むと、艶かしい視線で、ステージに見入っていた観客を悩殺した。大人の魅力を開花したブロックを経て、本編の終盤を飾ったのは、アニバーサリーライブに欠かせない「ANNIVERSARY」、観客との美しい一体感が生み出される「循環」、ポジティブなメッセージを伝える「one way」というライブの定番曲3曲。思い思いの形でライブを楽しむファンを前に、メンバーもギアをトップに入れ、全身全霊のパフォーマンスで応えた。

「SID 20th Anniversary TOUR 2023 『海辺』」Zepp DiverCity(TOKYO)公演の様子。(撮影:今元秀明)

「SID 20th Anniversary TOUR 2023 『海辺』」Zepp DiverCity(TOKYO)公演の様子。(撮影:今元秀明)[拡大]

マオの「夏を先取りしましょう」という言葉を合図に「揺れる夏服」「夏恋」という新旧のサマーチューンを通して、さわやかな風をライブハウスに送り込んだ4人。「夏恋」の演奏中には、ひたむきに指ハートをステージに向けるファンを真似て、明希が腕でハートを作り、マオにアピールする場面も。するとそのほほえましいやりとりに黄色い歓声があちこちから上がった。アンコールでひと際盛り上がりを見せたのは、ツアーファイナル限定でセットリストに組み込まれた「吉開学17歳(無職)」。約20年前に発表されたシド結成時の楽曲が、当時を凌駕するような激しいプレイで披露され、場内の熱気は急上昇。喜びと興奮が渦巻く狂乱の空間がフロアに生み出された。

ラストナンバーの「海辺」を歌い出す前に、「最高のライブでした。みんながいるとなんでもできますね。ファイナルにふさわしいライブができたんじゃないかと思います。皆さんに感謝しながら僕らは活動してますが、今日はいつにも増して感謝の気持ちが強かったです。ずっと『ありがとう』って思ってた」と充実感をにじませたマオ。その言葉に同意するようにShinji、明希、ゆうやも柔らかい表情を浮かべながら丁寧に音を紡ぐ。マオがたおやかなアンサンブルに乗せて、「無数の傷は 消えない 証になって 生きる」と20年の紆余曲折に思いを馳せるようにしながら歌い、ファンへの愛を伝えた。

この記事の画像(全16件)

シド「SID 20th Anniversary TOUR 2023 『海辺』」2023年5月13日 Zepp DiverCity(TOKYO) セットリスト

01. 軽蔑
02. 大好きだから…
03. 13月
04. 街路樹
05. 白い声
06. hug
07. 慈雨のくちづけ
08. 液体
09. 騙し愛
10. ANNIVERSARY
11. 循環
12. one way
<アンコール>
13. 揺れる夏服
14. 夏恋
15. park
16. 眩暈
17. 吉開学17歳(無職)
18. 海辺

全文を表示

読者の反応

かずまっち @kazumaximum

みんないい顔だよな~😊
あ~あの日に舞い戻りたい🥹

#SID20th https://t.co/T7PbCpgS2y

コメントを読む(19件)

あなたにおすすめの記事

このページは株式会社ナターシャの音楽ナタリー編集部が作成・配信しています。 シド の最新情報はリンク先をご覧ください。

音楽ナタリーでは国内アーティストを中心とした最新音楽ニュースを毎日配信!メジャーからインディーズまでリリース情報、ライブレポート、番組情報、コラムなど幅広い情報をお届けします。