デイヴィッド・フォスターは、ホイットニー・ヒューストンやセリーヌ・ディオン、マイケル・ジャクソン、マドンナなど数々のアーティストの楽曲を手がけて15のグラミー賞を獲得している世界的なプロデューサー。彼から多大な影響を受けているASKAにとって、今回の公演は自らの夢を叶えるステージとなった。本稿では16日の神奈川公演の模様をレポートする。
開演後にまず始まったのはASKAのソロパフォーマンス。1曲目から1990年代を代表する大ヒット曲「SAY YES」が早くも披露され、イントロが流れた瞬間に客席からどよめきが沸き起こった。8000人のオーディエンスで埋め尽くされた広い会場は、大編成のバンドが奏でるゴージャスなサウンドに一歩も引けを取らない、ASKAの力強く伸びやかな歌声でいっぱいに。ASKAはMCで、ついに共演が実現したデイヴィッド・フォスターとの出会いを「音楽を始めて7年目か8年目くらいに、曲作りの依頼を受けるようになって、音楽業界での立ち位置が固まりつつあるのかなと自分で思い始めてた頃に、デイヴィッド・フォスターの音楽を聴いて根底から覆されました。自分の音楽が赤子のようで。それから『この人に影響されてみよう』と思うようになりました」と感慨深げに振り返った。
前半のASKAのソロコーナーではそのほか、1980年代のCHAGE and ASKAの楽曲「迷宮のReplicant」や、ASKAのソロ曲としては最大のヒットとなった「はじまりはいつも雨」、ソロデビュー曲「MY Mr.LONELY HEART」などが次々に届けられる。その後、ASKAが流暢な英語のMCでデイヴィッド・フォスターを招き入れると、テンション高めにステージに現れたデイヴィッドはASKAを抱きしめ、ピアノの椅子に腰を掛けた。
デイヴィッドが演奏に加わって最初に披露されたのは「You Raise Me Up」のカバー。アイルランドの2人組・Secret Gardenが2002年に発表し、翌年にデイヴィッドのプロデュースでジョシュ・グローバンがカバーしたことでも知られるバラードだ。壮大なサウンドと賛美歌のようなコーラスに乗せて、切なくも美しい声を響かせたのち、ASKAは一旦退場。デイヴィッドが映画「セント・エルモス・ファイアー」のテーマソングを弾き始めると、スクリーンにはケニー・Gがスタジオ内でソプラノサックスを吹くVTRが流れ、思わぬゲストプレイヤーの登場に会場が沸き立った。
さらにデイヴィッドはピアノを弾きながら、自らボーカルを取ってChicagoの「Hard To Say I'm Sorry」を歌い始めた。そしてサビに入ったところで観客にも一緒に歌うように促すが、観客の声量がいまいち出ていなかったと2回やり直すことに。ASKAが「ここは日本だから英語詞でそれは難しい」と苦笑いでデイヴィッドにフォローし、会場は笑いに包まれた。その後もデイヴィッドは、ホイットニー・ヒューストン「I Will Always Love You」のワンフレーズを弾き語りし、映画「ベスト・キッド2」の主題歌として知られるピーター・セテラ「Glory of Love」を演奏。さらにデイヴィッドは“スペシャルゲスト”として、ASKAの娘である
ASKAとデイヴィッドが仲良さげに英語でトークしているうちに、この日限りの曲をアドリブで作ろうということに。澤近泰輔とデイヴィッドがキーを合わせてピアノを弾き、その上でASKAがスキャットを歌うと、即興とは思えないほどに完成度の高い良質なポップソングが誕生した。この日米の天才メロディメーカーたちによるハイレベルな戯れに、観客はじっと耳を傾けていた。そしてASKAとデイヴィッドのコラボパートで最後の曲に選ばれたのは、デイヴィッドからの影響を色濃く受けた曲だとASKAが公言している「PRIDE」。ASKAはこの曲の1番を歌い終えると、そのまま2番はChicagoの「Hard To Say I'm Sorry」を歌唱。ASKAとデイヴィッドのそれぞれの曲をマッシュアップ的にミックスするという、この日ならではのアレンジでオーディエンスを驚かせた。
デイヴィッドがステージを去ると、ASKAは観客に向けて「時代は回るなんて言うけど、『あの90年代のいい時期をもう一度』なんて考えてると絶対に来ないから。過ぎ去ったものと別の形で、エンタテインメント性を持ったステージをこの先どこかでやれると信じてます」と今の気持ちを明かした。そして「今日はアンコールはやりません。その代わりしっかりやらせてもらいます」と宣言し、ライブ終盤は「けれど空は青 ~close friend~」「リハーサル」「晴天を誉めるなら夕暮れを待て」といった曲を一気に畳み掛けた。そして「YAH YAH YAH」に突入すると、アリーナ席から4階席までのオーディエンスが一斉に拳を高く掲げながら合唱。会場内はさながらロックフェスのヘッドライナーによるクライマックスのような光景に様変わりした。
その後「Be Free」を歌い終えたASKAは、再びデイヴィッドを招き入れる。大きな拍手に迎えられて上機嫌でピアノの椅子に座ったデイヴィッドは、楽しそうに「YAH YAH YAH」を弾き語って観客を笑わせた。そしてASKAは最後の曲として、デイヴィッドのピアノ演奏を加えて「僕のwonderful world」を優しく歌唱。ラストは宮崎薫も含めた全メンバーで手をつないで横1列に並び、うれしそうな笑顔を浮かべながら客席に一礼した。
TRAVEL & Lush Music presents ASKA featuring DAVID FOSTER「ASKA & DAVID FOSTER PREMIUM CONCERT 2023」2023年3月16日 ぴあアリーナMM セットリスト
01. SAY YES / ASKA
02. 憲兵も王様も居ない城 / ASKA
03. 共謀者 / ASKA
04. 迷宮のReplicant / ASKA
05. はじまりはいつも雨 / ASKA
06. MY Mr. LONELY HEART / ASKA
07. You Raise Me Up / ASKA&デイヴィッド・フォスター
08. Love Theme From St. Elmo's Fire / デイヴィッド・フォスター
09. Hard To Say I'm Sorry / デイヴィッド・フォスター
10. Glory of Love / デイヴィッド・フォスター
11. To Love You More / 宮崎薫&デイヴィッド・フォスター
12. Man and Woman / ASKA&デイヴィッド・フォスター
13. next door / ASKA&デイヴィッド・フォスター
14. PRIDE - Hard To Say I'm Sorry / ASKA&デイヴィッド・フォスター
15. RED HILL / ASKA
16. けれど空は青 ~close friend ~ / ASKA
17. リハーサル / ASKA
18. 晴天を誉めるなら夕暮れを待て / ASKA
19. YAH YAH YAH / ASKA
20. Be Free / ASKA
21. 僕のwonderful world / ASKA&デイヴィッド・フォスター
※宮崎薫の「崎」は立つ崎(たつさき)が正式表記。
「ASKA Premium Concert Tour -Wonderful World- 2023」
2023年4月1日(土)広島県 広島文化学園HBGホール
2023年4月2日(日)兵庫県 アクリエひめじ(姫路市文化コンベンションセンター)
2023年4月15日(土)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
2023年4月22日(土)大阪府 オリックス劇場
2023年4月23日(日)大阪府 オリックス劇場
2023年4月30日(日)福島県 けんしん郡山文化センター 大ホール
2023年5月7日(日)千葉県 森のホール21
2023年5月14日(日)熊本県 熊本城ホール メインホール
2023年5月20日(土)宮城県 トークネットホール仙台
2023年5月25日(木)東京都 東京国際フォーラム ホールA(追加公演)
2023年7月1日(土)沖縄県 那覇文化芸術劇場なはーと 大劇場
2023年7月7日(金)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール(追加公演)
2023年7月9日(日)奈良県 なら100年会館
2023年7月21日(金)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
2023年7月28日(金)福岡県 福岡サンパレス ホテル&ホール
Tsuneyuki @tuneoka
【ライブレポート】ASKAとデイヴィッド・フォスターが互いの曲を合体、日米の天才2人が全力で音を楽しんだ共演ライブ(写真12枚) https://t.co/8l7E0fvfyO
#ASKA